著者
加藤 真司 桑沢 保夫 石井 儀光 樋野 公宏 橋本 剛 池田 今日子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.39-44, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

集合住宅における緑のカーテンによる夏季の室内の温熱環境改善効果を明らかにするため,独立行政法人都市再生機構が所有する集合住宅を使用して,様々な条件設定をした複数の住戸の室内温熱環境改善効果を比較測定したものである。比較条件は,緑のカーテンの設置量の違いと,代替手法である簾との比較である。室内温熱環境の実測の結果,緑のカーテンによる室温の低下が確認できたとともに,簾よりもより大きな室温低下傾向が確認できた。また,この結果をもとに緑のカーテンの節電効果を算定した。さらに,戸窓の開放時においては,通風性と日射遮蔽性を併せ持つ緑のカーテンの特徴から,体感温度においても簾と比べて緑のカーテンの有利性が確認できた。
著者
上杉 昌也 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.249-266, 2018-05-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
56
被引用文献数
1

犯罪発生の集積パターンの特定やその要因の説明のため,犯罪研究においてミクロな空間単位が重視されつつある.本稿は従来よりもミクロな空間単位である街区レベルの犯罪発生要因を明らかにすることを目的とし,街区レベルの犯罪機会理論と近隣(町丁字)レベルの社会解体理論について検証した.東京都杉並区における空き巣発生を対象としたマルチレベル分析の結果,街区レベルの対象や監視性の違いが近隣内での犯罪率の差異を説明すること,またこれらとは独立に近隣レベルの社会的環境もまた街区レベルの犯罪発生に寄与していることが明らかになり,日本の都市住宅地において,異なる空間レベルで統合された犯罪機会理論と社会解体理論が有効であることが示された.これらの知見は,異なる犯罪発生プロセスがそれぞれの空間レベルで作用することを示唆するものであり,犯罪現象の統合的な理解や解明に加えて,防犯対策など実践面での応用も期待される.
著者
飯田 晶子 山崎 嵩拓 樋野 公宏 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.468-473, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
11

本研究は、COVID-19パンデミック蔓延下に、誰が都市緑地を利用し、それが都市住民の健康と幸福にどのように関連したかを明らかにすることを目的とする。東京都在住の成人4,126人の横断データを用いて、二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、都市緑地を利用した人は利用しなかった人に比べ、主観的ウェルビーイングと身体活動量が向上していた。また同時に、利用者の属性によって利用する都市緑地の種類が異なっていたこと、及び都市緑地の種類によって主観的ウェルビーイングと身体活動量との関係の度合いが異なっていたことが分かった。様々な人々が都市緑地にアクセスできるよう、多様な都市緑地が混在する住環境づくりが重要である。
著者
木下 広章 柴田 久 石橋 知也 雨宮 護 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.350-356, 2016

本研究では福岡県警察が全国に先駆けて設立した「犯罪予防研究アドバイザー制度」を事例に,(1)本制度を通じて入手した平成24~26年の福岡県内で発生したコンビニ強盗の犯行内容に関する事案概要データ(全79案件)4)ならびに被害店舗全74店舗(79件のうち5店舗は強盗被害に2回遭っている)の立地を整理,分析した.さらに(2)上記,強盗被害店舗全74店舗と徒歩圏(500m)を越えて最も近隣に立地している非被害店舗(74店舗)の合計148店舗の実地調査を実施し,強盗被害が誘発される立地・空間環境の要点とコンビニの防犯向上に向けた施策について考察した.その結果,コンビニ強盗に対する防犯施策の検討として(1)従業員に対する勤務姿勢を重視した防犯指導,(2)駐車場を中心とした視認性の向上,(3)陳列棚の高さが伴う監視性低下への認識啓発について,その重要性を示唆した.
著者
木下 広章 柴田 久 石橋 知也 雨宮 護 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.350-356, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
8

本研究では福岡県警察が全国に先駆けて設立した「犯罪予防研究アドバイザー制度」を事例に,(1)本制度を通じて入手した平成24~26年の福岡県内で発生したコンビニ強盗の犯行内容に関する事案概要データ(全79案件)4)ならびに被害店舗全74店舗(79件のうち5店舗は強盗被害に2回遭っている)の立地を整理,分析した.さらに(2)上記,強盗被害店舗全74店舗と徒歩圏(500m)を越えて最も近隣に立地している非被害店舗(74店舗)の合計148店舗の実地調査を実施し,強盗被害が誘発される立地・空間環境の要点とコンビニの防犯向上に向けた施策について考察した.その結果,コンビニ強盗に対する防犯施策の検討として(1)従業員に対する勤務姿勢を重視した防犯指導,(2)駐車場を中心とした視認性の向上,(3)陳列棚の高さが伴う監視性低下への認識啓発について,その重要性を示唆した.
著者
山田 拓実 竹内 萌恵 成澤 拓実 福島 渓太 塩崎 洸 高橋 哲也 深谷 麻衣 森田 洋史 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.486-491, 2023-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
14

