著者
萱 のり子
出版者
ART EDUCATION SCIETY OF JAPAN
雑誌
美術教育 (ISSN:13434918)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.299, pp.8-14, 2015-03-31 (Released:2016-09-02)
参考文献数
25

An art appreciation activity that begins from seeing actual works is developed, accompanied by language activities during school education. In this research, how the appreciation activity should be is considered with attention being focused on the beginning of conversations and images based on a practical study. In that regard, the internal transformation and understanding of others within the viewers were taken up as perspectives important for deepening appreciation and handling the quality of appreciation.The deepening of appreciation is accompanied by an international transformation within the viewers. It is important to pay attention to language expressed through the sensitivity of viewers, not simply language skills. In this point, what is important is the standpoint of cognitive linguistics that places emphasis on the side of sensitive language. Having a perspective from which to grasp the generation of cognitive meanings in relation to creativity is considered to lead to the activation of both art appreciation and language activities.During the art appreciation activity, conversation and communication with various works, oneself and other persons are generated. For the establishment of communication with others, the understanding of others is indispensable. In the second half of this study, the purpose of the art appreciation activity concerning the "understanding" of works is discussed.The skills of looking, listening and sensing generally lead to the rich expression of language. Through the enhancement of art appreciation activities, various skills common to various subjects may be developed.
著者
柴 眞理子 小高 直樹 宇津木 成介 魚住 和晃 萱 のり子 米谷 淳 菊池 雅春
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、舞踊,音楽(ピアノ),書という異なる芸術分野に共通する基本的感情検証と、日・韓・中の異文化間比較によりその基本的感情が文化を超えて共通であることを確かめ,それと同時に,それぞれの芸術や文化に固有な感情表現についても明らかにすることであった。そのために、3つの評価実験を行い、その結果、次のような知見を得た。舞踊・音楽・書(漢字・かな)の3つの分野に共通する感情は「美しい」「きれい」「なめらか」「力強い(強い)」のみであった。3つの分野のうち,舞踊と音楽間では,例えば「楽しい」「悲しい」「こわい」など多くの感情が共通しているのに対し,書は他の2分野と共通する感情が少なく、いわゆる「快・不快」の感情を表現(伝達)しにくい。しかし、かなの書では「悲しみ」の感情は表現(伝達)されており,かなの表現性(表現力)が漢字とは異なる点があることも示唆された。異文化間比較では、各舞踊刺激、音楽刺激を視聴させ、その感情にふさわしい書をマッピングさせるという方法をもちいた。その結果、舞踊の場合のほうが音楽に比べ,「異文化的」な評価が少ない傾向がみられた。また,漢字とかなについては、漢字の方が,「文化差が小さい」ように見える。この点については、かなが我が国に固有の表現媒体であること,したがって舞踊なり音楽なりの感性的印象を評価する場合,漢字を用いるほうが「文化的共通性」を生み出しやすいことが推察される。以上のような知見と同時に、本研究を通して「感性評価の異文化間比較」は,単に,学術的な研究の対象となるばかりではないことを再認した。たとえば日本の芸術作品の海外における評価が日本的な感性による評価と一致するものかどうか,換言すれば,日本において高く評価される芸術的表現が他文化において同一基準で評価されるかどうかという,実際的な場面にも応用が可能であろうと思われる。
著者
松岡 宏明 泉谷 淑夫 赤木 里香子 大橋 功 萱 のり子 新関 伸也 藤田 雅也 大嶋 彰
出版者
大阪総合保育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

図画工作科・美術科における鑑賞学習指導には、その目標設定と評価の在り方に課題があることを全国調査により突き止めた。そこで、鑑賞学習ルーブリック(コモンルーブリックと題材ルーブリック)を作成し、現場教員に実践をしてもらいながら共同研究を重ね、全国3箇所で活用実践報告会を開催した。また、同時に『鑑賞学習ルーブリック&ガイド』5000部を完成させ、学会や研究会などを通して全国の実践者に届けた。さらにその成果と課題を学会誌に研究論文として発表するとともに、学会の口頭発表を4回に渡って行った。
著者
萱 のり子 神林 恒道 梅澤 啓一 新関 伸也 赤木 里香子 大嶋 彰
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、近代以前から日本が緊密な文化的影響関係をもってきた東アジア諸国における鑑賞教育を調査することにより、(1)近代主義の功罪を見直し、今後の文化的・伝統的視点の生きた教育理念を構築していくこと、(2)教育現場での授業実践へと研究を推進させていくための基盤を得ること、を目的としている。調査内容は、理念に関わる資料収集と、現場の実践見聞を主としたフィールドワークを主とし、東アジアの鑑賞教育を対象として以下2つの視点から行った。(1)東アジア諸国(中国・台湾・韓国)における「近代」以降の鑑賞教育の理念と実践に関わる資料収集、および現在の美術教員による授業実践に関するフィールドワーク(2)東アジア諸国の鑑賞教育に対する欧米(アメリカ・ドイツ)の研究、および欧米における鑑賞教育の東アジアへの影響に関する調査研究成果の形態・研究成果報告書には、調査収集資料をもとに、研究メンバーがおのおのの視点から考察を加えたものを収録した。・研究期間中に収集した資料の中から文献を邦訳して抄録した。これは、今後の継続的な研究に向けて、研究メンバーが相互活用できる便宜をはかり、別途CD-ROMに収めた。・調査研究をすすめつつ、鑑賞教育の具体的なありかたを提示するため『鑑賞101選』を執筆・編集した。はじめに、歴史的・文化的に重要な作品を西洋・東洋からそれぞれ選出し、公教育において取り上げるべき作品の検討を行った。続いて、現場での授業で鑑賞教材として活用していくために、作品に関して3つの視点「作品のテーマと内容」「作品の見所」「美術史上の位置」を設け、全202作品を分担執筆した。・書画領域の共通課題を認識する上で、本課題と重要な接点をもつ国際会議(第5回書法文化書法教育国際会議)の研究論文選を別途刊行した。今後の課題報告書に収めた論考は、研究メンバーおのおのが、それぞれの国や自治体が発する教育方針を把握した上で、現状に根ざす実践上の課題を提起したものである。今後は、これらをカリキュラムや指導理念に反映させながら、実践の力を高めあうネットワークづくりを目指していきたいと考えている。