著者
有賀 暢迪 橋本 雄太
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.162-164, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
3

国立科学博物館では、科学技術史資料として日本の科学者の個人資料を収集・保存している。こうした「科学者資料」にはノート、原稿、書簡、写真、辞令、身の回り品などが含まれ、展示室内で全体を紹介することが難しい。他方で、近年急速に広まっているIIIF(International Image Interoperability Framework)は、この種の資料をインターネット上で「展示」するための新たな手法をもたらしつつある。本研究では、植物学者・矢田部良吉(1851-1899)の資料を事例とし、資料画像のIIIFでの公開を前提とした上で、これを利用して電子展示を行うシステムを試作した。このシステムでは、自館の所蔵資料に他館からの「借用」資料を組み合わせ、それぞれに「キャプション」を付して、一つのストーリーの下に「展示」できるほか、「展示替え」も容易に行える。本システムは、IIIFを利用することにより、博物館が伝統的に行ってきた展示室での展示と同様のことをインターネット上で実行可能にしたものである。
著者
加納 靖之 橋本 雄太 中西 一郎 大邑 潤三 天野 たま 久葉 智代 酒井 春乃 伊藤 和行 小田木 洋子 西川 真樹子 堀川 晴央 水島 和哉 安国 良一 山本 宗尚
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.これまでに地震や地震に関わる諸現象についての記録が多数収集され,その翻刻をまとめた地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)が刊行され,活用されてきた.いっぽうで,過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.未翻刻の史料に重要な情報が含まれている可能性もあるが,研究者だけですべてを翻刻するのは現実的ではない.このような状況のなか,「みんなで翻刻【地震史料】」では,翻刻の対象とする史料を,地震に関する史料とし,東京大学地震研究所図書室が所蔵する石本コレクションから,114冊を選んだ.このコレクションを利用したのは,既に画像が公開されており権利関係がはっきりしていること,部分的には翻刻され公刊されているが,全部ではないこと,システム開発にあたって手頃なボリュームであること,過去の地震や災害に関係する史料なので興味をもってもらえる可能性があること,が主な理由である.「みんなで翻刻【地震史料】」で翻刻できる史料のうち一部は,既刊の地震史料集にも翻刻が収録されている.しかし,ページ数の都合などにより省略されている部分も多い.「みんなで翻刻【地震史料】」によって,114冊の史料の全文の翻刻がそろうことにより,これまで見過ごされてきた情報を抽出できるようになる可能性がある.石本文庫には,内容の類似した史料が含まれていることが知られているが,全文の翻刻により,史料間の異同の検討などにより,これまでより正確に記載内容を理解できるようになるだろう.「みんなで翻刻」では,ブラウザ上で動作する縦書きエディタを開発・採用して,オンラインでの翻刻をスムーズにおこなう環境を構築したほか,翻刻した文字数がランキング形式で表示されるなど,楽しみながら翻刻できるような工夫をしている.また.利用者どうしが,編集履歴や掲示板機能によって,翻刻内容について議論することができる.さらに,くずし字学習支援アプリKuLAと連携している.正式公開後3週間の時点で,全史料114点中29点の翻刻がひととおり完了している.画像単位では3193枚中867枚(全体の27.2%)の翻刻がひととり完了している.総入力文字数は約70万字である.未翻刻の文書を翻刻することがプロジェクトの主たる目的である.これに加えて,Web上で活動することにより,ふだん古文書や地域の歴史,災害史などに興味をもっていない層の方々が,古地震や古災害,地域の歴史に関する情報を届けるきっかけになると考えている.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の石本文庫の画像データを利用した.
著者
加納 靖之 橋本 雄太
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.147-152, 2018-11-24

市民参加型の史料翻刻プロジェクト「みんなで翻刻」で生成されたテキストに対して,既存の計量テキスト分析用のツールを利用して,頻出語の計数や共起関係の分析を実施した.また,歴史地名データを利用して,テキスト中の地名の同定についても検討した.「地震」という語には,方角や地名に関する語だけでなく,被害に関する語が伴なうことが多いことがわかった.一定の分析結果が得られたものの,分析に利用する辞書の整備や地名の同定方法を洗錬されたものにすることが今後の課題である.
著者
橋本 雄太
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.9, pp.1-5, 2014-05-24

