著者
戸田 真佐子 大久保 幸枝 生貝 初 島村 忠勝
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.561-566, 1990-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
49 61

茶タンニンの主要成分であるカテキン類のうち(-)エピガロカテキン(EGC),(-)エピカテキンガレート(ECg),(-)エピガロカテキンガレート(EGCg)はStaphylococcus aureusに抗菌活性を示した。また,Vibrio cholerae O1 classical InabaおよびEl Tor Inabaにも抗菌活性を示した。カテキン構造類似物質では,ピロガロール,タンニン酸,没食子酸の順で上記3菌種に対して抗菌活性を示したが,ルチン,カフェインには抗菌活性はほとんど認められなかつた。また,ECgは黄色ブドウ球菌α-毒素およびコレラ溶血毒の溶血活性を100%阻止した。また,EGCgは黄色ブドウ球菌α-毒素,コレラ溶血毒のほか,腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒Vp-TDHの溶血活性をも100%阻止した。一方,タンニン酸はコレラ溶血毒の溶血活性を100%阻止した。これらの結果から,茶葉の抗菌活性および抗毒素作用にはカテキン類の関与が示唆された。
著者
山本 俊一 長谷川 斐子 呉 大順
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.600-605, 1967-10-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
29

1) The suspenion of E. coli was heated under the environment of oxygen with from 1 to 10 absolute atmospheric pressure (aap). At each temperature, the decimal reduction time showed a peak at 1aap, and then decreased as the pressure rose.2) When E. coli was cultivated under the hyperbaric oxygen, the lag time was delayed with the increase of pressure up to 4aap. At 5aap or more of oxygen, no bacterial growth was observed. Generation time increased linearly with the pressure of oxygen up to 3aap.3) The pretreatment with hyperbaric oxygen had not effect on the growth rate thereafter.4) When the culture was oxygenated during the growth phase, the following relationship was observed between the number of the microbes (N) and oxygen pressure (p)N=N0e(3.7-0.8p)t(t: time in hour)5) The amount of final growth showed the peak at 1aap. Exceeding 1aap, the amount diminished remarkably with the rise of the pressure.6) Hyperbaric nitrogen showed no effect on the growth of bacteria.7) Reducing agents added to the media had no protecting effect against the oxygen action on E. coli.8) Antimetabolites showed the synergic, antagonistic and indifferent attitude toward the effect of hyperbaric oxygen depending on the mode of action of the chemicals.
著者
田中 吉紀 余 明順
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.405-417, 1980-03-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
65
著者
柴田 健一郎
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.363-374, 2007-08-25 (Released:2007-12-21)
参考文献数
93

微生物の有するリポタンパク質 (LP) がグラム陰性菌のリポ多糖体 (LPS) と同様な種々の免疫生物学的活性を有し, その活性部位はN-末端リポペプチド (LPT) 部分であることは古くから知られていたが, Toll-like receptor (TLR) が発見されるまでその受容体は明らかにされていなかった。TLR発見以来, LPならびにLPSの認識機構が研究され, それぞれの認識にTLR2ならびにTLR4が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また, LPの有する新たな免疫生物学的活性ならびにLPによるマクロファージ, 樹状細胞等の活性化のメカニズムも分子レベルで明らかにされている。さらに, MHC分子に結合する抗原ペプチドをLPT化することにより, 免疫原性が顕著に増加することも明らかにされ, 新規ワクチンとしての研究もなされている。本稿では, 微生物由来LP・LPTの生物活性ならびに自然免疫系による認識機構について最近の知見をもとに概説している。
著者
櫻井 純
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.367-379, 2006-11-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
79
被引用文献数
2

ウエルシュ菌が産生する多くの毒素の中で主要毒素と言われているα, β, εそして, L毒素は, いずれもユニークなタンパク毒素で, 本菌の感染症と密接に関係していると考えられている. そこで, ウエルシュ菌感染症の解明のため, 主要毒素の構造と機能を解析し, さらに, それぞれの毒素の作用機構について, 1) α毒素は, 毒素自身が有する酵素活性で組織を破壊するのでなく, 標的細胞の細胞内情報伝達系を活性化して恒常性の維持に混乱を与え, 細胞破壊, 致死活性を引き起こすこと, 2) β毒素は, 特異的に血球系細胞に結合し, ラフト上でオリゴマーを形成後, 細胞内情報伝達系に混乱を与え, 致死活性と細胞毒性を示すこと, 3) ε 毒素は, 脳細胞や腎細胞など標的細胞の膜上でオリゴマーを形成して膜障害作用を与えること, そして, 4) 酵素成分と膜結合成分からなる二成分毒素であるし毒素は, 膜結合成分が細胞膜に結合してオリゴマーを形成後, ラフトに集積し, これに酵素成分が結合してエンドサイトーシスで細胞内に侵入し, その後, 初期エンドソームから酵素成分が細胞質に遊離してアクチンをADPリボシル化して細胞毒性を示すことを証明した.
著者
島田 俊雄 荒川 英二 伊藤 健一郎 小迫 芳正 沖津 忠行 山井 志朗 西野 麻知子 中島 拓男
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.863-870, 1995-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
15
被引用文献数
2

