著者
戸邉 亨
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.337-346, 2007-08-25
被引用文献数
1 1

病原性の発現は, 多くの場合菌の増殖環境により大きく変化する。病原性大腸菌や赤痢菌の病原性遺伝子の発現も環境因子の変化に応答して調節されている。病原性遺伝子は, 水平伝播により獲得された外来性遺伝子であるが, 環境応答の制御システムは非病原性大腸菌にも共通の基本骨格ゲノムにある環境応答システムに組み込まれていることが明らかとなった。環境因子の変化は, 二成分制御系やストレスなどに応答するグローバル制御系を介して感知され病原性調節遺伝子を通じて病原性遺伝子発現を調節していた。これらに加え, 温度による発現制御では, H-NSなどにより構成される核様体構造を基盤とし, 温度によるDNAの局所的な構造変化を感知し病原性調節遺伝子の転写を直接調節していた。すなわち, 散在する外来性の病原性遺伝子群は, 環境応答調節を受ける病原性調節遺伝子を介して協調的に発現調節されていること, 及び病原性発現調節システムは内在性の調節システムを利用し巧妙に構築されていることが明らかとなった。
著者
牧野 壮一 内田 郁夫
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.833-840, 1996-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2
著者
中山 浩次
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.219-227, 2017 (Released:2017-11-07)
参考文献数
49
被引用文献数
1

Bacteroidetes門にはBacteroides属, Prevotella属, Porphyromonas属等, ヒトに共生・寄生する多くの細菌が含まれる。私たちはPorphyromonas属に含まれる歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisの主要な分泌性プロテアーゼであるジンジパインおよび宿主定着性に寄与する線毛について研究を進めてきた。その過程でジンジパインは従来報告されていない分泌機構で分泌されることがわかった。さらにこの分泌機構はBacteroidetes門細菌に広く存在する機構であることやBacteroidetes門細菌の滑走運動と密接な関係があることがわかり, Por分泌機構(のちにIX型分泌機構と改名)と命名された。また, 線毛については線毛タンパク質がリポタンパク質として菌体表面に輸送され, アルギニン・ジンジパインによって限定分解されることで線毛形成が生じることがわかった。この新規の形成機構を有する線毛はBacteroides属をはじめBacteroidetes門Bacteroidia綱の細菌に広く存在することがわかり, V型線毛と命名された。

1 0 0 0 OA 一般演題

出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.58-164, 2016 (Released:2016-02-25)
著者
槇村 浩一
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.295-312, 2007-05-25 (Released:2007-12-21)
参考文献数
66
被引用文献数
1

病原微生物の中で, 最も身近でありながら実際には一際理解し難い生物群が「真菌」であったかも知れない。本稿では先ず真核生物としての真菌の特徴と, 複雑であったその分類・命名, ならびに病原性とヒト免疫との関連を論じた。次に真菌によって惹起される主要な健康障害とその疫学, および抗真菌薬の作用機序・耐性化機序について述べた。最後に真菌と真菌による健康障害への研究・対策上の基盤となる研究者と教育の現状を論ずることによって, 医学領域における真菌とその問題を概説した。
著者
戸田 真佐子 大久保 幸枝 大西 玲子 島村 忠勝
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.669-672, 1989
被引用文献数
15 53

We found that extracts of Japanese green tea leaves inhibited the growth of various bacteria causing diarrheal diseases. All tea samples tested showed antibacterial activity against <i>Staphylococcus aureus, S. epidermidis, Vibrio cholerae</i> O1, <i>V. cholerae</i> non O1. <i>V. parahaemolyticus, V. mimicus, Campylobacter jejuni</i> and <i>Plesiomonas shigelloides</i>. None of the tea samples had any effect on the growth of <i>V. fluvialis, Aeromonas sobria, A. hydrophila, Pseudomonas aeruginosa, Salmonella enteritidis, enteroinvasive Escherichia coli</i>, enterohemorrhagic <i>E. coli</i>, enteropathogenic <i>E. coli</i>, enterotoxigenic <i>E. coli, Enterobacter cloacae</i> or <i>Yersinia enterocolitica. Salmonella</i> and <i>Shigella</i> showed susceptibilities different depending on the kind of Japanese green tea. Japanese green tea showed also bactericidal activity over <i>S. aureus</i>, <i>V. parahaemolyticus</i> and even enteropathogenic <i>E. coli</i> which was not sensitive when tested by cup method. The bactericidal activity was shown even at the drinking concentration in daily life.
著者
山本 重雄 篠田 純男
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.523-547, 1996-04-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
210
被引用文献数
5

