- 著者
-
荻野 晃
- 出版者
- 日本外科代謝栄養学会
- 雑誌
- 外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.2, pp.71-76, 2020 (Released:2020-05-15)
- 参考文献数
- 25
L‐カルニチンは長鎖脂肪酸のエネルギー産生, 生理機能の保持に重要な役割を果たしており, 生命活動に必要な栄養素である. また, 必要量の75%を食事に依存する条件的必須栄養素である. L‐カルニチン欠乏症を発症する病態は多岐にわたるが, 静脈・経腸栄養施行患者においてもL‐カルニチン欠乏症が報告されており, L‐カルニチン補充の必要性が指摘されている. 本邦では静脈・経腸栄養施行時におけるL‐カルニチン欠乏症はあまり問題とされていないが, 欧米の栄養学会ではL‐カルニチンの補充が推奨されている.
L‐カルニチン欠乏症の治療には補充療法としてレボカルニチン製剤を投与する. また, L‐カルニチン添加の経腸栄養剤がL‐カルニチン欠乏症の予防に有効である. 最近, 医薬品L‐カルニチン添加経腸栄養剤としてエネーボ®配合経腸用液, イノラス®配合経腸用液が発売され, 経腸栄養施行患者のL‐カルニチン欠乏症の予防に期待される. 一方, 静脈栄養剤ではいまだ静脈栄養用L‐カルニチン製剤は存在しておらず, 今後の開発が望まれる.