著者
清水 厚志
出版者
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会
雑誌
JSBi Bioinformatics Review (ISSN:24357022)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-19, 2022 (Released:2022-06-02)
参考文献数
20

2003年4月14日にヒトゲノム計画完了宣言がなされてから約20年後の2022年4月1日にThe Telomere-to-Telomere (T2T) consortium によりヒトゲノム「完全」解読論文が発表された[1]。本稿では技術的限界まで精確なヒトゲノム配列を追い求めたヒトゲノム計画の国際チームがなぜ当時ヒトゲノム配列を完全解読することができなかったか、そして近年開発された様々な技術を駆使してどのようにT2T consortiumがヒトゲノム完全解読を達成したかについて概説する。
著者
中道 治久 清水 厚 下村 誠 Syarifuddin Magfira 井口 正人
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1.はじめに 噴煙や火山灰の拡散範囲の把握にリモートセンシング技術が活用されている.例えば,桜島噴火では国交省現業レーダー(XRAIN)で噴煙が把握され(真木・他,2015), GNSSの搬送波位相データから噴煙高度推定が行われている(Ohta and Iguchi, 2015).噴煙高度10kmを超えるような噴火ではCAPILSO衛星搭載ライダーにより噴煙が把握され(Winker et al., 2012),地上のライダーネットワーク(例えば,EARLINET)にて国を超えての火山灰の広域拡散が把握されている(Ansmann et al., 2010).最近では噴火を対象に常時リモートセンシング観測が桜島を中心に行われており,昨年レーダーによる桜島と新燃岳の噴煙の観測結果を報告した(中道・他,2018).本講演では,2018年6月16日桜島南岳噴火のレーダーとライダーによる観測結果の比較と,2018年12月からの口永良部島噴火のレーダー観測結果を報告する.2.南九州の火山近傍のレーダー観測と桜島のライダー観測 エアロゾル観測によく用いられるミー散乱ライダー(以後,ライダー)は,レーザーを鉛直上向きに照射して対象物からの後方散乱光を観測する機器である.京都大学防災研究所は2014年11月末に2台のライダーを桜島島内に設置してから連続観測を実施している.また,南九州の主要な火山の近傍にXバンドマルチパラメータレーダー(以後,レーダー)を2017年8月に設置し,連続観測を実施している(中道・他,2018).現在,桜島および口永良部島についてはセクタRHIスキャンにてレーダー観測をしている.なお,桜島火山観測所にはライダーとレーダーの両方が設置されている.3.2018年6月18日桜島南岳噴火時の噴煙のレーダーとライダーの観測結果の比較 南岳山頂火口にて2018年6月16日午前7時19分に噴火が発生し,噴煙高度4700mと報告されている(気象庁HPを参照).この噴火では,火砕流が火口から南西方向に1.3 km流下した.映像から噴煙柱の下部から上部が西に風に流されてシフトしており,同時に火砕流の発生が見て取れた.レーダー反射強度分布から,噴火開始後1分内に噴煙は3,300mに達し,噴火開始後3分で5,000mに到達したことがわかった.また,同時に噴煙柱が西方向(観測所に近づく方向)へ1kmシフトしているのが確認できた.噴火開始5分後に火口直上から高度3,000mにかけて鉛直のレーダー反射強度の高まりが再度確認でき,これは2度目の噴火の噴煙に対応している.なお,噴火が短時間の間に2回あったのはディスドロメータ観測においても確認されている.ライダー観測においても噴火開始3分後に噴煙柱の西方向への移動に対応した変化が観測されており,レーザー視線方向で4.7 kmの距離に顕著な散乱ピークが見られ,レーダー反射強度の高まりと対応がよい.噴火開始8分後にはレーダー反射強度から噴煙が観測所から距離4kmのところにあると認識できたが,ライダーでは観測所から距離3.3 kmに散乱ピークが見られた.噴火開始から15分後ではレーダー反射強度に噴煙に対応する強度変化は見られなかったが,ライダーでは距離2km未満にて散乱強度の高まりが有意にあり,その高まりは時間が経過するにしたがって,距離が縮まり距離1km程度になり,20分以上継続して存在した.レーダーでは認識できないような,より微細な粒子が大気中に存在してもライダーでは検知可能であることを反映しており,火山灰が拡散して希薄になっているが,風に流されて移動していることが明らかになった.4.2018年12月以降の口永良部島噴火時の噴煙のレーダー観測結果 2018年12月18日,2019年1月17日,1月29日の噴火の噴煙に対応したレーダー反射強度の高まりを確認できた.12月28日の噴火の1分後にはレーダー反射強度から噴煙は3,000 mに上昇し,噴火開始3分後には最高噴煙高度5,000mに達したことがわかった.1月17日の噴火では,レーダー反射強度から噴火開始2分後には最高噴煙高度4,000 mに達したことがわかった.1月29日の噴火では,レーダー反射強度から噴火開始2分後に噴煙高度3,000 mに達し,5分後に4,000mに達したが,それ以上は上がらなかった.
