著者
脇島 修 鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.419-422, 1994
参考文献数
6
被引用文献数
1

ケルビンの水滴発電機を定量的に考察して演示効果を高める方法を検討した。試作した発電機では,最大電圧18kv(0.1μA),最大電流1.2mA(1.8V)を得て,赤色発光ダイオードをかなりの明るさで連続点灯させることができた。本発電機の原理は興味あるものであるし,その機構には物理教育上の重要事項が多数含まれている。本発電機は簡単に作れて操作も容易であるので,高校物理の電気分野の導入や発展,課題研究の教材として秀れている。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.331-338, 1994-09-01 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

フックとニュートンは,ともに17世紀を代表する科学者である。彼らは当時の研究対象のほとんどを手がけ,そのなかで多くの成果をおさめた。そのいくつかは現在でも高く評価されている。しかし,フックの業績は20世紀の半ばまで200年以上も闇に埋もれていた。それは,フックがニュートンとの論争に敗れたからである。古今東西,論争はその敗者に対して過酷である。敗者の多くは地位,名誉,業績を失い寂しく死んだ。しかし,純粋な学術論争は科学の発展に大きな役割をはたす。フックとニュートンの間に争われた光学論争や重力論争も,科学の発展に大きく貢献した。当時,イギリスでは英国王立協会が設立された。フックやニュートンは,この学会のなかで研究方法や研究成果報告の方法を模索しながら学会の基礎を固めていった。その成立過程にみられる模索や試行のなかには,現代にも通じるものがある。本稿では両者の性格やその社会的背景,研究方法などに分析をくわえ,そのなかで,科学にとって真に必要なものは何かを考察した。そこには,現代の科学や教育に対する示唆が多数く含まれている。つまり,17世紀の英国王立協会は,現代の科学や教育にとってもその原点と考えられる事象を多数内在させていた。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.218-223, 2012

高校物理の電磁気分野は難解である。電気の正体は明らかでないし,物理用語にも定義不明語は多い。それらが電磁気を暗記学習の域にとどめている。しかし,昨今の科学の進歩はかつての仮説や試論にも定説化と教材化をうながす。マクスウェル理論はニュートン力学の正統性を継承するもので,その手法は多くの科学理論の模範となった。変位電流は当理論を公理論として確立するための要であり,その検証は電磁波の確認にゆだねられた。本論考ではその意味を歴史的,教育的に考察する。ファラデーとマクスウェルの共同研究には数理研究と実験研究の共軛作用がみえる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.385-388, 1988
被引用文献数
2

昨今,物理教育の危機をうったえる声は多い.昭和57年の学習指導要領改訂が高校物理を従来の必修教科目から選択科目へ移行させると,その履習者は激減した.物理教育は,将来不要のものになるのであろうか.このような状況は,アメリカにおいてはより深刻である.本稿では日本の物理教育の現状をアメリカの状況と対比させながら,その意義を(i)技術をささえる物理教育,(ii)科学の基礎としての物理教育,(iii)物理学をささえる物理教育,の3点から考察して,高等学校学習指導要領のなかでの物理の位置づけを検討する.
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.36-43, 1997-02-05 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
3

ニュートン力学が創始されたとき,フランスのデカルト派からは"ニュートン力学は,悪魔の算術に依拠した恣意的仮説である"と批判された。ニュートン力学の要諦は天界の力と地上界の力の統一にあったわけであるから,その観測的,実験的検証は不可欠であった。しかし,地球の半径や地球太陽間距離の測定ができなかった当時,その検証は困難を極めた。これらの値の確定に航海学は大きく寄与した。航海学の背後にはポルトガルとイスパニアの世界「2分割支配」がみえる。航海学が天文学の進歩をうながし,天文学の知見が近代科学成立の礎石となった。本稿では,ポルトガルとイスパニアを視座に航海の動機や目的を議論し,ニュートン力学の確立に寄与したハリーの足跡をたどる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.425-432, 1995-12-05 (Released:2017-02-10)
参考文献数
10

