著者
中川 拓也 井上 さゆり 横畑 泰志 佐々木 浩 青井 俊樹 織田 銑一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-20, 2012 (Released:2012-08-23)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

日本の中央部および西部で1982~2002年に収集された70頭のニホンイタチ(Mustela itatsi)および12頭のタイリクイタチ(M. sibirica)の寄生蠕虫類を調査した。吸虫1種(浅田棘口吸虫Isthmiophora hortensis(Asada, 1926)),線虫3種(日本顎口虫Gnathostoma nipponicum Yamaguti, 1941,Sobolyphyme baturini Petrow, 1930および腎虫 Dioctophyme renale(Goeze 1782))がそれぞれ岐阜および愛知県,兵庫県,石川および福井県および京都府,兵庫県産のニホンイタチから得られた。 鉤頭虫の1種,イタチ鉤頭虫 Centrorhynchus itatsinis Fukui, 1929が東京都および静岡,石川,福井,岐阜,三重,滋賀および鹿児島の各県産のニホンイタチおよび三重および滋賀県産のタイリクイタチから検出された。今回のS. baturiniの検出は,本種のニホンイタチからの,また中部および西日本からの初記録となった。他の種については新しい産地の報告となった。
著者
阪本 芳弘 青井 俊樹
出版者
[岩手大学農学部]
雑誌
岩手大学農学部演習林報告 (ISSN:02864339)
巻号頁・発行日
no.37, pp.17-27, 2006-03
被引用文献数
3

We investigated the food habits of Asiatic black bears of the northern Ohu Mountains in Japan. From May to December in 2004, we collected a total of 114 scats-27 from Morioka City and 87 from Shizukuishi Town. The percent importance value of eachfood item was estimated on the basis of the frequency of its occurrence and the total volume of all food items (Mealey, 1980). The primary food items consumed by the bears in spring were beech (Fagus crenata) shoot and dwarf bamboo (Sasa sp.), while the items consumed in summer were soft masts, animal materials, and succulent forbs [especially parsley (Umbelliferae sp.) ]. However, in the month of August, the bears concentrated on eating crops. The primary food items in autumn were acorns (Fagaceae sp.). With the passage of each season, there was a distinct change not only in the bear's diet but also in its foraging area, for example, beech forests in spring, the vicinity of streams and fields in summer, and broadleaved forests in autumn. Therefore, the preservation of their natural habitats may be essential for ensuring their coexistence with humans.
著者
西 千秋 出口 善隆 青井 俊樹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.277-285, 2011 (Released:2012-01-21)
参考文献数
16
被引用文献数
6

盛岡市高松公園および周辺の森林においてニホンリス(Sciurus lis)の直接観察およびテレメトリー調査を行い,行動圏面積と行動圏重複率を明らかにした.また,行動圏内および重複・非重複行動圏内のオニグルミ(Juglans mandshurica var. sieboldiana,以下クルミ)の資源量を算出し,行動圏とクルミの資源量との関係を明らかにした. リスの平均行動圏面積はオスでは3.65 ha,メスでは1.45 haであり,平均行動圏重複率はオスでは36.5%,メスでは62.9%であった.本調査地のリスの行動圏面積は,既報における平均的な行動圏面積よりも狭かった.また,メスの行動圏は排他的ではなく,行動圏面積とクルミの本数密度との間に負の相関(P<0.05)があり,さらに,重複行動圏に含まれるクルミの本数密度は,非重複行動圏よりも大きいことが分かった(P<0.01). これらの結果より,メスの行動圏面積は,クルミの資源量が多いと狭くなり,クルミの資源量の多さが,メスの行動圏の重複につながると考えられた.本研究によってメスのリスの行動圏の確立,並びに行動圏の重複要因の一つにクルミの資源量が大きく関わっていることが示唆された.
著者
矢澤 正人 青井 俊樹 坂庭 浩之 安江 悠真 高橋 広和 西 千秋 瀬川 典久 時田 賢一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

