著者
野口 隆子 鈴木 正敏 門田 理世 芦田 宏 秋田 喜代美 小田 豊
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.457-468, 2007-12-30

本研究では,教師が実践を語る際に頻繁に用いる語に着目し,語が暗黙的に含み込む多様な観点を明らかにするとともに,幼稚園及び小学校教師が用いる語の意味について比較検討をおこなった。対象となる語として「子ども中心」,「教師中心」,「長い目で見る」,「子ども理解」,「活動を促す」,「環境の構成」,「仲間作り」,「トラブル」の8語を選択。幼稚園計9園に勤務する保育者計92名(平均経験年数6.33年,SD=7.27),小学校計6校に勤務する教師101名(平均経験年数17.1年,SD=9.68)に対し語のイメージを連想し回答する質問紙調査を実施した。各語毎に内容をカテゴリー化し,幼稚園・小学校教師の発生頻度を比較したところ,全ての語において有意な偏りがみられた。全体的に,幼稚園教師は子どもの主体性や自発性を重視し,内面や行動について教師側が読み取りをおこない共に活動をおこなっていく観点を持っている。一方,小学校教師は教師側の指導,方向付けを重視し,子どもを理解する際直接な対話を重視する観点を持っていた。同じ語を対象としながらも,幼稚園・小学校の教師間では語の受けとめ方や理解に相違があることが示唆された。
著者
上田 敏丈 秋田 喜代美 芦田 宏 小田 豊 門田 理世 鈴木 正敏 中坪 史典 野口 隆子 淀川 裕美 森 暢子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.67-79, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
29

日本では,約1万の幼稚園があり,その内の70%が私立幼稚園である。私立幼稚園の多くは,ファミリービジネスであり,園長は経営者としての役割も担っているため,保育の質の向上には,実践面の役割を担う主任教諭の役割は重要である。そこで本研究では,私立幼稚園の主任教諭が自身のリーダーシップをどのようなものとして捉え,また自身の役割をどのようなものとして認識しているのか,そこでの主任教諭としてのやりがいや葛藤はどこにあるのかを明らかにすることを目的とする。私立幼稚園の主任教諭8名に対してインタビューを行い,質的データ分析方法であるM-GTA(木下2003)を用いて分析を行った。その結果,25の「分析概念」,9つの[カテゴリー],3つの〈コア・カテゴリー〉が生成された。主任は,園長と職員集団との意思疎通を図り,それぞれの意図を伝達する〈つなげる〉ことと,カリキュラムの調整や職員への指導,心理的支援といった職員集団を〈まとめる〉ことをリーダーシップと捉える一方で,この2つのリーダーシップの間で,やりがいと共に葛藤の〈板挟み感〉を感じていることが明らかとなった。
著者
小田 豊 秋田 喜代美 芦田 宏 鈴木 正敏 門田 理世 野口 隆子
出版者
独立行政法人国立特殊教育総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から18年度までの3年間に渡って採択された科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))「幼児教育における教師の保育観の日米比較文化研究:ビデオ刺激法による検討(課題番号16402042)」において、まず、多声的エスノグラフィー法を援用したビデオ再生刺激法の開発が挙げられる。その研究方法に基づいて、以下の2点を主たる研究成果としてここに記す。◆良質の保育を保育実践に照らし合わせて検証する本研究を通して、日独米の保育者それぞれが考える【良い保育】の要素が導き出された。「保育者の持つ"良い保育者"イメージに関するビジュアルエスノグラフィー」(質的心理学研究第4号/2005/No.4/152-164)では、日本の保育者を対象に"良い保育者"イメージを明示化することを試みた。その結果、"良い保育者"イメージは『子ども中心』志向と密接に結びついていることが示唆された。◆保育実践文化における保育者の暗黙的実践知・信条を描き出す海外での発表を数多くこなすことで、色々な分野や文化背景を持つ研究者から教示を得ることができたが、研究協力者であるドイツ人研究者からは色々な刺激を受けた。彼らと共有し合ったデータを用いた「多声的エスノグラフィー法を用いた日独保育者の保育観の比較検討一語頻度に注目した実践知の明示化を通して一」(教育方法学会掲載)では、ビデオ映像を用いた多声的エスノグラフィーの手法によって、日独の保育者の暗黙的な実践知として作用している保育観を明示化し、比較検討することを試みた。ビデオ視聴における保育者の語りを語頻度を軸に分析し、3つの共通点「子どもたちの自主性、主体性の尊重と、指導することへの抵抗感」「社会性の育ちを重視する視点」、そして「安全への視点」を見いだしたが、その内部構造は日独で異なっているという知見が得られた。
著者
秋田 喜代美 小田 豊 芦田 宏 鈴木 正敏 門田 理世 野口 隆子 箕輪 潤子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は幼小移行を園文化から学校文化への移行という文化的観点から、3対象調査により検討を行った。第1は、描画と面接での短期縦断卒園前と入学後の日本と台湾の子どもの比較文化調査である。幼児の不安は仲間関係や生活全般であり、台湾が学業不安が高いのとは対照的であった。物理的差異から文化的規範の差異の認識に時間がかかることも明らかにした。第2の保護者縦断質問紙調査の日台比較からは、日本の保護者の方が基本的生活習慣・集団生活・情緒・人間関係への期待が高いことを明らにした。第3に幼小人事交流教師調査により使用語彙の相違、幼少人事交流での適応過程の相違を明らかにした。