16世紀に入ると近代科学の幕が開く。それまで神学研究の一環として行われてきた光の研究は,自然哲学の研究対象へと姿を変えた。17世紀,フックやホイヘンスらによって唱えられた光の波動説とニュートンを嚆矢とする光の粒子説は,以後200年にわたって論争を展開した。18世紀には粒子説,19世紀には波動説が優位に立った。そして20世紀に入ってアインシュタインが両説を折衷的に統一した光量子説を提唱し,論争には終止符がうたれた。その間の道程は決して平坦なものではなく,次々にもたらされる発見や新知見は両者を互いにはげしくゆさぶった。しかし,これらの論争の中から電磁気学や量子論が生まれ,相対論は深化した。「神学と光学」「力学と光学」「熱学と光学」「電磁気学と光学」「相対論と光学」「量子論と光学」等々,物理学の歴史は光の正体解明に費やされたといって過言でない。これらの歴史をたどると,それはそのまま高校物理の授業になる。当時の研究者たちの疑問は,現在の高校生の疑問でもある。「光の論争史」の教材化は物理学の体系的理解に寄与するものと考えられる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.317-324, 1995

科学には,ギリシア時代から中世にいたる2000年の空白がある。ギリシア時代に確立したアリストテレスの自然観は,その後キリスト教の教義と結びついてキリスト教的自然観を形成していった。これを2000年にわたって継承したのがスコラ学者である。16世紀に入るとコペルニクスやガリレオらによって近代科学の夜明けが告げられた。しかしキリスト教ローマ教会は,この鶏鳴を必死にはばもうとした。天動説と地動説,キリスト教的自然観と近代的自然観,これらの間には,し烈な論争が展開された。論争はやがて宗教裁判で争われ,その結果はすべて教会側の勝利に終わった。そこでの有罪はときに死をも意味し,火刑をまぬがれた者も社会的には完全に葬られた。だが,これらのことを高校物理の教科書が詳述することはない。したがってガリレオ裁判の結果には,高校生は一様に疑問を持つ。地動説を支持することは,なぜ極刑に値するほどの悪事なのか。ローマ教会はなぜかくも執拗に老ガリレオを糾弾しなければならなかったのか。本稿では,これを科学と宗教間の葛藤ととらえ,ガリレオとシンプリチオの対話にその意味をさぐってみる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-4, 1987-03-10 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
2

長さ4m,内径1.7cmの水道用塩ビパイプの一端にイヤホンをとりつけ,パルス状の音を出す.このイヤホンから4cmはなれたところにマイクロホンをつけ,イヤホンから直接くる音とパイプ内を往復して返ってくる音をキャッチする.この直接音と反射音をオッシロスコープの画面に現し,この時間間隔を読みとって,音速値を計算する.パイプのなかには二酸化炭素などの気体を入れて,そのなかでの音速を求めることもできるし,パイプの他端を金属板などで閉じたり開いたりして,固定端や自由端での音の反射の位相変化を観察することもできる.この実験は簡単に実施できるし,結果も良好である.本稿ではその結果を中心にして報告し,高校物理における教卓実験としての教材化について述べる.
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.349-356, 1997
被引用文献数
1

科学と社会,両者の接点にコーヒーの姿がみえる。ギリシアを始点とする自然科学と,アラビアを原点とするコーヒーは,イタリア,フランスをへてイギリス,アメリカへとその舞台を移した。その間コーヒーは,科学と社会の間にあって,相互作用因子としての機能をはたした。18世紀中葉,コーヒーはイギリスの地にしばしの安息を得るが,この間にイギリス文化の基礎を築き,その地に近代科学を育んだ。しかしロンドンとパリではその様子は大きくことなっていた。そこにはイギリスとフランスの国力や社会制度のちがいがみえる。英語と仏語の間にも文化的闘争があった。ロンドンのコーヒー店はイギリスの社会制度を育んで自然科学の確立に寄与したのに対し,パリのカフェーは社会科学の揺動因として社会変革の震源となった。本稿では,コーヒー店を視座に近代科学成立の要件をさぐる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.36-43, 1997
参考文献数
21
被引用文献数
2

ニュートン力学が創始されたとき,フランスのデカルト派からは"ニュートン力学は,悪魔の算術に依拠した恣意的仮説である"と批判された。ニュートン力学の要諦は天界の力と地上界の力の統一にあったわけであるから,その観測的,実験的検証は不可欠であった。しかし,地球の半径や地球太陽間距離の測定ができなかった当時,その検証は困難を極めた。これらの値の確定に航海学は大きく寄与した。航海学の背後にはポルトガルとイスパニアの世界「2分割支配」がみえる。航海学が天文学の進歩をうながし,天文学の知見が近代科学成立の礎石となった。本稿では,ポルトガルとイスパニアを視座に航海の動機や目的を議論し,ニュートン力学の確立に寄与したハリーの足跡をたどる。
著者
平野 正広 秋山 純和 加藤 崇洋 岡庭 栄治 丸山 仁司 天野 裕之 鬼塚 史朗
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-46, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
29

