著者
浅利 裕伸 池田 敬 岩崎 亘典 岩下 明生 江成 はるか 江成 広斗 奥田 加奈 加藤 卓也 小池 伸介 小寺 祐二 小林 喬子 佐々木 浩 姜 兆文 杉浦 義文 關 義和 竹内 正彦 立木 靖之 田中 浩 辻 大和 中西 希 平田 滋樹 藤井 猛 村上 隆広 山﨑 文晶 山田 雄作 亘 悠哉
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2015-03-25

希少種の保護や過増加した在来種・外来種の対策など、野生動物をめぐるさまざまな課題に応えるフィールド調査法。各動物の食性や個体数に関する既存研究をまとめ、地図の読み方やフィールド機材の使い方、糞や足跡をはじめとする動物の痕跡の識別法を具体的に示し、得られた情報から食性や個体数、生息地を評価する方法を体系的に解説する。
著者
奥田 圭 田村 宜格 關 義和 山尾 僚 小金澤 正昭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-118, 2014-11-30 (Released:2017-08-01)

栃木県奥日光地域では、1984年以降シカの個体数が増加し、1990年代後半から植物種数が減少するなど、植生にさまざまな影響が生じた。そこで当地域では、1997年に大規模な防鹿柵を設置し、植生の回復を図った。その結果、防鹿柵設置4年後には、柵内の植物種数がシカの個体数が増加する以前と同等にまで回復した。本研究では、防鹿柵の設置がマルハナバチ群集の回復に寄与する効果を検討するため、当地域において防鹿柵が設置されてから14年が経過した2011年に、柵内外に生息するマルハナバチ類とそれが訪花した植物を調査した。また、当地域においてシカが増加する以前の1982年と防鹿柵が設置される直前の1997年に形成されていたマルハナバチ群集を過去の資料から抽出し、2011年の柵内外の群集とクラスター分析を用いて比較した。その結果、マルハナバチ群集は2分(グループIおよびII)され、グループIにはシカが増加する以前の1982年における群集が属し、シカの嗜好性植物への訪花割合が高いヒメマルハナバチが多く出現していた。一方、グループIIには防鹿柵設置直前の1997年と2011年の柵内外における群集が属し、シカの不嗜好性植物への訪花割合が高いミヤママルハナバチが多く出現していた。これらのことから、当地域におけるマルハナバチ群集は、防鹿柵が設置されてから14年が経過した現在も回復をしていないことが示唆された。当地域では、シカが増加し始めてから防鹿柵が設置されるまでの間、長期間にわたり持続的にシカの採食圧がかかっていた。そのため、柵設置時には既にシカの嗜好性植物の埋土種子および地下器官が減少していた可能性がある。また、シカの高密度化に伴うシカの嗜好性植物の減少により、これらの植物を利用するマルハナバチ類(ポリネーター)が減少したため、防鹿柵設置後もシカの嗜好性植物の繁殖力が向上しなかった可能性がある。これらのことから、当地域における防鹿柵内では、シカの嗜好性植物の回復が困難になっており、それに付随して、これらの植物を花資源とするマルハナバチ類も回復していない可能性が示唆された。
著者
奥田 圭 關 義和 小金澤 正昭
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.121-129, 2013-11-30