近年の電子書籍の普及にともない,複数の読者が読書を通して得た知見を共有するための 「ソーシャルリーディング」 と呼ばれる仕組みが注目を集めている.筆者は,ソーシャルリーディングの仕組みを歴史研究に応用する試みの一例として,近代デジタルライブラリー上の資料に対してソーシャルリーディングを実施するための環境である 「近デジリーダー」 を構築した.国立国会図書館によって運営される近代デジタルライブラリーは,明治期以降に刊行された 35 万点以上の図書・雑誌を擁する国内最大のデジタル・コレクションである.「近デジリーダー」 は,スマートフォン等のモバイルデバイス上でこれらの資料の閲覧を可能にすると同時に,資料の読解から得られた歴史学上の知見をメタデータとして蓄積し,利用者間で共有するための環境を提供する.This paper introduces a network-based system named Kindigi Reader, which is built upon Kindai Digital Library. Kindai Digital Library has over 350,000 documents published after Meiji era and is the largest digital collection in Japan. Kindigi Reader offers a series of features that realizes so-called "social reading" on those documents. The ultimate goal of Kindigi Reader is to provide facilities for historians to discover and make use of valuable historical resources available on Kindai Digital Library.
著者
橋本 雄太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.525-530, 2015-12-01 (Released:2017-04-13)

学術領域におけるオープンデータの活用に関する議論が盛り上がりを見せつつあるが,構造化データが扱われることの少ない人文学分野においては,必ずしもオープンデータの効用は明らかではない。本稿では,従来の文化資料デジタル化事業との対比から,人文学資料のオープンデータ化には(1)資料活用の多様化,(2)研究成果の再利用促進,(3)情報探索の効率化,といった意義があることを指摘する。続いて,国内外で提供される人文学資料のオープンデータ化事例を概観し,オープンデータを活用したアプリケーションの開発事例として拙作『近デジリーダー』を紹介する。最後に,人文学分野におけるオープンデータの普及に向けた諸課題を展望する。
著者
加納 靖之 橋本 雄太
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.「みんなで翻刻」では,正式公開から約1年で,東京大学地震研究所図書室が所蔵する資料のうち「古文書」に分類されデジタル画像化されている421点のうち386点のの翻刻がひととおり完了している.総入力文字数は約356万文字である.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.「みんなで翻刻」によって大量のテキストデータを生成することができた.このテキストデータに対して,計量テキスト分析を行なった.分析には,計量テキスト分析(テキストマイニング)のために開発されたソフトウェアであるKH Coder(http://khc.sourceforge.net/)を利用した.まず,頻出語の計数を行った.頻出語の上位には「地震」「崩」「水」「人」「山」「火」「町」「寺」「宿」「川」「破損」などが挙がった.これらは,地震とその被害に関する語であり,既刊の地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)による翻刻からの印象とほぼ同じである.この印象を定量的に評価できたことになる.また,共起関係についても分析した.「地震」という語には,方角や地名に関する語だけでなく,被害に関する語が伴なうことが多いことがわかった.それぞれの資料で対象となっている地震によって,被害のあらわれ方が違うことから,資料ごとにより詳細に分析することによって,テキスト分析から地震の様相を抽出できる可能性がある.これらのテキスト分析には適切な辞書が必要である.資料の年代や地震記事であることに対応した辞書を作成する必要がある.既存の辞書を利用しつつ,ここでの分析の結果を再帰的に反映させることによって,よりよい辞書を作成できるだろう.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」は京都大学古地震研究会によって公開・運営されている.「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の資料の画像データを利用した.「みんなで翻刻【地震史料】」の翻刻は,有志の参加者によって実施されている.
著者
橋本 雄太
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.52-76, 2015-03-31

This paper examines the history of the development of mathematical education in Prussian gymnasiums in the first half of the 19th century. The Prussian gymnasium system emerged from educational reform at the beginning of the 19th century under the significant influence of the neo-humanism movement and formal Bildung theory. Prussian bureaucrats and teachers who participated in the reform put a high value on mathematics as a means of training student's mental capacity. This was reflected in the educational policy of the Prussian government. The so-called S¨uvern's plan was the first standard curriculum announced by the Prussian government in 1816 and brought an increase of the hours of teaching mathematics in Prussian gymnasiums around 1820. This situation did not last long, however, because in response to student demands, the Prussian gymnasiums had to reduce mathematical education. However, the author's analysis of the annual reports published by gymnasiums shows that S¨uvern's plan brought a quantitative change in gymnasium education; the mathematical education in gymnasiums transformed from practical and utilitarian in orientation to academic and scientific and this was vital for higher mathematical education in universities.
著者
後藤 真 小風 尚樹 橋本 雄太 小風 綾乃 永崎 研宣
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.243-248, 2018-11-24

