著者
阿部 耕也
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.103-118, 2011-06-10 (Released:2014-06-03)
被引用文献数
1

本稿は,幼児教育における相互行為を分析する視点・枠組みを検討することを目的とする。 幼児教育は,家庭での初期的社会化の段階と学校教育段階の間に位置し,両者と密接に関連している。幼稚園での教育は,集団を媒介にした指導が軸となっており,学校における社会化に先行する雛形が観察される。 幼児をその相互行為の様式として観察─分析しようとするさい,注目されるのは種々の非対称ルールである。幼児─大人間でやりとりされる問いかけ─応答,人称─呼称のあり方など,いくつかの局面で非対称ルールは見出されるが,それらを介して大人と子どもの相互行為が構成され,社会化場面が立ち上がっていく。 遊びや指導場面では,子どもの集団においても非対称な関係があり,集団活動への参与資格にかかわる非対称ルールは,集団あるいは社会が成立し,存続するために不可欠の契機となる。幼児教育とはその意味で,非対称ルールを手がかりに対称ルールの習得を目指す,子どもへの働きかけといえる。 社会化は,集団を構成することと参与者が構成員となることを相即的に成就させる過程を示す。本稿では,具体的な相互行為場面をそうした過程が進行している場として観察し,分析する視点・枠組みを準備する。
著者
馬居 政幸 外山 知徳 阿部 耕也 磯山 恭子 唐木 清志
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

95年度から実施してきた調査を踏まえ、平成14年度から3年計画で次の3種の調査研究を実施した。1.日本文化開放政策進行に伴う韓国青少年の意識と行動の変化把握のためのソウル市、大田市、釜山市での継続・発展調査。2.日本理解・批判に関係する学習機会の青少年への影響と社会的文化的基盤解明のための新調査。3.日韓相互理解教育のためのプログラム開発とモデル授業実施。これらの調査結果の分析から、現代韓国青少年が日本と同様に個人化が進行する豊かな社会に育ち、社会的自立への課題を日本青少年と共有することを明らかにした。さらに、日本文化への接触状況と日本・日本人への評価の継続調査の総合分析から、漫画を中心に日本文化開放以前に浸透した日本文化が韓流文化の源流を形成し、文化開放の進行に伴いアニメや歌謡も類似の傾向が見られることを把握した。また日本・日本人観の変化の5類型を析出し、相互理解を阻む新たな意識構造を解明した。特に韓国中高生の「日本・日本人評価」と「推測する韓国・韓国人評価」の比較から、日本と同水準の生活を享受する青少年による既存世代と異なる韓国上位の意識形成を確認。これらとモデルプログラム実施結果との総合分析から相互理解教育促進への次の課題を解明した。1.インターネットを代表にIT化の進行が自国文化・言語内に閉じた意識と行動を強化するため、従来と異なる相互の理解(誤解・不信)に関わる多様な情報サイトの影響の実証研究と相互理解促進のための情報サイトの増設が必要である。2.両国の現代文化共有化は相互理解の基盤形成に寄与する反面、両国社会の問題点を認識させる側面もある。その克服は規制ではなく、より積極的かつ多面的な現代文化共有化の機会拡大が必要である。3.世代間格差を伴う新たな相互理解の障壁形成を克服するために、差異の相互認知に止まらず相互に修正をも要求しあうことで二国間を超えて共有すべきアジア的シチズンシップの構築とその教育システムが必要である。
著者
阿部 耕也
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.151-165, 1986-10-15

This paper attempts to investigate caller-counsellor (child-adult) interaction focusing on typification. By means of discourse analysis, councellor's typification of children is dealt with as social interaction. We believe that this typification process can be considered to be an important function of socialization. The form of typification in conversational data was analysed by following procedures. (1) The counsellor tipifies the caller by selecting a certain categorization device out of many possible devices applicable to the caller. We can formulate "adequacy" of this typification in caller-counsellor interaction from the viewpoint of Sacks's "categorization problem". In terms of this standard of "adequacy", counsellor's typification acts were examined in reference to all possible categorization devices. (2) It was analyzed in counselling process how the counsellor used those typification devices for redefinition of caller's situations and for producing prescriptions. As a result, we find (1) typification has a tendency to convergence into certain devices, especially the "school year" device which is seemed to have a "previlege" in counsellor's selection, and (2) typification of caller is managed by counsellor all the way through counselling process. These findings suggest that "telephone counselling" as a socialization process has a function as "circuit to school (education)".