- 著者
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青山 高義
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.2, pp.172-184, 1985-12-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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チロル地方の日降水量分布型とそれに関わる気象条件を整理し,さらに山岳の影響について考察した.まず1956年と1957年の日降水量分布図250枚を,4つの分布型(I, II, III, IV型)に分類した.各分布図に10 km×10 kmのメッシュをかけ,日降水量10mm以上の頻度分布を各降水量分布型ごとに求めた.それぞれの頻度分布図は地形の影響を明瞭に示しており,I型は北方せき止め型,III型は南方せき止め型,又はフェーン型,II型はI型とIII型の漸移型,IV型は全域型である.なおIII型とVI型では,しばしばレインバンドを伴う. 次に,各降水量分布型出現時の天候型,上層風向,対流不安定について検討した.I型,III型は上層風型汎天候のもとに発生し,I型は上層風向NW~Nで安定な成層状態,III型では上層風向SW~Sで相対的に不安定な成層状態の中で発生する傾向がある.IV型は上層風向が南寄りであるが,III型より西成分が大きく,大気は最も不安定である. 日降水量分布には,I型とIII型で山岳のせき止め効果と雨陰効果が認められ,III型とIV型ではこれ等の作用に加えて特定地域にレインバンドを形成する作用などが認められる.そこで,これ等の山岳の影響を先に示した降水頻度分布図に基づいて調べた・地形の影響を隣り合うメッシュ間の頻度差で表せると考え,卓越風向に沿って頻度が増加する場合をせき止め効果,減少する場合を雨陰効果としてその分布を求めた.以上の結果に天気界の出現位置(AOYAHA,1985)を考慮して,せき止め効果,雨陰効果による地域区分をI型(第5図)とIV型(第6図)について行った.またレインバンドについては,1948~1957年のIII型,IV型に分類される大雨日の多雨軸分布を示した(第7図).