著者
金 甫榮
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.4-29, 2020-06-30 (Released:2021-07-16)

本研究では、アーカイブズ資料のためのオープンソースソフトウェアであるAtoM(Access to Memory)を事例とし、アーカイブズ資料情報システムを構築・運営する際に考慮すべき点について考察する。すでにAtoM を利用して構築された複数のサイトを分析した結果では、利便性向上のために必要な点として専門用語やアクセスポイントの適切な活用など、いくつかの課題が明らかになった。また、AtoM を用いた組織アーカイブズ閲覧システムを構築し、2019 年に運用を開始した渋沢栄一記念財団の事例では、AtoM を活用する際に考慮すべき点を具体的に述べる。最後には、この二つの研究結果に基づき、アーカイブズ資料情報システムのあり方について考察する。
著者
金 甫榮
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.383-388, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
9

本発表では,『渋沢栄一伝記資料』の別巻第1,2に収載されている渋沢栄一の日記および予定表である「集会日時通知表」のテキストデータを,TEIを用いて再構築した事例研究の成果について論じる.『渋沢栄一伝記資料』は,日本近現代史研究において重要な資料とされているが,そのテキストデータが可視化・分析されたことはまだない.本研究では,テキストデータの信頼性向上と多様なデータ分析を可能にするための構造化を行い,その成果をウェブサイト「渋沢栄一ダイアリー」で公開した.この研究過程で,TEIによるテキストの構造化が何をもたらしたかを考察する.
著者
金 甫榮 中村 覚 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s3, pp.s147-s150, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
9

本研究では、デジタル化した資料の長期保存および公開のための、OAIS情報モデルに準拠したワークフローを提案する。ワークフローの実現には、オープンソースソフトウェアであるArchivematica(長期保存用)とOmeka S(公開用)を用いる。まず、デジタル化資料の真正性を確保するため、OAIS情報モデルで定義するメタデータ要素に基づき、メタデータを分析した。次に、Archivematicaを用いて必要な情報パッケージを作成した上で、それをOmeka Sへインポートするためのツールを独自に開発した。その結果、デジタル化資料の受入から公開までの一貫したワークフローを提案することが可能となった。
著者
金 甫榮
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.4-29, 2018-12-31 (Released:2020-02-01)

本稿では、民間組織における業務分析に基づく記録管理からアーカイブズ管理への一貫した流れを構築するための戦略や手法を、渋沢栄一記念財団の具体的な事例を通じて示し、その過程で浮き彫りになった課題や問題点について考察する。業務分析は、組織のコンテクストを理解したうえ、機能とプロセスの分析を通じて行う。記録は、そこから導き出された分類スキームにより制御・管理され、評価選別を経て、アーカイブズとして保存される。この過程では、組織のコンテクストを理解する必要性に加え、分析結果を実践へ応用する手法を紹介し、機能分析や、評価選別及びアクセス提供時に考慮すべき点を明らかにする。最後には、ISO15489を指標とし、この一連の過程を評価したうえ、課題と問題点についてさらに考察を深める。
著者
任 眞嬉 元 ナミ[訳] 金 甫榮[訳]
雑誌
GCAS report : 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 (ISSN:21868778)
巻号頁・発行日
no.4, pp.6-22, 2015-02

韓国では、1999年「公共機関の記録物管理に関する法律」の制定と相まって電子政府が進められ、多くの公共記録が電子文書で作成されるようになった。この法律は2007年に「公共記録物の管理に関する法律」と改正され、電子記録管理システムを中心に更新された。公共部門の記録管理の発展とともに、民間分野におけるアーカイブズへの関心も高まり、さまざまな民間アーカイブズが構築されつつあるが、その過程で公共記録の管理方法やツールをそのまま適用することは難しいという学問的、実践的課題が提起された。特に記録システムの構築には多くの課題が存在している。本講演では、その解決策の一つとして「AtoM」や「Archivematica」「Omeka」などのオープンソース・ソフトウェアを利用して構築された記録システム「人間と記憶のアーカイブ」、「マウル・アーカイブ」「セウォル号アーカイブ」の事例を紹介する。このような民間アーカイブズのための記録システムの普及活動は、記録保存の重要性に対する共感を広げ、記録文化を浸透させることに大きく貢献している。
著者
小風 尚樹 中村 覚 纓田 宗紀 山王 綾乃 小林 拓実 清原 和之 金 甫榮 福田 真人 山崎 翔平 槙野 翔 小川 潤 橋本 雄太 宮本 隆史 菊池 信彦 後藤 真 崎山 直樹 元 ナミ 加藤 諭
巻号頁・発行日
pp.1-57,

2018年4月15日に開催された「2018 Spring Tokyo Digital History Symposium」のイベントレポート。シンポジウムは、歴史研究においてデジタル技術を駆使する際のいくつかの指針を提示すべく、歴史研究者・アーキビスト・エンジニアの学際的協働に基づくワークショップTokyo Digital Historyが主催した。 本シンポジウムでは、歴史研究が生み出されるまでの4つのプロセス、すなわち「情報の入手」「情報の分析」「情報の表現」「情報の公開」に着目し、それぞれに関連の深いデジタル技術や知識を提示した。さらに、それらを活用した具体的な歴史学的実践例を提供した。このシンポジウムおよびTokyo Digital Historyは、学際的協働を必要とする人文情報学プロジェクトの好例であるとともに、歴史研究の分野においては画期的な試みである。
著者
任 眞嬉 元 ナミ[訳] 金 甫榮[訳]
雑誌
GCAS report : 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻研究年報 (ISSN:21868778)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.6-22, 2015-02 (Released:2017-09-01)

韓国では、1999年「公共機関の記録物管理に関する法律」の制定と相まって電子政府が進められ、多くの公共記録が電子文書で作成されるようになった。この法律は2007年に「公共記録物の管理に関する法律」と改正され、電子記録管理システムを中心に更新された。公共部門の記録管理の発展とともに、民間分野におけるアーカイブズへの関心も高まり、さまざまな民間アーカイブズが構築されつつあるが、その過程で公共記録の管理方法やツールをそのまま適用することは難しいという学問的、実践的課題が提起された。特に記録システムの構築には多くの課題が存在している。本講演では、その解決策の一つとして「AtoM」や「Archivematica」「Omeka」などのオープンソース・ソフトウェアを利用して構築された記録システム「人間と記憶のアーカイブ」、「マウル・アーカイブ」「セウォル号アーカイブ」の事例を紹介する。このような民間アーカイブズのための記録システムの普及活動は、記録保存の重要性に対する共感を広げ、記録文化を浸透させることに大きく貢献している。
著者
金 甫榮
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.70, pp.15-36, 2016-03-25

本稿では、ビジネス・アーカイブズの保存・利用について長年にわたり国を挙げ戦略的に取り組んで来たイギリスの先進事例から、その歴史的背景を含め基本理念と具体的な実践スキームについて紹介する。そして、現在までの日本のビジネス・アーカイブズの状況を整理しつつ、ビジネス・アーカイブズのとらえ方、実践面でどのような課題があるかを明らかにする。その上で、イギリスのビジネス・アーカイブズのための戦略を評価軸にして、日本におけるビジネス・アーカイブズの将来像を意識しつつ、その発展に資する戦略や方法について検討する。具体的には、ビジネス・アーカイブズの連携及び統合化のための共有プラットフォームとも言える「全国ビジネス・アーカイブズ登録簿」の構築を提案すると共に帝国データバンク史料館を例にあげ、有効な登録簿の構築方法を具体的に示す。