著者
蓮沼 英樹 市瀬 孝道 上田 佳代 小田嶋 博 金谷 久美子 清水 厚 高見 昭憲 竹内 文乃 西脇 祐司 渡部 仁成 橋爪 真弘
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.19010, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
63
被引用文献数
1

Asian dust is a phenomenon involving the long-range transport of atmospheric pollutants originating from the desert areas of China and Mongolia. In recent years, the health effects of Asian dust have raised public concerns. Numerous studies on the health effects of Asian dust have been published since the last review in 2010. Thus, a literature review was conducted to shed light on the latest epidemiologic findings. PubMed and Science Direct databases were used for the review of epidemiologic studies published between June 2009 and April 2018. We identified 53 epidemiologic studies. Mortality, ambulance transportation, hospitalization/medical examination, changes in symptomatic, functional, and examination findings, as well as birth outcomes have been reported as outcomes. When the outcomes were categorized by disease, the effects of Asian dust on respiratory, cardiovascular, and allergic diseases raised concerns. The common evidences of causation between Asian dust and these diseases were the consistency of findings and temporal sequence of association. As results of research on dose-response relationships have become available, and the possibility that the health effects of Asian dust may vary depending on its chemical composition has been pointed out, further research using the exposure level indicators of Asian dust or its chemical composition should be conducted. Furthermore, with focus on the crucial issue of reducing exposure, research related to prevention and raising awareness should be further promoted.
著者
窪田 陽一 関田 匡延 松田 奉康 清水 厚雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.75-86, 2006-06-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14

Oyaguchi Watersupply Tower, which was established by Aratama Municipal Union for Watersupply, has been known as one of the unique landmarks in the northwest area in Tokyo, but the Watersupply Bureau of Tokyo Metrpolitan Government decided to renew the structure according to their new plan for watersupply in case of emergency. This tower was planned by Eiji Nakajima, Dr.Eng., and designed by his successors after changes in two times. Its design consists of unified body of water tank and tower, and it was constructed by applying quasi-arc welding method, which was cutting-edge technology at that time. It was proved also that its form and details have an architectural style called Romanesque to make itself look.unique.
