著者
山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-16, 2017-03-10 (Released:2017-03-17)
参考文献数
36
被引用文献数
2 8

大山火山は山陰地方に位置する大型のデイサイト質成層火山である.この火山は約6万年前の大山倉吉降下火砕堆積物(DKP)に代表されるような日本列島沿いに大規模な火砕物を降下させる噴火を更新世に度々起こしたことで知られている.大山火山の既存研究には層序学的な問題や評価手法上の問題が残されているため,本研究では噴火履歴を定量的に見直した.まず,層序学的問題では,最新期の噴火を弥山溶岩ドームの形成とするもの鈷峰溶岩ドームの形成とする異なる文献が存在した.新たに実施した放射性炭素年代測定の結果は,弥山噴火 が28.6千年前,三鈷峰噴火が20.8千年前となり,後者が最新期の噴出物であることが確実になった.次の問題は,須藤ほか(2007)のデータベースに記載された大山火山起源降下火砕堆積物の体積評価手法である.この手法では既存文献の堆積物等層厚線を図学的に書き直すことで体積を求めているが,実際には分布する遠方の火砕物を無視しており,計測された体積は相当な過小評価になっている.そのため,降下火砕堆積物の体積はLegros(2000)や他の手法を用いて再計測し直している.今回の計測値 を用いて作成した積算マグマ噴出量階段図では,10万年前頃からマグマ噴出率が大きくなる傾向が認められ,その中でDKPが発生したように見ることが出来る.
著者
山元 孝広
出版者
産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.163-175, 2017-08-18 (Released:2017-08-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

この地質ガイドは,2016年11月に開催された噴火準備過程の岩石学的解析に関する国際ワークショップの伊豆大島巡検のために作成されたものである.見学地点では,1986年噴出物,三原山火砕丘,南海岸の1421?年噴出物,1.7千年前のカルデラ形成期噴出物,先カルデラ期のテフラ層や,2013年ラハールが観察できる.
著者
山元 孝広 高田 亮 吉本 充宏 千葉 達朗 荒井 健一 細根 清治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.433-444, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
41

富士山は,国内最大規模の活火山のひとつであり,噴火した場合に首都圏のインフラ施設に深刻な影響を与える恐れがあるとして,防災の観点からも注目されている(Yamamoto and Nakada, 2015).最新期の大規模噴火として,青木ヶ原樹海を作った貞観噴火(西暦864年)の溶岩流と東京や千葉まで火山灰を降り積もらせた宝永噴火(西暦1707年)の火砕物降下がとくに知られている.これらの噴火の噴出量や物理特性などを参考条件に,防災のためのハザードマップが作られている(内閣府, 2004).富士山は,溶岩流や火山灰降下以外にも,火砕流や山体崩壊,スラッシュ雪崩など,さまざまな現象をあらゆる方向へ発生させて現在の形へと成長してきた.今回の巡検では,周辺山麓に約70万人が居住し,重要インフラ施設も各種立地する富士山麓を一周する.再び火山活動が活発化したときに発生する恐れのある地質災害について,過去に発生した溶岩流の作った地形や岩相,火砕流堆積物や岩屑なだれ堆積物の露頭にみられる構造等を観察して現象への理解を深め,富士山の火山防災を考える.
著者
山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3-4, pp.117-132, 2007-08-31 (Released:2014-05-22)
参考文献数
34
被引用文献数
2 4

