著者
遠藤 英樹
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.129-144, 2013 (Released:2020-01-13)

人文・社会科学は観光研究も含め、1960年代から1980年代にかけて「言語論的転回」を、1980年代から2000年代にかけて「文化論的転回」を経ながら、みずからのレゾンデートル(存在意義)を刷新してきた。特に人類学、社会学、地理学の領域では、国内外ともに、その傾向は顕著であった。だが現在、これら「言語論的転回」や「文化論的転回」の議論をさらにすすめて、「モビリティー」や「再帰的近代」等に対する問いかけがなされるようになっている。これら人文・社会科学におけるいくつかの転回は、既存の学的な視点によっては「社会的なもの(the social)」の位相を充分にとらえることができなくなってきたがゆえのものだと言える。本稿では、これらをふまえて、現在「社会的なもの」は「観光(tourism)」に明白に現れるようになっており、人文・社会科学は観光論的な視点を積極的に内在化させていく必要があることを主張する。結論として、観光学を、静的・定常的なディシプリンとしてではなく、動的・生成的なディシプリンとして確立していくべきことを呼びかける。
著者
中川 眞知子 杉原 和子 遠藤 英樹 磯貝 理恵子 亀山 裕子 阪本 ゆり 古賀 千律子 矢島 あゆみ 手塚 正
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.176-179, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

45歳, 女性。初診平成10年7月2日。初診の約1カ月前からバセドウ病と診断され, 抗甲状腺剤内服治療を受けた。治療開始約1カ月前後より両下腿伸側下半分の痒みを伴った腫脹を自覚し, 次第に同部が隆起し硬くなってきたため当科紹介受診となった。初診時, 両下腿伸側に小指頭大から母指頭大までの境界不明瞭な扁平隆起した紅斑局面を認める。一部に毛孔の開大を認め, 表面は粗糖, 弾性硬で圧痕を残さない。病理組織学的所見では, 真皮網状層上層から中層にかけて粘液様物質の沈着を認め更に血管周囲に軽度の炎症細胞の浸潤を認めた。真皮膠原線維間は, alcianblue染色にて淡青色に染色され, mucicarmine染色では赤色に染色された。以上よりバセドウ病に随伴した脛骨前粘液水腫と診断した。治療は, 副腎皮質ホルモン含有軟膏の外用とステロイド局所注射を行い腫脹の軽快を認めた。完全消失はバセドウ病の軽快に伴って認められた。
著者
遠藤 英樹
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.51-65, 2019 (Released:2021-03-31)
被引用文献数
1

私たちが他者と生をいとなむ「社会空間」はすべて、必ず何らかの時代状況との関わりにおいて形成されている。とくに現代にあっては、人、モノ、資本、情報、イメージ、観念等がグローバルに国境を越えて移動する状況のもとで「社会空間」が存在していることにより注意を向けるべきだろう。現代の「社会空間」はグローバルなモビリティの状況によって大きな影響を受けながら形成されているのである。社会のモビリティを現出させていくうえで、「デジタル革命」を経たメディアが果たしている役割は大きい。「デジタル革命」を経たメディアは「モビリティの時代」の中で形成され、社会のモバイル化をうながしているのである。同時にそれは、「モビリティの時代」において、「社会空間」のひとつとして、多様な振舞い(パフォーマンス)がなされる舞台(settings)となっている。社会がモバイル化することによって、デジタル・メディアにおける「プラットフォーム」を「社会空間」として表現される振舞い(パフォーマンス)や情報・イメージ・観念はこれまでと異なる位相のものへ生成変化を遂げていく。同時に、そのことによって「プラットフォーム」は「社会空間」として、モビリティの諸現象を新たなものへと誘い出しうながしもするのである。このことは特に観光現象において、明瞭に見てとることができるだろう。本稿では観光の「インスタ映え」を議論の俎上にあげつつ、観光をめぐる「社会空間」もまた、デジタル・メディアと密接に結びつき、そのことで観光のあり方を変容させるようになっていることを、ぬいぐるみの旅などの事例を通じて検討する。
著者
三宅 雅子 志賀 久里子 柳原 茂人 遠藤 英樹 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.105-109, 2018 (Released:2018-12-14)
参考文献数
13

80歳代,男性。以前より糖尿病があり,インスリン治療を行っていた。初診の2ヶ月前から左下腹部に皮下硬結が出現したため近医皮膚科を受診し,精査目的で当科に紹介された。当科初診時,左下腹部に 4~5cm 大の自覚症状のない皮下硬結を認めた。臨床経過,臨床所見,病理組織所見からインスリンボールであると診断した。インスリンボールはインスリン由来のアミロイドがインスリン注射部位に沈着することにより生じる皮下腫瘤である。インスリンボールは他部位と比べつまみやすく,注射時の痛みを感じにくいためインスリン使用患者は腫瘤部を好んでインスリン注射部位に選ぶ傾向にある。しかしながらインスリンボールは他部位と比べインスリンの吸収が阻害されるため,患者の血糖コントロールの悪化につながる。糖尿病患者を診察する際はインスリン注射部位を観察し,インスリンの注射手技を定期的に確認・指導することが望ましいと考える。(皮膚の科学,17: 105-109, 2018)
著者
遠藤 英樹
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.289-296, 2006
被引用文献数
1

炭酸ガスレーザーは波長10600nmの気体レーザーであり,水分に吸収される特長を利用して皮膚科・形成外科領域では,皮膚小腫瘍の治療に多用されている.腫瘍の大小により,発振モード(シングルパルス,リピートパルス,連続波,スーパーパルス,スキャン)を選ぶことができる.日常の診療においても治療の選択範囲を広げる意味においても大変,有用なレーザーであるが,施術者は機器の特徴と出力設定,副作用について充分に理解しておく必要がある.
著者
遠藤 英樹
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.133-146, 2001-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
34
被引用文献数
3

