著者
松下 治
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.753-761, 1999-11-30 (Released:2009-02-19)
参考文献数
31

二種のガス壊疸起因菌Clostridium perfringens, C. histolyticumから計三種類のコラゲナーゼを精製した。それらの構造遺伝子を解析したところ,予想一次配列にセグメント構造(S1, S2, S3)が認められた。N末端側のS1には金属プロテアーゼに共通なモチーフ(HEXXH)が存在していた。C末端側のS2, S3には重複が認められ,酵素により重複パターンが異なっていた。C. histolyticumの酵素の一つColHを用いて構造活性相関の解析を試みた。N末端側のS1のみからなる組換え酵素が水解活性を示したので,S1は触媒ドメインを形成すると考えられた。単離C末端領域が不溶性コラーゲンに結合することから,この領域はコラーゲン結合ドメイン(CBD)を形成すると考えられた。CBDを用いて細胞成長因子をコラーゲンにアンカーリングし,局所で長時間作用させることができた。CBDの構造が新しい薬物送達システム(drug delivery system, DDS)の開発に応用できる可能性が示された。
著者
中川 善之
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.671-685, 1995-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
100

酵母Candida albicansは,日和見感染の原因菌としてごく普通に見られる代表的真菌である。近年,C.albicansを材料とする従来の多くの研究課題に,遺伝子を中心とする分子生物学的手法が取り入れられようとしている。その遂行のために不可欠となる基礎的な事項をここでまとめてみた。C.albicansをはじめとする数種のCandida属酵母は,核の遺伝暗号で通常ロイシンに翻訳されるCUGを,セリンとして読むことがわかってきた。現在までに多くの遺伝子が単離されているが,中でも自律複製配列が単離されてベクターに組み込まれることにより,形質転換の系も整備されつつある。パルスフィールドゲル電気泳動と稀切断制限酵素Sfi Iの組み合せにより,大まかなゲノムマップが作成され,単離された遺伝子が存在する染色体の特定と物理的マッピングが可能になってきた。以上のような情報を載せたCandida albicans serverがインターネット上で構築され,公開されている,等について紹介する。また,我々をはじめとする幾つかの研究室で取り上げられているC.albicansゲノム内の反復配列群についても言及する。
著者
中根 明夫 差波 拓志 池島 進
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.479-484, 2005-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

レプチンは, 摂食時に脂肪細胞から産生され, 視床下部を介して摂食抑制, エネルギー消費の亢進など多彩な生理作用を示す。一方, レプチンは炎症など免疫学的刺激でも産生され, サイトカインを介して, T-helper 1型の免疫応答の誘導や炎症反応の惹起に関与するなど, 免疫応答にも深く関与することが明らかとなってきた。レプチン遺伝子あるいはレプチンレセプター遺伝子が変異を起こしているob/obマウスやdb/dbマウスは, レプチンによる摂食抑制が起こらず肥満から2型糖尿病を発病する。これらのマウスは肺炎桿菌やリステリアといった細菌感染に対する抵抗性が減弱しており, その原因としてマクロファージの機能やケモカイン産生性の低下が示唆された。レプチンに着目した研究は, 糖尿病など肥満を基盤とした生活習慣病の易感染性の機序の解明に貢献するものと考えられる。
著者
山本 友子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.1025-1036, 1996-10-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3
著者
染谷 四郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.745-748, 1984-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
29
著者
代田 稔 麻生 健治 岩淵 明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.917-927, 1962

It was revealed that GYB (glucose yeast broth) agar devoid of calcium carbonate was best fitted for counting the total number of viable bacteria in feces, regardless of their kinds. Widely used TGC (thioglycollate) broth was found far inferior to GYB-agar as regards fo: accuracy and sensitivity.<BR>Quantitative estimation and isolation of lactobacilli from human feces were performed most excellently when LBS (Lactobacillus selective medium) 1 agar was used under anaerobic condition. IBS 1 agar is a modified medium of Rogosa's medium (1951), developed by the authors in order for better isolation of lactobacilli. It contains, besides LBS medium, liver extract, lactose and cysteine.<BR>As for estimation of lactic acid bacteria (lactobacilli and streptococci), our tomato juice agar containing 0.1% furan-acrylic acid gave most excellent results.<BR>Concomitant studies on various selective media currently used for other microbes confirmed that for enteric bacteria, MacConkey, Desoxycholate agar, SF (Streptococcus faecalis) medium as well as Staphylococcus medium No.110; for yaests and Candida, potato glucose agar or CGS (Sabouraud's medium containing guanoflacine) agar; were excellent selective media, respectively.
著者
代田 稔 麻生 健治 岩淵 明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.274-283, 1966
被引用文献数
1 14

