- 著者
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高槻 泰郎
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社会経済史学 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.4, pp.325-344, 2008-11-25 (Released:2017-07-22)
- 被引用文献数
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我が国において,いつ,いかにして市場経済は勃興し,興隆したのか。この日本経済史上,極めて重要な課題に対して,本稿は,大坂の堂島米会所を対象として米価形成の効率性を検証することにより,一次的な接近を試みるものである。近世期における市場経済の展開を,領主米市場の分析を通じて明らかにしたのが宮本又郎である。宮本による研究は,領主米市場において価格機構が存在していたことを数量的に明らかにしたという点で,研究史上の画期をなすものであったが,価格機構の核心たる,価格形成の効率性に関して検証を加えたものではなかった。そこで本稿では,堂島米会所を対象として,情報をどれだけ適確に反映して価格形成が行われていたかを表す,情報効率性という尺度を用いて効率性を評価した。分析に際しては,一次史料から新たに復元された日次の米価系列を用いた。その結果,堂島米会所においては,18世紀末から幕末にかけて,情報を適確に反映していたという意味で,効率的な価格形成が行われていたことが明らかとなった。