1994年7月,琵琶湖の生け簀で青白く光るスジエビ(所謂ホタルエビ)が大量に発見され新聞やテレビで報道されるなど注目された。採取後発光したスジエビは次第に衰弱し,その殆どがその日のうちに死亡した(所謂エビの伝染性光り病)。死んだエビの甲殼から発光細菌が分離された。同一のエビから分離された発光性4菌株は,TCBS寒天培地上で白糖非分解性の青色集落,PMT寒天培地上ではマンノース分解性の黄色集落を形成し,無塩ブイヨンおよび42°Cで発育した。トリプトソーヤ寒天およびブイヨンで,22°C培養で最も強い発光が見られたが,30°Cでは弱かった。これらの菌株はその形態・生理・生化学的性状がVibrio cholerae non-O1またはVibrio mimicusに類似していたが,その代表株(838-94)によるDNA相同性試験ではV.choleraeの基準株(ATCC14035)と高い相同性(79%)を示したが,V.mimicusのそれとは低い相関しか認められなかった。従って,これらの分離菌株はルミネセンス産生性V. cholerae non-O1と同定され,またその血清型はいずれもO28と型別された。一方,該菌株はコレラ毒素(CT)を産生せず,またCTおよびNAG-STのいずれの遺伝子も保有していなかった。
著者
牛嶋 彊 尾崎 良克
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.625-637, 1980-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
56
被引用文献数
1

Bacillus subtilisおよびBacillus nattoと同定されて保存されてきた菌株,および,新しく市販納豆より分離した菌株について詳細な性状検査を行つた。1) Bergey's Manual (8版)によれば,被検菌は,すべて,Bacillus subtilisと同定された。2) 100種の性状を比較検討した結果,被検菌は,その中の13種の性状によつて2群,A, Bに分かれた。A群は,B. subtilis (ATCC6051, ATCC6633, NIHJ-PCI-219)とB. natto(SC-530123)の4株,B群は,B. subtilis (IFO-3009, IFO-13169)および,市販納豆より新たに分離した12株であつた。3) 両群の鑑別性状は,グリコーゲンの分解による酸の産生,デンプンの完全加水分解,ヒスチジンの利用で,A群は,すべて陽性,B群は,すべて陰性である。4) A群のみが,グラム陽性菌に特異的に作用する抗菌性物質を産生した。
著者
長宗 秀明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.425-435, 2008 (Released:2008-08-25)
参考文献数
67
被引用文献数
1

連鎖球菌属を構成する6菌群の一つであるアンギノーサス群連鎖球菌(AGS)は,主に口腔内の常在細菌叢に存在する細菌である。AGSは日和見的に口腔内や深部臓器において化膿性疾患を引き起こすが,歯周病や上部消化器癌との関連性も疑われるなど,その臨床的な重要性が高まってきている。しかしAGSは菌種間での遺伝子伝搬が頻発する傾向があり分類に混乱があったことから,病原性の検討が遅れている菌群である。AGSも他の連鎖球菌と類似の宿主細胞への定着因子や免疫撹乱性物質などを生産することが知られており,特に近年になって,AGSの一種で中枢神経系に感染症を起こしやすいS. intermediusではヒトに高い特異性を示すという特徴的な溶血毒素インターメディリシンが見いだされた。本稿ではAGS感染症に関与する可能性が高いこれらの主要な病原因子について紹介したい。
著者
松村 拓大
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.167-175, 2019 (Released:2019-11-30)
参考文献数
22