本研究は日本の9都市における、都市計画関連政策を1000 Cities Challengeの指標を用いて身体活動促進の観点から試行的に評価して、各都市の政策の現状を示すことを目的とする。結果として、身体活動促進につながる政策も散見されるが、文面を見る限りでは必ずしも身体活動促進を意識していると判断できない政策も多かった。指標別に見ると、自転車・歩行者インフラの整備についてはすべての市が、雇用分布や街路接続については、どの市も身体活動促進を意識した政策を持たなかった。
著者
樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.128, 2008

本研究では、防犯カメラを設置した駐車場及び駐輪場において、可能な限り条件を統制した上でその犯罪抑止効果と副次的効果の検証を行った。また、防犯カメラの正負の影響に着目し、防犯カメラ設置駐車場の利用者及び管理者の意識や反応について調査、分析した。結果として、両対象地において前年同期から犯罪の減少傾向が見られ、懸念された犯罪の転移現象は見られなかった。管理者等へのインタビュー調査からは、無断駐車や放置自転車の減少、ゴミのポイ捨てや落書きの減少などが確認された。110番件数については、両対象地とも大幅に減少した。犯罪だけでなく、トラブルや秩序違反行為等も減少した可能性が示唆される。利用者の意識調査からは、犯罪抑止や検挙率向上への期待によって、利用者の犯罪不安が低減され、設置に賛成する割合も高いことが分かった。一方、防犯カメラの負の側面として、プライバシーや肖像権の侵害を感じる利用者がいずれの対象地でも15%前後存在すること、そしてこの懸念は賛成態度に影響することが分かった。
著者
樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.763-768, 2008-10-15
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では、防犯カメラを設置した駐車場及び駐輪場において、可能な限り条件を統制した上でその犯罪抑止効果と副次的効果の検証を行った。また、防犯カメラの正負の影響に着目し、防犯カメラ設置駐車場の利用者及び管理者の意識や反応について調査、分析した。結果として、両対象地において前年同期から犯罪の減少傾向が見られ、懸念された犯罪の転移現象は見られなかった。管理者等へのインタビュー調査からは、無断駐車や放置自転車の減少、ゴミのポイ捨てや落書きの減少などが確認された。110番件数については、両対象地とも大幅に減少した。犯罪だけでなく、トラブルや秩序違反行為等も減少した可能性が示唆される。利用者の意識調査からは、犯罪抑止や検挙率向上への期待によって、利用者の犯罪不安が低減され、設置に賛成する割合も高いことが分かった。一方、防犯カメラの負の側面として、プライバシーや肖像権の侵害を感じる利用者がいずれの対象地でも15%前後存在すること、そしてこの懸念は賛成態度に影響することが分かった。
著者
樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.69-72, 2019-12-26 (Released:2020-12-26)
参考文献数
7

Pokémon GO attracted attention from the perspective of health, especially with its potential to increase physical activity. The present study confirmed a difference in step counts between middle-aged and elderly players and nonplayers before and after the release of Pokémon GO. According to a 2-way repeated-measures analysis of variance, step counts were higher until 7 months after the release. The player group maintained their step counts in winter, despite the decrease in step counts of nonplayers. In subgroup analyses, players were more likely to be men, aged <55 years, workers, active, and subjectively in good health.
著者
樋野 公宏 小島 隆矢
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.616, pp.107-112, 2007
参考文献数
11
被引用文献数
8 5

This paper aims to explain the risk of dwelling burglary with factors representing physical and socio-demographic context of neighbourhoods and make clear the relationship among them with SEM (structural equation modeling). The following are main information got in this paper, which enables evidence-based crime reduction. ・Higher density, larger family and larger daytime population reduce the risk, which probably provide high level of natural surveillance. ・There is higher risk in neighbourhoods with high rate of rented houses. ・There is higher risk in neighbourhoods with high building coverage ratio whereas there is lower risk in those with high floor area ratio. In conclusion, it is suggested that a holistic approach should be taken considering community safety as an aspect of quality of life.
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018
被引用文献数
2

<p>本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.</p>
著者
雨宮 護 樋野 公宏 小島 隆矢 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.116, 2007