火山フロントから60 kmの背弧域にある新潟県飯士火山の層序を見直し,海洋酸素同位体ステージ 7 (MIS7)に噴出した爆発的噴火産物を新たに見いだした.この堆積物はカミングトン閃石含有斜方輝石普通角閃石デイサイトを本質物に含む残留角礫相・塊状軽石流相・成層火砕サージ相からなり,越後湯沢火砕流堆積物と命名した.本堆積物のフィッション・トラック年代の測定結果は 0.21 ± 0.07 Ma であった.また,構成物の特徴と層序的位置から,この堆積物が関東北部で記載されていたプリニー式降下堆積物,真岡軽石の給源相と判断され,これを飯士真岡テフラと再定義した.飯士真岡テフラの上位の溶岩及び下位のテフラからの既報放射年代値も考慮すると,飯士真岡テフラの噴火年代は 0.22 ~ 0.23 Ma に絞り込める.更に,真岡軽石を含むとされた茨城県大洗の見和層中部の堆積相と構成物組成を検討した結果,見和層中部は従来考えられていたような MIS6 の低海面期の堆積物ではなく,MIS7.3 ~ 7.1 の潮流口‐河川堆積物からなることを明らかにした.
著者
山元 孝広 高田 亮 石塚 吉浩 中野 俊
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.53-70, 2005-05-20
被引用文献数
5

The previous eruption history of Fuji volcano has been re-examined by new 100 radiometric carbon ages. The major unconformity between Ko-Fuji and Shin-Fuji volcanoes of Tsuya (1968, 1971) was caused by the edifice collapse resulting in the Tanukiko debris avalanche at about Cal BC 18,000. Voluminous effusion of basalt lava flows in the older ejecta of Shin-Fuji volcano (Tsuya, 1968, 1971) had started at about Cal BC 15,000 and continued until about Cal BC 6,000. Deposition of black soil layer between the Older and Younger Fuji tephra layers of Machida (1964, 1977) started at Cal BC 8,000. After several thousands years quiescent time, basaltic eruptions in the middle ejecta of Shin-Fuji volcano (Tsuya, 1968, 1971) had restarted at about Cal BC 3,600 and thin lava flows had piled up as the central volcanic cone, until about Cal BC 1,700. The eruption style of the volcano changed into explosive basaltic eruptions from the summit and the flank at about Cal BC 1,500; the S-10 to S-22 scoria fall deposits were generated in this first half period of the younger ejecta of Shin-Fuji volcano (Tsuya, 1968, 1971). Also, basaltic pyroclastic flows cascaded down the western flank at about Cal BC 1,500, Cal BC 1,300, Cal BC 1,000 and Cal BC 770. The last summit explosive eruption (S-22) occurred at about Cal BC 300. Immediately after the S-22 eruption, basaltic fissure eruptions had repeated at the flanks until the 1707 Hoei eruption. New data suggest that the Fudosawa, Nissawa and Suyama-tainai lava flows in the southern flank are historical products at about Cal AD 1,000.
著者
山元 孝広 石塚 吉浩 下司 信夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.3, pp.127-136, 2020-03-15 (Released:2020-07-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1 2

富士山東方の静岡県小山町の新東名高速道路の2018年度建設工事現場で,大規模な火山性の斜面崩壊堆積物を確認し,大御神岩屑なだれ堆積物と命名した.この堆積物は,大洞山東斜面に堆積していた富士火山起源のスコリア降下火砕物が表層崩壊を起こしたもので,その南東山麓に長さ4.5 km,最大幅1.5 km,体積9.3×106 m3の規模で広がっている.堆積物直下に神津島天上山テフラの降下層準があること,直上土壌の14C 暦年代から,発生時期は平安時代のAD 838から10世紀前半に特定された.この期間中には東海・南海連動の巨大地震であるAD 887の仁和地震が起きており,この地震動によって斜面崩壊が発生した可能性が強い.
著者
山元 孝広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.94-110, 2005 (Released:2005-06-10)
参考文献数
20
被引用文献数
7 9 5

