著者
千葉 雄大 松村 修 寺尾 富夫 高橋 能彦 渡邊 肇
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.455-464, 2009-10
被引用文献数
1

深水栽培による籾数制御と草姿の改善により、水稲の登熟期における高温による白未熟粒の発生抑制を試みた。2004年から2007年に、水稲3品種(初星、ササニシキ、コシヒカリ)を分げつ盛期から最高分げつ期にかけて水深18cmで深水処理し、生育、収量と白未熟粒割合を調査した。深水処理により、2次分げつおよび上位1次分げつといった弱小分げつが減少して、強勢な下位の1次分げつの穂を中心とした分げつ構成となり、有効茎歩合が高まった。その結果、深水処理により穂数は減少したが、一穂籾数と玄米千粒重が増加し、年次変動はみられたが、慣行栽培と同程度の収量が得られた。深水処理により白未熟粒発生が抑制され、特に、乳白粒の発生を顕著に抑制した。また、深水栽培は、オープントップチャンバーによる高温処理においても白未熟粒発生を抑制し、高温による品質低下防止に効果があった。この効果は、高温登熟耐性の弱い品種ほど顕著であった。しかし、深水処理は茎数を減少させるため、十分な茎数が確保できない場合には減収した。このため、高品質米の収量確保には、有効茎数を確保してから深水処理を開始することが必要であり、深水処理開始時の茎数が330本/m2程度確保できれば、慣行栽培と同程度の収量と、白未熟粒発生抑制の両立が期待できる。
著者
石間 妙子 村上 比奈子 高橋 能彦 岩本 嗣 高野瀬 洋一郎 関島 恒夫
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-35, 2016-07-28 (Released:2016-09-05)
参考文献数
37
被引用文献数
1

近年,水田生態系の保全を目的とした環境保全型農業が全国各地で行われており,その有効性が数多く報告されている.しかしこのような農法は,慣行農法に比べて作業コストや技術習得のための時間がかかるため,取り組みの規模が限られている.水田生態系の改善を広く実施するためには,全国の水田の 6 割以上を占める圃場整備済み水田においても導入可能であり,かつ現状の農法と用水供給体制のままで,低コストで導入できる保全手法を確立する必要がある.そこでわれわれは,“江(え)”とよばれる圃場の一部に併設された土水路状の構造物に着目した.江は 1 年を通して湛水状態が保たれ,水生動物の保全に一定の効果があると報告されているが,圃場整備済みの水田における有効性や創出手法はわかっていない.そこで本研究では,暗渠排水が導入された圃場整備済み水田における江の創出手法を確立するため,後述する 2 つの手法が,通年湛水および魚類群集に与える効果を検証した.1 つ目に,江の水抜け防止対策として防水シートを設置した江と未設置の江を創出し,2 つの江の間で水深を比較したところ,明瞭な水位差は見られず,どちらの江も 1 年を通して湛水状態を維持できることがわかった.また,魚類の種数,種多様度,総個体数,および種別個体数に関しても,2 つの江の間で有意差は認めらなかったことから,江における防水シートの設置効果は低いことが明らかとなった.2 つ目に,江の普及に対しては,江の創出による農地の転用面積が少ない方が有利と考えられるため,サイズの異なる江を 3 タイプ創出し,サイズによる効果の違いを検証した.3 タイプの江において水深,魚類の種数,多様度,総個体数,魚種別の個体数を比較したが,いずれの項目もサイズによる有意な差異は認められず,小サイズの江であっても魚類の生息環境として機能することが明らかとなった.これらの結果から,圃場整備済み水田における江の創出は,防水シートの設置状況や江のサイズに関わらず,魚類保全に有効であることが示唆された.
著者
高橋 能彦 佐藤 巧 伊部 歩
出版者
新潟大学
雑誌
新潟大学農学部研究報告 (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.97-102, 2006-03

新潟特有の冬季低温寡照条件で、2004年秋から2005年春にイチゴ「越後姫」を温室ハウスで高設促成栽培し、灯油燃焼式の炭酸ガス発生機を用いて炭酸ガス施肥効果を検証した。炭酸ガスは日の出から5時間施用し、1月から3月の午前9時から12時までの平均炭酸ガス濃度は約1,500cm3 m-3であった。炭酸ガス施用でイチゴの硝酸吸収が促進されて葉色は濃く推移した。炭酸ガス施用区の累積収量は炭酸ガス無施用の対照区より17%増収した。規格別収量では炭酸ガス区で20g以上の大型果実が多くなった。また、炭酸ガス施用で果実糖度は有意に増加し、対照区より1.0~3.5度高くなった。以上、新潟の冬季気象条件で炭酸ガス施肥によるイチゴの増収および品質向上効果が認められた。The present study was made to investigate effect of CO2 application to strawberry cv. "Echigo-hime" for green house forcing culture in Niigata region, that the climate condition is low temperature and low amount of solar radiation in winter. Experiment was conducted from autumn 2004 till spring 2005 in Niigata University Shindoori Station. CO2 gas was applied from sunrise for 5 hours, and the average concentration was about 1,500 cm3 m-3, in the period in Jan. to Mar. in a.m. Leaf color CO2 treated plants was higher than the control, due to the active NO3-N absorption. And total yield increased about 17% compared with the control. CO2 treated plants had much harvest of big fruits of 20g or more. The sugar content (Brix) of fruits was higher about 1.0-3.5 degrees by CO2 treatment. Conclusion, CO2 application to strawberry was effective technique in that winter conditions as Niigata region.