〔目的〕前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術の術後合併症に腹圧性尿失禁があり,その治療法にはPFMT(Pelvic Floor Muscle Training:骨盤底筋群トレーニング)がある.MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像)によってPFMT時の骨盤底部の運動変化を検討した.〔対象〕健常成人男性7名とした.〔方法〕PFMT方法は,「おしっこを止めるように」,「肛門を閉めるように」の2つの指示とし,MRIによる撮影を実施した.骨盤底筋群の収縮による運動変化を捉えるために,安静時と指示を与えた時で恥骨─尾骨先端(P-C)距離,床面-尾骨先端(F-C)距離,恥骨─膀胱頚部(P-B)距離を測定し比較した.〔結果〕P-C距離は減少し,F-C距離,P-B距離の増大する傾向を認めた.指示「おしっこを止めるように」でP-C距離は減少幅が大きく,指示「肛門を閉めるように」でF-C距離の増大幅が大きかった.〔結語〕MRIを用いてPFMT時の骨盤底部の運動変化を明らかにした.PFMT指導によるP-C距離の減少,F-C距離の増大は,男性における尿失禁治療のPFMT 指導方法に役立つことが示唆される.
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.415-418, 1994-12-05 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

アーク放電型無線電話の実験を簡単な方法で演示したところ,当教育センターの教員研修では強い興味と関心がよせられたので,本電話の歴史的意義と教育的意義を考察して,高校物理での教材化を試みた。本装置は素朴で原理的であるが,そのなかには物理教育上の重要事項が多数含まれている。音質は良好で,音量も十分であるので演示効果は大きい。本実験は,高校物理IIの電磁気分野のまとめや発展学習,課題研究の教材として利用できる。
著者
脇島 修 鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.419-422, 1994-12-05 (Released:2017-02-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

ケルビンの水滴発電機を定量的に考察して演示効果を高める方法を検討した。試作した発電機では,最大電圧18kv(0.1μA),最大電流1.2mA(1.8V)を得て,赤色発光ダイオードをかなりの明るさで連続点灯させることができた。本発電機の原理は興味あるものであるし,その機構には物理教育上の重要事項が多数含まれている。本発電機は簡単に作れて操作も容易であるので,高校物理の電気分野の導入や発展,課題研究の教材として秀れている。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.295-298, 1998-10-25 (Released:2017-02-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ガリレオには,一連の力学実験がある。(1)落下の思考実験(2)ピサの斜塔実験(3)斜面の実験(4)クサビ形斜面上の放物運動実験(5)V字谷斜面の実験(6)船上の落下実験。ガリレオはこれらの実験を通して,スコラ的自然学を打破し,新たな力学体系の樹立を図った。落下法則の発見から加速度運動の存在を確信し,慣性概念やガリレオの相対性原理を提唱してニュートン力学の基礎をきずいた。本稿では,その研究過程を考察する。そこには,観察と実験,思考実験と実実験,定性実験と定量実験理論と実験数理科学と実験科学などの関係がみえる。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.264-267, 1997-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
3

ガスの炎が電界の変化に応じて音を出していることに気づいた。音はそれほど大きくはないが,電極電圧の変化に対する忠実度は高く,十分に音楽的であった.音の特性や特徴を調べ発音機構を考察して,この現象が電気エネルギーから音エネルギーへの直接変換事例であることを教材化の視点で議論した。
著者
前田 佳子 木原 健 徳本 直彦 柳沢 博 伊藤 文夫 鬼塚 史朗 中沢 速和 東間 紘
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1091-1091, 1994-12-25

第5回東京女子医科大学在宅癌治療研究会 平成6年7月30日 東京女子医科大学中央校舎中央校舎5階500番教室
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.426-433, 1994
被引用文献数
1

1800年,ボルタの電池が発明されると電気の研究はいちだんと進展した。そして,電気は実用化の時代へと入っていく。この実用化に際し,エジソンとウェスティングハウスの間には熾烈な論争が展開された。この論争は交流-直流大戦争の名で呼ばれた。論争は,ウェスティングハウス(交流)側の勝利に終わったが,このなかで確立された技術は多い。「直流か交流か」「高圧か低圧か」「負荷は直列か並列か」「市中型火力発電所か郊外型水力発電所か」「アーク灯か白熱電球か」等々,両者の間には対照的な理論が展開された。これらをたどるとそのまま物理の授業になる。エジソンの実践研究とウェスティングハウスらの理論的研究は,教育的には体験的理解と理論的理解,定性的理解と定量的理解に対応させて考えることができる。