吾妻火山の最新の活動で形成された小富士や五色沼などの火口群を,吾妻-浄土平火山,その噴出物を吾妻-浄土平火山噴出物と呼び,その層序,形成年代,噴出量,化学組成を明らかにした.吾妻-浄土平火山噴出物は土壌層を挟んで大きく12ユニットに分けられ,安山岩質のブルカノ式降下堆積物を含むものが5ユニット(下位から桶沼,五色,小富士,一切経,大穴),水蒸気爆発降下堆積物のみからなるものが7ユニットである.桶沼ユニットでは6.7 kaに約5×10-4 DRE km3,五色沼ユニットでは6.3 kaに約3×10-4 DRE km3,小富士ユニットでは5.9~4.8 kaの期間に約4×10-1 DRE km3,一切経ユニットでは4.3 kaに約2×10-4 DRE km3,大穴ユニットでは0.6 kaに約8×10-5 DRE km3のマグマが噴出している.浄土平火山噴出物の本質物はSiO2含有量56.8~59.7 wt%の安山岩と60.7~62.8 wt%の灰色デイサイトからなり,各々の組成は噴出源によらず岩系ごとほぼ一貫した組成特性を示す.このことは火口群のマグマ供給系は約7千年間基本的に不変であり,ここから上昇したマグマが岩脈として側方に広がって,噴火ごとに噴出地点が異なったことを示唆している.
著者
山元 孝広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.109-126, 2016-03-15 (Released:2016-06-21)
参考文献数
62
被引用文献数
8

赤城火山,新期成層火山の軽石流堆積物と降下軽石堆積物の対比と噴出物のマグマ体積の計測を行い,マグマ噴出量時間階段図を作成した.火山体形成期(約22-15万年前)に続く軽石噴火期には,5.8万年前の赤城カルデラ形成噴火前に,マグマ噴出率の低下期が起きている.軽石の微量元素成分組成の特徴は,K2O量の高い珪長質マグマほど下部地殻部分溶融メルトの関与が大きいことを示しており,下部地殻へのマグマの大量貫入を契機にマグマ噴出率などの活動様式の変化が起きたことを示唆している.
著者
山元 孝広 川辺 禎久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.233-245, 2014-07-15 (Released:2014-11-12)
参考文献数
43
被引用文献数
6 6

ラハール堆積物は,平均粒径-標準偏差の関係,粒径の分布型の違いから,粘着性の泥流堆積物,非粘着性の土石流堆積物と高密度洪水流堆積物の3タイプに識別することが出来る.2013年10月16日未明に伊豆大島で発生したラハールは,伊豆大島火山西斜面を被覆していた降下細粒火山灰層が表層崩壊を起こしたもので,堆積物の粒度組成の特徴は,この流れが高密度洪水流であったことを示している.すなわち,土石流のような巨・大礫が集合したものではなかったことが今回の土砂災害の大きな特徴となっている.今回のラハールは斜面崩壊発生時から流体として流れ出したため,斜面を面状に高速で流れ下ったものとみられる.この種の土砂災害は,他火山でも発生事例があり,防災上考慮しておく必要がある.
著者
山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9-10, pp.323-340, 2003-12-22 (Released:2014-12-27)
参考文献数
33
被引用文献数
17 24

沼沢火山は福島県の西部,火山フロントの背後50 kmにある活火山である.本研究では噴出物層序と噴火年代を再検討し,噴出量の時間積算図を新たに作成した.本火山の噴出物層序は,約11万年前の尻吹峠火砕堆積物及び芝原降下堆積物,約7万年前の木冷沢溶岩,約4.5万年前の水沼火砕堆積物と約4万年前の惣山溶岩,約2万年前の沼御前火砕堆積物及び前山溶岩,紀元前3400年頃の沼沢湖火砕堆積物からなる.沼沢火山の総マグマ噴出量は約5 DRE km3であるが,前半6万年間で約1 DRE km3のマグマ噴出量であったものが,後半5万年間で残りの約4 DRE km3のマグマが噴出している.沼沢火山のマグマ噴出率の上昇は,給源でのマグマ生産率の上昇と対応しているものとみられる.
著者
山元 孝広
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.257-271, 2006-08-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
43
被引用文献数
4