ボツリヌス神経毒素は,ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)などによって産生されるエンドペプチダーゼ活性を持つ極めて生物活性(毒性)の高いタンパク質毒素である。本毒素は常に無毒成分との複合体として産生される。食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス食中毒)は,神経毒素複合体が経口摂取され腸管から吸収された後,神経・筋接合部において神経毒素がSNAREタンパク質に作用することにより引き起こされる。本症の発症には,毒素が活性を保持したまま腸管から吸収される過程が必須であるが,巨大分子である本毒素が腸管上皮細胞バリアを通過する機構については不明であった。我々は腸管上皮細胞株を用いたin vitroの解析から無毒成分の一種であるhemagglutinin(HA)が細胞間バリアを破壊する強力で新規の作用があることを発見し,その標的分子がE-cadherinであることを明らかにした。さらに実際の生体内(in vivo)では神経毒素複合体がパイエル板を覆う濾胞被覆上皮に存在する特異的な細胞,Microfold cell(M細胞)から吸収されることを発見した。 本稿では我々の解析の結果から明らかとなったボツリヌス毒素の巧妙な体内侵入機構について述べたい。
著者
杉原 久義 二改 俊章 森浦 正憲 神谷 和人 田中 哲之助
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.47-57, 1972-01-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

25年ないし31年間デシケータ内で常温に保存された雨傘蛇(Bungarus multicinctus),青ハブ(Trimeresurus gramineus),台湾ハブ(Trimeresurus mucrosquamatus)ハブ(奄美)(Trimeresurus flavoviridis),百歩蛇(Agkistrodon acutus)の各毒の致死活性,出血活性および各種酵素活性を測定し,新鮮毒のそれと比較して長期保存における活性の変化を調べた。これらのうち百歩蛇毒の各種活性は一般的に安定であることが注目された。またハブ毒が最も不安定で,各種活性共減少傾向が著しかつた。雨傘蛇の31年保存毒を除き,各毒共通して5'-nucleotidase活性は極めて安定で,ほとんど活性の減少は見られなかつた。ついでNADase,ATPase活性が安定であつた。L-amino acid oxidase活性は不安定で活性の減少が著しかつた。ついでglycerophosphatase,出血活性も減少傾向が著明であつた。また致死活性も割合不安定で,保存中に徐々に活性が減少した。同一の酵素活性でも蛇毒の種類が異なると活性の減少率が異なつていた。この点より酵素タンパク質の安定性は毒の種類によつて違つていることがわかる。また致死活性と相関して減少するような活性は明瞭には認められなかった。
著者
本間 学 阿部 良治 小此木 丘 佐藤 信 小管 隆夫 三島 章義
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.281-289, 1965-06-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

This paper outlines the natures of Habu snake and Erabu sea snake and properties and actions of their venoms. Moreover was described the effect of tannic acid on the venoms.Habu snake (Trimereserus flavoviridis) is venomous, landinhibiting on the Amami islands and about 150cm long. The victims of Habu snake bite was estimated at 250 to 300 each year. The death rate during recent 7 years was more than 1 per cent. The minimal lethal dosis for mice, weighing 15 to 17g. was about 150γ/0.1ml by intramusculare injection. It was considered that the venom was composed of haemorrhagic, angiotoxic and myolytic factors, which were completly inactivated by heating at 100C for 10 minutes, and heat-stable myolytic factor.Erabu sea snake (Laticauda semifasciata) lives on the coast of Amami Oshima, and has strong fatal venoms. Minimal lethal dosis, in experiments with mice weighing 15 between 17g., was about 6γ/0.1ml by the intramusculare injections. Erabu sea snake venom is considered to have chiefly neurotoxic component which was relatively stable in heating.It was recognized that the toxic activities of the venoms of these different species were inhibited by aqueous solution of tannic acid; a 8.5% solution inactivated lethal and local haemorrhagic activities of 500γ/0.1ml of Habu snake venom, and fatal toxicities of 25γ/0.1ml of Erabu sea snake venom.The above mentioned effect of tannic acid on the venoms may be due to coagulations of the venom and tissue proteins by tannic acid.
著者
秦 藤樹
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.677-681, 1983-07-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
12
著者
藪内 英子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.505-548, 2003