著者
杉本 伸夫 清水 厚 松井 一郎 西川 雅高 鵜野 伊津志 村山 利幸 荒生 公雄
出版者
社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.43, pp.74-77, 2002-09-11

この数年黄砂は増加傾向にあるといわれている。しかし、黄砂の現象を定量的に議論するための観測データはこれまで十分であったとは言えない。そこで筆者らは、黄砂の発生、輸送を三次元的に把握するために、ライダー(レーザーレーダー)によるネットワーク観測を北京と長崎、東京、つくば等で行うとともに、化学輸送モデル(九州大学CFORS)を用いた動態解析を行った。北京、長崎、つくばにおけるライダーによる連続観測データとモデルの比較の結果、主な黄砂現象については全般にモデルが観測結果を良く再現することが示された。そこで、モデルを用いて黄砂の発生毎に識別番号を付け、各地点のライダー観測結果との対応を検証するとともに、イベント毎に黄砂の輸送経路を記述した。日本に飛来する大規模な黄砂のほとんどは内モンゴルおよびモンゴルで発生し、強風に乗って北京周辺まで急速に輸送された後、北寄りに進路を変える場合が多い。通常、強風を伴う黄砂の本流は日本には到達せず、北東に流れる帯状の黄砂の一部が南東に広がるような形で日本に輸送される。2002年は2001年に比べて黄砂の観測される頻度が高く、また、韓国や日本でも高濃度の黄砂が観測された。北京、長崎、つくばの連続的ライダー観測の結果によると、地上から高度6kmまでに黄砂層が観測された頻度は、北京では2年間であまり変わらないのに対して、長崎、つくばでは2002年の方が倍ほど多く、明らかに日本への輸送量が多いことが示された。CFORSによる解析でも輸送経路の違いが見られた。2002年の大規模黄砂(3月20日、4月6日)では、黄砂が例年より東寄りで北上したため黄砂の本流が韓国にまで達し高濃度の黄砂被害をもたらした。これに似たケースは2001年4月6-7日発生の黄砂時にもあったが、このときは黄砂の本流は西側で北上し高濃度の黄砂被害は韓国にまでは及ばなかった。
著者
鳥山 成一 山崎 敬久 近藤 隆之 水畑 剛 奥村 秀一 水上 昭弘 神保 高之 木戸 瑞佳 日吉 真一郎 溝口 俊明 杉本 伸夫 松井 一郎 清水 厚
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 : journal of environmental chemistry (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.269-285, 2005-06-24
参考文献数
39
被引用文献数
5 4

2004年2月1日から6月14日まで, ライダーの観測データと, 標高別観測地点におけるSPM, オキシダント等の大気汚染物質観測データを用いて, 黄砂やオキシダントの高濃度の事例に関して総合的に解析したところ, 次のような結果が得られた。<BR>黄砂の規模は地上~2, 000m, 3, 000~6, 000m, 地上~4, 000m等, 種々の気塊で飛来していることが観察された。標高別3地点 (立山室堂, 立山局, 小杉局) のSPM濃度は, ライダーの画像と良く一致した。<BR>富山平野上空に出来た「黄色い帯」は, 珍しく解消されないで残っていた逆転層に大気境界層上空の薄い黄砂層が自然降下し, 形成されたものである。<BR>黄砂飛来と同時にオキシダントを含むと考えられる大気汚染物質で出来た二次粒子等からなる球形粒子がライダーで観測された。バックトラジェクトリーによって, 黄砂飛来と同時にオゾン等の大気汚染物質を含む気塊が, 日本の関西・北九州地方, 中国大陸方面から流入していると考えられた。<BR>2004年6月5日にオキシダント注意報の大規模な発令があった。ライダー画像はオキシダントも含む大気汚染物質で出来た球形粒子の存在を示唆した。バックトラジェクトリーでは, 関東方面の気塊の流入である可能性が高いと考えられた。このような黄砂とは無関係な高濃度のオキシダントは関東, 中京, ないしは関西方面からの気塊で運ばれてくるものと推察された。
著者
清水 厚志
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