50ml of fermented milk, containing 1 to 2&times;10<sup>8</sup>/ml of live Lactobacillus acidophilus strain Shirota (LAS) and 180ml of market milk were orally administration daily to healthy infants (2-6 years) for 35 days, and its effect on the constitution of microflora in feces was investigated, using appropriate selective media.<br>In control group, normal microflora in one gram of feces was found to consitute of 10<sup>8</sup>-10<sup>10</sup> of Bifidobacterium classified to three physiological type, 10<sup>6</sup>-10<sup>9</sup> of enterobacteria group in which E. coli was predominant, 10<sup>3</sup>-10<sup>5</sup> of lactobacillus group consisting of 60% of L. acidophilus and other lactobacilli (L. plantarum, L. casei and heterofermentives), 10<sup>4</sup>-10<sup>7</sup> of enterococci, and 10-10<sup>4</sup> yeasts.<br>During the first 7 days of adminstration, lactobacillus in feces increased to 10<sup>6</sup>-10<sup>8</sup>/gram and this level persisted during the whole administration period. This lactobacillus was serologically identified to be LAS. In contrast, enterobacterial group and enterococci decreased by a facter of 1/100 and 1/50, respectively. When administration was stopped, LAS decreased gradually and one to two weeks after became undetectable, while the suppressed groups recovered to original level. Concomitant with this change, the pH of the feces rised from 5.0-7.5 to original value, 6.7-8.7. Other members in feces were not siginificantly affected through the period of experiment.<br>These results led to the conclusion that LAS survives in human intestinal tract though it does not establish permanent residence, and alter the consititution of microflora, being especically antagonistic against E. coli and enterococci. The antagonistic activity of LAS is discussed.
著者
丹羽 允
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.439-449, 1975-05-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
89
被引用文献数
2 2
著者
大野 尚仁
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.527-537, 2000-08-25
参考文献数
48
被引用文献数
2 8

&beta;ゲルカンは真菌, 細菌, 植物など自然界に広く分布している。&beta;グルカンは各々の生物において生物学的な機能を発揮するのは勿論の事, 生物間のやり取りにおいても様々な役割を演じ, あるいは産業上も重要な素材であることから注目されている。ここでは&beta;-1,3-グルカンの構造と生体防御系修飾作用について我々の実験成績を中心に要約した。真菌&beta;グルカンは細胞壁成分として存在する不溶性&beta;グルカン並びに, 菌体外に放出される可溶性&beta;グルカンに大別される。&beta;グルカンは特徴的な高次構造をとり, 可溶性高分子では一重並びに三重螺旋構造をとる。&beta;グルカンは様々な生物活性を示すが, その中には高次構造依存的なもの, 例えば, マクロファージからの酸化窒素産生やリムルスG因子の活性化, 並びに非依存的なものがある。&beta;グルカンが示す活性の多くは免疫薬理学的に有用なものが多いが, 喘息の増悪因子としての作用や非ステロイド性抗炎症薬の副作用増強作用などの有害作用も示す。更に&beta;グルカンは体内に分解系が無いので蓄積する傾向を示し, その期間は数ヶ月以上にわたる。またこの間, 活性の一部は持続的に発揮する。一方で, &beta;グルカンの生物活性を適切に評価できる <i>in vitro</i> 評価系は少なく, &beta;グルカンの免疫修飾作用を分子レベルで解析するには, 新たな評価系の開発が望まれる。
著者
河村 好章
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.493-507, 1998-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
78
被引用文献数
3 2

Streptococcus 属は, 人および動物に様々な疾患を起こさせる菌種を含み臨床細菌学上重要な属であるが, 溶血性および Lancefield により確立された血清学的分類法を重要視する余り詳細な生化学性状データによる分類や遺伝子レベルでの分類の見直しが著しく遅れていた。1980年代後半より, ようやく遺伝子レベルでの分類の再編成が行われ, 新菌種, 新属の提案を含む数多くの分類学的提案がなされ, その分類が整理されつつある。本小文では Streptococcus 属の分類の現状について, その分類学的経緯などを織り交ぜながら解説するよう努めた。また我々が取り組んでいる mitis group の菌群の分類学的検討と現在提案している新菌種2菌種について紹介し, 最後に Streptococcus 属菌種の同定キットによる同定の現状と問題点について触れた。
著者
赤池 孝章
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.339-349, 2015-08-26 (Released:2015-08-26)
参考文献数
40
被引用文献数
7 8

