著者
野口 潤次郎
出版者
一般社団法人 数学教育学会
雑誌
数学教育学会誌 (ISSN:13497332)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.75-85, 2017

"役に立つ"ことを判断する価値観は、どこから来るのかを言語の進展の観点から議論する。言語進展の過程に日本とヨーロッパにおいて類似性があることを見出す。言語には日常言語、社会言語、記述言語の3 種があり、これらが一致していることがイノべーションに必要不可欠であることを古代の神話の形成、言語の形成、文字の導入にさかのぼり諸文明の情況を観察しつつ解明する。それらを踏まえ、グローバリゼーションの中で、日本の数学教育の向かう所について考える。
著者
平地 健吾 高山 茂晴 吉川 謙一 大沢 健夫 辻 元 本多 宣博 山ノ井 克俊 伊師 英之 野口 潤次郎 山口 佳三 満渕 俊樹 奥間 智弘 神本 丈 松村 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

4回の多変数関数論葉山シンポジウムを開催した.複素解析幾何の運営組織の世代交代を目標とし,世話人代表は順に吉川謙一,伊師英之,山ノ井克俊,本多宣博と神本丈が担当した.今後10年の運営組織が整ったと言える.後半では連携研究者に奥間智弘,松村慎一を加え,2度の特異点の幾何に関する国際研究集会および函数論サマーセミナーを開催した.また研究テーマを絞ったワークショップを3度(放物型幾何学,ベルグマン核,解析幾何学)を行い国際交流の活性化を図った.研究期間内に山ノ井克俊および本多宣博が日本数学会幾何学賞,大沢健夫がアメリカ数学会ベルグマン賞,平地健吾がICMの招待講演者になったことは特筆に値する.
著者
東川 和夫 野口 潤次郎 古田 高士 渡辺 義之 清水 悟 児玉 秋雄
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

当初の研究目的は、被覆写像に対して、両多様体の多様複素グリーン関数及び対応する不変計量に関する不等式がいつ等号になるか、例で調べてみること。等質有界領域のバーグマン計量に対する正則双断面曲率が非正であれば、擬対称領域かという問題に解答をつけること。この2点であったが、いずれも記述すべき進展が見られなかった。この問題に関連して、次の3つの新しい結果を得た。(1)上に伸びる連分数展開を考えることによって、閏年を4年に一度置き、それを32回に一度やめ、そのやめることを691回に一度やめ、それをやめることを、703回に一度やめれば、真の時間と暦上の時間との違いは、常に24時間以内であることを示した。(2)互いに素なAとBに対して、pはAの平方とBの平方の和であり、奇数であるとする。このとき、(i)直交する二つの位数pのラテン方陣で、それぞれが、対蹟的完備であるものが存在する。ここで、ラテン方陣が対蹟的完備であることは、すべての対蹟の関係にある位数がAの方陣と位数Bの方陣を合わせたものに文字の重複がないことである。(ii)位数pの魔方陣で、対蹟的完備であるものが存在する。ここで、魔方陣が対蹟的完備とは、すべての対蹟の関係にある位数がAの方陣と位数Bの方陣を合わせたものの数の和が定和になることである。(3)5以上の自然数Nに対して、合同変換群が位数Nの回転群でしかないような1つの平行6辺形による平面のタイル張りが存在することを示した。
著者
吹田 信之 野口 潤次郎 酒井 良 戸田 暢茂 佐藤 宏樹
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

本研究においては, まず低次元の複素多様体リーマン面上の解析写像についていくつかの結果を得た. まず自己等角写像に関して, 種数5の閉リーマン面の自己等角写像群が完全に決定された(栗林-木村). 次に解析写像の個数を評価する問題は, 平面n重連結について境界保存の写像の個数の限界((n-2)24n-6)を得た. (Jenkuis-吹田). この限界は閉リーマン面に関するHoward-Sommesによって得られた限界よりもよい値である. 今後の問題としてはこれを閉リーマン面の場合に拡張することが残っている.次に, 面積有限な解析写像については, 写像のH2ノルムを像面積で評価する問題がある. 小林-吹田はHpノルムを評価するためのよい等式を得た. この結果は次元の高い空間領域でのノルム函数を像面積(体積)で評価する問題に一般化され, 酒井によって満足すべき評価式が得られた. またこの結果はブラウン運動にも応用されている. 有界写像に関する有界函数族については, 林により函数環の構造, 林-中井による分離性の問題などが研究された. 又村井は実解析的な方法で解析容量の研究を行った. 解析写像に関する特異性の除去可能性については, 円板内に含まれる容量零の閉集合が, 双曲的な閉リーマン面への解析写像に関して除去可能であること(西野の定理)の双曲的幾何を使った簡明な証明が鈴木により得られた. この定理は高次元への一般化の可能性を含んでいる. また野口により双曲的幾何学と値分布理論を結びつける方法を使って, ピカールの定理の一般化や, そのモジュライ問題へ応用及びディオファニタス幾何の研究が行われた. また値分布理論を使った極の曲面のガウス写像の除外方向の問題が解決された(藤本). 値分布理論は微分方程式へも応用され(戸田)また偏微分方程式の定めるモノドロシー表現の構造からその一意化類域が明らかにされた(佐々木, 吉田).