1)データベースの構築1000個のカオナシ遺伝子についてデータベースを構築し相同性のある遺伝子および他の生物種の相同遺伝子のデータをBLASTを用いて集積するシステムを立ち上げた。ヒトカオナシ遺伝子に関しては、cDNAの増幅のために必要なゲノム構造の入力を行いプライマーの設計も自動で行うシステムを構築した。設計した20個のモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)の配列データおよび位置の登録を行った。RT-PCRの結果やメダカ胚の画像、条件などをインジェクション機器に付属したPCからデータベースにアップロードするシステムを構築した。さらに、これらのデータをウェブブラウザーで表示できるシステム構築を行った。2)カオナシ遣伝子に対するRT-PCR及びWhole mount in situ法による発生初期ステージの発現解析メダカの発生ステージごとに受精卵を100-1000個採取しmRNAを抽出しcDNAを合成した。これらのcDNAライブラリーを用いて130個のヒトカオナシ遺伝子のメダカオルソログのRT-PCRによる発現解析を行った。これらの発現情報をもとにMOが有効な初期胚から発現している遺伝子20個をノックダウン解析の対象遺伝子とした。3)ノックダウン法による機能解析2)で選択した20個のカオナシ遺伝子についてMOを作製しメダカ初期胚に対しノックダウンを行った。その結果、脳室の肥大、発生阻害、アポトーシスなどを引き起こすMOを得ることができた。これらのことから機能推定が全くできず逆遺伝学の対象から外れているカオナシ遺伝子の中に発生に関与する遺伝子が含まれていることが確認できた。一方で、より安価にノックダウン解析を進めるためMOの他に市販されているアンチセンスオリゴであるGripNAやLNAなどを用いてノックダウン解析を行ったがMOと同様の表現型を得ることができなかった。
著者
加来 鉄平 鈴木 美威瑠 冨永 隆生 小川 暁郎 清水 厚志 渡邉 和孝 渡邉 和晃 前田 智司 松田 佳和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.289-293, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
11

In recent years, lifestyle-related diseases such as hypertension and diabetes have been on the rise. These conditions can cause serious conditions such as myocardial and cerebral infarctions. Therefore, proper control of blood pressure and blood glucose levels is important issues in preventive medicine. Traditional fermented foods have been shown to have various functions, and their effects on lifestyle-related diseases have attracted particular attention. In this study, we investigated the effects of fermented soybeans and rice bran (OE-1) and supplements containing OE-1 on blood glucose levels and weight changes. We identified an inhibitory effect on elevated blood glucose levels upon administration of OE-1, and this effect was thought to be due to digestive enzyme inhibition. These effects of foods containing OE-1 are expected to have a positive effect on the prevention and improvement of lifestyle-related diseases as health foods.
著者
蓑島 伸生 清水 厚志 佐々木 貴史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ヒトゲノムには低頻度反復配列(Low Copy Repeat;LCR)と呼ばれる塩基配列が存在する。LCRは通常の反復配列ではなく、遺伝子や偽遺伝子等の様々なユニットからなっており、進化の過程でそれらのユニットが周囲の非LCR領域も巻き込みながら、重複や逆位、欠失等の大規模変化を繰り返して形成されてきたと考えられる。LCRは、遺伝子数やDNA断片コピー数の多型(CNV;Copy Number Variation)の生成原因の一つである。CNVのうち、規模の大きなものは、DiGeorge症候群、Smith-Magenis症候群のような欠失・重複による疾患の原因ともなる。それらの疾患の原因領域にはLCRが存在している。