著者
飯塚 一幸 村田 路人 宇野田 尚哉 奥村 弘 高槻 泰郎 田中 康二
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

伊丹市の小西家は日本を代表する酒造家である。本研究は、小西酒造の蔵から発見された新資料を対象に、①その目録化を図る、②新資料を基に学際的研究を行う、③学際的研究の成果を書籍として刊行する、ことを目的とした。本研究の成果は以下の通りである。(1)文書については2万8133点、典籍については1279点を目録化した。(2)「小西家資料研究会」を立ち上げ、小西家を取り巻く人的ネットワークと、それを基に小西家が伊丹地域の近代化を支えた実態を明らかにした。(3)研究代表者・研究分担者、研究会に参加した若手研究者により、論文集を刊行することで出版社と合意した。
著者
高槻 泰郎
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.325-344, 2008-11-25 (Released:2017-07-22)
被引用文献数
1

我が国において,いつ,いかにして市場経済は勃興し,興隆したのか。この日本経済史上,極めて重要な課題に対して,本稿は,大坂の堂島米会所を対象として米価形成の効率性を検証することにより,一次的な接近を試みるものである。近世期における市場経済の展開を,領主米市場の分析を通じて明らかにしたのが宮本又郎である。宮本による研究は,領主米市場において価格機構が存在していたことを数量的に明らかにしたという点で,研究史上の画期をなすものであったが,価格機構の核心たる,価格形成の効率性に関して検証を加えたものではなかった。そこで本稿では,堂島米会所を対象として,情報をどれだけ適確に反映して価格形成が行われていたかを表す,情報効率性という尺度を用いて効率性を評価した。分析に際しては,一次史料から新たに復元された日次の米価系列を用いた。その結果,堂島米会所においては,18世紀末から幕末にかけて,情報を適確に反映していたという意味で,効率的な価格形成が行われていたことが明らかとなった。
著者
久松 太郎 高槻 泰郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、山片蟠桃の経済学的叙述を一貫した理論として復元し、その政策面での有用性を示すことによって、わが国の忘れられた学術的遺産を再考する。近世日本の経済論が主に交換面での議論で構成されているのに対し、古典派経済学の創生・成熟期にあたる同時期の西欧では、生産・分配面での議論が主な構成要素であり、そうした面での経済厚生や救貧対策が論じられている。蟠桃の著作には、西欧古典学派において重要なキーワードが散見している他、分配に関する図解をも看取できる。彼の経済論を合理的に再構成し、それを日本経済史固有の文脈で復元することは、これまで十分に試みられることがなかった学術的に大きな意義をもつ作業である。