著者
又坂 常人 西村 直子 野地 孝一
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1今年度は昨年度の研究成果をふまえ、理論的研究を中心に遂行し、あわせてそれを補強するために全国550余の自治体首長にアンケート調査を行った。第3セクターの運営やそれに対する統制、行政的評価の実態については、設立の理由は第3セクターの事業目的によって様々であること、経済社会状況の変化を反映して第3セクター形態による事業展開の分野がハードを中心とするものからソフト面を中心とするものへと変化しつつあること、第3セクターの事業活動に対する評価は当該事業分野の性格によって様々であり一様には語れないこと、第3セクターに対する様々な統制一議会や首長部局による監視・監督等ははなはだ不十分な状態にあること、その他多くの新しい知見を得ることができた。第3セクターに対する法学的行政学的研究を通じて、従来の「行政主体論」的理論枠組にかわる新しい認識枠組を設定する必要性が確認され、また、従来の行政処分や行政指導を念頭に置いた「権利救済」を中心とする伝統的な行政統制手法は、第3セクターに対する統制論としては極めて不十分であり、立法論を視野にいれた枠組形成の努力が必要であること、また、現実的な統制としては、現行制度においては議会を通した統制が有効であり、それを活性化するために必要な方策が研究された。経済学的研究を通じて、第3セクターの政策効果を経済学的に解明する場合は、官民の出資比率が重要であること、その他の多くの新しい知見が得られた。
著者
前田 惠利 中本 幸子 池田 匡 西村 直子 芦立 典子 平松 喜美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_34-2_41, 2011-06-20 (Released:2011-07-15)
参考文献数
32

目的:高齢の在宅療養者を対象に,経口摂取群者と非経口摂取群者の口腔内衛生状態について検討した.方法:在宅療養中の65歳以上の高齢者56名を対象として,滅菌綿棒による口腔内擦掻により口腔内微生物を採取し,Staphylococcus aureus,Pseudomonas aeruginosaおよびCandida albicansを定量的に測定した.結果:P. aeruginosaは経口摂取者からは全く検出されなかったが,非経口摂取者において検出率(64.7%),総菌数(中央値2.0×10 CFUs/ml,範囲0~1.5×104 CFUs/ml)ともに有意に多かった(p<.001).S. aureus,C. albicansは検出率,総菌数ともにいずれも有意差はみられなかった.結論:高齢の在宅療養者においては,経口摂取者に比較して非経口摂取者の口腔内の衛生状態はより不良で,肺炎のハイリスク群であることが示唆された.
著者
西村 直子 西條 辰義
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,理論・実験の両側面から,自主流通米価格形成センター方式の入札市場における価格形成メカニズムの意味を解明し,コメの実勢需給をより反映できる代替市場制度を提案することを目指すものである。コメ市場は銘柄米ごとに,1人の売り手(農協)に多数の買い手(卸)が入札する,売り手独占体制である。また,買手と売り手ともに市場の常連である。参加者は互いの状況に関する豊富な情報を持っていると考えてよいため,オークション分析ではあまり用いられない完備情報ゲームとして分析するのが適当である。理論研究においては,コメ入札市場のゲームモデルを構築し,その均衡の特性を分析した結果,コメ価格設定ルールと上記情報環境の特殊性により,売り手独占市場にも関わらず,独占価格や競争均衡価格を含む多くのナッシュ均衡が存在することがわかった。さらに,その複数均衡から精緻化を経て抽出した均衡では,競争均衡に近い配分のみが達成されることがわかった。加えて,実際のコメ市場では,売り手の指値に上限を与えるルールがあるが,これはむしろ,売り手が将来の需要変化を懸念する場合には,指値設定を高止まりさせる誘引を与えることがわかった。以上の理論分析を基にデザインした実験を実施した結果,上記理論に整合的なデータが観察された。したがって,コメ入札市場現場では約定価格下落が懸念されているが,むしろこれは適正価格(=競争均衡価格)への収斂過程における下落傾向である可能性が強いことが判断できる。一方コメ入札市場との比較対象として第二価格入札市場を分析したが,完備情報下では通常の入札行動とは異なる行動が生じることに気づいた。これは参加者心理的な側面に由来するものと思われる。関連して,第二価格入札と競りとの同値性にも疑問が生じた。この点については今後の研究課題として継続していく予定である。2005年,実験経済学の世界組織ESAの公認を受けた初のコンファレンスを主催した。
著者
西村 直子
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1155-1159, 2009-03-25

