著者
親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭 楠原 正俊
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.175-182, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【背景/目的】日本人進行がん患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)の治療での直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)の報告はこれまでない.【方法】エドキサバン(E群),アピキサバン(A群)で治療を開始した患者をそれぞれワルファリン(W群)で治療した患者と後向きに比較,検討した.【結果】E群とW群の比較では,非大出血はE群で17%,W群で27%(p=0.39),全ての出血はE群で30%,W群で57%(p=0.03),再発はE群が8%,W群で16%であった(p=0.43).A群とW群の比較では,非大出血はA群で10%,W群で27%(p=0.18),全ての出血はA群で26%,W群で57%(p=0.02),再発はA群が3%,W群は16%であった(p=0.17).【結語】DOACはW群と比較し,非大出血および再発が少ない傾向であった.全ての出血はDOACで有意に少なかった.日本人進行がん患者のVTEの治療にもDOACは有用である可能性がある.
著者
對馬 佑樹 三上 誠 飯田 圭一郎 和田 尚子 齋藤 百合子 漆舘 聡志
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.138-143, 2023-09-15 (Released:2023-09-15)
参考文献数
13

【背景】本邦におけるサウナ熱傷の症例集積研究の報告は, われわれが渉猟しえた限りはない. われわれが経験したサウナ熱傷の臨床的特徴について報告する. 【対象】2012年から2021年までの10年間で, 当科を受診した熱傷患者346例のうち, サウナ熱傷患者5例を対象とした. 年齢, 性別, 受傷から初診までの日数, 受傷機転, 受傷部位, 受傷原因, 熱傷面積, 初診時の熱傷深度, 手術の有無, 入院期間, 転帰について調査した. 【結果】対象者の年齢は64~76歳 (平均71±4歳) であり, 5例すべてが意識消失に伴う受傷であった. 死亡した1例以外は経時的に熱傷深度が深達化し, 手術を要した. 【考察】サウナ浴中は脱水と脳血流量の減少により意識消失をきたしやすい. サウナ熱傷にはcontact burnとhot air sauna burns (HASBs) があり, 手術を要する可能性が高い. そのため, サウナ利用者への注意喚起と適切な補水の励行を推奨すべきである.
著者
渡邉 瑞貴 領田 優太 浅野 理沙 Khamb Bilon 薄田 晃佑 飯田 圭介 岩田 淳 佐藤 慎一 酒井 寿郎 長澤 和夫 上杉 志成
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral15, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 背景 現代人を悩ます生活習慣病の一つ、脂質異常症(高脂血症)は肥満など多くの疾病の起因となる。それら多数の疾病の予防・治療のためにも、脂質生合成機構の制御と解析は重要な課題である。 脂質生合成において、転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element- binding protein)は中心的な役割を担う(図1)1。小胞体膜貫通型タンパク質として存在する前駆体SREBPは、キャリアータンパク質SCAP(SREBP cleavage-activating protein)と複合体を形成している。この複合体は、脂質レベルが低下すると小胞体からゴルジ体に輸送される。ゴルジ体において前駆体SREBPは酵素による二度の切断を受けて活性型となる。活性型SREBPは核に移行し、転写因子として脂質生合成に関する遺伝子群の発現を亢進する。ステロールや脂肪酸などの脂質類が産生される。 SREBPの活性化は内因性物質であるステロールによって厳密に制御されている。ステロール過多になると、ステロールはSCAPに直接作用し、SREBP/SCAP複合体の小胞体からゴルジ体への輸送を阻害する。脂質生合成は種々の複雑な制御を受けることが知られており、ステロール以外の内因性物質による直接的なSREBP活性化調節機構の存在が予想される。しかし、その詳細は未だ不明な点が残る。 私たちの研究室が化合物ライブラリーから見出した合成小分子ファトスタチン(1, 図2)は、ヒト細胞内でSREBPの活性化を選択的に阻害して脂質生合成を抑制する2,3。ファトスタチンは、SREBP活性化を阻害する初めての非ステロール合成化合物となった。さらに私たちの研究室は、ファトスタチンを誘導体展開し、ファトスタチンよりも10倍阻害活性に優れ、経口投与可能なFGH10019(2)も報告した4。一連のケミカルバイオロジー研究によって、ファトスタチンはステロールと同じSCAPを直接の生体内標的とするが、ステロールとは異なる部位に作用することを示した。この結果は、ファトスタチン様に作用する、ステロール以外の内因性物質の存在の可能性を示唆する。2. 新たなSREBP制御天然化合物の発見 以上をふまえ私たちは、SREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、280種の脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を阻害する複数の内因性脂質化合物が見出された。これら見出された化合物類は、濃度依存的にSREBPの活性化を阻害することがわかった。さらに、ある一連の内因性天然脂質化合物類は、ステロールと同様にSREBPの小胞体からゴルジ体への輸送段階で活性化を阻害するが、その作用メカニズムはステロールと異なることが示唆された(図3)。CHO-K1細胞をステロールで処理すると活性型SREBPが消失し、前駆体SREBPが蓄積する。一方、内因性天然脂質化合物Aで処理すると、活性型および前駆体両方のSREBPが減少した。これら新たに見出した内因性脂質化合物類とSREBPとの直接的な関係について、現在のところ報告はない。これら脂質化合物はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。3. SREBP制御天然化合物の作用メカニズムの解明研究 スクリーニング(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
青山 高 親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.135-142, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
28

本研究は1日推定食塩摂取量(随意尿)と食事習慣上の課題を用いて虚血性心疾患を有するがん患者の栄養指導の効果を判定した。対象は静岡がんセンター循環器内科において2018年4月から2019年3月までに塩分摂取過多が疑われる患者のうち初めて心臓カテーテル検査(CAG)を受け、次回診察日に栄養指導を実施できた18症例とした。栄養指導方法は塩分計量を用いず、食事習慣上に塩分が含まれている食品の使用頻度の改善を指導した。1日推定食塩摂取量と塩分コントロールの必要のある区分(食材、調理、食卓)の頻度を比較した。全18例(男性14例)の年齢は74才(50-85)であった。1日推定食塩摂取量が改善していたのは11例に見られ、非改善症例に比して塩分コントロールの必要のある区分のうち食材の頻度に相対的な減少が認められた(p <0.05)。両群のがん病期stageと消化器系の部位別に差は見られなかった(p =0.56、p =0.63)。がん患者における虚血性心疾患では塩分計量を用いない食事習慣上の栄養指導に効果を得られる可能性がある。本研究は、がん病期stage に隔たりなく治療に向きあおうとしている患者のモチベーションを管理栄養士の視点から支持する取り組みであり、1日推定食塩摂取量が食事習慣に内在している食材の塩分コントロールに照らした指導法により効果が得られる可能性を示した。