著者
白水 貴 藤田 彩花 中村 昌幸 高松 進
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.33-39, 2020-05-01 (Released:2020-06-10)
参考文献数
9

クマノザクラ葉上に発生したうどんこ病菌を採取し,分子系統解析と形態比較によりPodosphaera prunigenaと同定した.タイプ標本の観察結果に基づき,P. prunigenaの記載文を修正した.また,P. prunigenaの原記載では未報告の分生子と分生子柄の形態的特徴を記載した.クマノザクラを宿主とするうどんこ病菌の報告は初である.
著者
白石 祐彰 津田 吉晃 高松 進 津村 義彦 松本 麻子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.402-409, 2015 (Released:2016-09-09)
参考文献数
55
被引用文献数
1

土木工事により生じた大規模斜面における植栽の際には,自生集団の遺伝的多様性保全のために,自生あるいは遺伝的類縁性の高い近隣集団の種苗を用いるべきことが最近広く認知されている。埼玉県長瀞町および寄居町の送電鉄塔建設予定地において,生物多様性保全に配慮した緑化工を行う観点から,工事に伴う伐採前に採種して育苗したコナラ (Quercus serrata) を建設工事跡地に植栽した。この取組みにより,植栽集団 (実生 2集団) が自生集団の遺伝的多様性に与える影響を評価するために,マイクロサテライトマーカーを用いて植栽集団の遺伝的多様性や他集団 (埼玉県内の近隣 4集団および他県 3集団) との遺伝的分化程度について調査した。その結果,実生集団の遺伝的多様性は近隣の成木集団も含めて他集団と同程度であった。 STRUCTURE解析では埼玉県と他県集団には遺伝構造がみられたが,埼玉県内集団については全体で一つの地域交配集団とみなすことできた。これらのことから,建設工事跡地に植栽したコナラ種苗は自生集団の遺伝的多様性およびその地域性を維持しており,本取り組みによって自生集団の遺伝的多様性保全に貢献できたことがわかった。
著者
下野 義人 広井 勝 高松 進 下野 義人 広井 勝 高松 進
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-75, 2014-03

Phylogenetic relationships with in Russula section Compactae were investigated using sequence data from the nuclear-encoded large subunit ribosomal DNA(n-LSU rDNA)and ITS region, including the 5.8 S rDNA. Forty-two sequences of the n-LSU rDNA and forty-nine sequences of the ITS region with outgroups were used in this study. Analysis of the n-LSU rDNA indicated that the Compactae section was divided into three large groups: group A comprised R.densifolia and R.adusta, group B comprised R. subnigricans, and group Ccomprised R. nigricans. The ITS region did not support the monophyly of group B. Subgroup B-5 was sister to all other taxa of the Compactae section in the NJ and MP trees, and subgroup B-1 grouped with group C. Consequently, R. densifolia and R. adusta(group A)and R. nigricans(group C)were considered largely monophyletic, but R. subnigricans(group B)was not monophyletic. Russula densifolia (group A), but not R. adusta, were divided into six different subgroups.リボソームDNA28S領域(LSUrDNA)および5.8Sを含むITS領域の塩基配列に基づいて、ベニタケ属クロハツ節の分子系統解析を行った。外群を含めて28S領域の解析には42個、ITS領域では49個のシークエンスを用いた。最節約法(MP)に基づく、リボゾームDNAの28S領域の解析では、クロハツ節は大きな3群(groupA-C)に別れた。GroupAはクロハツモドキ(Russuladensifolia)とコゲイロハツ(R.adusta)、GroupBはニセクロハツ(R.subnigricans)、GroupCはクロハツ(R.nigricans)で構成された。ITS領域の解析ではGroupBの単系統を支持しなかった。MPおよび近隣結合法(NJ)ではGroupB-5は今回の研究で用いたすべてのクロハツ節の個体と姉妹群を形成し、GroupB-1はGroupCと同群に属した。これらのことから、クロハツモドキとコゲイロハツを含むGroupAとクロハツを含むgroupCはともに単系統であると推測されたが、ニセクロハツ(groupB)は単系統ではないと考えられた。コゲイロハツを除くとクロハツモドキの特徴を示す仲間は6小群に別れた。
著者
下野 義人 広井 勝 高松 進
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-75, 2014 (Released:2014-11-21)