古来, 炭疽は畜産に甚大な被害を与えたのみならず, 農工業食品などを介してヒトの散発症例, 大・小規模の集団発生を記録してきた。近年先進国では恣意的でない炭疽症例は, ヒト・家畜ともに激減したが, 炭疽の病原菌 <i>Bacillus anthracis</i> はその病原性, 芽胞の耐久性と製造・運搬・撒布の容易さなどから生物兵器として密やかな脚光を浴びて来た。2001年9月のニューヨークでのハイジャック機自爆テロに引き続いて実行された<i>B. anthracis</i> 芽胞を混じた白色粉末郵送による生物テロは, 改めて世界の耳目をこの菌に惹き付けた。<br>今後の不測の事態に備えるため, 我々はこの菌種についてあらゆる意味での性格を熟知し対応策を立てておかねばならない。炭疽が疑われる患者の臨床検査から患者の迅速診断と迅速治療, 毒素の作用機序と分子生物学, 毒素の解毒方法, ワクチンならびに同種受動免疫抗体の開発・実用化など多岐にわたる知識と技術を具えた研究者群を確保していただきたい。<br>この総説では1864年の Davaine の論文から始めて2003年の Colwell の論説まで引用した。<i>Bacillus cereus</i> group の菌種の分類学上の問題点が未解決である事, 公的統計として発表されていない明治以降の本邦炭疽症例, 旧ソ連軍事施設からの芽胞漏洩による大惨事とその隠蔽, 多様な臨床病型などを比較的詳述した。毒素に関する記述を簡単な引用に留めた部分も少なくないが, 炭疽毒素の抗腫瘍効果も含めて, この総説から何かを得て下されば幸甚である。
著者
河村 好章 長瀬 弘司 遠藤 正和 重松 貴 江崎 孝行 藪内 英子
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.597-610, 1991
被引用文献数
3 3

グラム陽性,カタラーゼ陽性好気性球菌の迅速同定キット「スタフィオグラム」(テルモ)のプレート作製,追加試験選定およびコードブック編集のための基礎実験を行った。<br>この目的のため<i>Staphylococcus aureus</i>を含む<i>Micrococcaceae</i>の3属30菌種の基準株のそれぞれが固有のコード番号を示すスタフィオグラムプレートを作製した。このプレートは10種の糖分解試験と8種の酵素活性試験から成り,McFarland No.4の菌液50μlを各ウェルに分注し,37C, 4時間培養後に結果を判定する。<br>このプレートを用いて新鮮分離株の同定を試みるに先立ち,好気性グラム陽性球菌同定へのfluorometric microplate hybridizationの有用性を確認した上で,新鮮分離386株のすべてを核酸同定した。これらの菌株をスタフィオグラムプレートで培養すると,得られたコード番号236種類のうち218種(92.4%)は<i>Staphylococcus</i>属15菌種と<i>Stomatococcus mucilaginosus</i>に固有の番号であった。被検386株のうち,これらの番号のいずれかに該当した342株(88.6%)は追加試験を行うことなく同定できた。同定できた<i>Staphylococcus</i>属15菌種のうちApproved lists of bacterial namesに収録されているもの(すなわち1980年1月1日以前の正式発表名)が11菌種を占め,その後に提案された菌種と同定されたのは<i>S. caprae, S. lugdunensis, S. gallinarum</i>および<i>S. delphini</i>の4菌種に過ぎず,残りの8菌種に該当する株はなかった。しかし<i>S. caprae</i>(48株),<i>S.haemolyticus</i>(46株),<i>S. capitis</i>(35株)は<i>S. epidermidis</i>(67株)に次いで株数が多く<i>S. saprophyticus</i>(31株)より上位にあった。<br>236種類のコード番号のうち2菌種に重複したのは7種類(27菌株),4菌種に重複したのは1種類(17菌株)の計8種類(3.4%)であった。コード番号が重複した44菌株は追加試験として選択した8項目のうち1∼3項目を実施することでmicroplate hybridizationの同定結果を追認し得た。<br>以上の結果からスタフィオグラムは<i>Staphylococcus, Micrococcus, Stomatococcus</i>の各属の菌種の迅速同定キットとして有用であると確信した。今後核酸同定した菌株によるデータを集積して専用コードブックを作製し,同定精度の高いキットを完成させたい。
著者
佐々木 津 福島 淳 奥田 研爾
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.407-424, 1998-05-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
83
被引用文献数
1

この数年の間にワクチン研究の分野で新しいアプローチが確立された。微生物の抗原遺伝子を動物に接種すると生体内で抗原タンパクが合成され, 抗原特異的な液性・細胞性免疫を誘導することができ, かつ接種を受けた動物は微生物に対する防御的免疫を獲得するというものである。この新しいワクチンの手法はDNA vaccination, genetic immunization などと呼ばれ, 従来のワクチンにはない様々な特徴を備えていることから多くの研究者の関心を集め, 急速に知見が蓄積されつつある。この免疫法の邦語訳はまだ定まっていないようであるが, この総説ではDNAワクチンと呼ぶ。DNAワクチンの特徴としては強力な細胞性免疫の誘導能という生ワクチンの長所と, 生きた病原体を使用しないため安全性が確保されるというペプチドワクチンの長所を具備している点があげられる。合成が容易で保存性に優れ, 経済性, 長期にわたる免疫反応が持続するなどの面で従来のワクチンより優れており, 次世代のワクチンとして脚光を浴びている。本総説ではこの新しい免疫法に関する研究の最近の動向を総括し, われわれが進めているヒト免疫不全ウィルス (HIV) を対象としたDNAワクチンの研究にも触れながら今後の課題と展望について述べる。
著者
松久 明生 奥井 文 堀内 祥行
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.171-191, 2018 (Released:2018-06-01)
参考文献数
211
被引用文献数
1 4