The Sashikiji 2 (S2) Member in the products of Izu-Oshima volcano was formed by an explosive eruption accompanied with caldera depression. This member is characterized by breccia called as a “low-temperature pyroclastic flow deposit”. In this paper, the S2 breccia is re-examined based on stratigraphy, grain fabrics, grain-size distributions and modal compositions. The S2 Member is divided into six units from S2-a to S2-f in ascending order. The S2-a unit consists of scoria, bomb and aa lava flows from flank fissures. The S2-b unit is made up of well-bedded ash and fine-lapilli from the summit. The S2-c unit is composed of matrix-supported breccia, locally filling valley bottoms and containing abundant deformed soil fragments and woods. The S2-d unit consists of reverse to normal grading, clast-supported breccia with ash matrix, covering topographic relief in the whole island. The S2-e unit is composed of dune- to parallel-bedded lapilli and ash in the proximal facies. The S2-f unit is clast-supported breccia with and without ash matrix. New 14C ages of wood fragments in the S2 Member have been determined as about Cal AD 340. Although the S2-c and -d units are previously interpreted to the low-temperature pyroclastic flow deposit, these units are quite different in sedimentological features as follows. The grain fabric measurements have revealed that the S2-d unit has a-type imbrication showing the longest axis of grains parallel to the flow direction. On the other hand, the S2-c has random fabric of grains. The grain size distribution of the S2-d unit shows a bimodal nature having subpopulations at phi -1.0 to 1.0 and coarser than phi -2.5. The bimodal nature and a-type imbrication suggest that the two transport processes overlap; the load of a turbulent suspension is not all in true suspension as the coarser population may travel in a cast-dispersion mass flow. The S2-c unit shows a polymodal grain size distribution with multi subpopulations from coarse to fine. The poor sorting, massive appearance, valley-confined distribution, and random grain fabric of the S2-c unit are characteristic of deposition from a cohesive flow without formation of traction-related bedforms or sorting of different grain sizes by turbulence. The modal composition measurements have indicated that the S2-c and -d units lack essential scoriceous or glassy fragments. This evidence indicates that both units are derived from steam explosions due to outburst of highly-pressurized geothermal fluid within the edifice. The S2-c unit was plausibly generated by remobilization of phreatic debris around the summit caused by ejection of condensed water from a plume or heavy rainfall. The S2-d unit was a pyroclastic density current deposit resulted from collapse of a highly-discharged phreatic plume. Estimated velocities of the current are 150 to 30m/s based on suspended grain sizes.
著者
長谷川 健 中川 光弘 伊藤 順一 山元 孝広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.12, pp.686-699, 2011-12-15 (Released:2012-03-26)
参考文献数
30
被引用文献数
7 6

テフラを用いて北海道東部の釧路地域に分布する第四系の編年を試みた.釧路地域の海成層(上位から,大楽毛層,釧路層)の各模式地において複数のテフラを記載・採取し,火山ガラスの主成分化学組成などの岩石学的特徴や層位関係から,阿寒・屈斜路火山地域のテフラと対比を行った(阿寒および屈斜路テフラはそれぞれ上位から,Ak1~17およびKpI~VIII).大楽毛層の上位にはKpVIが見いだされ,また大楽毛層上部と下部に挟まる2層の火山灰層は,それぞれAk5および給源不明の広域テフラ(LowK-1)に対比される.一方,釧路層中に含まれる軽石礫・溶結凝灰岩岩塊は,すべてAk13~Ak17由来である.以上の対比結果と既報のテフラ年代から,大楽毛層の堆積は,少なくとも,0.8 Maに開始し0.1 Maより前に終了したと推測できる.釧路層の堆積時期は,1.5 Ma以降,1.0 Maより前と考えられる.
著者
松本 哲一 中野 俊 古川 竜太 山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.153-163, 2018-08-10 (Released:2018-08-29)
参考文献数
21
被引用文献数
3

山形・福島県境に位置する第四紀の大型複成火山である吾妻火山について,同位体希釈法による38溶岩試料のK–Ar年代測定を行い,火山活動の時間的空間的変遷を明らかにした.吾妻火山は安山岩の溶岩流が主体の火山であり,一部の火山体を除き,岩石学的にはほとんど区別できない.年代測定に基づき,完新世に形成された浄土平火山を含め,12の火山に区分した.最も古い活動は 1200 ka 頃に東側で開始し,徐々に西方へ移動し,700 ka 頃に西端で活動,その後,再び東側に時間をおって活動中心が移動している.従来は,吾妻火山の活動は300 ka 以降,完新世の活動までの長い休止期が存在するとされていたが,その期間にも活動は継続しており,現在まで長い休止期を挟まずにほぼ継続的に活動が続いていることが明らかになった.
著者
山元 孝広
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.323-340, 2003
被引用文献数
8 24