リボソームDNA 28S領域(LSU rDNA)および5.8Sを含むITS領域の塩基配列に基づいて、ベニタケ属クロハツ節の分子系統解析を行った。外群を含めて28S領域の解析には42個、ITS領域では49個のシークエンスを用いた。最節約法(MP)に基づく、リボゾームDNAの28S領域の解析では、クロハツ節は大きな3群(group A-C)に別れた。Group Aはクロハツモドキ(Russula densifolia)とコゲイロハツ(R. adusta)、Group Bはニセクロハツ(R. subnigricans)、Group Cはクロハツ(R. nigricans)で構成された。ITS領域の解析ではGroup Bの単系統を支持しなかった。MPおよび近隣結合法(NJ)ではGroup B-5は今回の研究で用いたすべてのクロハツ節の個体と姉妹群を形成し、Group B-1はGroup Cと同群に属した。これらのことから、クロハツモドキとコゲイロハツを含むGroup Aとクロハツを含むgroup Cはともに単系統であると推測されたが、ニセクロハツ(group B)は単系統ではないと考えられた。コゲイロハツを除くとクロハツモドキの特徴を示す仲間は6小群に別れた。
著者
下野 義人 広井 勝 高松 進 下野 義人 広井 勝 高松 進
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-75, 2014-03

Phylogenetic relationships with in Russula section Compactae were investigated using sequence data from the nuclear-encoded large subunit ribosomal DNA(n-LSU rDNA)and ITS region, including the 5.8 S rDNA. Forty-two sequences of the n-LSU rDNA and forty-nine sequences of the ITS region with outgroups were used in this study. Analysis of the n-LSU rDNA indicated that the Compactae section was divided into three large groups: group A comprised R.densifolia and R.adusta, group B comprised R. subnigricans, and group Ccomprised R. nigricans. The ITS region did not support the monophyly of group B. Subgroup B-5 was sister to all other taxa of the Compactae section in the NJ and MP trees, and subgroup B-1 grouped with group C. Consequently, R. densifolia and R. adusta(group A)and R. nigricans(group C)were considered largely monophyletic, but R. subnigricans(group B)was not monophyletic. Russula densifolia (group A), but not R. adusta, were divided into six different subgroups.リボソームDNA28S領域(LSUrDNA)および5.8Sを含むITS領域の塩基配列に基づいて、ベニタケ属クロハツ節の分子系統解析を行った。外群を含めて28S領域の解析には42個、ITS領域では49個のシークエンスを用いた。最節約法(MP)に基づく、リボゾームDNAの28S領域の解析では、クロハツ節は大きな3群(groupA-C)に別れた。GroupAはクロハツモドキ(Russuladensifolia)とコゲイロハツ(R.adusta)、GroupBはニセクロハツ(R.subnigricans)、GroupCはクロハツ(R.nigricans)で構成された。ITS領域の解析ではGroupBの単系統を支持しなかった。MPおよび近隣結合法(NJ)ではGroupB-5は今回の研究で用いたすべてのクロハツ節の個体と姉妹群を形成し、GroupB-1はGroupCと同群に属した。これらのことから、クロハツモドキとコゲイロハツを含むGroupAとクロハツを含むgroupCはともに単系統であると推測されたが、ニセクロハツ(groupB)は単系統ではないと考えられた。コゲイロハツを除くとクロハツモドキの特徴を示す仲間は6小群に別れた。
著者
下野 義人 広井 勝 上田 俊穂 後藤 康彦 高松 進
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2009 (Released:2009-10-30)

