著者
渡邊 慎一 石井 仁
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.75-86, 2017-09-01 (Released:2017-10-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は,全国の公立小学校の運動会開催日を特定し,運動会開催日の熱中症の危険度を評価することを目的とする.運動会開催日は各校が公開しているホームページから特定した.運動会開催日の WBGT は環境省のデータを用い,日本体育協会が規定する指針に基づいて熱中症の危険度を評価した.全国で春期に運動会を開催する小学校は全体の 54.3% であり,秋期は 45.7% であった.運動会の春期開催期間は全国平均で 5 月 16 日~ 6 月 11 日であり,秋期は 9 月 11 日~10 月 17 日であった.沖縄県は,熱中症危険度が「警戒」以上の暑熱環境下で運動会を開催している小学校数の割合が 99.0% であるが,熱中症事例数は 5 件と少ない.これは,児童の暑熱馴化や熱中症予防の適切な措置によると推察される.日最高 WBGT に基づいて定めた熱中症の危険がある期間を避けることにより,運動会およびその練習における熱中症の危険度を低減できる可能性がある.
著者
渡邊 慎一 武藤 将史
出版者
人間‐生活環境系学会
雑誌
人間‐生活環境系シンポジウム報告集 第42回人間-生活環境系シンポジウム報告集 (ISSN:24348007)
巻号頁・発行日
pp.107-110, 2018 (Released:2021-04-23)
参考文献数
5

紫外線の過度な照射は健康被害をもたらすことが指摘されている.本研究は,紫外線防御アイテムである衣 服・帽子・アームカバー・日傘の組合せ条件が,人体各部位および全身の紫外線遮蔽率に及ぼす影響を明らかにす ることを目的とする.24 個の UV センサを取付けた 2 体のマネキンを測定に用いた.実測の結果,以下の知見を 得た.本研究で対象とした紫外線防御アイテムの中で,全身の紫外線防御率が最も高かったのは、条件⑤の「衣服 +アームカバー+日傘」の組合せであり、14:00 において 60.3%であった.帽子およびアームガードは覆う部位の 紫外線をほぼ完全に遮蔽することができるが,効果は局所的である.一方、日傘の紫外線遮蔽効果は頭部だけでな く、肩や胸など広範囲に及ぶ.太陽高度が低くなるにしたがって、日傘および帽子の顔面および全身に対する紫外 線遮蔽率が低下する.
著者
渡邊 慎一 石井 智也 石井 仁 岩井 将行
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.21-27, 2023 (Released:2023-09-28)
参考文献数
16

本研究は、雪洞「かまくら」内の温熱・空気・紫外線環境を明らかにすることを目的とする。測定は、2019年2月12日に岐阜県高山市において実施した。屋外および「かまくら」内において、気温、相対湿度、気流、長短波放射量、CO2濃度、UV Indexを測定した。測定日の昼間(9:30〜16:00)において、屋外の平均気温は2.2℃であり、「かまくら①(出入口が1ヶ所)」および「かまくら②(出入口が2ヶ所)」の平均気温はそれぞれ0.4℃および−1.1℃であった。UTCIの平均値は、屋外が20.4℃、「かまくら①」が2.2℃、「かまくら②」が1.8℃であった。「かまくら」内のCO2濃度は、炭の燃焼や人体の呼気によって上昇した。昼間の屋外におけるUV Indexの最大値は4.61であり、紫外線の強さは「中程度」と評価された。一方、「かまくら」内では最大でも0.05であり、紫外線強度は極めて小さかった。
著者
渡邊 慎一 石井 仁
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.133-144, 2020-02-20 (Released:2020-07-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

熱中症の予防策の一つとして日傘がある.本研究は,素材・加工および色の異なる7種の日傘のUTCI低減効果を明らかにすることを目的とする.実測は2013年7月及び8月に,大同大学にて実施した.日向及び日傘下において,気温・相対湿度・風速・上向き下向き長短波放射量を測定した.その結果,以下の知見を得た.日傘の日射遮蔽率は,日射量に依らずほぼ一定であった.最も日射遮蔽率が大きい日傘は「ラミネート白」の99.7%であり,最小は「通常白」の48.3%であった.日射量が増加するに従って,日傘の長波長放射増加率が大きくなった.黒色日傘の方が白色日傘よりも長波長放射増加率が大きい.日射量1,000W/m2において,日傘下のMRTは日向よりも7.9℃〜15.0℃低温となった.日射量800W/m2以上において,UTCI低減効果が最大の日傘は「ラミネート白」で-3.7℃であり,最小は「通常白」の-1.8℃であった.
著者
石井 仁 渡邊 慎一
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.65-74, 2018 (Released:2021-04-07)
参考文献数
30

