著者
奥田 知明 坂出 壮伸 藤岡 謙太郎 田端 凌也 黒澤 景一 野村 優貴 岩田 歩 藤原 基
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.28-33, 2019-01-10 (Released:2019-03-23)
参考文献数
17

可能な限り多数の測定装置を同時に利用することで、閉鎖的環境の代表例である地下鉄構内の空気中粒子状物質の詳細な特性調査を行った。総粒子個数濃度はCPC、ナノ粒子側粒径分布はSMPS、ミクロン粒子側粒径分布はAPS、ミクロン粒子側粒子個数濃度はOPC、粒子状物質の帯電状態は自作の帯電粒子測定装置K-MACS、PM2.5濃度はポータブルPM2.5濃度計、粒径別の個別粒子の元素組成はSEM/EDX、フィルター採取された粒子の元素組成はEDXRFにより測定された。地下鉄構内におけるPM2.5質量濃度は、列車の到着本数が過密になる7–8時台を過ぎた時間帯にピークを示した後徐々に減少し、午後になると約50–120 μg/m3の範囲でほぼ定常的な上昇と減少を繰り返した。地下鉄構内のPM2.5質量濃度は、屋外と比較して約2–5倍であった。地下鉄構内においては、屋外大気と比較して粒径0.5 μm以上の比較的粗大側の粒子が高濃度となった。地下鉄構内のFe、Ti、Cr、Mn、Ni、Cu、Znなどの金属類は、屋外観測地点の数十から数百倍の高濃度であった。一方で、Sの濃度は地下鉄構内と屋外観測地点で大きな違いは見られなかった。0.5–1.0 μmの粒径範囲においては、地下鉄構内の粒子の約70%以上は帯電していた。地下鉄構内における粒子状物質濃度は屋外と比較して高く、かつ地下鉄構内ではFeを含んだ粒子が多いことは、過去の研究例と同様の傾向であった。このことに加えて、本研究では複数の測定装置により、粒径による元素組成の違いや、粒子の帯電状態などといった、地下鉄構内空気中粒子の詳細な特性を把握することができた。
著者
杉山 伊吹 古島 大資 野村 優月 海野 けい子 中村 順行 山田 浩
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.3-P-U-3, 2021 (Released:2021-12-17)

【目的】緑茶の主要な遊離アミノ酸であるL-テアニンが、抗ストレス作用を示すことが動物実験ならびに臨床試験で報告されている。また、テアニンに次いで緑茶に多く含まれるアルギニンとの併用摂取によって、テアニンの抗ストレス作用が増強する可能性が動物実験で示されている。しかし、ヒトに対するテアニン・アルギニン併用時の影響については明らかにされていない。そこで本研究では、ヒトにおけるテアニン及びアルギニン併用摂取のストレスへの影響を、単盲検ランダム化比較試験により検討した。【方法】静岡県立大学の健康成人120名(平均年齢22.4歳、女性62.5%)を対象とし、十分なインフォームドコンセントによる文書同意を得た後、テアニン・アルギニン併用群(テアニン100 mg・アルギニン50 mg摂取)、テアニン単独群(テアニン100 mg摂取)、プラセボ群の3群にランダムに割り付けた。対象者へのストレス負荷として内田クレペリン精神検査法を、ストレス指標として唾液中アミラーゼ活性(salivary amylase activity: sAA)を採用した。sAAをストレス負荷前、直後、5、15、30分後に測定し、sAAの経時変化やストレス負荷前後のsAAの変化量を3群間で比較した。なお本研究は、静岡県立大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果・考察】ストレス負荷前から、負荷15分後におけるsAA変化量の平均値(標準偏差)は、テアニン・アルギニン併用群で-2.75(11.2)KIU/L、テアニン単独群で-0.40(11.5)KIU/L、プラセボ群で6.95(18.6)KIU/Lであり、テアニン・アルギニン併用群とプラセボ群間(p=0.0053)およびテアニン単独群とプラセボ群間(p=0.0413)で統計学的有意差が認められた。以上のことから、テアニンとアルギニンの併用摂取は、ヒトにおいても短時間の抗ストレス作用があることが示唆された。テアニン・アルギニン併用群とテアニン単独群間でsAA変化量の統計学的有意差は認められなかったが、テアニン・アルギニン併用摂取時にsAA減少量が大きくなる傾向がみられた。【結論】テアニン単独摂取時と比較して、テアニン・アルギニンの併用摂取により抗ストレス作用が増強する可能性が示唆された。しかし本研究の被検者は20代を中心としているため、結果の一般化には幅広い年齢層を対象とした大規模臨床試験によって検討する必要がある。
著者
東矢 俊一郎 右田 昌宏 興梠 健作 舩越 康智 末延 聡一 齋藤 祐介 新小田 雄一 比嘉 猛 百名 伸之 唐川 修平 武本 淳吉 古賀 友紀 大賀 正一 岡本 康裕 野村 優子 中山 秀樹 大園 秀一 本田 裕子 興梠 雅彦 西 眞範
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.132-137, 2021

<p>【背景】2020年に始まったCOVID19のパンデミックは長期化の様相を呈し,人々の生活様式を一変させた.小児がん患者家族および医療者も同様であり,感染による重症化を回避するため,十分な対策のもとに原疾患治療を進めている.【方法】九州・沖縄ブロック小児がん拠点病院連携病院に,(COVID19,第1波後)2020年6月および(第2波後)9月の2回にわたり,①COVID19の経験,②診療への影響,③患者および医療従事者への社会的・精神的影響につき調査を行い,毎月施行されている拠点病院連携病院TV会議において議論した.【結果】2020年6月は16施設,9月は17施設から回答を得た.COVID19感染例はなかった.原疾患治療の変更を余儀なくされた例では転帰への影響はなかった.全施設で面会・外泊制限が行われ,親の会,ボランティア活動,保育士・CLS,プレイルーム・院内学級運営にも影響が生じた.多くの患者家族に精神的問題を認め,外来患者数は減少,通学に関する不安も寄せられた.6施設で遠隔診療が行われた.第1波から第2波にかけて制限は一部緩和され,外来受診者数も元に戻りつつある.【まとめ】COVID19パンデミックにより,小児がん患者にはこれまで以上の精神的負担がかかっている.小児における重症化は稀だが,治療変更,中断による原疾患への影響が懸念される.十分な感染対策を行いながら,少しでも生活の質を担保できるよう,意義のある制限(および緩和),メンタルケアおよび情報発信が求められる.</p>