著者
高橋 晃周
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.22-35, 2004-07-30
被引用文献数
3 3

海鳥類は通常,繁殖地から遠く離れた餌資源に依存し,繁殖地と採餌場所の間を繰り返し往復しながら繁殖を行っている.このような繁殖における基本的制約から,海鳥類の親の餌の選択や,採餌にかける努力量,採餌効率の個体間の違いは繁殖成績に大きく影響すると考えられる.本論文では,海鳥類の採餌行動と繁殖成績の関係を個体レベルで調べた研究について簡単にレビューした.海鳥の個体ごとの食性は,これまで伝統的に餌•ペリットのサンプリングや直接観察により調べられていたが,最近では安定同位体比を用いた解析も行われ始めた.これらの研究では,エネルギー価の高い餌を専門的または高い頻度で採餌する個体の繁殖成績が高いという傾向が見られる.しかし,食性の個体変異の研究例はカモメ類に偏っており,他の海鳥類での研究が必要である.海上での海鳥の採餌行動は,近年発達した小型の動物装着型記録計や,衛星またはVHF発信器によって追跡されてきている.このような計測器によって,親の海上での採餌努力量を定量化したペンギンにおける2つの研究では,親の採餌努力量と雛の成長速度の間に関係は見られなかった.繁殖成績に結びつく個体の採餌行動として,採餌の努力量よりも採餌効率が重要であることが示唆された.採餌効率の個体間の違いは主に,個体間の1)形態の違い,2)学習による採餌技術の違い,3)他個体との競争,によって生じると考えられる.採餌生態を個体ごとに追跡し,これが親自身のエネルギー配分プロセスを通じていかに繁殖成績に影響するか調べることは,今後,採餌戦略と生活史戦略をリンクさせる重要な研究となる.鳥類の中でも特徴的な採餌生態•生活史特性を持ち,また近年採餌行動を個体ごとに追跡する手法が整いつつある海鳥類をはじめとした魚食性鳥類での研究の発展が期待される.
著者
佐藤 克文 島谷 健一郎 依田 憲 渡辺 伸一 高橋 晃周 坂本 健太郎 赤松 友成 高橋 晃周 坂本 健太郎 赤松 友成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

加速度時系列データから簡便にスペクトログラムを作成し、k-means法による自動判別を行い,いくつかの行動にカテゴライズするソフトウェアーEthographerを作成した。本ソフトを用いることで、複数種類の対象動物から得られた加速度時系列データを簡単に解析する事が可能となり、対象動物毎の生理・生態学上の発見に加えて,種間比較による研究成果が得られた。
著者
高橋 晃周
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

研究計画に基づいて以下の野外調査を行い、様々な海洋大型動物の環境利用についてデータを取得した。(1)2004年7月より8月まで、米国アラスカ州プリビロフ諸島セントジョージ島に滞在し、同島に繁殖するハシブトウミガラスの海洋環境利用について調査を行った。ハシブトウミガラスに潜水深度・水温・体軸方向の加速度などのパラメータをファインスケールで測定するデータロガーを装着し、12個体から採餌行動に関する情報を得た。その結果、ハシブトウミガラスが水温躍層深度の異なる複数の水塊を利用し、水温躍層直下へ頻繁に潜水を行っていることなど、ハシブトウミガラスのファインスケールでの海洋環境利用について新しい事実があきらかになった。(2)2004年9月より10月まで、伊豆諸島御蔵島に滞在し、同島に繁殖するオオミズナギドリの環境利用について調査を行った。照度・着水の有無・水温を記録するデータロガーをオオミズナギドリ11個体に装着した。来年度(2005年6-7月)にデータロガーを回収し、海洋環境利用についてのデータを取得する予定である。(3)2004年11月より2005年3月にかけて、英国サウスジョージア諸島バード島にあるBritish Antarctic Survey Bird Island Research Stationに滞在し、同島に繁殖する南極海洋生態系の様々な高次捕食動物の海洋環境利用について調査を行った。潜水深度・遊泳速度・水温・体軸方向の加速度などのパラメータをファインスケールで測定するデータロガーを装着し、マカロニペンギン43個体、ジェンツーペンギン12個体、アオメウ15個体、マユグロアホウドリ5個体、ナンキョクオットセイ10個体から採餌行動に関する情報を得た。繁殖期間の進行に伴う環境利用の変化や海洋環境利用の種間の違いなどについて、現在データ解析を進めている。
著者
高橋 晃周 佐藤 克文 西川 淳 河野 通治 内藤 靖彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-41, 2000-03

