著者
谷口 真人
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.261-267, 1995
被引用文献数
10

琵琶湖野洲川河口あやめ浜沖において,周辺地下水から琵琶湖へ漏出する地下水量の連続測定を,自記地下水漏出量計を用いて行った。観測期間は1994年3月から1994年10月までであり,合計17,747個の地下水漏出量データと,湖水位及び湖底・周辺地下水の水理水頭のデータを得た。降水量の減少に伴う湖底地下水の動水勾配の低下により,1994年4月から1994年8月にかけて,地下水漏出量の大幅な減少が確認された。また,地下水漏出量と湖底地下水の動水勾配の長期測定により,観測地点の湖底付近の地下水帯水層の透水係数が9.0×10<SUP>-4</SUP>cm・sec<SUP>-1</SUP>程度であることが推定された。今回得られた地下水漏出量および1990年・1991年に得られた漏出量とそれぞれの時期の雨量との関係から,琵琶湖への地下水漏出量は,流域への入力である降水量に大きく依存していることが明らかになった。
著者
日暮 悠樹 谷口 真吾 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.234, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

【研究目的】亜熱帯広葉樹林の天然下種更新地での微地形の違いが更新実生の動態に及ぼす影響を4成長期間、継続的に調査した。【方法】調査地は、沖縄島北部の70年生常緑広葉樹林(2011年10月に4.8haを皆伐)と伐採地に隣接する残存林である。調査は、残存林内の林床と伐採面の微地形(凹、凸)ごとの林床に実生調査プロット(凹斜面16㎡、凸斜面16㎡、林内12㎡)を設置し、2012年から2015年までの成長期ごとに林床に発生した実生をナンバーリングした。【結果と考察】更新実生の凹斜面での出現種数は成長期ごとに増加し、遷移後期種の定着が年々増加した。凹斜面の成長期ごとの出現本数は凸斜面に比べて1.3から1.9倍多かった。一方、更新実生の凸斜面での出現種数は4成長期とも凹斜面よりも多かった。凸斜面の出現本数は4成長期とも凹斜面、林内よりも少なかった。凹、凸斜面における更新実生の平均樹高は成長期ごとに常に凹斜面が凸斜面よりも高かった。また、凸斜面は凹斜面に比べて、更新実生の成長が遅い傾向であった。この結果、凹斜面は凸斜面に比べ、遷移後期種が新規に加入、定着後に成長しやすい環境であると推察された。
著者
谷口 真吾 日暮 悠樹 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.524, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

【研究目的】林冠が閉鎖した亜熱帯常緑広葉樹林の林床における天然下種更新(前更更新)の実態把握と前更更新由来の実生の動態を調査し、林分の後継樹としての消失種、加入種、生存種の生活史特性を考察した。【方法】調査林分は4.8haの皆伐地に隣接する70年生常緑広葉樹林である。伐採地の林縁から林内に直線距離で30m以上入った斜面上部と中腹部の林内に10×10mの毎木調査プロットを3区設置し上層木の胸高直径、樹高の計測と個体識別を行った。実生調査プロットは毎木調査プロットに近隣する林床に1×1mのプロットを12㎡設置した。皆伐から2成長期経過後の2013年から2015年まで成長期ごとに林床に生育する実生をナンバーリングし、加入種と消失種の動態と定着実生の成長量の変化を調査した。【結果と考察】3成長期とも加入種、消失種はそれぞれ10種以下で変動した。上層木の構成種と林内に更新した前更更新実生の種組成は類似度が高かった。新規の加入種は被食散布型の種子をもつ樹種が多かった。台風攪乱による林冠層の葉量の低下に起因する林内の光環境や林床の水分状態の変化が加入種、消失種の動態に影響を及ぼすことが推察された。
著者
谷口 真人
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

地下温暖化が桜の開花にどのような影響を与えるかを明らかにするために、開花の変化トレンドと、地温の経年変化トレンドを明らかにした。桜の開花は日本の103箇所の平均で過去50年に5日開花が早まっており、特に大都市の東京、大阪、名古屋でその開花早期化の傾向は強く、都市化によるヒートアイランド現象が大きな要因であることが明らかになった。桜の開花変化トレンドに最も相関性が高いのは、深度50cmの地温であることが明らかになった。またその開花の違いにおよぼす土壌水分および土壌水質の違いについても調査した。
著者
田原 大輔 杉本 亮 富永 修 谷口 真人
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

小浜湾への地下水湧出量を222Rn・塩分の収支モデルから推定したところ、地下水は、全淡水流入量の4~44%を占めており、河川流量の低下する夏季にその割合が高くなる傾向にあった。また、地下水から供給される溶存無機態の窒素、リン、ケイ素は、全陸水由来の栄養塩輸送量の平均で39%、58%、37%を占めていた。特に小浜湾の一次生産はリン制限下にあるため、地下水によるリン供給は小浜湾の生物生産において重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
谷口 真吾
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亜熱帯地域の沖縄県を中心とする沖縄島嶼域では、森林のもつ公益的機能の高度発揮のため計27種の有用樹を造林樹種として指定している。沖縄県はこれらの有用樹種を用いた人工造林や樹下植栽、育成天然林施業など多種多様な森林造成を積極的に推進している。しかしながら、指定樹種には開花結実、受粉・交配様式などの繁殖特性が未解明な樹種が大半を占めている。亜熱帯域の多様な樹種から構成される森林を維持し、種子の供給と確実な更新を安定的に促すためには、構成樹種ごとに個々の繁殖特性を主体とする生活史を解明することが急務である。そこで、本研究課題では亜熱帯性樹木の繁殖特性を明らかにするため、有用樹4種の開花フェノロジー、送受粉機構、結実機構について研究を行った。本研究で得られた知見は、有用樹の効率的な種子生産に寄与する成果であり、沖縄島嶼域の森林保全あるいは再生、さらには新規造成のための地元産種子による苗木生産、あるいは天然更新のための種子確保に不可欠となる種子生産技術の基礎的情報の体系化に極めて重要な成果を提供するものである。