著者
篠澤 和恵 楜沢 順 高田 雅美 城 和貴
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.119-127, 2013-03-12

コンピュータ上での絵具の発色シミュレーションは,グラフィックソフトウェアへの応用が期待できる.古典油彩画における「グレーズ」は,薄く溶いた透明な絵具の層を重ねる技法であり,混色で表現できない色調を,重色によって表現するものである.その発色は,放射伝達方程式を解くことによって求められる.しかし従来手法は,異なる絵具でグレーズを行う方法が示されておらず,高精度な解を得るには計算量が大きくなるため,グラフィックソフトウェアへの応用には不向きである.本研究では,まず従来手法を異なる絵具の層に対応できるように拡張する.さらに,係数行列を分解し,刻み幅を固定することにより,高精度な解を小さい計算量で得ることが可能な数値解法を提案する.また,実際の油絵具のデータを用いて数値実験を行い,高精度な解が,従来手法の約4%~7%の計算時間で求められることを示す.
著者
粟津 妙華 高田 雅美 城 和貴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.72-79, 2015-03-30

国立国会図書館では,所蔵する明治から昭和前期の近代書籍を近代デジタルライブラリとしてWeb上でページごとの画像データとして公開しているが,文書内容での検索を行うことができない.そのため,自動でのテキスト化が望まれている.その際,問題となっているのがヒストグラム法では除去できないルビであり,我々はすでに近代書籍に特化したルビ除去手法を提案している.しかしながら,その提案した手法は書籍に付加された版者や時代などの外部情報を利用しなければならず,近代デジタルライブラリのすべての外部情報を利用することはきわめて困難である.そこで本論文では,対象とする書籍画像から直接得られるデータをもとに,進化計算によってルビ除去式を生成し,近代書籍から自動でルビを除去する手法を提案する.In the web site of National Diet Library, the digital library from the Meiji era is open to the public. Since the early-modern Japanese printed books are given as image data, namely, full-text search is not available, automatic conversion to the text is needed. There is a major obstacle to the text conversion because of ruby, which is found in early-modern printed books. Ruby cannot be removed by the existing and traditional histogram method. Therefore, we have proposed a ruby removal method for early-modern printed books. Since the proposed method is based on the external information added to the books, the feasibility is very low. In this paper, we propose a new method to remove the ruby automatically from early-modern Japanese printed books by generating ruby removal formula by Genetic Programming using the training data based on the book images.
著者
粟津妙華 高田雅美 城和貴
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.17, pp.1-6, 2012-11-29

国立国会図書館では,所蔵する明治から昭和前期の近代書籍を近代デジタルライブラリとして WEB 上でページごとの画像データとして公開しているが,文書内容での検索を行うことができない.そのため,自動でのテキストデータ化が望まれている.その際,問題となっているのがルビである.現在のルビを直線的に除去する技術は,規格に沿った現在の書籍を対象としたものであるため,現在の書籍とは違う特性を持つ近代書籍には適用できない.そこで,本研究では,遺伝的プログラミングを用いて,曲線的に出版者・時代ごとの専用ルビ除去式の生成を行う.In National Diet Library, books which are possessed in library as "the digital library from meiji era" are open to the public on WEB. Since these are shown as image data and cannot search using document contents, an automatic text conversion is needed. However, ruby is a disturbing text conversion. Since existing techniques of linearly removing ruby had developed for books of the current standard, the techniques are inapplicable to early-modern Japanese books, which have a specific characteristic different from characters of current books. In this paper, we propose a method to remove ruby from early-modern Japanese books using Genetic Programming.
著者
松本 多恵 高田 雅美 城 和貴
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.27, pp.1-6, 2011-09-08

本稿では,e-口コミを用いた新たな学習支援手法を提案する.この手法の目的は,1)高いドロップアウト率,2)モチベーション維持の困難さ,3)少ないインタラクティブ性という 3 つの e-learning が抱える問題を解決することである.提案する学習支援手法は,従来の学習支援と大きく異なり,メンターなどの学習支援者を必要とせず,学習者自らが意欲的・主体的に学習をする仕掛けを与えるものである.我々は,この e-口コミを発生させるために,消費者購買行動モデルの 1 つである AISAS に着目する.このモデルを応用し,マンガ教材を利用した e-learning 学習教材の開発を行う.開発された教材が e-learning が抱える問題を解決する方法として有効であることをアンケートから示す.In this paper, we propose an e-learning support method using e-WOM (e-Word of Mouth) for three problems in e-learning: 1) learners drop out at high rate 2) it is difficult to maintain motivation 3) it has few interactive. The proposed method is a lot different from existing methods. The proposed method does not need support persons such like a mentor, and set up a case that learners work aspiringly and actively. To go on e-WOM, we adopt AISAS, which is a model for buying behavior. We put AISAS into the development of the e-learning support method using comic learning tools. To validate the method, we have questionnaires.
著者
城 和貴 高田 雅美 木目 沢司
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題では近代書籍の自動テキスト化を実現するために必要な学習データを効率良く集めるための支援環境を構築した。規格化された現在の書籍用フォントと違い、近代書籍の活版印刷によるフォントにはデータベース等は存在せず、近代書籍から直接画像を切り出し学習データを作成しなければならないが、文字種が1000種類くらいまでは人手でも困難なく収集できるが、2000種を数える頃には困難を極める。そこで不完全ながら学習データを備えた近代文字認識システムを構築し、それに新たな近代書籍を適用し、正しく認識できない未学習の文字を表示させ、その文字種を人間が判断して学習データに追加するシステムを構築した。
著者
小郷 絢子 田邊 昇 高田 雅美 城 和貴
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.15, pp.1-10, 2011-07-20