アデリーペンギンの集団繁殖地の分布および繁殖数の調査を, 1998年12月23日, エンダービーランド・アムンゼン湾において, ヘリコプターをもちいて行った。これまでに報告されていた1ヵ所に加え, 新たに3ヵ所の集団繁殖地を発見した。これら4繁殖地でのアデリーペンギンの繁殖数の合計はおよそ9760ペアで, アムンゼン湾の繁殖個体群は東エンダービーランドにおける最大規模の繁殖個体群であることが明らかになった。
著者
高橋 晃次郎
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.1975-1992, 1959 (Released:2010-10-08)
参考文献数
65
被引用文献数
1 1
著者
綿貫 豊 佐藤 克文 高橋 晃周 岡 奈理子 高田 秀重
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

海鳥の移動と体組織の汚染物質をつかって汚染分布をモニタリングする新しい手法を開発した。ミズナギドリ類2種130個体以上をバイオロギング手法で追跡した。繁殖期において、尾腺ワックス中の残留性有機汚染物質濃度は異なる海域で採食する個体毎に異なり、PCBs,DDTs,HCHsでそのパタンが違った。越冬中に生える羽の水銀濃度にも、異なる海で越冬期を過ごす個体毎で差があった。これらの地域差は汚染物質の放出源と拡散によって説明できた。この手法によって海洋汚染を海洋区プラニングで必要とされる空間スケールで測定できる。
著者
高橋 晃周 佐藤 克文
出版者
国立極地研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、飛翔性の海鳥類であるオオミズナギドリを対象として、年間を通じた鳥の移動を追跡する技術を確立し、本種がどのような海域を利用しているか、またその海域がどのような特徴を持つか明らかにすることである。今年度は、まず、7-10月にかけて、岩手県三貫島・新潟県粟島にあるオオミズナギドリの繁殖地で野外調査を行って、昨年度に鳥に装着した光のレベル・着水を記録する記録計(ジオロケータ)を回収した。また、新たに水温の記録を利用することで移動追跡の精度を向上させる解析手法を開発し、その手法を用いて、今年度回収したデータと昨年度までに得られているデータとを合わせて解析した。解析の結果、オオミズナギドリは、日本から3000-5000kmも離れたニューギニア北部海域、アラフラ海、南シナ海の3つを越冬海域として利用していることが明らかになった。また、その中でもニューギニア北部海域は重要な越冬海域となっており、約7割の個体がここで越冬していた。この海域は餌となるネクトンの生産性が高いため、多くの個体にとって好適な越冬場所となっていると考えられた(論文投稿中)。また、繁殖期前期(4-7月)のオオミズナギドリの採餌海域を得られたデータから解析した。主な採餌海域は三陸沖の親潮・黒潮移行域で、この海域の水温が季節的に上昇するのにあわせて、オオミズナギドリの採餌域も季節的に北上することが明らかになった。これは主要な餌であるカタクチイワシの分布の季節的北上と対応していると考えられた(論文準備中)。さらに、動物装着型の移動追跡技術に関するシンポジウムを日本鳥学会年次大会において企画し(オーガナイザー:高橋晃周・依田憲)、これらの技術の持つ可能性について講演を行い、その内容をとりまとめて総説を発表した(高橋・依田2010)。