野外音楽フェスティバル会場において気象要素の測定を行い,暑熱ストレスの評価ならびにアンケート調査により主に来場者の防暑対策行動の実態調査を行った。調査は夏期(2011年7月)と秋期(2011年10月)に開催された野外音楽フェスティバルで実施した。夏期の野外音楽フェスティバル会場は,学協会の指針等から判断して暑熱ストレスの高い環境であった。そして熱中症のような暑熱障害の予防には先行研究と同様に気象要素の会場現地での実測が重要であることが示された。来場者の多くはタオル,水などの飲料,帽子,うちわ・扇子を防暑対策として持参していた。夏期のフェスティバルにおいて暑熱障害は発生しなかったが,これは来場者が防暑対策を主体的に行っていたことが一因として考えられる。秋期開催の野外音楽フェスティバル会場は暑熱ストレスが高くはない環境であった。秋期の野外音楽フェスティバルでは暑さが厳しくないと予測して防暑対策の携行品を持参しない来場者が増えた。
著者
岡本 直輝 渡邊 慎一
出版者
人間‐生活環境系学会
雑誌
人間‐生活環境系シンポジウム報告集 第45回人間-生活環境系シンポジウム報告集 (ISSN:24348007)
巻号頁・発行日
pp.49-52, 2021 (Released:2022-12-03)
参考文献数
4

本研究は、日傘生地の色および加工の違いが暑熱緩和効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。測定は2021年7月21日から23日に、名古屋市に所在する大同大学のテニスコート、芝生、コンクリート面において実施した。傘(銀)、日傘(白)、日傘(銀)、日傘(白+ネット)の4種の傘下および比較のため日向の熱環境を測定した。その結果、以下の知見を得た。白色日傘は日射遮蔽効果が最も大きく、生地温度の上昇による下向きの熱放射量の増加が最も小さいことが示された。傘下のMRTは、傘生地の放射特性(日射遮蔽率、下向き長波長放射増加率)および地表面の放射特性(アルベド、日射吸収率)が影響する。テニスコートにおいて、UTCI低減効果が最も大きかったのは日傘(白+ネット)の-3.6℃であり、次いで日傘(白)の-3.0℃、日傘(銀)の-2.6℃、傘(銀)の-1.4℃であった。この結果から、傘の表面が銀色より白色の方が暑熱緩和効果が大きいことが示された。
著者
渡邊 慎一 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.49-59, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
50
被引用文献数
3

屋外の温熱環境を評価する際,日射は極めて重要な要素である.多くの温熱指標は,その算出において平均放射温度を入力値として要求している.本報では,長波長および短波長放射を考慮した屋外における平均放射温度の算出方法を概説した.まず,屋外における平均放射温度の算出理論を記述した.そして,長短波放射計を用いた 6 方向および上下 2 方向の測定に基づいた算出方法を示した.さらに,より簡便な測定方法であるグローブ温度計を用いた算出方法を示した.実際に測定を行う際には,使用できる測定器および要求される精度から適切な算出法を決定する必要がある.
著者
渡邊 慎一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.231, 2009

<B>目的</B> 本研究は、アンケート調査に基づいて炬燵の使用実態を把握すると共に炬燵の使用終了日を特定することを目的とする。<BR><B>方法</B> アンケート調査は2008年4月下旬から7月に、愛知県を中心に実施した。回収したアンケート総数は1488件である。アンケートは以下の8項目から構成した。1.今年、炬燵を使用したか 2.いつ炬燵の使用を止めたか 3.性別 4.年齢 5.居住地の郵便番号 6.居住形式 7.築年数 8.自由記述。<BR><B>結果</B>(1)炬燵の所有率は全体の70%であった。住居形式別にみると、戸建住宅が77%、集合住宅が61%であった。また、炬燵の使用率は全体の53%であった。<BR>(2)地域によって炬燵使用を終了する時期に差があることが示された。20%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が3月20日、島根県が3月27日、長野県が4月1日であった。また、80%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が5月10日、島根県が5月11日、長野県が6月19日であった。寒冷な地域において炬燵使用を終了する時期は、温暖な地域よりも遅いことが示された。<BR>(3)20%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が7.8℃、島根県が5.6℃、長野県が0.7℃であった。また、80%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が14.6℃、島根県が11.2℃、長野県が12.6℃であった。<BR>(4)男性の方が女性より早く炬燵使用を終了する傾向がある。<BR>(5)30歳までは炬燵使用を終了する時期に差がみられないが、31歳以上になると徐々に炬燵使用を終了する時期が遅くなる傾向がある。<BR>(6)集合住宅の方が戸建住宅より早く炬燵使用を終了する傾向がある。
著者
横田 知樹 近藤 亮磨 渡邊 慎一 森川 博之 岩井 将行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1794-1801, 2018-10-15