SomaはRgveda以来,月と同一視されてきた.Satapatha-Brahmanaにおいて,月の満ち欠けは神々の食物たるSomaが天界と地上との間を循環しているという理論と関連づけられる.このSoma循環理論は,「samnayyaを献供する場合の新月祭のupavasathaをいつ行うべきか」という議論の中で整備されてゆく.月が欠けて見えなくなるという現象をSomaが朔の夜に地上の草や水に宿っていると解釈し,そのSomaを牛達に集めさせて牛乳製品として献供することによりSomaは再び天界に送られ,新月として現れる.この解釈に基づき,SB,I6,4((1))では朔の夜が明けた日中にupavasathaを行って牛達にSomaを回収させるという新しい方法を提唱する.しかし,この方法は貫徹しなかったものと思われる.この問題を扱う(1)とXI 1,4((2))及びXI 1,5((3))の3ヵ所に亘って議論を検討すると,最終的には(1)の主張を覆し,従来と同じ日程で,即ち朔の夜に先立つ日中にupavasathaを行っていたことが明らかになる.その際,Somaが地上に降りてくる時期を,(1)では「朔の夜」としていたのに対し,(3)では「月が欠けてゆく半月間」に改作している.SB第I巻と第XI巻とを比較すると,後者は前者よりも新しい内容を含んでいると考えられる.更に,(2)に対応するKanva派の伝承はSBKの第III巻に収録されて(1)の平行箇所(SBK II6,2)と時代的に近接していたことを窺わせる.一方,(3)は曲SBK XIII1,2と対応し,(1)及び(2)より後に編集された部分であることがわかる.つまり,Soma循環理論は(1)→(2)→(3)の3段階を経て整備されていったことが推定されるのである.
著者
西村 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,ヤジュルヴェーダサンヒター冒頭のマントラ(祭詞,祝詞)集成とそのブラーフマナ(マントラの解釈,意義付けと神学議論)のローマ字テキスト作成,翻訳と注解,並びに分析を行い,ヴェーダ祭式における穀物祭の本祭前日に成される準備儀礼について全容を解明することを目的として出発した。内容は「放牧」「敷き草刈り」「搾乳と酸乳製造」という3つの表題に分けられ,研究全体は「総論」「テキスト」「翻訳」「各論」の4部構成を取る。本年度は「搾乳と酸乳製造」の「各論」後半部分に着手し,酸乳製造の由来を伝えるタイッティリーヤサンヒターII5,シャタパタブラーフマナI6,4と,他派に対応のないマントラを集めたタイッティリーヤブラーフマナIII7,4以上の文献箇所のテキスト作成と翻訳・注解を行った。これらの箇所は文献成立史と祭式の整備過程を解明する重要な典拠となる。しかし,それ故に一つの単語の意味を確定するのにも細心の注意を払わねばならない。また,各文献におけるマントラの扱いに関しては,後代の儀規文献(シュラウタスートラ)への展開の跡付けにもつながる問題を孕んでいる。中でも,先に挙げたタイッティリーヤブラーフマナIII7,4のマントラの殆どは,タイッティリーヤ派から分派した一学派であるアーパスタンバ派のシュラウタスートラにしか採用されていない。当該箇所を,ヴェーダ文献全体の歴史という大きな枠組みから検討し直す必要のあることも明らかになった。本研究を通じ,タイッティリーヤ派とヴァージャサネーイン派とがヴェーダ祭式を大きく転換させる原動力となったことが更に明らかとなった。それは,両派より古層にあるマイトラーヤニーヤ派,カタ派の議論が前提となっていることは明らかである。その過程の解明には,ヤジュルヴェータ学派全体のマントラ集とヴラーフマナとの精査が必要不可欠である。
著者
西村 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,ヤジュルヴェーダのマントラ(ヤジュス:個々の行作に伴って唱える祭詞)と,これに対するブラーフマナ(マントラの解釈,意義付けと神学的議論)の翻訳・精査を通じ,古代インドの祭式文献及び祭式の展開を最古層から解明することを目的としている。特に「搾乳と酸乳製造」に関わる諸問題を精査・解明し,穀物祭の準備儀礼に留まらずヴェーダ祭式全体との関連の中で解明することを目指した。本年度は,インドラによるヴリトラ殺しの後日譚を中心として研究を進めた。この神話は,ヤジュルヴェーダ文献の古層以来,特別な新月祭の供物であるサーンナーィヤと結びつけて議論が重ねられてきた。その展開を辿り,ヴァージャサネーイン派のシャタパタブラーフマナに至って,ソーマの循環理論の整備を促したことを指摘した。サーンナーィヤは,酸乳と熱した牛乳とを献供の直前に混ぜ合わせたものである。本祭前日(ウパヴァサタの日)の晩に搾乳した牛乳を酸乳にし,本祭当日の朝に搾乳した牛乳を加熱する。従来は朔の夜に先立つ日中にウパヴァサタを行っていたものと思われるが,ヴァージャサネーイン派は,月の満ち欠けと神々の食物たるソーマが循環するという観念とを連動させ,新月祭のウパヴァサタを朔の夜が明けた日中に行うべきであると主張する。地上の草や水に宿ったソーマを牛達に回収させ,牛乳として手に入れ,献供することによって月を天界に返すことになる。しかし,この新たな方法は貫徹せず,ヴァージャサネーイン派の人々も朔の夜に先立つ日中にウパヴァサタを行っていたことが贖罪法の議論から推測される。その背後にはソーマの循環理論の整備が関与しており,後の五火説を準備する基盤の一つとなっていたことが窺われる。
著者
西村 直史 大田 直樹 櫻井 祐子 岩崎 敦 横尾 真
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

ある程度規模の大きい学会では,様々な制約条件や価値基準を満足する会議プログラムを手作業で作成することは困難であり,大きな労力が伴う.そのため著者らは,制約充足/最適化のテクニックを用いた会議プログラムの自動生成ツールを開発した.本論文では,開発したツールを用いて実際の2008年度人工知能学会全国大会のプログラムを作成した結果と,大会終了後に行なったツールの改良について報告する.