本報告では,係数行列や解ベクトルが GPU 上に載りきらないほど大きな連立一次方程式を共役勾配法 (CG法) で解く際に,メモリアクセラレータの利用を提案する.提案アクセラレータは GDDR5 ポートなどに接続され,デバイスメモリの厳しい容量制約を緩和するとともに,Gather 機能によりキャッシュや GDDR 系メモリが苦手とする間接アクセスを連続アクセス化する.本報告では,フロリダ大学の疎行列コレクションを用いて提案方式の性能評価を行った.その結果,テクスチャキャッシュが効くような小さな行列でも,単体性能はテクスチャキャッシュを用いる既存手法の 1.05~2.01 倍に向上した.従来手法は行列サイズを大きくした時,GPU 内キャッシュのヒット率が低下し,性能低下する.解ベクトルがデバイスメモリ容量を超えると PCI express を通過する通信により,さらなる性能低下が予想される.それに対し,本手法はそれらの心配が無い.In this paper, we propose the use of memory accelerator to solve systems of liner equation, which coefficient matrices and solution vector unable to be had on board by CG method. In the case of existing method, when the size of matrix is increase, performance decrease because of hit probability on GPU cache decrease. We predict that performance decrease because of access of exceed access, the case solution vector is over device memory capacity. In contrast, there is no risk, thanks to this method. Proposed accelerator is connected to such as GDDR5 port, it ease severe capacity limit, and make indirect access which is unsuitable for cache and GDDR memory into direct access using gather function. In this paper, we evaluate the performance of proposed strategy with University of Florida Sparse Matrix Collection. The result showed from the 1.05 to the 2.01 times acceleration over the case of existing performance record with the texture cache, even if small matrix which has effect of texture cache.
著者
小松 恭子 山中 朋美 高田 雅美 城 和貴
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2010-MPS-79, no.11, pp.1-6, 2010-07-05

本稿では音楽生成モデルを提案する.このモデルはコード進行生成モデルとメロディ生成モデルからなり,それぞれ遺伝的プログラミングを適用する.まず部分コード進行を生成し,隠れマルコフモデルの特徴を利用して、得られる部分コード進行に適したメロディ列を作成する.そしてメロディ列を初期個体とし,部分メロディ生成を行う.遺伝的プログラミングを用いることで,メロディにおける音価の制限をなくし,あらゆる音の表現が可能となる.
著者
高木里穂 高田雅美 梅田智広 城和貴
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.20, pp.1-6, 2012-11-29

本稿では定在波レーダを用いて人間の呼吸を観察するシステムの開発を行う.乳幼児突然死症候群という病気がある. 1 歳までの健康にみえた乳児が予兆なしに突然呼吸停止し,死亡してしまう症状のことである.この症候群を予防するには呼吸循環系の異常を早期に発見する必要がある.そこで呼吸循環系の異常を検出するために定在波レーダを用いる.定在波レーダは物体との変位を計測することができる.この変位を計測し周波数解析を行い呼吸の周波数帯域を観察することにより,ある一定の距離にいる乳児の呼吸の動きを観察するIn this paper, we present the development of a respiration monitoring system with a standing wave radar. There is a disease called sudden infant death syndrome. A well-looking baby of up to one year stops his/her breathing without any reason, and comes to die. To prevent babies from this disease, some kind of systems that check baby's breathing circulating system to detect abnormal foretaste is required. Such error detection for baby's breathing circulating can be realized by a standing wave radar, which measures the distance of target objects presicely. Measuring series of displacements to the breast of a baby, we apply Fourier transform analysis for the frequency band of baby's breathing, and we get periodical observation of baby's breathing.
著者
吉井 直子 高田 雅美 城 和貴
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.27, pp.258-259, 2011-08-20

