- 著者
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中村 壮大
勝平 純司
松平 浩
高橋 美帆
佐久間 善子
崎田 真里子
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0269, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】四つ這い位などの運動課題の違いが腹横筋に与える影響についての研究は認められるが,ブリッジ動作の種類の違いによる影響の検証は行われていない。そこで我々は,ブリッジ動作の種類の違いがどの様に腹横筋の筋厚へ影響を及ぼすかを明らかにすべく検証を行った。【方法】対象は整形外科的手術歴がなく,神経学的にも問題のない健常成人26名(男性10名,女性16名)とした。超音波診断装置を用い課題動作である3種類のブリッジ動作(両脚ブリッジ,片脚ブリッジ,クロスブリッジ)と安静時の腹横筋の筋厚の測定を実施した。被験者は両脚ブリッジ(股関節伸展0°となるまで臀部を挙上),片脚ブリッジ(一方の下肢の膝関節を完全伸展させたまま臀部を挙上させ股関節伸展0°になるようにし,左右の膝蓋骨の高さが同じかつ足関節底背屈0°),クロスブリッジ(一方の外果を他方の膝蓋骨上縁に接し,他方の股関節伸展0°となるまで臀部を挙上させる)を行う。これに加え,ブリッジをしない安静時のコントロール群,計4種類における腹横筋の筋厚を測定した。測定条件として①ブリッジ動作時上肢は胸の前でクロスする②両脚ブリッジでは両側の膝関節,片脚ブリッジ・クロスブリッジでは接地側の膝関節を70°屈曲位とする③足底はベッドに全面接地させる。分析方法は2試行の平均値を代表値とした。統計処理として,ブリッジの種類による腹横筋の筋厚の比較には,種類,左右,性差の三元配置分散分析反復測定法を実施し,交互作用を検討した後に,一元配置分散分析反復測定法(種類)にて検定を行った。有意水準は5%とした。また,被験者に対して各ブリッジ動作の難易度についてのアンケートを実施した。【結果】三元配置分散分析(種類,左右,性差)を行った結果,性差には有意差を認めたものの,種類と性差,種類と左右,性差と左右に交互作用は認められなかった。そこで,一元配置分散分析(種類)にて検定した結果,安静時に比べ両脚では有意に筋厚の増加が認められた(p=0.001)。また,片脚に比べ両脚(p=0.002),クロスに比べ両脚(p=0.001)でも有意に筋厚の増加が認められた。【結論】ブリッジ動作の種類の違いにおける腹横筋の筋厚への影響を検証した結果,両脚ブリッジにおいて最も筋厚が増加した。諸家によって,支持基底面が不安定な時には脊柱起立筋やハムストリングといったグローバル筋群が活動する事が報告されている。本研究において両脚ブリッジで最も腹横筋の筋厚が増加した要因として,片脚やクロスなどのブリッジ動作と比較して両脚ブリッジでは支持基底面が安定しているため,骨盤底筋群や腹部深層の腹筋群の収縮が得られやすく,これが,腹横筋の筋厚の増加につながったと考えた。本研究により両脚ブリッジが最も腹横筋の筋厚が増加することが明らかとなった。これらは,リハビリテーション分野におけるトレーニング方法の重要な知見となると考える。