著者
齋藤 美穂 頼 [チョンチ]
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.84-96, 1992-09-01
被引用文献数
10

前報『アジアにおける色彩嗜好の国際比較研究(1)-日韓比較・白嗜好に着目して-』では, 日本と韓国の色彩嗜好傾向を比較検討した。その目的は主に, 日本での根強い「白嗜好」を地理的・文化的に近い周辺のアジア諸国の中で展望し, また他の国における一般的色彩嗜好傾向を知る為の試みの一つであったが, その結果, 韓国でも白に対する高い嗜好が観察された。一つの仮説として白に対する嗜好が文化を基盤とするならば, アジアの他の地域でもその傾向を観察する必要があろう。今回の報告では中華民国台湾との比較を試みた。調査は東京 (160名) と台北 (156名) に在住する被験者に対し, 同一の77色からなるカラーチャー卜を呈示し, 好きな色 (嗜好色) と嫌いな色 (嫌悪色) を3色づつ選択すると同時に選択理由も明らかにしてもらうという方法により実施した。選択された色に対しては, 両国の嗜好色と嫌悪色における一般的な嗜好順位を比較し, 色相別・卜ーン別に傾向を検討した。更に両者の嗜好傾向の特徴を明らかにするために双対尺度法 (DUAL-SCALING) による分析を施し, またX^2検定により有意差を検討した。その結果, 「白」や「ビビッドブルー」は両国に共通して好まれ, それは韓国での結果とも一致していた。しかし色相や卜ーン別に検討した場合, 好みの傾向には若干の交叉文化的な違いがあることも明らかとなった。
著者
郭 洋 齋藤 美穂 男座 慶一 時澤 健 永島 計
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.15-26, 2013-01-01

本研究は色光が手掌冷水刺激における生理的・心理的反応に与える影響を検討した.実験は,20代女子大学生10人を被験者として,白,青,赤それぞれの色光環境で被験者の左手掌を15℃の水に3分間つけさせて冷水刺激を与えた.実験中は被験者の皮膚温,皮膚血流,血圧,心拍などの生理的指標を継続的に計測した.また,3色の色光に対する印象,実験時の気分,温度感覚,寒冷による不快感および体温回復の主観的な感覚などの心理的指標をSD法およびPOMSにより計測した.生理的指標の測定結果から,青の色光環境において,冷水刺激により低下した皮膚温の回復がより速く,冷却側の皮膚血管の収縮が軽減され,皮膚血流量の回復が早いことが明らかとなった.心理的指標の測定結果から,3色の色光の軽快感や寒暖感における印象に差が見られた.また,色光により,実験中の気分および温度感覚が異なることが示された.具体的には,冷たい色と評価された青は寒冷による不快感を増強し,心理的覚醒を喚起する一方,暖かい色と評価された赤は寒冷による心理的不快感を軽減した.本研究で青の色光に特徴として見られた心理的覚醒は,皮膚交感神経活動の低下に関連すると考える.本研究の結果は色光は認知過程を通して,気分と温度感覚を変化させ,自律性体温調節反応にも影響を及ぼすことを示唆した.
著者
山田 雅子 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.183-194, 2007-09-01
被引用文献数
1

顔からその人の性別を判断する際、肌色という要素も手がかりとして作用する。そして、その作用は専ら肌色が持つジェンダーステレオタイプに沿ったもの、すなわち、男性は色黒、女性は色白という方向性を持つものであることが報告されている(山田・齋藤、2004)。本研究では更に顔の形態パタンの変化に着目し、肌色と形態の両要素の連関を検討した。種々の実験の結果、特に男女の顔合成率が拮抗する場合には、肌の色がステレオタイプ的に作用することが分かった。逆に、顔の形態が男女の何れかに近い場合は、肌の色の作用は消失する傾向にあった。つまり、肌色が作用するためには顔の形態的要素における条件があるといえる。また、観察条件や課題の種類が既述の2要素の連関に影響する可能性も得られた。
著者
三浦 久美子 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.163-175, 2004-09-01
被引用文献数
9

色彩嗜好は具体的形態を伴った場合に変化すると考えられる。本研究では<身につける色>及び<周辺の色>という2つのカテゴリに着目し、両カテゴリの共通点と差異を検討した。刺激は色見本を使用し、335名(男性136名/女性199名)に対し、身につけたい色、周辺にあって欲しい色/身につけたくない色、周辺に欲しくない色をそれぞれ3色ずつ選択すると同時に選択理由の解答を求めた。選択された色に対しては、両カテゴリの嗜好色と嫌悪色における一般的な嗜好傾向の特徴を明らかにする為に双対尺度法(Dual-Scalina)による分析を施し、χ^2検定により有意差を検討した。その結果、両カテゴリにおける共通点は白嗜好、差異は黒に対する嗜好の差異である事が分かり、また色相やトーン別に有意差が認められた。また、年代や性、調査時期も色彩嗜好における重要な要因であることが示唆された。
著者
村松 慶一 田原 紫 齋藤 美穂 松居 辰則
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.163-172, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
31

Sharing and managing knowledge on human Kansei obtained in several study fields are of growing significance to providing product's values focused on customers. However, few sufficiently-advanced technologies that realize such knowledge sharing and management have been established. One typical approach is to clarify and systematize concepts as an ontology. In the current study, we developed an ontology to describe correspondence of affective meaning spaces analyzed by semantic differential method. First, we collect literatures reveal the affective meaning evaluated through the five senses and their inter-modality. Second, we described the concepts on the basis of an ontology of color emotions. Then, we demonstrated and evaluated the usefulness of the ontology in a design situation. As a result, we confirmed that the ontology will serve as a useful reference and be of assistance to designers.
著者
山田 雅子 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.233-244, 2004-12-01
参考文献数
20
被引用文献数
3

ジエンダーステレオタイプとして、「女性は色白」「男性は色黒」という意識が依然根付いている。本研究では形態情報と色彩情報に着目し、各情報と性別判断との関係性、性別判断方略の発達的な変化を検討した。顔パタン2種(男性平均顔/男女平均顔)、肌色2種(色白肌/色黒肌)、唇色2種(唇色なし/薄紅)によって構成された計8刺激を設け、それぞれに対し男女の判断を行なわせた。対象者は、幼児、小学生及び大学生の男女とした。一般的に結び付けられるように、色白肌は女性、色黒肌は男性としての判断を促進する傾向が見られた。しかし、形態情報と色彩情報とは互いに作用の前提条件として影響していることが窺われ、例えぼ形態が男性的で唇に色みがない場合には前述の肌色の作用が見られないなど、条件毎の傾向も捉えられた。また、発達的には就学前後より色彩情報の参照が先んじてみられ、形態による性別判断の変化は8歳以降の段階でより安定する傾向が見られた。更に判断傾向の発達的変化は女性の方がより明確であり、発達と共に色白の肌、女性的な形態と女性判断との繋がりが強まることが示唆された。これらの傾向より、顔に対する視覚経験の質が男女で不均等であることが推測される。