現代社会において, 観光はますます重要な事象となっている.とくに, それはイメージを媒介することではじめて成立するという点で, 近代のありようと共鳴しあっていると考えられる.観光パンフレット, テレビ, 雑誌, 映画といったようなメディアを通じ, 観光地に対するイメージはたえず再生産されつづけており, こうしたメディアによるイメージの再生産に関する分析は, 観光という事象を語るうえで不可欠のものとなっている.本稿は奈良を事例とする意義について述べるとともに, 観光地・奈良のイメージを再生産するうえでメディアが重要な役割を果たしていることを指摘する.こうしたことについては, かつてD.J.ブーアスティンが指摘した問題圏にかさなるものであるが, ここではブーアスティンの指摘よりもさらに議論をすすめ, イメージの消費者たるべきツーリストたちが奈良という観光地をいかに読み解いているのかまでも考察する.それにより最後には, ツーリストたちが 「ブリコラージュ」の方法を用いつつ, 観光という「イメージの織物 (text-ile) 」を主体的に読み解いている姿を浮き彫りにする.
著者
神田 孝治 遠藤 英樹 須藤 廣 松本 健太郎 吉田 道代 高岡 文章 藤巻 正己 藤木 庸介 濱田 琢司 鈴木 涼太郎 山口 誠 橋本 和也
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,近年におけるツーリズム・モビリティの新展開に注目し,それを特定の地域に焦点をあてるなかで検討するものである。その際に,「科学技術の進展とツーリズム」,「ダークツーリズム」,「サブカルチャーとツーリズム」,「女性とツーリズム」,「アートとツーリズム」,「文化/歴史遺産とツーリズム」という6つのテーマを設定している。本年度は初年度であったが,各テーマに関連するいくつもの成果が生み出された。特に,「科学技術の進展とツーリズム」に関わるものは,神田孝治・遠藤英樹・松本健太郎編『ポケモンGOからの問い─拡張される世界のリアリティ』(新曜社, 2018)を筆頭に,多数発表されている。本研究課題の成果が,モバイルメディアがもたらす新しいツーリズムに関する研究を牽引するものとなっていると考える。また,研究会も積極的かつ有益な形で実施された。第1回研究会は,観光学術学会や人文地理学会地理思想研究部会と共催するなかで,Durham UniversityのMike Crang氏による“Traveling people, things and data: borders and global flows”と題した講演とそれを受けたシンポジウム「ツーリズム,モビリティ,セキュリティ」を実現した。第2回研究会は,観光学術学会との共催によるシンポジウム「おみやげは越えていく―オーセンティシティ・ローカリティ・コモディティ」と,和歌山大学・国際観光学研究センターのAdam Doering 氏による“Mobilities for Tourism Studies and “beyond”: A Polemic”と題した講演会を実現した。こうした取り組みが,モビリティに注目した先端的な観光研究の知を,広く関連する研究者に提供する役割を果たしたと考える。
著者
遠藤 英樹 大磯 直毅 川田 暁 黒田 啓 多島 新吾
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.360-366, 2006 (Released:2011-02-18)
参考文献数
8

後天性掌蹠角化症患者30例を対象として,活性型ビタミンD3外用薬であるマキサカルシトール(オキサロール®)25μg/g軟膏を1日2回8週間外用し,有効性と安全性を検討した。(1)皮膚症状の紅斑,角化・鱗屑,亀裂について4週後と8週後に投与前に比して有意な改善が認められた(p‹0.05)。(2)中等度改善以上の有効率は4週後73.1(19/26)%,8週後74.1(20/27)%であった。(3)局所刺激を含む有害事象は認められなかった。(4)患者印象の好ましい以上は4週後80.8(21/26)%,8週後85.2(23/27)%であった。(5)有用度の有用以上は76.7(23/30)%であった。以上の点より活性型ビタミンD3外用薬であるマキサカルシトール25μg/g軟膏は後天性掌蹠角化症に対して有用性の高い薬剤である事が示唆された。
著者
櫻井 卓 上山 憲司 大里 俊明 荻野 達也 遠藤 英樹 御神本 雅亮 高平 一樹 浅野目 卓 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.748-753, 2016
被引用文献数
3

<p> 慢性硬膜下血腫は脳神経外科領域で遭遇する機会の多い疾患であり, 治療法としては穿頭術が標準的な治療となっている. 血腫の排液により症状の改善を認め, おおむね良好な成績を得ているが, 術後血腫の再発をまれならず経験する. 今回当院で経験した慢性硬膜下血腫の再発危険因子を検討し文献的考察を加えて報告する.</p><p> 2014年1月1日~2015年7月31日に当院で手術を施行した慢性硬膜下血腫187症例 (222手術例) を対象とし, 患者因子, CT所見について後方視的に比較した.</p><p> 再発は187症例中26症例に認め, 再発率は13.9%であった. 統計学的に有意差 (p<0.05) を認めた再発危険因子は, 患者因子では年齢, 高血圧の既往, 抗凝固薬の内服であった. 術前CT所見では, 血腫量, 正中偏位, ニボーであった. 術後CT所見ではday 1, 7での血腫縮小率であった.</p><p> 再発を起こす例は術後1週間で血腫がすでに増大していることが多く, 術後翌日から1週間後にかけての血腫増大または増大率により, 再発を早期に予測できると考えられる.</p>