本研究は,日本古代の史料である『延喜式』に対してTEI マークアップを施した際の,マニュアル等の記述の状況について述べたものである.TEI は,広く人文研究のためのテクストを作る国際標準として重要であるものの,そのルールが複雑であり,専門家以外には記述が困難であるという状況がある.また,このようなデータを作成した際に「どのような意図でデータを作ったのか」を記録することで,研究そのものをトレースすることができるようになるとともに,データの長期保存にとっても有益であると考えられる.
著者
北本 朝展 橋本 雄太 加納 靖之 大邑 潤三
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

「歴史ビッグデータ」とは、現代のビッグデータ解析技術を過去の世界に延長し、過去の世界を新たな視点から探る研究である。人工知能(AI)やシミュレーションなど最新のデータ駆動型モデルを活用するには、くずし字で書かれた史料に残された記録をどう入力すればよいだろうか?史料とデータ駆動型モデルを結合する鍵を握るのが、文書空間と実体空間を結合する「データ構造化」ワークフローである。そこで、文書のテキスト化やマークアップなど文書空間に関する技術と、地名エンティティなど実体空間に関する技術を研究し、分野横断的研究基盤に実装することで、歴史地震学や歴史気候学などの分野で歴史ビッグデータ研究を推進する。
著者
飯島 渉 橋本 雄太 市川 智生 五月女 賢司 中澤 港 井上 弘樹 高橋 そよ 後藤 真
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

COVID-19のパンデミックの歴史化をめぐっては、個人的な記録や記憶など、感染症対策への反応を示す資料群の整理・保全が必要である。そのための仕組みとして、国立歴史民俗博物館が運用しているクラウドソーシング・デジタル・プラットフォームを援用し、「コロナ関係資料アーカイブズ」(仮称)を構築・運用する。COVID-19のパンデミックの感染状況などの基本的な状況を示すデータを組み込む。中澤港(神戸大学)が整理・公表してきた時系列的な感染の推移データを基本とし、国別の状況も組み込む。持田誠(浦幌町立博物館)、五月女賢司(大阪国際大学)、高橋そよ(琉球大学)の収集資料などを、デジタル化して組み込む。
著者
末滿 達憲 宮崎 彰吾 佐藤 和人 橋本 雄太郎
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.177-184, 2022-06-01 (Released:2022-06-06)
参考文献数
23

種々の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に抗すべくSARS-Cov-2ワクチンが急速に開発され,本邦では薬機法に基づく特例承認を経て,医療従事者,高齢者等に続き,職域においても接種が進められている.COVID-19の病態を概観し,公表されている同ワクチン接種後の死亡例,健康被害救済制度,損害賠償制度および関係法令等を整理した.ワクチン接種に先立ち,健康被害に対する損害賠償等による製造販売業者の損失等を補償するための契約を可能とする予防接種法の改正がなされた.一方,健康被害発生時,使用者等の責任が民法,国賠法に定められているが,何れも使用者等の求償権が規定され,直接接種業務に携わる産業保健スタッフを含む医療従事者に対する損害賠償請求を妨げる明規はない.今後の新興・再興感染症の発生等に備え,法制面,実施主体との契約等につき,特に緊急時の予防接種健康被害に係る提言を行った.
著者
橋本 雄太 西田 康太郎 石原 昌人 仲宗根 哲 翁長 正道 平良 啓之 東 千夏 当真 孝 上原 史成 比嘉 浩太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.30-33, 2021