一酸化窒素(nitric oxide, NO)や活性酸素種(reactive oxygen species, ROS)は, 非特異的感染防御機構において重要な役割を演じている。細菌, ウイルス, 真菌といった病原体の種類の如何に関わらず, 感染病態においては, 誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase, iNOS)が誘導される。iNOSは, 病原体の持つ様々な菌体由来成分が, 対応する病原体分子パターン認識受容体群(pattern recognition receptors)であるToll-like receptorによって認識されることによって誘導され, さらに感染に伴って産生される炎症性サイトカインやインターフェロンなどによって相乗的に誘導が増強される。iNOS誘導に伴って過剰に産生されたNOは, 感染局所のROSと反応し, パーオキシナイトライトなどの化学反応性に富んだ活性酸化窒素種となり, 特に細菌感染において, 強力な抗菌活性を発揮し, マクロファージ等の貪食細胞による自然免疫と感染防御機能に重要な役割を演じている。その反面, NOやROSは, 宿主の細胞・組織を損傷し酸化ストレスをもたらす。一方近年, NOとROSが生体の酸化ストレス応答の生理的なレドックスメディエーターとして機能していることが明らかになってきた。NOとROSによるレドックスシグナル制御は多岐にわたっており, 感染防御機構と感染・炎症が関わる病態を理解する上で重要な課題であるだけでなく, 感染症の新たな予防・治療戦略の構築に大きく貢献するであろう。
著者
大林 静男 田中 米次郎 植松 典昭
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.354-358, 1961-04-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1
著者
大野 尚仁
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.527-537, 2000-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
7 8

βゲルカンは真菌, 細菌, 植物など自然界に広く分布している。βグルカンは各々の生物において生物学的な機能を発揮するのは勿論の事, 生物間のやり取りにおいても様々な役割を演じ, あるいは産業上も重要な素材であることから注目されている。ここではβ-1,3-グルカンの構造と生体防御系修飾作用について我々の実験成績を中心に要約した。真菌βグルカンは細胞壁成分として存在する不溶性βグルカン並びに, 菌体外に放出される可溶性βグルカンに大別される。βグルカンは特徴的な高次構造をとり, 可溶性高分子では一重並びに三重螺旋構造をとる。βグルカンは様々な生物活性を示すが, その中には高次構造依存的なもの, 例えば, マクロファージからの酸化窒素産生やリムルスG因子の活性化, 並びに非依存的なものがある。βグルカンが示す活性の多くは免疫薬理学的に有用なものが多いが, 喘息の増悪因子としての作用や非ステロイド性抗炎症薬の副作用増強作用などの有害作用も示す。更にβグルカンは体内に分解系が無いので蓄積する傾向を示し, その期間は数ヶ月以上にわたる。またこの間, 活性の一部は持続的に発揮する。一方で, βグルカンの生物活性を適切に評価できる in vitro 評価系は少なく, βグルカンの免疫修飾作用を分子レベルで解析するには, 新たな評価系の開発が望まれる。
著者
岩本 義久
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.523-531, 1993-05-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
72
被引用文献数
3 1
著者
垣内 力
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.491-501, 2014
被引用文献数
1

黄色ブドウ球菌は表在性膿瘍, 肺炎, 食中毒, 髄膜炎など様々な疾患をヒトに対して引き起こす病原性細菌である。特に, 幅広い抗生物質に対して耐性を示すメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は医療現場において問題になっている。本研究において私たちは, 黄色ブドウ球菌の病原性のふたつの新しい評価系を確立し, 黄色ブドウ球菌の新規の病原性制御因子の同定を行った。まず, 昆虫であるカイコを黄色ブドウ球菌の感染モデル動物として用いる方法を確立し, カイコに対する殺傷能力を指標として, 新規の病原性制御因子を複数同定した。これらの因子の一部は細菌細胞内においてRNA との相互作用に関わることが明らかとなった。次に, 黄色ブドウ球菌が軟寒天培地の表面を広がる現象(コロニースプレッディング)を見出し, この能力の違いを指標としてMRSA の病原性の評価を行った。近年, 高病原性株として問題となっている市中感染型MRSA は, 従来の医療関連MRSA に比べて, 高いコロニースプレッディング能力を示した。さらに, これらの菌株のコロニースプレッディング能力の違いが, 染色体カセット上の特定の遺伝子の有無によって導かれていることを明らかにした。この遺伝子の転写産物は機能性RNA として黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子のマスターレギュレーターの翻訳を抑制することにより, コロニースプレッディングと毒素産生を抑制し, 動物に対する病原性を抑制することが明らかとなった。