沼沢火山は福島県の西部,火山フロントの背後50 kmにある活火山である.本研究では噴出物層序と噴火年代を再検討し,噴出量の時間積算図を新たに作成した.本火山の噴出物層序は,約11万年前の尻吹峠火砕堆積物及び芝原降下堆積物,約7万年前の木冷沢溶岩,約4.5万年前の水沼火砕堆積物と約4万年前の惣山溶岩,約2万年前の沼御前火砕堆積物及び前山溶岩,紀元前3400年頃の沼沢湖火砕堆積物からなる.沼沢火山の総マグマ噴出量は約5 DRE km<sup>3</sup>であるが,前半6万年間で約1 DRE km<sup>3</sup>のマグマ噴出量であったものが,後半5万年間で残りの約4 DRE km<sup>3</sup>のマグマが噴出している.沼沢火山のマグマ噴出率の上昇は,給源でのマグマ生産率の上昇と対応しているものとみられる.
著者
山元 孝広
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

島根県西部の大山火山は,約1Maから活動を開始したアダカイト質の複成火山である.噴火履歴の大枠は津久井(1984)により明らかにされているものの,その定量化にまでは至っていない.特に,大山火山では約5万年前に国内で最大規模のプリニー式噴火である大山倉吉降下火砕物が噴出したが,この噴火が大山火山の長期的な火山活動の中でどのように起きたものかまでは理解されていなかった.そこで大山火山の過去約20万年間の噴火履歴の見直しと放射性炭素年代測定,マグマ噴出量の再計測を行い,新たに積算マグマ噴出量階段図を作成した.噴火履歴の見直しで重要な点は,津久井(1984)の弥山火砕流が,本質物の化学組成の異なる北麓の清水原火砕流と西〜南西麓の桝水原火砕流に分けられることである.前者からは18,960-18,740 calBC,後者からは26,570-26,280 calBCの暦年代が得られた.分布と岩質から,前者は三鈷峰溶岩ドーム起源,後者は弥山溶岩ドーム起源と判断され,大山火山の最新期噴火は約2万年前の三鈷峰溶岩ドームの形成であることが明らかとなった.大山火山起源のテフラについても等層厚線図を書き直し,Legros (2000)法で噴出量を計測し直した.従来値よりも噴出量が大幅に大きくなったものは計測し直した約8万年前の大山生竹降下火砕物で,その最小体積は2 km3DREである.更新した階段図からは,大山火山では約10万年前から噴出率が高い状態が続いていたことを示しており,大山倉吉噴火は大山火山のこの時期の活動の中で特異的に大きいわけではない.
著者
山元 孝広 長谷部 忠夫
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.1-9, 2014
被引用文献数
3

福島県南会津郡只見町叶津の只見川支流叶津川,標高367 m地点で,直立した化石樹幹を含む砂-シルト互層からなる湖成堆積物が露出した.化石樹幹はいずれも,生木に近い状態を保っていた.樹幹の外側の年輪5年分の試料からは,48,180 ± 580 yBPの補正放射性炭素年代値が得られた.この年代は約35 km下流の沼沢火山で起きた約5万年前の火砕流噴出(水沼噴火)による堰止湖の形成を示すものと解釈される.水沼火砕物の直上には広域テフラである大山倉吉テフラが位置しており,その堆積年代を考慮すると,水沼噴火の実年代は約53 kaと推定されよう.
著者
山元 孝広
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.257-271, 2006-08-31
被引用文献数
3

