著者
赤尾 勝一郎 横山 正 米山 忠克
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.341-348, 1994-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
40

微生物と植物は互いに言葉 (シグナル) の交換によって対話 (コミニュケーション) しているらしいということが以前から予想されていた。最近, 窒素固定微生物 (根粒菌) とマメ科植物との共生関係の成立過程で行われている対話の内容が解明されつつあり, この対話を通じてイネ, ムギなどの非マメ科植物にも窒素固定能を賦与させることの可能性について議論されるようになったので, これらについて解説していただいた。
著者
横山 明敏 佐伯 雄一 柴田 聡子 長友 由隆 赤尾 勝一郎
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.475-478, 2004-08-05
参考文献数
9
被引用文献数
2

宮崎県のハウス抑制キュウリ栽培の圃場において、本来ならば側枝となるべき側芽の伸長が抑制されたり、伸長しても途中で枯死する障害が多発した。その原因を究明するために、現地圃場の土壌調査と葉分析の結果から、亜鉛と銅の過剰障害による可能性が推定されたので、水耕法により検証した結果、亜鉛の過剰吸収が原因である可能性が強く示唆された。
著者
赤尾 勝一郎 佐伯 雄一
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

植物体内に生息する窒素固定細菌は窒素固定エンドファイトと呼ばれている。窒素固定する植物は根粒菌の共生するマメ科植物とフランキアの共生する十数種の植物に限られている。しかし、ブラジルにおいて、20数年前、サトウキビの中には根粒構造を伴わない共生窒素固定系の存在が示された。窒素固定エンドファイトの生息するサトウキビの中には60〜70%の窒素固定寄与率を示す場合のあることが報告された。その寄与率はマメ科植物-根粒菌の共生系に匹敵する。また、窒素固定エンドファイトは、サトウキビの他にイネ、ムギ、ソルガムといったイネ科の主要作物、バナナ、パイナップル、チャなど、科を越える多くの植物種に内生することも明らかにされた。このことは、マメ科以外の作物にも窒素固定機能を付与することの可能性を示した。しかし、これを実現させるためには幾つかの解決すべき問題点がある。その中で特に重要なことは、有用菌の選抜と、植物体内への定着と増殖である。増殖と定着の指標には窒素固定量の把握が必須であり、本研究では、この3点を重点的に検討した。研究期間は平成16年から19年までの4年間であり、前半では、GFP標識のHerbaspirillum sp.の接種試験、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌の同定と窒素固定活性の測定と、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌へのGFPによる標識を試みた。後半には、GFP標識菌を利用した接種法の検討と、一定の生育期間を通じて窒素固定量を推定する方法を検討した。その結果、サトウキビから12菌株、サツマイモから27菌株の窒素固定細菌を単離した。供したHerbaspirillum sp.、Enterobacter sp.、Pantoea sp.に関する宿主特異性は認められなかったが、菌と植物種や品種との間には親和性の強弱が認められた。また、接種法としてはレオナルドジャーに植えた幼植物の地下部に10^8cells/mlの高濃度が高い効果を示したが、実用技術としては萌芽茎への接種を検討すべきであるとの結論を得た。
著者
赤尾 勝一郎 久保田 収治 林田 至人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-38, 1978
被引用文献数
6 13

春季新生器官の形成に果す樹体内貯蔵窒素としての秋肥施用窒素の役割を明らかにするために, ポット植11年生結実樹2本を供試し, 1974年11月18日もしくは1975年3月1日に <sup>15</sup>N (10atom%) 標識の硝酸カルシウに (Nとして11.4g) を施用したのち, 春葉の展葉のほぼ完了した6月中旬まで樹体内における標識窒素の追跡を行ない, 次のような結果を得た.<br>1. 収穫前21日に与えた秋肥窒素の収穫時の結果枝葉, 未結果枝葉, 果皮あるいは果肉中の全窒素に占める割合は 11.5%, 11.3%, 2.6%, 3.3% であり, 果実に流入する秋肥窒素の量は葉に比べて, かなり低いといえた.<br>2. 掘り上げ解体時までの施用窒素の吸収率は秋肥41.4%, 春肥 25.1% であった.<br>3. 掘り上げ解体時における <sup>15</sup>N 寄与率から春季新生器官に含まれる全窒素量のうち, 約 28% は秋肥窒素に由来し, 約 17% は春肥窒素に由来したものであることが明らかとなった.<br>4. 春季新生器官の形成に供せられた窒素のうち, 約30% は冬期間1年葉に貯えられていたものと推定された.<br>5. 2月26日から5月15日までの間, 1年葉中の全窒素含有率はほとんど変化しないのに対して, <sup>15</sup>N 濃度は確実に上昇しており, このことは冬期間, 1年葉以外の器官に貯えられていた窒素が春季に1年葉を経由して転流したためと理解され, その量は春季新生器官中に含まれる全窒素量の約 25% に相当した.
著者
佐伯 雄一 中村 扶沙恵 三重野 愛 下入佐 克志 赤尾 勝一郎 杉本 安寛 長友 由隆
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.41-48, 2004-03-30
被引用文献数
1

本研究は芋製焼酎粕の農地還元による窒素負荷の実体の調査と発生する糸状菌の同定を目的として,宮崎大学農学部圃場で調査を行った.試験に用いた焼酎粕の現物当たりの組成はpH3.9,水分94.4%,全炭素2.44%,全窒素0.17%,C/N比,14.33で,液体部分の成分は全炭素0.90%,全窒素0.07%,C/N比12.54であった.施用量は約23kg/m^2(23t/10a),窒素換算39g/m^2(39kg/10a)で試験を行った.この施用量は窒素換算で,宮崎県で行われてきた焼酎粕の農地還元量の約2倍の窒素量に相当した.焼酎粕施用後に発生する糸状菌は麹菌(Aspergillus kawachi)とは明らかに異なっていた.栽培試験に用いたトウモロコシの窒素含有率は施用区で1.5%,無施用区で0.8%,窒素利用率は21.2%であった.土壌pHは試験期間中,施用区,無施用区,に同様な推移を示した.硝酸態窒素とECは同様な推移を示し,施用後14日後にそれぞれ表土で極大値を示し,硝酸態窒素が8.33mg/100g乾土,ECが0.33dS/mであった.その後,徐々に減少していく傾向が認められたが,試験期間の終わりにおいても施用区で無施用区よりも高い値を示し,焼酎粕施用による肥効が長期間にわたることが示唆された.硝酸態窒素の下層への浸透は梅雨の期間にごく低濃度で認められたが,pH,ECの下層土での差異は認められなかった.したがって;焼酎粕の農地還元は,規制量で施用する限り,環境への負荷の小さい土壌改良資材と肥効成分の高い有機質が混合された資材として有効に活用することが可能であり,物質循環の観点からも望ましいものと考えられる.