防犯まちづくりが各地で急速に推進されるなか、それに対する批判的な言説も発表されるようになってきた。防犯まちづくりが今後もまちづくりの一種として定着していくためには、こうした批判論とも向き合いつつ、その考え方を再構築することが求められる。本研究では、既存の学術雑誌や評論誌のレビューをもとに、わが国の防犯まちづくりへの批判論を体系的に整理すること、アンケートの分析をもとに、批判論に対する一般市民の態度を明らかにすることを目的とした。まず、121の文献から抽出された142の批判論を分類した結果、それらは 3つの大カテゴリのもとで、「警察国家論」、「監視社会論」、「要塞都市論」などの10の論点で整理された。次に、各論点への賛否を尋ねたアンケートの分析の結果、批判論には、市民の賛同を得ているものとそうでないものがあること、犯罪不安の高まりに伴って、今後賛同を得ることが予測されるものと逆に軽視されるようになっていくものがあることが明らかとなった。今後の防犯まちづくりにおいては、市民の賛同を得る批判論に応えるだけでなく、とくに軽視される批判論に対して一定の配慮が加えられる必要があると考えられた。
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.
著者
樋野 公宏 阿部 成治
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.43-47, 2004

平成15年9月30日に高知地裁が、高知市内のイオンSC内へのシネコンの建築を不許可とした市の判断には「裁量権を逸脱・濫用した違法がある」として、不許可の取消を命じた。シネコンは翌年7月17日に開業した。本研究では、本件の背景と経緯を整理し、判決の根拠となった「例外許可の許容性(当該用途地域規制の目的を阻害するおそれの程度)」、「例外許可の必要性(公益上の観点から当該建物を建築する必要性)」を視点に考察を加え、マスタープランの拘束性、中心市街地活性化の公益性、市民コンセンサスの判断基準などの問題が提起した。
著者
金 洪稷 樋野 公宏 浅見 泰司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1304-1311, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
2

今後,高齢者の増加により要介護者の人数も増えていく中で、介護保険の赤字額もより上昇すると予想されている.介護保険の収支構造見直しの一環として社会参加による介護予防を促進する必要があるが,その効果も地域によって異なる可能性がある.本研究では,年齢・要介護度別の人口推計モデルを用いて高齢者の社会参加による介護保険の財政および介護労働力への効果を分析することで,社会参加の促進政策の優先順位を考えることを目的とする.その結果,人口規模が一定水準以下の地域において高齢者の社会参加による効果に地域差があり得ることが分かる.また,社会参加による財政的な効果と介護労働量の逓減効率は必ずしも一致するとは限らない.2055年までは都心部から距離がある地方が介護保険への財政的効果の観点でより効果的であるが,2060年からは都心部がより効率が高い可能性がある.
著者
樋野 公宏 雨宮 護 樋野 綾美
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.108-112, 2007

本研究では、防犯カメラの正負の影響に着目し、実際に防犯カメラが設置された集合住宅団地駐車場の利用者(=団地居住者)の意識を調査し、設置に対する賛否の態度が形成される構造を分析した。防犯カメラへの期待は高く、回答者の約半数が自動車関連犯罪への不安が軽減されたと答えた。また、プライバシー侵害等への懸念を感じる人は5%と少なく、9割を超える人が設置に賛意を示した。それでも、SEMによる分析からは、防犯カメラへの賛否の態度が期待と懸念のバランスで形成されていることが明らかになった。また、不安減少は賛成態度に直接影響しないことが明らかになった。
著者
樋野 公宏 渡 和由 柴田 建
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.80, no.710, pp.841-849, 2015 (Released:2015-05-12)
参考文献数
24
被引用文献数
1

This paper discusses compatibility of security and the quality of life in detached housing area. City of Irvine, California was said to be one of the safest city in US because of good spatial design and governance in communities. Qualitative interviews with the city officials, the police and homeowners were conducted to know the keys of the safest city. Concerning the design features, those of early villages and those of new urbanism have grown into one and promote activities which enhance natural surveillance. These design features are checked by the police at the planning stage. With regard to the community governance, homeowners associations (HOAs) provide good management and maintenance and various activities to include the youth in communities so as not to let them become delinquents. “Activity” and “Identity” are found to be the keys for the compatibility of security and the quality of life, which reduce crime by increasing regional vitality, social contact and community spirit and are not included in the principles of Japanese CPTED.
著者
樋野 公宏 柴田 久 雨宮 護
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、地域住民が自発的に公園、通学路などの屋外環境を改善するためのプログラムを実践的に開発するものである。松山市久米地区では公園の環境改善を支援し、公園の利用状況や犯罪不安感に関するアンケートから子どもの移動自由性の高まりを確認した。福岡市の警固公園では「防犯と景観の両立」をコンセプトに改修デザインに協力し、園内での補導件数減少などの成果を上げた。また、足立区および東京都と協働して屋外環境改善プログラムを開発した。足立区では「防犯まちづくり推進地区認定制度」が創設され、東京都は「地域の危険箇所改善ガイドブック」等を作成、公開した。