The Sashikiji 2 (S_2) Member in the products of Izu-Oshima volcano was formed by an explosive eruption accompanied with caldera depression. This member is characterized by breccia called as a "low-temperature pyroclastic flow deposit". In this paper, the S_2 breccia is re-examined based on stratigraphy, grain fabrics, grain-size distributions and modal compositions. The S_2 Member is divided into six units from S_2-a to S_2-f in ascending order. The S_2-a unit consists of scoria, bomb and aa lava flows from flank fissures. The S_2-b unit is made up of well-bedded ash and fine-lapilli from the summit. The S_2-c unit is composed of matrix-supported breccia, locally filling valley bottoms and containing abundant deformed soil fragments and woods. The S_2-d unit consists of reverse to normal grading, clast-supported breccia with ash matrix, covering topographic relief in the whole island. The S_2-e unit is composed of dune- to parallel-bedded lapilli and ash in the proximal facies. The S_2-f unit is clast-supported breccia with and without ash matrix. New ^<14>C ages of wood fragments in the S_2 Member have been determined as about Cal AD 340. Although the S_2-c and -d units are previously interpreted to the low-temperature pyroclastic flow deposit, these units are quite different in sedimentological features as follows. The grain fabric measurements have revealed that the S_2-d unit has a-type imbrication showing the longest axis of grains parallel to the flow direction. On the other hand, the S_2-c has random fabric of grains. The grain size distribution of the S_2-d unit shows a bimodal nature having subpopulations at phi -1.0 to 1.0 and coarser than phi -2.5. The bimodal nature and a-type imbrication suggest that the two transport processes overlap; the load of a turbulent suspension is not all in true suspension as the coarser population may travel in a cast-dispersion mass flow. The S_2-c unit shows a polymodal grain size distribution with multi subpopulations from coarse to fine. The poor sorting, massive appearance, valley-confined distribution, and random grain fabric of the S_2-c unit are characteristic of deposition from a cohesive flow without formation of traction-related bedforms or sorting of different grain sizes by turbulence. The modal composition measurements have indicated that the S_2-c and -d units lack essential scoriceous or glassy fragments. This evidence indicates that both units are derived from steam explosions due to outburst of highly-pressurized geothermal fluid within the edifice. The S_2-c unit was plausibly generated by remobilization of phreatic debris around the summit caused by ejection of condensed water from a plume or heavy rainfall. The S_2-d unit was a pyroclastic density current deposit resulted from collapse of a highly-discharged phreatic plume. Estimated velocities of the current are 150 to 30m/s based on suspended grain sizes.
著者
宇都 浩三 風早 康平 斎藤 元治 伊藤 順一 高田 亮 川辺 禎久 星住 英夫 山元 孝広 宮城 磯治 東宮 昭彦 佐藤 久夫 濱崎 聡志 篠原 宏志
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.257-270, 2001
被引用文献数
7 13

To understand the eruptive mechanism of the 2000 Miyakejima volcanic activity, we conducted intensive geological, petrographic, and mineralogical studies on the pyroclastics of the August 18 eruption. Volcanic ashes, which were rich in accretionary lapilli, covered most of the islands. Cauliflower-shaped bombs and lapilli were ejected along with accidental lava blocks. Black-colored angular scoriaceous particles with abundant vesicles 10 -100 μm in diameter are found among ashes, comprising about 40 wt. % of total constituents. These bombs, lapilli, and black ashes have identical bulk chemical compositions and constituent mineral compositions, suggesting a common origin. Existence of oxidized ashes and accretionary lapilli attached to a large flattened bomb and chemicallyreacted anhydrite particles trapped in the voids of bombs suggest that bombs were still hot and ductile when they were emplaced on the ground. We, therefore, conclude that the August 18 eruption was a phreatomagmatic eruption and cauliflower-shaped bombs and black ashes were essential magmatic materials. Significant SO<SUB>2</SUB> emissions from the volcano after August 18 also suggest convective upwelling of magmas to a shallower level beneath the volcanic edifice. We propose a magma-ascending model in which vesiculating magmas continuously ascend through the wall of subsided piston-like blocks.