シカの高密度化に伴う鳥類群集への影響を明らかにするため、栃木県奥日光地域における1977年から2009年にかけての繁殖期の鳥類群集のデータを過去の資料から抽出し、当地域においてシカが増加し始めた1980年代前半以前からシカが高密度化した現在までの鳥類群集の変遷を検討した。そして、その変遷要因についてシカの高密度化と絡めて考察を行なった。鳥類群集の変遷過程の概略をつかむため、1977年、1978年、1979年、1991年、1992年、1993年、1998年、2003年、2008年、2009年の計10時期のデータを用い、各時期において確認されたすべての鳥種を生活型(営巣型および採食型)により分類し、その組成の経年変化を検討した。また、TWINSPANにより種組成の似通った時期および出現傾向が類似する鳥種の分類を行なった。その結果、生活型の組成は1993年と1998年を境に大きく変化していた。また、TWINSPANの結果からも同様に、1993年と1998年を境に種組成が大きく変化していたことが示された。キツツキ類などの樹洞営巣型および樹幹採食型に属する鳥種や、サメビタキ属などの樹上営巣型、フライキャッチ(飛翔採食)型の鳥種は1998年以降に高い相対優占度を有していた。一方、ウグイス類やムシクイ類などの森林の下層を営巣や採食に利用する鳥種や、托卵習性を有するカッコウ類の鳥種は、1993年以前には高い相対優占度を有していたものの、1998年以降にはほとんど欠落していた。奥日光地域では1990年代後半からシカによる下層植生の衰退や樹皮剥ぎの増加などの森林植生への影響が顕在化したことが報告されている。これらのことから、シカの高密度化に伴う下層植生の衰退は、ウグイス類やムシクイ類などの営巣および採食環境の劣化をもたらし、負の影響を及ぼしたことが考えられた。さらに、それに付随して、これらの鳥種を主な托卵相手とするカッコウ類の鳥種にも二次的な負の影響を及ぼした可能性が示唆された。また、シカの高密度化に伴う樹皮剥ぎの増加は枯死木を増加させ、枯死木を営巣や採食に利用する樹洞営巣型や樹幹採食型の鳥種に正の影響を及ぼしたことが考えられた。また、枯死木の増加は樹上営巣型やフライキャッチ型の鳥種にも正の影響を及ぼした可能性が示唆された。以上から、奥日光地域において1993年と1998年を境に鳥類群集が大きく変化した主要因は、シカの高密度化に伴う植生改変であると結論した。
著者
奥田 圭 田村 宜格 關 義和 山尾 僚 小金澤 正昭
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-118, 2014-11-30

栃木県奥日光地域では、1984年以降シカの個体数が増加し、1990年代後半から植物種数が減少するなど、植生にさまざまな影響が生じた。そこで当地域では、1997年に大規模な防鹿柵を設置し、植生の回復を図った。その結果、防鹿柵設置4年後には、柵内の植物種数がシカの個体数が増加する以前と同等にまで回復した。本研究では、防鹿柵の設置がマルハナバチ群集の回復に寄与する効果を検討するため、当地域において防鹿柵が設置されてから14年が経過した2011年に、柵内外に生息するマルハナバチ類とそれが訪花した植物を調査した。また、当地域においてシカが増加する以前の1982年と防鹿柵が設置される直前の1997年に形成されていたマルハナバチ群集を過去の資料から抽出し、2011年の柵内外の群集とクラスター分析を用いて比較した。その結果、マルハナバチ群集は2分(グループIおよびII)され、グループIにはシカが増加する以前の1982年における群集が属し、シカの嗜好性植物への訪花割合が高いヒメマルハナバチが多く出現していた。一方、グループIIには防鹿柵設置直前の1997年と2011年の柵内外における群集が属し、シカの不嗜好性植物への訪花割合が高いミヤママルハナバチが多く出現していた。これらのことから、当地域におけるマルハナバチ群集は、防鹿柵が設置されてから14年が経過した現在も回復をしていないことが示唆された。当地域では、シカが増加し始めてから防鹿柵が設置されるまでの間、長期間にわたり持続的にシカの採食圧がかかっていた。そのため、柵設置時には既にシカの嗜好性植物の埋土種子および地下器官が減少していた可能性がある。また、シカの高密度化に伴うシカの嗜好性植物の減少により、これらの植物を利用するマルハナバチ類(ポリネーター)が減少したため、防鹿柵設置後もシカの嗜好性植物の繁殖力が向上しなかった可能性がある。これらのことから、当地域における防鹿柵内では、シカの嗜好性植物の回復が困難になっており、それに付随して、これらの植物を花資源とするマルハナバチ類も回復していない可能性が示唆された。
著者
關 義和 小金澤 正昭
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.241-246, 2010 (Released:2010-12-14)
参考文献数
33
被引用文献数
8 5