ニセクロハツには5型がある *下野義人1)・広井勝2) ・上田俊穂3) ・後藤康彦4) ・高松進5)(1)大阪府立香里丘高;2)郡山女子大;3)長岡京市;4)我孫子市;5)三重大生資) Russula subnigricans consists of the five genetic species, by *Y.Shimono1), M.Hiroi2), T.Ueda3), Y.Goto4), S.Takamatsu5)(1)Kourigaoka H. S.; 2) Koriyama Women’s col.; 3) Nagaokakyou City; 4) Abiko City; 5) Mie Univ.) ニセクロハツは子実体に触れたり,傷つけたり,あるいは子実体を切断すると,その部分が赤変したままで,クロハツやクロハツモドキのように赤変後,黒変しないきのこである.リボソームDNAの28SおよびITS領域に基づいたクロハツ節の解析結果から,クロハツは3型に,クロハツモドキは9型に,ニセクロハツは5型にそれぞれ分かれた.ここではニセクロハツの分子系統解析の結果,子実体の巨視的な形態的特徴・顕微鏡的な特徴に関して,報告する. 28Sを用いた分子系統解析ではニセクロハツは大きなグループを作り,遺伝的に異なった5群(型)に分かれた.しかし,ITS領域の解析ではニセクロハツの3型(B-2,B-3,B-4)は同一群に属したが,それ以外の2型(B-1,B-5)は3型と同じ群に属さなかった.タイプ標本を含むB-1はクロハツと同じ群を形成した. 子実体の巨視的な形態観察ではヒダが細かくて柄が長いB-2,ヒダの赤変性が強いB-3など,型間に違いが見られた.顕微鏡的な特徴では胞子の表面構造やカサの表皮の状態が,タイプ標本を含むB-1とB-3との間で明らかに異なった. 以上のことから,分子系統解析で得られた5型間に子実体の巨視的な,あるいは顕微鏡的な特徴の違いが見られたので,B-2やB-3はニセクロハツの別種か,あるいは変種と考えることができる.
著者
高松 進 一谷 多喜郎
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.82-85, 1986-01-25

本邦未報告の Pythium okanoganense Lipps によるムギ褐色雪腐病の発生を確認した。病徴は P. iwayamai および P. paddicum による既知の褐色雪腐病の場合と同様であった。1982年から1984年にかけて福井県北東部地帯で調査したところ, 本菌は, 157圃場のうち10圃場で分離され, うち2圃場では最優占種であった。本菌は乾田で分離され, 湿田では分離されなかった。コムギ1品種(ナンブコムギ)とオオムギ2品種 (べんけいむぎ, ミユキオオムギ)に対して接種したところ, いずれの品種も雪腐症状を呈したが, ナンブコムギはべんけいむぎ, ミユキオオムギに比べて発病程度が低かった。P. iwayamai と P. paddicum に比べて病原力はやや弱いが, 本菌はわが国におけるムギ褐色雪腐病菌の一つと考えられた。
著者
佐藤 幸生 高松 進
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

2002年、神奈川県で、従来とは異なる菌(Oidium属Reticuloidium亜属菌;OR菌)によるキュウリうどんこ病の新発生が確認された(内田・宋、2003)。一方でOR菌による種々の植物のうどんこ病の新発生が相次いで報告されている。本研究は、1)キュウリ上のOR菌の発生実態調査と、2)キュウリと種々の植物上のOR菌との関係などを明らかにすることを目的に実施した。1発生実態:富山県、東京都および秋田県南部、新潟県で調査した結果、いずれの調査地でもOR菌によるうどんこ病が発生し、従来からのOidium属Fibroidium亜属菌(OF菌)によるうどんこ病に劣らず発生が広がっていることから、OR菌によるうどんこ病は、本邦ではすでに広く発生していることが示唆された。従来からのOF菌によると同程度に激発する例も認められ、防除を要することが明らかになった。発生品種は、湧泉、アンコール10、金星、インパクト、南極2号、京涼み、夏涼み、プロジェクトX、シルフィー、金沢太キュウリと節成千両の11品種に及んでいた。2種々の植物でのOR菌によるうどんこ病の新発生:2004年以降、従来とは異なるOR菌によるうどんこ病の新発生は、ヒマワリ、キクイモ、オミナエシ、ジニア、トレニア、スコパリア、カボチャ、カラスウリなど、4科8種の植物で確認した。3種々の植物上のOR菌の宿主範囲および遺伝子解析:トレニア以外のキュウリ、カボチャを含む9種類の植物(ヒマワリ、キクイモ、オミナエシ、ジニア、スコパリア、パンジー、メランポジュウム)上の菌は、いずれもキュウリに病原性を認めたが、キュウリとカボチャ上の菌は、キュウリ以外には病原性を認めなかった。東京都、新潟県、富山県で採集したキュウリ上のOR菌は、遺伝子解析の結果1つのクラスター属し、OR菌のグループ分け(Takamatsuら、2006)におけるIX群に属した。キク科植物上の菌は、III群に属した。パンジー、オミナエシ、トレニア、クジャクアスター上の菌はキュウリ上の菌と同じIX群に属した。