CNVは他の遺伝性疾患や、ある種の精神疾患にも深い関連があると考えられ、昨今俄に研究が進展している。 LCRは、その複雑さ、長さのためにゲノム塩基配列のギャップの原因ともなっている。このようにCNVとそれを生じさせているLCRの研究は今後のゲノム研究の中で重要な位置を占める。本研究では、7q11.23Williams症候群領域(WBSCR)と8p23.1duplication症候群領域のLCRの構造解析を行った。これらの領域のNCBI build36のデータを用いて、詳細なコンティグマップを作成し直し、 LCRユニットの位置、長さを確定し、さらにそれぞれのLCRに含まれる遺伝子、偽遺伝子の詳細な解析を行った。ヒトと類人猿ゲノムの詳細な解析により、上記どちらの疾患ゲノム領域でもコアとなるユニットが最初に存在し、進化に伴って転移を繰り返す際に転移先周辺の配列を巻き込みLCR化させる現象が明瞭になった。また、build36でWBSCR内にあるとされたギャップは見かけ上のもので、実際にはCNV多型を持つ二つのアリルの混在によるミスアセンブルであり、同ギャップは存在しないことも強く示した。なお、本研究の成果について、研究期間終了後以下の発表を行った。[論文]Nature431:931,2004; BMC Genomics5:92,2004; Nature439:331,2006,[学会発表]国内5件
著者
道川 武紘 高見 昭憲 諸隈 誠一 山崎 新 清水 厚
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

微小粒子状物質(PM2.5)を中心とする大気汚染物質の周産期影響に関して疫学知見は増えているものの、日本を含めたアジア諸国からの報告は相対的に少ない。本研究では、PM2.5とその成分に注目し、日本の妊婦と胎児への影響を検討した。PM2.5の特定成分曝露が胎児発育の指標である出生時体重や胎盤重量と負の関連性を示すこと、また産科合併症のリスクを高める可能性があることを報告した。またPM2.5を含む黄砂について、黄砂が飛来した1~2日後に産科救急疾患である常位胎盤早期剥離をともなう出産が増加することを観察した。
著者
冨永 隆生 小川 暁郎 清水 厚志 渡邉 和孝 渡邉 和晃
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.15-20, 2021

<p><b>背景・目的</b> 高血圧症は脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こすケースが多く日常より予防的に摂取可能な機能性食品などの開発が推奨されている。高血圧症にはアンジオテンシンⅡの合成酵素であるアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)を抑制する治療が行われている。本研究では降圧作用を示す大豆、及び米ぬか発酵物(OE-1)よりACE阻害活性を有するペプチド含有画分を分離、精製し、さらにペプチド配列の解析を行った。</p><p><b>方法</b> OE-1より疎水性クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーを用いACE阻害活性を有するペプチドの分離を行った。単離した各ペプチドからペプチドシークエンサーによりアミノ酸配列を解析した。</p><p><b>結果</b> ACE阻害活性を示す5種類のジペプチド、並びに5種類のトリペプチドが得られた。各ペプチドのアミノ酸配列は、ジペプチドがAY(Ala-Tyr)、GY(Gly-Tyr)、SY(Ser-Tyr)、NY(Asn-Tyr)、及びDY(Asp-Tyr)、一方、トリペプチドがYGS(Tyr-Gly-Ser)、YQG(Tyr-Gln-Gly)、SYN(Ser-Tyr-Asn)、YDQ(Tyr-Asp-Gln)及びYNP(Tyr-Asn-Pro)であった。ジペプチド類のAY、GY、SY、NY、およびDYのACE阻害活性(IC50値)はそれぞれ、30.5mM、184mM、96.7mM、32.6mM、及び18.3mMであり、トリペプチド類のYGS、YQG、SYN、YDQ、及びYNPはそれぞれ1070.1mM、746.7mM、1778mM、1736.2mM、及び484mMであった。</p><p><b>考察</b> OE-1の降圧作用には数種類のACE阻害ペプチドが関与していることが推測された。これらのペプチドは総合的にはたらいて降圧作用を発現していると考えられた。</p>
著者
梅影 創 清水 厚志
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.68-74, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
20