鉄 (イオン) はほとんどの生物の生存と増殖に不可欠な元素である。しかし, 宿主生体における鉄は大部分が結合型やヘム鉄として存在し, 細菌が自由に利用できる遊離鉄は極めて少ない。これは有害な活性酸素の生成防止と共に細菌感染症に対する非特異的生体防御機構の一つとなっている。それ故, 宿主生体中で増殖し得る病原菌は何らかの巧妙な鉄獲得系を保持している筈である。鉄欠乏下に発現する2つの鉄獲得系が明かにされている: 1) Fe3+に高親和性の輸送キレート剤, シデロフォア (siderophore, siderochrome とも呼ばれる) を産生し, トランスフェリンやラクトフェリンに結合している鉄を奪い取り, そのコンプレックスに特異的なレセプターを介して鉄を取り込む系; 2) トランスフェリン, ラクトフェリン, ヘムに結合している鉄をそれぞれに特異的なレセプターを介して直接利用する系。この能力は細菌の生体内増殖を可能にするので, 病原性 (強化) 因子の一つと考えられている。近年, 分子生物学的あるいは分子遺伝学的手法を用いて, これら鉄獲得系の発現調節機構や病原性強化における役割が個々の病原菌についてより詳細に解明されつつある。さらに, 鉄獲得に関与する遺伝子群と共に鉄獲得に直接関係のない病原因子遺伝子の発現も鉄欠乏に呼応して増加し, これに係わる統括的 (global) 調節因子の存在が明かにされた。病原菌の鉄獲得機構の解明は感染症防御のための新たな手段, 戦略を提供する可能性を秘めている。
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-2, 2017 (Released:2017-02-24)

1 0 0 0 OA シンポジウム

出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.389-407, 1966-08-25 (Released:2009-02-19)
著者
藤野 恒三郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.373-388, 1966-08
著者
阪口 玄二
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.951-960, 1988-11-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
35
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 正誤表

出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.433a-433a, 1957 (Released:2011-06-17)
著者
石黒 正路
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.539-544, 2005-11-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11

蛋白質の結晶構造はその立体構造情報のみならず基質やリガンドの認識機構や蛋白質の機能を理解する上で非常に重要な情報をもたらす。蛋白質の結晶構造データは解像度や結晶条件によって異なり, 蛋白質の機能に結びつく構造変化情報も得られる。また, 結晶構造はコンピュータ・シミュレーションと組み合わせることによって, 蛋白質の動的構造や結晶構造未知の蛋白質の立体構造の予測に役立ち, さらに蛋白質に結合する新しい分子の設計に用いられる。これらの手法は構造ゲノミックス・プロテオミックスの分野での研究に重要な役割を果たすものと期待される。
著者
古田 芳一
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.383-389, 2015 (Released:2015-12-03)
参考文献数
44
被引用文献数
1

ピロリ菌(Helicobacter pylori)はヒトの胃に感染し, 胃がん等の疾患の原因となる。そのゲノム配列は多様性が高く, 地域特異的に進化したことが知られている。日本人患者由来のピロリ菌のゲノムを解読し, 他地域由来のピロリ菌ゲノム配列と比較した結果, 遺伝子のレパートリーだけでなく, ゲノム構造や, エピゲノム修飾の一種であるDNAメチル化についても様々なメカニズムにより多様化していることが明らかとなった。ゲノム中の逆位は地域特異的に分布しており, ゲノム中の逆位とリンクして遺伝子重複が起きる現象を発見した。ゲノム中のDNAメチル化部位は, メチル化酵素遺伝子の有無だけでなく, メチル化認識配列を決定するドメイン配列が移動することによっても多様化することが示唆され, オーミクス解析により, 実際にドメイン配列の移動によってメチル化認識配列が多様化すること, さらにトランスクリプトームも多様化することを明らかにした。これらの多様なメカニズムにより, ピロリ菌の適応進化が起こることが示唆された。