<p>31歳女性.コラーゲンタイプ2異常症による骨系統疾患あり.5年前より股関節痛認め,3年前に歩行困難となり,他院より紹介された.身長124cm,34kgと低身長で著明な可動域制限を認めた.単純レントゲンでは,両股関節とも関節裂隙は消失していた.CTでは,寛骨臼の低形成および大腿骨は短く,髄腔は扁平化していた.変形性股関節症の診断で右人工股関節置換術(THA)を行った.手術は側臥位後方アプローチで行った.Zimmer trabecular metal cup 38mmにオフセットライナーを用いて28mm骨頭を使用した.大腿骨はWagnar coneステムを用いた.術翌日よりリハビリテーションで歩行訓練を行った.術後1週目にステムの沈下を認めたが,進行はなかった.術後半年で左THAを行った.現在,術後2年経過し,カップやステムの緩みなく経過良好である.骨系統疾患に対するセメントレスTHAの際には,適切なインプラント選択には注意が必要であると思われた.</p>
著者
橋本 雄太 宮川 真弥
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.237-242, 2018-11-24

歴史文献史料を構造化されたデータとして扱うためには,何らかの機械処理可能なマークアップ言語を用いて翻刻文を記述することが望ましい.加えて人文学研究者やクラウドソーシング参加者が利用するためには,そのような言語は簡潔かつ可読性の高い文法で記述される必要がある.そこで,古文書や古記録,古典籍といった日本語文献史料を記述するための軽量マークアップ言語を開発した.この言語の文法を形式文法のひとつである解析表現文法によって定義し,また縦書き入力やシンタックスハイライトに対応したオンラインエディタを開発した.このような入力負荷の低いマークアップ言語が普及することで,クラウドソーシングによる史料翻刻や,文献史料のデータベース化が効率的に進むことが期待される.
著者
橋本 雄太
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.169-172, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
9

近年多数の文献資料がデジタルアーカイブ化されているが、専門知識を有さない一般の人々には前近代の文献資料の読解は困難である。国立歴史民俗博物館では、同館が所蔵する中世文書資料のオンライン展示システム『日本の中世文書WEB』(以下、『中世文書WEB』)を開発・公開した。『中世文書WEB』は、展示資料の内容解説に加えて、音声による文書の読み上げとアニメーションによる翻字の強調を組み合わせた「カラオケ」式のプレゼンテーションを採用している。この手法は非常によく機能し、2020年1月8日のシステム公開後、1週間の評価期間中に5,000人を超える人々がWebサイトを訪問した。また、サイト利用者48名に対して実施したオンラインアンケートにおいても、「カラオケ」式のインターフェイスが高く評価された。これらの結果は、前近代の文献資料を幅広い利用者に展示する手法として、読み上げ音声の提供が効果的にはたらくことを示唆している。
著者
小風 尚樹 中村 覚 纓田 宗紀 山王 綾乃 小林 拓実 清原 和之 金 甫榮 福田 真人 山崎 翔平 槙野 翔 小川 潤 橋本 雄太 宮本 隆史 菊池 信彦 後藤 真 崎山 直樹 元 ナミ 加藤 諭
巻号頁・発行日
pp.1-57,

2018年4月15日に開催された「2018 Spring Tokyo Digital History Symposium」のイベントレポート。シンポジウムは、歴史研究においてデジタル技術を駆使する際のいくつかの指針を提示すべく、歴史研究者・アーキビスト・エンジニアの学際的協働に基づくワークショップTokyo Digital Historyが主催した。 本シンポジウムでは、歴史研究が生み出されるまでの4つのプロセス、すなわち「情報の入手」「情報の分析」「情報の表現」「情報の公開」に着目し、それぞれに関連の深いデジタル技術や知識を提示した。さらに、それらを活用した具体的な歴史学的実践例を提供した。このシンポジウムおよびTokyo Digital Historyは、学際的協働を必要とする人文情報学プロジェクトの好例であるとともに、歴史研究の分野においては画期的な試みである。
著者
橋本 雄太
雑誌
じんもんこん2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.153-158, 2016-12-02

近年,機械処理の適用が困難な大量のデータに対して,不特定多数のボランティアの協力をインターネット上で募り,分類やタギング等のタスクを実施するクラウドソーシングの手法が人文学分野でも一般的になりつつある.一方で,日本語の歴史資料の翻刻に同手法を適用するためには,①現代人には解読困難なくずし字と,②多数のボランティアを長期的に従事させる適切な動機付けの設計の2点が課題となる.本研究では,人文学コンテンツの学習サービスと,クラウドソーシングシステムを統合することによって,ボランティアの学習意欲を動機づけに利用するとともに,タスク実施スキルの向上を図る手法を提案する.また実際に,くずし字の学習サービスと前近代災害資料の翻刻システムを統合したWebシステムを構築し,その有用性を評価する.