疫学研究を進めていくうえで,バイオバンクとコホート研究の質の向上および参加者(検体)数の拡充と,大規模な情報から目的の疾患に関連する要因を見つけだすための遺伝統計学手法の開発は車の両輪の関係にある。本稿では,疫学研究を推進していくためのバイオバンクとコホート研究の現状に触れ,さらに世界最大規模の出生三世代コホートなどを運用する東北メディカル・メガバンク計画の取り組みを紹介する。次いで,疾患関連解析の最大の難問とされる「失われた遺伝率」の問題について触れ,この問題の克服をめざした手法の一つとして,いわて東北メディカル・メガバンク機構で開発したiwate polygenic model(iPGM)を利用した脳梗塞発症リスク予測について述べる。最後に,コホート研究による精神疾患リスク予測に向けたアプローチについて触れる。
著者
藤岡 周助 岡 香織 河村 佳見 菰原 義弘 中條 岳志 山村 祐紀 大岩 祐基 須藤 洋一 小巻 翔平 大豆生田 夏子 櫻井 智子 清水 厚志 坊農 秀雅 富澤 一仁 山本 拓也 山田 泰広 押海 裕之 三浦 恭子
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景と目的】ハダカデバネズミ (Naked mole rat、 NMR) は、発がん率が非常に低い、最長寿の齧歯類である。これまでに長期の観察研究から自然発生腫瘍をほとんど形成しないことが報告されている一方、人為的な発がん誘導による腫瘍形成に抵抗性を持つかは明らかになっていない。これまでにNMRの細胞自律的な発がん耐性を示唆する機構が複数提唱されてきた。しかし、最近それとは矛盾した結果も報告されるなど、本当にNMRが強い細胞自律的な発がん耐性を持つのかは議論の的となっている。さらに腫瘍形成は、生体内で生じる炎症などの複雑な細胞間相互作用によって制御されるにも関わらず、これまでNMRの生体内におけるがん耐性機構については全く解析が行われていない。そこで、新規のNMRのがん耐性機構を明らかにするため、個体に発がん促進的な刺激を加えることで、生体内の微小環境の動態を含めたNMR特異的ながん抑制性の応答を同定し、その機構を解明することとした。【結果・考察】NMRが実験的な発がん誘導に抵抗性を持つかを明らかにするため、個体に対して発がん剤を投与した結果、NMRは132週の観察の間に1個体も腫瘍形成を認めておらず、NMRが特に並外れた発がん耐性を持つことを実験的に証明することができた。NMRの発がん耐性機構を解明するために、発がん促進的な炎症の指標の一つである免疫細胞の浸潤を評価した結果、マウスでは発がん促進的な刺激により強い免疫細胞の浸潤が引き起こされたが、NMRでは免疫細胞が有意に増加するものの絶対数の変化は微小であった。炎症経路に関与する遺伝子発現変化に着目し網羅的な遺伝子解析を行なった結果、NMRがNecroptosis経路に必須な遺伝子であるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異により、Necroptosis誘導能を欠損していることを明らかにした。【結論】本研究では、NMRが化学発がん物質を用いた2種類の実験的な発がん誘導に並外れた耐性を持つこと、その耐性メカニズムの一端としてがん促進的な炎症応答の減弱が寄与すること、またその一因としてNecroptosis経路のマスターレギュレーターであるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異によるNecrotpsosis誘導能の喪失を明らかにした。
著者
早崎 将光 大原 利眞 黒川 純一 鵜野 伊津志 清水 厚
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.225-237, 2008-07-10
被引用文献数
14

2007年5月8-9日に観測された注意報レベルに達するオゾン(O_3)高濃度事例を対象として,全国の1時間平均大気汚染物質濃度測定値を用いた動態調査をおこなった。O_3濃度上昇は,8日の早朝に日本列島西端の五島から観測され始めた。壱岐における日最高O_3濃度は深夜に観測された,日本海沿岸では,日最高O_3濃度は東側ほど遅い時刻で観測された。離島では,二酸化硫黄と粒子状物質もオゾンと同期した濃度変化を示した。後方流跡線解析とライダーによる人為起源粒子の鉛直分布から,汚染気塊はアジア大陸を起源とすることが示された。9日は主に東日本でO_3高濃度を観測した。日本海側では,前日と同様に東側ほど遅い時刻で日最高O_3濃度を観測した。それに対して,関東平野では観測時刻の遅れは内陸側に向かう方向でみられ,O_3濃度も日を追う毎に高くなった。高濃度期間の汚染物質濃度と気象条件の時空間変動から,関東平野では,大規模海陸風循環の継続による都市汚染の蓄積の影響も大きいことが示唆された。以上の結果から,日本列島規模の広範囲では越境汚染がO_3高濃度の主要因であり,都市近郊では国内起源汚染がそれに上乗せされていたと考えられる。
