著者
金子 直樹 林 慶和 服部 多市 川野 真太郎
出版者
九州大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2021-10-07

COVID-19パンデミックは変異株の報告を含め未だ予断を許さない状況であり、病態の早急な解明が望まれている。われわれはこれまでに、COVID-19において特異なCD4+CTLsとDN B細胞が増加し、病態形成に関与することを明らかにしたが、その役割は不明である。本研究の目的は、これらの細胞の役割を明らかにし、治療応用への可能性を模索することである。またこれらの細胞は各種自己免疫疾患(IgG4関連疾患、強皮症)の病態形成(組織障害、線維化、自己抗体産生)にも関与することが示唆されており、本研究はCOVID-19の病態解明のみならず、非ウイルス性疾患を含む多岐疾患に応用できる可能性を秘めている。
著者
金子 直樹 川野 真太郎 松原 良太 笹栗 正明 森山 雅文 丸瀬 靖之 三上 友里恵 清島 保 中村 誠司
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.38-42, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
11

今回,舌粘膜疹を主訴に来院した第2期梅毒の1例を経験した。症例は20歳代の女性で,舌尖および舌縁部の白色病変と両手掌の丘疹性紅斑を認めた。梅毒血清検査にて陽性であったため第2期梅毒と診断し,抗菌薬内服を開始した。その後,口腔粘膜疹および皮疹は消退し,梅毒血清検査は陰性化した。近年,本症例のように口腔粘膜疹が梅毒の初発症状となる症例が増えており,今後注意を要すると考えられた。
著者
金子 直樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.244-264, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
参考文献数
68

本稿は岩木山信仰の伝播について,主にそれに関与した主体,および北海道における状況を,先学が明らかにした信仰圏モデルと関連づけて検討した.岩木山信仰は,ナイーブな自然崇拝的な特徴を有している一方,近世の津軽藩による別当百澤寺の庇護や津軽総鎮守化などの政治的影響力も指摘されてきた.このため,岩木山の信仰圏は津軽地方に意図的に限定され,百澤寺も信仰を組織的に拡大させる活動には消極的であった.しかし,津軽藩による管理が廃絶した明治以降,カミサマと称される宗教者,および非組織的であった民衆が,新たに信仰を広める主体となった.そして彼らの一部は,移住先の北海道において,岩木山系神社の建立という形式で,岩木山信仰を従来の信仰圏と考えられていた津軽地方を越えて,北海道に伝播させた.しかし,岩木山信仰の非組織的という特徴のため,こうした動きは長期的には持続せず,信仰の伝播という点では限定的な動きにとどまっている.
著者
金子 直樹
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.311-330, 1997-08-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
110
被引用文献数
1

This study aims to clarify the spatial structure of the “Mt. Iwaki belief” in the Tsugaru district of Aomori Prefecture. During the Edo period Mt. Iwaki belief was encouraged by the Tsugaru-han, the local authority in the district, who supported Hyakutakuji temple on Mt. Iwaki in order to further their political control. The han authorities also accepted the local Tango-Biyori legend which suggested that whenever people from the Tango region of Kyoto prefecture entered Tsugaru the wrath of Mt. Iwaki was incurred and stormy weather would result. In times of bad weather, therefore, the people of Tsugaru would hunt down anyone hailing from Tango. Given the tacit encouragement of the authorities, it is fair to suggest that the sphere of Mt. Iwaki belief covered the same area as the territory of Tsugaru-han.This said, it should also be pointed out that neither the han authorities, nor Hyakutakuji temple, had direct control over Mt. Iwaki belief. Thus, Oyama-Sankei, one of the central features of Mt. Iwaki belief, was never controlled by any particular religious organization. Oyama-Sankei was a coming-of-age initiation ceremony held on the lunar equivalent of August 1st. The age at which initiants took part, however, varied among the different villages of Tsugaru. In the 15 kilometer zone surrounding Mt. Iwaki, initiation took place during young childhood. Further away, in the 15-30 kilometer zone, initiation was at a slightly older age, and in the furthest zone, 30-70 kilometers away, initiation was delayed until adolescence. In this outer zone it was also the case that other mountains were used as a substitute for Mt. Iwaki.There was no clearly defined route for pilgrims observing Oyama-Sankei, and a number of ways up Mt. Iwaki were utilized. Four routes stand out in particular, passing through Hyakusawa-guchi (at the south-east foot of the mountain), Nagadai-guchi (north-west), Dake-guchi (south-west), and Oishi-guchi (north-east). The former two were used by locals as well as those from further afield, and the latter two mostly by locals. Thus, the spatial structure of Mt. Iwaki belief can be considered from the point of view of age of worshippers at the time of initiation, the route used for pilgrimage, and the location of substitute mountains.
著者
金子 直樹
出版者
広島大学附属福山中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.177-182, 2008-03-20

2006年度から当校では「新サイエンスプログラム」と題して、「リテラシー」をキーワードとする全校あげての研究開発を行なっている。国語科では従前から、教科の指導内容そのものが「リテラシー」育成を目指すものであるが、この機会に改めて「リテラシー」という考え方を軸にして授業を構成してみた。題材として取り上げる「古典」は、扱い方によっては内容主義や尚古趣味に陥りがちなものであるだけに、むしろ「リテラシー」の本質である「批評」という面を強く意識しておかなければならない。その「批評」という思考過程を組み入れやすくするために、「比べ読み」の活動を用いて授業を展開した。以下は、第37回中・高等学校公開研究会で公開授業として実施したものに基づく記録である。また、昨年の報告「国語科におけるリテラシーの授業一中学1年生の古典の授業から一」(本研究紀要47巻2007.3)の続編である。
著者
金子 直樹
出版者
広島大学附属福山中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.156-161, 2018-03-31

国語科、とくに古典学習におけるアクティブ・ラーニングとは、パフォーマンス・ラーニングではない。話し合いや発表会という「活動」を伴っていなくても、生徒たちが向き合うテキストを、ただの対象物(しかも時代の離れた、縁遠い興味しかもてないもの)としてではなく、意図を持って私たちに「嘘」を語りかけてくるものとして捉え直すことで、テキストとの関係に主体性と能動性をもたらすことが重要である。特に中学生段階では、高等学校での本格的な古典学習を迎える準備として、そのような構えを育てておきたい。以下に、テキストの「嘘」を素材としての単元構成・教材編成と、その実践・改善例とを提案する。