栃木県奥日光地域では, ミミズ類の現存量は防鹿柵内のササ型林床よりも柵外のシロヨメナ型林床において多いことが報告されている。本研究では, 柵外のミミズ類の増加要因について明らかにするために, ササとシロヨメナの地上部現存量とミミズ類との関係について調査を行った。表層性のミミズ類の個体数および現存量とシロヨメナの現存量との間には有意な正の相関が認められ, シロヨメナの現存量が増加してもA0層の深さの増加はみられなかった。これらのことと, 表層性のミミズ類は表層でリターを摂食することが報告されていることから, 表層種にとってのシロヨメナの嗜好性は高いと考えられる。一方, ササ型林床では, 1コドラートで1個体が採集されたのみで, ササの現存量が増加するにつれてA0層の深さは有意に増加した。これらの結果は, 表層種にとってササは餌資源として不適である可能性を示唆する。奥日光地域の柵外では, シカの食害によりササ類が全面枯死し, いまではシロヨメナが群生している。以上のことから, 本地域の柵外におけるミミズ類増加の主要因は, シカによりササ類が消失し, シロヨメナが増加したことであると結論した。
著者
奥田 圭 關 義和 小金澤 正昭
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.236-242, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
50
被引用文献数
11 5

シカの高密度化に伴う植生改変による鳥類群集への影響を明らかにするため, 栃木県奥日光のシカ密度の異なる3地域 (各地域8地点) において植生構造と鳥類群集の種組成の関係を調べた。シカ密度と植生条件との関係を調べた結果, シカ密度と生木本数, 胸高断面積合計, 樹種数との間に負の相関がみられ, シカの高密度化により植生構造が改変していることが示唆された。次に, TWINSPANと判別分析を用い, 鳥類群集の種組成の変化要因を調べた。TWINSPANの結果, 調査地点はグループA (シカ高密度地点) とB (シカ低密度地点) に, 鳥類はグループ1∼4に分類された。開放的な環境を選好する鳥種は主にグループ1に属し, グループAに多く出現した。低木層を採食場所とする鳥種は主にグループ4に属し, グループBに多く出現した。樹洞営巣性の鳥種は主にグループ2と3に属し, グループAとBに同程度出現した。また, 判別分析の結果, グループAとBの違いを最もよく判別する植生条件は, 低木層と亜高木層の生木本数と, 低木層の樹種数であった。以上から, 本調査地の鳥類群集の種組成が変化した主要因は, シカの高密度化に伴う植生改変であると結論した。
著者
關 義和
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.21-25, 2022 (Released:2022-06-24)
参考文献数
36

This study aimed to investigate the distribution of Japanese serows (Capricornis crispus) in Hakone, Kanagawa, Japan, which has not been confirmed since the Meiji era. A total of 15 automatic cameras were set up from October 2017 to September 2020 (12047.6 camera-days) in the Hakone Nature Forest of Tamagawa University. Japanese serows were observed on four occasions (October 31, 2017, and June 3, June 4, and September 14, 2019) at two sites, providing the first reliable record of the presence of serows in Hakone. Although the previously confirmed areas inhabited by Japanese serows were at a distance > 10 km from the present study area, the recorded distance was considerably larger than the diameter of the home ranges (which was assumed to be circular in shape) and the dispersal distances of Japanese serows. The findings of this study suggest that Japanese serows may be continuously distributed from the study area to the previously confirmed inhabited areas.
著者
關 義和 鈴木 貴大
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.247-252, 2018 (Released:2019-01-30)
参考文献数
14