著者
三浦 恭子 坊農 秀雅 清水 厚志 大岩 祐基
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハダカデバネズミ(Naked mole rat, NMR)は、マウスと同等の大きさ(平均体重35 g)ながら異例の長寿動物(平均寿命28年)であり、これまで自発的な腫瘍形成が一切認められていないというがん化耐性の特徴をもつ。本研究では、NMR個体のがん化耐性を制御すると考えられる、「NMR特異的がん化抑制バリア ASIS(ARF抑制時細胞老化)」の形成機構・役割を詳細に明らかにすることを目的とした。mRNA-seqによる解析の結果、発現変動する遺伝子群、また、ASISにおけるNMR種特異的なシグナル伝達制御が明らかになった。
著者
大原 利眞 鵜野 伊津志 黒川 純一 早崎 将光 清水 厚
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.198-208, 2008-07-10
参考文献数
24
被引用文献数
22

2007年5月8,9日に発生した広域的な高濃度オゾン(O_3)エピソードの特徴と発生原因について,日本全国の大気汚染測定データと東アジアスケール化学輸送モデルを用いて解析した。全国の測定局で観測されたO_3濃度は,5月8日の朝9時ごろに九州北部で高濃度となり始め,15時には壱岐や五島といった離島を含む九州北部や中国地方西部において120ppbvを超える高濃度となった。高濃度は夜になると低下したが,21時においても西日本の一部の測定局では120ppbvを超える状態が持続した。翌日5月9日9時の濃度レベルは前日よりも全国的に高く,15時になるとO_3の高濃度地域は,北海道や東北北部を除く日本全域に拡大し,関東,中京,関西などの大都市周辺地域や,富山県や新潟県などの北陸地域や瀬戸内地域の測定局において120ppvb以上を観測した。化学輸送モデルは5月7〜10日に観測された地上O_3濃度の時間変動をほぼ再現するが,ピーク濃度レベルを過少評価する。この傾向は,中国沿岸域北部・中部の排出量を増加するに従って改善される。モデルで計算された5月7〜9日の地上付近のO_3濃度分布によると,空間スケールが500kmを越える80ppbv以上の高濃度O_3を含む気塊が,東シナ海上の移動性高気圧の北側の強い西風によって,中国北部沿岸から日本列島に輸送されたことを示す。5月8,9日に日本で観測された高濃度O_3には,中国や韓国で排出されたO_3前駆物質によって生成された光化学O_3に起因する越境大気汚染の影響が大きい。80ppbv以上の高濃度O_3に対する中国寄与率の期間平均値は,青森県以北を除く日本全国で25%以上であり,九州地域では40〜45%に達すると見積もられた。しかし,本研究で使用したモデルは都市大気汚染を充分に表現していないため,大都市域周辺等では越境汚染の寄与率が異なる可能性がある。また,モデル計算結果ならびに地上大気汚染測定局とライダーの観測結果から,O_3とともにSO_2や人為起源エアロゾルも越境汚染していたこと,これらの物質は高度1500m以下の混合層の中を輸送されたことが明らかとなった。
著者
赤羽 学 今村 知明 高野 裕久 上田 佳代 清水 厚
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々がこれまでに確立したインターネットを介した健康調査システムを用いて、アレルギー症状を日々収集し、黄砂飛来量・花粉飛散量との関係をみた。各症状の有無を従属変数とし、対象者の性別、年齢と各調査日の最高気温、湿度、黄砂量を共変数として一般化推定方程式を用いて分析した。アレルギー症状の有症状率は2月上旬から増加傾向を示し、黄砂の大量飛来日を起点として増加していた。黄砂量と関連が強かった症状は、鼻水、咳、目のかゆみであった。本研究では、黄砂によってアレルギー症状が誘発されている可能性が示唆されただけでなく、花粉症患者においては花粉飛散量と不眠にも関連があることが判明した。
著者
浅川 修一 藤森 一浩 清水 厚志 堺 弘介 満山 進 小島サビヌ 和子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では次世代シーケンサーを用いてメダカおよびトラフグの各組織(速筋、遅筋、腸、眼、脳、心臓、肝臓、卵巣、精巣、初期胚など)から得た小分子RNA(miRNA, piRNA, siRNA)の塩基配列を解読し、その発現プロフィールを明らかにした。精巣、卵巣以外の各組織ではmiRNAが主要な発現産物であったが、精巣、卵巣ではpiRNAが主要な発現産物であることが推定された。またメダカとトラフグに共通に発現している未同定の小分子RNAを多数見いだした