著者
浅利 裕伸 池田 敬 岩崎 亘典 岩下 明生 江成 はるか 江成 広斗 奥田 加奈 加藤 卓也 小池 伸介 小寺 祐二 小林 喬子 佐々木 浩 姜 兆文 杉浦 義文 關 義和 竹内 正彦 立木 靖之 田中 浩 辻 大和 中西 希 平田 滋樹 藤井 猛 村上 隆広 山﨑 文晶 山田 雄作 亘 悠哉
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2015-03-25

希少種の保護や過増加した在来種・外来種の対策など、野生動物をめぐるさまざまな課題に応えるフィールド調査法。各動物の食性や個体数に関する既存研究をまとめ、地図の読み方やフィールド機材の使い方、糞や足跡をはじめとする動物の痕跡の識別法を具体的に示し、得られた情報から食性や個体数、生息地を評価する方法を体系的に解説する。
著者
浅利 裕伸 木元 侑菜
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.67-71, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
15

鹿児島県奄美大島の学校校舎内においてコウモリ類の目撃情報があったことから,2017年10月に捕獲調査を行ない,雄2個体のコウモリ類を捕獲した.外部形態の特徴から,奄美大島においてこれまで記録がない種であると判断した.捕獲個体の外部形態は日本国内に生息する種のうち,クロオオアブラコウモリに類似していたものの,種を同定することはできなかった.放獣した個体の音声はFM-QCF型を示し,ピーク周波数は平均35.35 kHzであった.奄美大島南西部の海岸で飛翔する種不明のコウモリ類が発する音声も同様のピーク周波数であったため,捕獲個体と飛翔個体が同一種であることが示唆された.
著者
浅利 裕伸 洲鎌 有里
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.30-33, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
14

帯広広尾自動車道建設による野生動物の生息地分断化を解消するため,野生動物用オーバーパスが設置された.この効果を検証するため,自動撮影カメラを用いて2017年5月~11月に利用種のモニタリングを実施した.野生動物用オーバーパス周辺の森林に生息する種とオーバーパスの利用種に大きな違いはなく,撮影頻度も有意に異ならなかったことから,周辺に生息する哺乳類が構造物を十分に認識および利用していることが明らかになった.また,ニホンジカとアカギツネでは継続的に多数の利用がみられた.特にニホンジカでは,定着個体による利用のほか,季節移動による利用もみられた.これらのことから,帯広広尾自動車道の野生動物用オーバーパスは,中大型哺乳類にとっては有効に機能していると考えられた.
著者
浅利 裕伸 柳川 久 安藤 元一
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.11-16, 2014-03-28 (Released:2017-04-26)
参考文献数
32

日本産樹上性リス類による森林被害に関する論文として,論文検索サイトによりキタリス(Sciurus vulgaris)およびタイリクモモンガ(Pteromys volans)各1編,ニホンリス(S. lis)3編,ムササビ(Petaurista leucogenys)9編の4種14編を収集した.ムササビによるスギ(Cryptomeria japonica)やヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の被害は餌植物の不足によるもの,ニホンリスによるキノコ類のほだ木の剥皮害は材内幼虫を捕食するためと考えられた.シカやネズミ類などと比べて樹上性リス類による被害は小さく,むしろ樹上性リス類の健全な生息環境を維持するための休息・繁殖場所となる樹洞の維持,通年多様な食物を提供する針広混交林の創出,移動を妨げない連続した森林配置などの樹上性リス類に適した森林管理が,生態系の改善に向けて重要な課題と考えられる.
著者
浅利 裕伸
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.53-57, 2015 (Released:2015-07-04)
参考文献数
18

これまでのタイリクモモンガ(Pteromys volans)の研究では,個体の捕獲に巣箱が活用されてきたが,本種は厳冬期に巣箱を利用しないため通年の調査が困難であった.そこで,通年にわたって個体データを収集するための効果的な捕獲方法の確立を目的として,新たな樹洞トラップを開発し,タイリクモモンガが使用している樹洞の入り口にこれを設置した.トラップ内にはプラスティック板の返しを装着することにより,一度入ると樹洞に戻ることができない工夫を施した.北海道帯広市の樹林において,2006年1月~2008年4月に38個体の捕獲を試みた結果,33個体を捕獲することに成功した.残りの5個体は同居するグループの一部の個体であり,厳冬期に出巣しなかったために捕獲ができなかった.厳冬期はタイリクモモンガの活動が低下し,活動時間も不規則になることから,樹洞トラップを用いても樹洞内の全個体を捕獲することは困難であると考えられる.しかし,確認された個体の7割以上を捕獲することが可能であり,それ以外の季節では幼獣を含むすべての個体を捕獲することができたため,巣箱を用いた捕獲と比べて定期的な個体データの収集に,より有効な手法であると考えられる.
著者
浅利 裕伸 柳川 久 安藤 元一
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.218-222, 2014-12-15

われわれは巣資源が限られた狭小森林において,タイリクモモンガ(Pteromys volans)の巣場所を選択の行動を理解するため,7個体によって利用された巣と利用可能な巣の巣間距離を比較した。雄と雌の距離は有意に異ならなかった。これは,すべての個体が狭小森林内にある巣だけを利用し,近隣のどの巣も利用しなかったためかもしれない。タイリクモモンガが利用可能な巣と比べて有意に近い距離にある巣を非積雪期に利用したため,われわれの結果は夏〜秋での巣場所選択性を示した。一方,積雪期には,利用された巣間の距離と利用可能な巣間の距離に有意な差はなかった。これは,タイリクモモンガが非積雪期に近くの利用可能な巣を選択する一方で,積雪期には数少ない良質の巣を利用するために遠くまで移動したためであると示唆された。特に,タイリクモモンガの保全にあたっては,冬季の巣を含む複数の巣の存在が森林内に不可欠である。