紫外線(以下UV)は皮膚がんの発症や白内障などの重大な疾病につながるにもかかわらず,その健康影響の評価・予防は国内の労働現場ではあまり知られていない.さらに,反射率の高い建材の普及から過度なUVに暴露する潜在的なリスクは年々増大している.しかし,既存のUVセンシング手法は,天空面などの1方向のみの計測を行うものばかりであり,太陽の動きや地物のUV反射による影響を十分に考慮できていない.既存研究ではウェアラブルデバイスを用いて個人単位でのUV暴露を評価する試みがなされているが,作業者全員にUVセンサを装着することはコストの観点から現実的でない.そのため,作業者の周辺環境において瞬間ごとのUV暴露をより正確に計測することができれば,急性障害のリスクを認識することができ,繰り返し日々計測することで,反覆暴露によって積み重ねられる慢性傷害のリスクを認識することができる.そこで我々は,温熱環境分野で用いられる6方向からの日射と熱放射の計測により人体が受け取る熱量を推定する手法に着目してUVに応用し,地物および壁面からの反射を含めた,6方向からの紅斑紫外線量を計測するセンシングシステムとしてUV-Cubeを提案・設計・実装・評価した.本論文ではUV-Cubeを用いて,直接天方向から光が当たらない屋外作業現場などのUV暴露が軽視されてきた環境にも,太陽高度や反射が作用し複数方向から入射するUVによる潜在的な暴露があることを明らかにした.
著者
渡邊 慎一 石井 仁
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.65-68, 2015-11-16

本研究は、被験者実験により掛け布団のないテーブル炬燵の温熱的快適性を明らかにすることを目的とする。被験者は12名の男子大学生とした。室温を5℃・10℃・15℃・20℃の4段階に設定した。テーブル炬燵の設定は「強」とした。実験の結果、従来の炬燵の方がテーブル炬燵よりも暖かい環境を提供し、快適感も高いことが示された。室温15℃程度以上で、掛け布団のないテーブル炬燵により温熱的に受け入れられる環境となることが示された。これよりも低温環境ではエアコン等とテーブル炬燵の併用が望ましい。
著者
渡邊 慎一 石井 仁 長野 和雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.107-110, 2014-11-20

本研究は、日傘使用時の温熱環境に総合有効温度ETUを適用し、その算出法を示した。実測データを用いて日向および3種の日傘使用時のETUを算出した。その結果、日向のETUは49.9℃であることを示した。ラミネート加工(黒)日傘のETUが最も低く44.9℃であり、日向のETUとの差は-5.0℃であった。また、通常加工(黒)日傘の日向との温度差は-3.7℃、通常加工(白)が-2.6℃であった。
著者
渡邊 慎一 堀越 哲美 三好 結城 宮本 征一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.497, pp.47-52, 1997
被引用文献数
18 9

A well-known heating facility in Japan, KOTATSU, heats the lower extremities of the human body by an infrared heater or wood coal fire in a box. The objective of this paper is to clarify the thermal effect of KOTATSU on the human thermal comfort quantitatively. Experiments were carried out under the following combined conditions: air temperatures were 1 1℃, 14℃, 17℃, and 20℃ and electric power of infrared lamp were to OW('off'), 87W('low'), 91W('middle') and 181W('high') electric consumption, respectively. Five male and six female subjects participated in those experiments. The following result was obtained: There was significant difference of comfort vote between female and male subjects when subjects reported hotter votes than thermal neutrality. The KOTATSU at 'low' and 'middle' IR heater level has the equivalent effect of 7℃ operative temperature rise at the condition of 11℃ air temperature, and that at 'high' IR heater level has the equivalent effect of 10℃ operative temperature rise at the same condition. Also the KOTATSU has more than 2℃ effectiveness at the condition of 14℃ air temperature even if the infrared lamp of the KOTATSU is turned off. Its effectiveness decrease gradually with increasing air temperature.