ツキノワグマUrsus thibetanusは,神奈川県レッドリストにおいて絶滅危惧I類に指定されている.本研究では,これまで体系的な調査が行われてこなかった神奈川県南西部におけるツキノワグマの生息状況を明らかにするために,箱根町と湯河原町の境界周辺に位置する玉川大学箱根自然観察林において自動撮影カメラを用いた調査(2,122カメラ日)を実施した.2017年の5月から10月にかけて15地点に自動撮影カメラを設置した結果,6地点でツキノワグマが延べ10回撮影された(撮影頻度0.47/100カメラ日).1945年以降に,箱根町南部や湯河原町においてツキノワグマの確実な生息が確認されたのは本研究が初めてである.撮影月についてみると,5月と8月を除く複数月で撮影された.また,体の特徴から個体識別を行った結果,少なくとも3個体が本地域に生息していたと推測された.これらの結果から,本地域にツキノワグマが恒常的に生息している可能性は高いと考えられる.今後,神奈川県のツキノワグマの保護管理を適切に実施していくためには,箱根町から湯河原町にかけても保護管理の対象とし,個体数や分布に関する継続的なモニタリングを実施していくことが求められる.
著者
關 義和
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S1-S5, 2009 (Released:2009-02-16)
参考文献数
10

カルガモの季節移動について調べるために,山梨県の大野調整池とその近隣河川において,年間を通してカルガモの個体数調査を行なった.調整池では,5月から 9月までの繁殖期にはカルガモは観察されたが,10月から翌年 4月までの越冬期にはほとんど観察されなかった.一方,河川では,カルガモの個体数は増減をくり返していたが,調整池ほどの越冬期の個体数の顕著な減少はみられなかった.調整池では,マガモやその他の越冬カモ類が多数観察されたが,河川ではほとんど観察されなかった.先行研究によりカルガモとマガモのあいだには著しい社会的干渉があることが報告されている.したがって,カルガモの越冬期の分布を決める要因として,その他のカモ類,とくにマガモなどの飛来個体数が関与している可能性が考えられる.
著者
菅原 寛 關 義和
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.41-50, 2015-11-01 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

We assessed the ability of farmers to accurately identify mammals causing crop damage, by interviewing 134 farmers in Nagano Prefecture, Japan. The farmers identified crop damage caused by Japanese macaque (Macaca fuscata) based on sightings; that caused by sika deer (Cervus nippon) and wild boars (Sus scrofa) based on footprints and/or feeding signs; and that caused by masked palm civets (Paguma larvata), raccoon dogs (Nyctereutes procyonoides), and Japanese badgers (Meles anakuma) based on feeding signs. The result showed a high accuracy of Japanese macaque identification causing crop damage; however, the accuracy of footprint identification for sika deer and wild boars was low. Furthermore, many farmers confused the footprints of three mammals with one another-the sika deer, wild boars, and Japanese serows (Capricornis crispus). Thus, reports regarding the identification of mammals that cause crop damage by farmers need to be carefully reviewed. Generalized Linear Mixed Model analysis indicated that hunting and effective communication with hunters positively affected the accuracy of the answers. This suggests that a platform to communicate with hunters or experts can be effectively offered to farmers to enhance their knowledge and ability to accurately identify mammals that cause crop damage.
著者
關 義和 小金澤 正昭
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.69-76, 2010

ハクビシンは、日本では外来種と考えられているが、行動圏に関する研究はほとんど行なわれていない。中国の飼育下のハクビシンは、冬期に程度の浅い冬眠をすることが報告されている。本研究では、冬期の極端な行動圏の減少が野外個体で初めて観察されたので、その結果について報告する。高標高域に位置する栃木県奥日光地域において、2007年7月から2008年6月にかけて、ハクビシンのオス1頭をラジオテレメトリー法により追跡した。行動圏サイズは、夏期と秋期には約1,830haで、冬期には5ha、春期には479haであった。また、冬期における1日の移動距離と1時間毎の平均移動距離は、他の季節に比べて低い値を示した。これらの結果は、追跡個体の冬期における活動性の低下を示唆する。したがって、本種の管理を行っていく上では、冬期の捕獲努力量は他の季節よりも強化しなければ十分な捕獲成績が得られない可能性がある。