著者
是川 夕
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.109-127, 2013 (Released:2014-09-10)
参考文献数
24

外国人人口の増加は, 1990年代以降の日本における, 戦後日本の社会の構造変化を象徴する出来事であり, これまで多くの研究が行われてきた分野であるものの, 外国人女性の出生行動について行われた研究は, 思いのほか少ない. しかし, 出生行動は現地社会と結びつきの強い「移民2世」を生み出すなど, 移民の定住化の方向性を左右する重要な契機であり, 外国人人口の日本社会への定住化が進む現在, こうした点について明らかにすることは重要である.本稿では, これまで欧米の先行研究が明らかにしてきたように, 移住過程, とくに定住化が外国人女性の出生動向に与える影響について分析を行った. その結果, 外国人女性の出生行動は, 同一国籍内でもサブグループ間で大きく異なる可能性が高いこと, および定住化に伴う適応/同化効果が出生力にプラスの影響を与える可能性が示されたといえよう. また, 日本における外国人の定住化が, 世代の再生産という新たな局面に入っていくことが示されたといえよう.こうした結果は, マクロ統計から得られた知見であり, 今後, ミクロデータを利用したサブグループ間の出生力格差や, 定住化の影響の違いを明らかにする必要があるだろう. その一方で, 本稿の研究はこれまでこうした分野における知見が少なかった中, 今後の調査研究の作業仮説となる重要な知見を提供したものと考えられる.

5 0 0 0 OA 趣旨説明

著者
是川 夕
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
人口問題研究 = Journal of Population Problems (ISSN:03872793)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.339-347, 2022-09

特集Ⅰ
著者
是川 夕
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.19-42, 2018 (Released:2018-10-15)
参考文献数
52

日本の移民研究では1990年代以降,外国籍人口の急増に伴い,移民第二世代の教育問題が注目されてきている。これは,社会的統合を重視する欧米の移民研究において特に重視されて来た論点であり,同論点の検証に当たっては,移民第二世代が学校で実際に経験する困難さだけではなく,親の階層的地位や移民の編入様式に注目する「分節化された同化理論」など,広く社会構造との関連を視野に入れた分析枠組みが用いられてきた。しかしながら,日本では移民第二世代の学校文化への適応に焦点を当てた臨床的なアプローチは数多く行われて来たものの,複数の移民集団に横断的な教育達成の状況やその要因についてナショナルレベルのデータから明らかにした研究はまれであった。また,その際,分節化された同化理論が想定するように,親世代の階層的地位や編入様式など,広く社会構造との関係に注目した研究は少なかったといえよう。こうした状況を受け,本研究では国勢調査の個票データを用いて,母親の国籍別に見た子どもの高校在学率に焦点を当てた研究を行うことで,移民第二世代の教育達成の状況とその要因について明らかにする。また,分節化された同化理論に基づくことで,移民第一世代と第二世代の階層的地位の世代間変動に注目した分析を行う。その結果,外国籍の母を持つ子どもの場合,日本人の母を持つ場合と比較してその高校在学率は低い傾向にあるものの,それは移民第二世代一般に見られる傾向であり,親世代での階層的地位と子どもの高校在学との結びつきは相対的に弱いことが示された。つまり,分節化された同化理論は日本には妥当しない可能性が高いといえる。その一方で,移民の低い教育達成は,子ども自身の日本国内での居住期間の長期化に伴う日本社会への適応によって自然と解消する可能性が低いことも示された。これは多言語での情報提供や日本語教室など教育現場に対する今後のより一層の政策的支援の必要性を示すものである。
著者
是川 夕
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
pp.1801002, (Released:2018-09-03)
参考文献数
52

日本の移民研究では1990年代以降,外国籍人口の急増に伴い,移民第二世代の教育問題が注目されてきている。これは,社会的統合を重視する欧米の移民研究において特に重視されて来た論点であり,同論点の検証に当たっては,移民第二世代が学校で実際に経験する困難さだけではなく,親の階層的地位や移民の編入様式に注目する「分節化された同化理論」など,広く社会構造との関連を視野に入れた分析枠組みが用いられてきた。しかしながら,日本では移民第二世代の学校文化への適応に焦点を当てた臨床的なアプローチは数多く行われて来たものの,複数の移民集団に横断的な教育達成の状況やその要因についてナショナルレベルのデータから明らかにした研究はまれであった。また,その際,分節化された同化理論が想定するように,親世代の階層的地位や編入様式など,広く社会構造との関係に注目した研究は少なかったといえよう。こうした状況を受け,本研究では国勢調査の個票データを用いて,母親の国籍別に見た子どもの高校在学率に焦点を当てた研究を行うことで,移民第二世代の教育達成の状況とその要因について明らかにする。また,分節化された同化理論に基づくことで,移民第一世代と第二世代の階層的地位の世代間変動に注目した分析を行う。その結果,外国籍の母を持つ子どもの場合,日本人の母を持つ場合と比較してその高校在学率は低い傾向にあるものの,それは移民第二世代一般に見られる傾向であり,親世代での階層的地位と子どもの高校在学との結びつきは相対的に弱いことが示された。つまり,分節化された同化理論は日本には妥当しない可能性が高いといえる。その一方で,移民の低い教育達成は,子ども自身の日本国内での居住期間の長期化に伴う日本社会への適応によって自然と解消する可能性が低いことも示された。これは多言語での情報提供や日本語教室など教育現場に対する今後のより一層の政策的支援の必要性を示すものである。
著者
是川 夕
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-17, 2009-05-31