幼児が効果的に形の学習を行うためには,適切な教材が必要である.そこで,本稿では,物体の輪郭を取り出すエッジ抽出が施されたエッジ画像を用いて実験を行い,幼児の奥行き知覚に関する特徴を考察する.実験結果から,5歳児男子は5歳児女子より奥行きをよく知覚していること,5歳児女子は個人差が大きく,平行に並ぶものより重なりがあるものをよく知覚できるということが検証できた.
著者
黒田 佳世 榎本 友里枝 高田 雅美 城 和貴
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:18840930)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.35, pp.1-6, 2010-12-09

本稿では,本の見開き画像をテキスト化する際に生じる誤認識を修正する機能をもつポータルサイトを設計する.対象とする画像は,国会図書館が所有する近代書籍のデジタル画像とする.このデジタル画像に対して,近代書籍専用の活字文字認識を適用することによりテキスト化は可能であるが,誤認識が生じる.これを修正するために,デジタル画像とテキスト文書を用いる.提案するポータルサイトでは,テキスト文書と画像データを対応させるメタデータを作成することによって,テキストに対応する画像を表示させることを可能にする.In this paper,we present a design of a portal site which has functions for correcting erratums.These erratums are caused when the facing images,which are owned by Digital Library from Meiji Era in National Diet Library,are transformed into text documents.Although those images can be transformed by using an OCR,which is specialized in early-modern printed books,the OCR infrequently cause erratums.So,to correct them, we take by means of those images and text documents. In this case,we make the metadata by which text can be corresponded to image .
著者
高田 雅美
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

非常に小さい特異値を持つ行列の特異値分解が可能となるように改良を行った. また, 様々な特異値分解アルゴリズムの性能を調べるためのテスト行列の作成法について, まとめた.
著者
高田 雅美 木村 欣司 岩崎 雅史 中村 佳正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.91-104, 2006-05-15
被引用文献数
6

高精度かつ高速に上2 重対角行列を特異値分解するために,我々は,dLV(離散ロトカ・ボルテラ:discrete Lotka-Volterra)系による新たな特異値分解ライブラリを開発している.既存ライブラリとしては,線形数値計算ライブラリLAPACK におけるDBDSQR がある.DBDSQR は,QRs法に基づいた特異値分解ライブラリであるが,計算量が多く,実行時間の面で大規模向きではない.また,いくつかの特異ベクトルのみを計算することも困難である.一方,dLV 系により定式化されたI-SVD(Integrable-Singular Value Decomposition)法は,計算量が抑えられる動作原理を持つ.本論文では,I-SVD 法の実装ライブラリDBDSLV を開発し,実行時間と計算精度について,DBDSQR との比較数値実験を行う.精度を調べる際,真の特異値と特異ベクトルが判明している上2 重対角行列が必要となる.そこで,Golub-Kahan-Lanczos 法によるテスト行列作成法を用いる.実験の結果,DBDSLV は,DBDSQR よりも誤差の少ない特異値と特異ベクトルを非常に短い実行時間で計算されることが確認された.計算された特異ベクトルの直交性も同程度であり,再直交化を行えばDBDSQR を上回ることも分かった.To perform SVD (Singular Value Decomposition) of bidiagonal matrices with high accuracy and high-speed, we develop a library by using the dLV (discrete Lotka-Volterra) system. Today's standard routine for SVD is DBDSQR provided in LAPACK (Linear Algebra PACKage). Since the computation of SVD by DBDSQR is based on the QRs (QR with shift) algorithm, DBDSQR is slow in speed and is unsuitable for large scaled problems. It is also difficult to obtain only a few singular vectors by using DBDSQR. On the other hand, the I-SVD (Integrable-SVD) scheme based on the dLV system enables us to cut down the computational cost by separating the computation process of singular values and vectors. In this paper, for evaluation of computational time and accuracy, we implement the I-SVD scheme to a new routine named DBDSLV and compare it with DBDSQR. For a comparison of accuracy, we use a method for constructing a class of upper bidiagonal random test matrices having true singular values and vectors by means of the Golub-Kahan-Lanczos method. As experimental results, we confirmed that DBDSLV is faster and errors of singular values and vectors in DBDSLV are smaller than those in DBDSQR. Though the orthogonality of computed singular vectors in DBDSLV is in the same order as in DBDSQR, we found that DBDSLV has a better orthogonality through a reorthogonalization.
著者
片山 幹基 木村 欣司 高田 雅美 坪井 洋明 岩崎 雅史 中村 佳正
出版者
一般社団法人日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.389-407, 2008-09-25
被引用文献数
1

本論文では,上2重対角行列の高速特異値分解法1-SVDにおける左特異ベクトル計算部を改善し,直交性の優れた精度のよい左特異ベクトルを高速に求める新たな手法を定式化する.さらに,その有効性を数値実験により評価する.