感染に対する最初のディフェンスラインである好中球が, NETosisという細胞死をとる事が2004年に報告され, アポトーシス, ネクローシスと区別された。この現象は既に基礎と臨床領域において示唆されていた。NETosisはPMA等の化学物質, IL-8等のサイトカイン, PAMPsまたはDAMPs, 細菌等の微生物, ANCA等の自己抗体とその抗原複合体の刺激によって誘導される。好中球由来の呼吸バーストによるO2–発生がNETs形成の引き金となる。NETsには好中球の細胞形態が完全に崩壊するもの, 或いは形態を保持し貪食機能を維持しているものがある。NETsは細菌に対する捕獲と殺傷力を発揮するが, 宿主にも障害を与える。この時, NETs形成に関与する酵素を阻害すると, その形成は抑制される。細菌はヌクレアーゼを分泌する事によりNETsを分解し, 捕獲から逃れる事ができる。ヌクレアーゼ産生菌株を用いた感染モデル動物は非産生株にくらべ感染感受性が亢進する。慢性肉芽腫症(CGD)患者ではNADPHオキシダーゼ2(Nox2)活性がなく易感染性であり, その重症化はNETsが形成されない事も関与している。全身性エリテマトーデス(SLE)患者血清はDNase1に対する阻害活性が認められ, NETs分解活性が低下している。これによりDNAを含むNETs成分に対する自己抗体が誘導されると考えられる。このように感染症・敗血症・自己免疫疾患を含めた炎症病態とNETs形成との密接な因果関係が明らかになってきた。今後, これらの疾患発症の解明にはNETs形成のメカニズムを考慮に入れる必要がある。
著者
清水 健
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.297-308, 2010 (Released:2010-05-25)
参考文献数
99

腸管出血性大腸菌(EHEC)は病原因子として志賀毒素1(Stx1)と志賀毒素2(Stx2)を産生する。stx1遺伝子とstx2遺伝子は共にEHECに溶原化している志賀毒素転換ファージのゲノム上に存在しているが,stx1遺伝子はstx1遺伝子の上流近傍に存在するStx1プロモーターから,stx2遺伝子はStx2転換ファージの後期ファージプロモーターから転写される。これらのプロモーターの違いがStx1とStx2の発現条件の違い,発現様式の違い,産生された毒素の菌体内外への局在性の違いの主因である。特に,Stx2は自発的なStx2転換ファージのファージ誘導によって産生され,そしてこのファージの溶菌過程にともなって菌体外に放出される。さらにStx2の産生は外部環境からの刺激による宿主大腸菌のSOS応答によって誘発されるStx2転換ファージのファージ誘導によって増強される。また,EHECにはStx2転換ファージの溶菌過程にともなったStx2の菌体外放出機構の他に,もう一つの特異的なStx2の菌体外放出機構が存在する。
著者
冨岡 治明
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.687-701, 1995-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
50
被引用文献数
2 2

結核をはじめとする抗酸菌症はその患者数や死亡者数が多く未だもって極めて重要な感染症であり,最近ではHIV感染者における多剤耐性結核や全身播種性Mycobacterium avium complex (MAC)症が問題になってきている。本稿では,こうした抗酸菌症のうち,特に結核とMAC症とに焦点を当て,何故にこれらの感染症が難治性であるのかという問題について,特に宿主マクロファージ(Mφ)と抗酸菌との関わりあいに焦点を当て,(1)宿主Mφ内での感染菌の挙動,言葉を変えればMφ内殺菌メカニズムからの菌のエスケープという問題と,(2)抗酸菌感染Mφの殺菌能のサイトカインカスケードを介しての制御,特にMφ不活化サイトカインによるdown-regulationという2つの観点から論じた。約めて言えば,難治性慢性感染症としての抗酸菌症の特異な病像を規定するものは,抗酸菌の極めて強いMφ内殺菌抵抗性と免疫原性であり,これが故に必然的に誘導されるTh2タイプのサイトカインカスケードの活性化が抗酸菌症の難治化にさらに拍車をかけているものと言えよう。
著者
米沢 実
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.942-946, 1958-10-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
17