在日外国人は,戦後の一時期を除けば継続的に増加しており,特に1980年代後半のバブル経済期に大幅に増加した。在日外国人は,特定地域への集住の観点から論じられてきた。その結果,日本における外国人研究は,おもに都市,地域社会学によって,東京の新宿,池袋,そして静岡県浜松市といった個々のエスニック・コミュニティに焦点を絞って行われてきた。それとは対照的に,外国人の特定地域への集住現象,とりわけ外国人の住み分けについて定量的な観点から行われた研究は非常に少ない。一方,最近では,外国人の定住化が進むとともに,一部の地域では,外国人住民と日本人住民との摩擦が見られ始めているといった状況を反映して,定量的な観点から外国人の住み分けについて分析することの必要性が高まっていると言えよう。本稿では,外国人と日本人の住み分けの程度を算出するため,全国の自治体から外国人比率の高い上位10%を抽出し,それぞれについて国勢調査小地域集計に基づき,非類似性指数を求めた。この結果に基づき,重回帰モデルを用いて,外国人の住み分けを促進・抑制する要因を明らかにした。このモデルは,自治体ごとに,国籍構成などの外国人口の属性,及び,自治体の人口規模や産業構造などを含む,都市生態理論に基づいたものである。その結果,日本における外国人の住み分けは,自治体ごとに大きくことなることが示され,各自治体の外国人の住み分けの実態を反映したものであることが明らかになった。さらに,重回帰分析による推定結果からは,日本における外国人の住み分けが,欧米における事例とは異なり,大都市インナーエリアではなく,地方の工業地帯において見られることが示された。また,国籍別ではブラジル国籍人口の増加が住み分けの促進に正の影響を,フィリピン国籍女性の増加が,住み分けを抑制する効果を持つことが明らかになった。ブラジル人の多くは日系人であることから「デカセギ」労働者として社宅などにまとまって居住する,「顔の見えない定住化」現象が現れたものといえるだろう。また,フィリピン国籍女性の増加が住み分けを抑制する効果を持つことは,フィリピン人女性の多くが日本人と結婚して在留しており,住み分けにつながりにくい構造を持っていることに起因すると思われる。以上のことから,在日外国人の住み分けについて,これまで定性的研究によって明らかにされて来たことが,定量的な観点から支持されたといえるだろう。また,このことは,日本が,移民受入れ国家として,外国人の社会統合について対処しなくてはならない歴史的段階に達していることを示唆するだろう。
著者
岩澤 美帆 別府 志海 玉置 えみ 釜野 さおり 金子 隆一 是川 夕 石井 太 余田 翔平 福田 節也 鎌田 健司 新谷 由里子 中村 真理子 西 文彦 工藤 豪 レイモ ジェームズ エカテリーナ ヘルトーグ 永瀬 伸子 加藤 彰彦 茂木 暁 佐藤 龍三郎 森田 理仁 茂木 良平
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

結婚の形成と解消の変化を理解するために、(1)変化・差異の記述、(2)説明モデルの構築と検証、(3)変化の帰結の把握に取り組んだ。横断調査、縦断調査データの分析のほか、地方自治体に対するヒアリング調査を行った。若い世代ほど結婚が起こりにくく、離婚が起こりやすい背景には近代社会を生きる上で必要な親密性基盤と経済基盤という両要件が揃わない事情が明らかになった。要因には地域の生活圏における男女人口のアンバランスや縁組み制度の衰退、強すぎる関係、男女非対称なシステムと今日の社会経済状況とのミスマッチが指摘できる。一方で都市部や高学歴層におけるカップル形成のアドバンテージの強化も確認された。
著者
石川 義孝 宮澤 仁 竹ノ下 弘久 中谷 友樹 西原 純 千葉 立也 神谷 浩夫 杜 国慶 山本 健兒 高畑 幸 竹下 修子 片岡 博美 花岡 和聖 是川 夕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

わが国在住の外国人による人口減少国日本への具体的貢献の方法や程度は、彼らの国籍、在留資格などに応じて多様であるうえ、国内での地域差も大きい。しかも、外国人は多岐にわたる職業に従事しており、現代日本に対する彼らの貢献は必ずしも顕著とは言えない。また、外国人女性や国際結婚カップル女性による出生率は、日本人女性の出生率と同程度か、より低い水準にある。一部の地方自治体による地道な支援施策が注目される一方、国による社会統合策は不十分であり前進が望まれる。