1:動物には個体ごとの形態的な特徴が顕著な種とそうでない種がある.ヒトの個体ごとの形態的特徴は多くの哺乳類の中でもばらつきが大きく,他に例を見ないほど多くの装着物を装着する種である.装着物によっては数千年にも及ぶ進化発展を経ているが,ほぼすべての個体に適合する装着物は稀である.野生動物の行動調査に用いる装着物には,標識タグ,無線タグ,テレメトリ無線送信機,GPS無線送信機,などがある.筆者自身が装着を経験した装着物には,衣服および靴,腕時計,サングラス,ヘルニア治療用コルセット,ナイトガード(就寝時用マウスピース)ピアス,指輪,スキー,スノーボード・シュノーケルなどがある.これらを機能の観点から分類すれば,,躯体保護,機能補完,装身,機能拡張となる.別の分類方法として,個体の形態的特徴を考慮して制作したもの,選択したもの,調節したもの,考慮しなかったもの,の4つに分類することができる.個体の形態的特徴を考慮しなかった装着物は,上記装着物の中ではピアスだけである.<br>2:野生動物の装着物の外装を設計製造するにあたり著者らが連携している相手先は,紡績,縫製,樹脂成型(インジェクション及びヒートプレス),切削,プレス,めっき,溶接,ポッティング,などの分野が主体である.いずれも大量生産品以外は高額という第二次産業革命の特徴を持つ.<br>s3:開発にあたって最も参考にした文献として,セミプロ向けの模型製作技術を解説した書籍が挙げられる.彼の分野における品質は工業製品を凌駕し美術品に迫るものすら散見される.量産品の数千分の一未満の製造数でありながら価格を数十倍以下に収め商業的に成立させる総合的な技量は,ものづくり大国・技術立国といった言葉に積もる埃を吹き飛ばしてくれる.動物装着物の外装を考える際は,彼の分野とも積極的に関わることを推奨する.
著者
比屋根 哲 佐藤 晴美 青井 俊樹
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.17-24, 2001
参考文献数
12

本研究は,苫小牧演習林における1980年代以降の演習林の市民への開放の取り組みについて,演習林利用者や一般市民へのアンケート調査ならびに聞き取り調査をもとにして,市民の演習林に対する認知度や演習林の市民開放の取り組みに対する意識や要望について把握し,今後の演習林の課題等について検討したものである。検討の結果,苫小牧演習林は市民の認知度が極めて高く,市民は演習林の市民開放の取り組みを好意的に受けとめていることがわかった。また,演習林利用者のマナーが次第に向上し,演習林職員との触れ合いが利用者のゴミ拾いの活動等に結びつく事例も認められた。これらのことから,一般市民への森林の開放は,森林管理を考える上でプラスの側面が十分に期待でき,その際には森林管理者との交流が重要であると考えられた。
著者
阪本 芳弘 青井 俊樹 Sakamoto Yoshihiro Aoi Toshiki
出版者
岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター
雑誌
岩手大学農学部演習林報告 (ISSN:02864339)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.17-27, 2006-03-25

We investigated the food habits of Asiatic black bears of the northern Ohu Mountains in Japan. From May to December in 2004, we collected a total of 114 scats-27 from Morioka City and 87 from Shizukuishi Town. The percent importance value of eachfood item was estimated on the basis of the frequency of its occurrence and the total volume of all food items (Mealey, 1980). The primary food items consumed by the bears in spring were beech (Fagus crenata) shoot and dwarf bamboo (Sasa sp.), while the items consumed in summer were soft masts, animal materials, and succulent forbs [especially parsley (Umbelliferae sp.) ]. However, in the month of August, the bears concentrated on eating crops. The primary food items in autumn were acorns (Fagaceae sp.). With the passage of each season, there was a distinct change not only in the bear's diet but also in its foraging area, for example, beech forests in spring, the vicinity of streams and fields in summer, and broadleaved forests in autumn. Therefore, the preservation of their natural habitats may be essential for ensuring their coexistence with humans.