著者
山元 孝広 高田 亮 吉本 充宏 千葉 達朗 荒井 健一 細根 清治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.433-444, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
41

富士山は,国内最大規模の活火山のひとつであり,噴火した場合に首都圏のインフラ施設に深刻な影響を与える恐れがあるとして,防災の観点からも注目されている(Yamamoto and Nakada, 2015).最新期の大規模噴火として,青木ヶ原樹海を作った貞観噴火(西暦864年)の溶岩流と東京や千葉まで火山灰を降り積もらせた宝永噴火(西暦1707年)の火砕物降下がとくに知られている.これらの噴火の噴出量や物理特性などを参考条件に,防災のためのハザードマップが作られている(内閣府, 2004).富士山は,溶岩流や火山灰降下以外にも,火砕流や山体崩壊,スラッシュ雪崩など,さまざまな現象をあらゆる方向へ発生させて現在の形へと成長してきた.今回の巡検では,周辺山麓に約70万人が居住し,重要インフラ施設も各種立地する富士山麓を一周する.再び火山活動が活発化したときに発生する恐れのある地質災害について,過去に発生した溶岩流の作った地形や岩相,火砕流堆積物や岩屑なだれ堆積物の露頭にみられる構造等を観察して現象への理解を深め,富士山の火山防災を考える.
著者
及川 輝樹 中野 俊 荒井 健一 中村 圭裕 藤田 浩司 成毛 志乃 岸本 博志 千葉 達朗 南里 翔平
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

飛騨山脈南部の岐阜県・長野県県境に位置する乗鞍火山の最近約1万年間の噴火史を,テフラ層序とAMS 14C年代測定を基に明らかにした.なお本報告は,乗鞍岳火山防災協議会が行った調査を基にして,その後検討を加えたものである.かつて乗鞍火山における最近1万年間の活動中心は,火口縁に最高峰の剣ヶ峰(3026m)がある権現池火口の他,恵比須岳火口にもあるとされていた.しかし,恵比須岳火口起源のテフラとされていた噴出物は,年代や記載岩石学的特徴から,その火口起源のものではないことが明らかとなった.そのため,最近1万年間の活動中心は権現池火口周辺に限られる.最近1万年間における乗鞍火山の噴火活動は,テフラ層序に基づくと,少なくともマグマ噴火を2回,水蒸気噴火を10回行っている.マグマ噴火は,いずれも水蒸気噴火に始まるが,その後火山灰を放出する噴火とスコリアを放出する噴火がそれぞれ発生した.スコリアを放出する噴火は,その初期に小規模な火砕流も発生した.総テフラ噴出量は数100~1000万/m3オーダである.なお,権現池火口周辺から流れ出た溶岩のうち,保存のよい微地形が残存する溶岩も3ユニットあることから,溶岩を流す噴火も完新世に3回発生した可能性がある.また,個々の水蒸気噴火の総噴出量は,数10~数100万m3オーダとなる.最新の噴火は,約500年前に発生した水蒸気噴火である.およそ7300年前に降下した鬼界アカホヤ火山灰より上位のテフラユニットの数から算出した噴火頻度は,800年に一回となる.近隣の焼岳火山(100~300年/回)と比べると噴火頻度は少ないが,桁違いに少ないわけではない.
著者
中野 俊 高田 亮 石塚 吉浩 鈴木 雄介 千葉 達朗 荒井 健一 小林 淳 田島 靖久
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11-12, pp.387-407, 2007-03-31 (Released:2014-06-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

富士火山噴出物の噴火年代決定を目的として産総研が実施したトレンチ調査のうち,北東山麓で行ったトレンチ調査結果及びそれに関連した露頭観察の結果をまとめ,そこから得られた放射性炭素年代測定値を合わせて報告する.トレンチ調査の対象は,新富士旧期の大臼,小臼などの火砕丘群及び新富士新期の檜丸尾,鷹丸尾,中ノ茶屋,雁ノ穴丸尾,土丸尾などの溶岩流群である.