著者
竹崎 あかね 細羽見 喬 倉嶋 明子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.710-717, 2010 (Released:2010-03-01)
参考文献数
13

日本農業シソーラス(JAT)の概要とその活用場面を紹介する。JATは,農業研究関連の学術事典等からの収集用語と国際連合食糧農業機関(FAO)が管理する多言語シソーラス(AGROVOC)収録用語から成り,AGROVOCに準じて,階層・等価関係で用語が整理される。JATでは,1)複数の英語名が同一日本語名に翻訳される,2)一つの英語名が複数の日本語名に翻訳される,3)学名の日本語表記が複数ある,4)膨大な量の表記揺れがある場合に用語整理法に留意する必要があった。JATを基に作成した形態素解析辞書,同義語辞書は,各々解析精度向上,検索漏れ防止に効果が認められたため,既存システムで活用している。JATは2009年11月から一般公開し,無償でデータ提供している。
著者
小原 由美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.806-816, 2006

2001年4月の情報公開法の施行と国立公文書館法の一部改正により,国の行政機関から国立公文書館への新しい公文書移管制度が始まった。しかし移管は円滑に進んでいるとは言えず,現在内閣府に置かれた「公文書等の適切な管理,保存及び利用に関する懇談会」の報告書の提言に基づき,改革が進められている。公文書等の移管は各行政機関と内閣総理大臣の合意に基づいて行われる。国立公文書館は移管についての意見を内閣総理大臣に提出できるが,意見照会しても必ずしも移管に結びつかない。諸外国の例に学びながら,政府機能の把握,公文書の廃棄権限,現用・非現用文書の概念の見直し,文書管理法等の検討が必要である。
著者
伊敷 政英
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.425-438, 2006 (Released:2006-11-01)
参考文献数
12

2004年6月のWebコンテンツJIS制定から2年が経過し,先進的な自治体や企業ではWebアクセシビリティへのさまざまな取り組みが行われてきた。Web標準やSEO(Search Engine Optimization,検索エンジン最適化)などの広まりとともに,Webアクセシビリティは「理解」から「実践」の段階へと進みつつある。本稿では,Webアクセシビリティの基本的な考え方や障害者のWeb利用特性,国内外での取り組みについて解説し,また2005年12月に総務省より発表された「みんなの公共サイト運用モデル」について,その全体像を概説する。
著者
上林 正巳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-154, 1996
被引用文献数
3 1

連載講座第2回として,インターネットの現状について説明する。インターネットは特定の機関が運用しているものではないという説明はよく聞かれるが,その運用体制について,接続や通信の保証はどうなっているのかを述べた。またインターネットの問題点として,ネットワークのセキュリティー問題,情報の暗号化問題,検閲問題を取り上げた。インターネットの情報発信手段としての様々な利用についても紹介する。
著者
杉本 重雄
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.321-335, 2002 (Released:2002-08-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本稿はDublin Coreに関する2回の連載記事の2回目である。本稿ではDublin Coreをより深く理解することを目的として,コアメタデータの役割,Warwick Framework,限定子の基本概念とダムダウン原則,エレメントセットとアプリケーションプロファイルなど,Dublin Coreの背景にある重要でかつ基本的な概念について述べる。その後,Web上のメタデータ記述の枠組みであるResource Description Framework(RDF),Dublin Core Metadata Initiative(DCMI)の構成について解説する。最後に,これまでの経験と理解に基づき,Dublin Coreの今後に関する考察を述べる。
著者
正木 法雄 近藤 績 星 潤一 島田 昌 鴨野 則昭
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.543-549, 2009 (Released:2009-12-01)
参考文献数
4

科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業では,平成20年度自己評価にあたり,海外の研究資金配分機関の研究成果との比較を行った。当事業の運営方法の特徴を考慮した条件設定のもと,比較対象となる研究課題の研究成果の一つである論文を抽出し,課題あたりの被引用数,課題あたりの被引用数上位1%の論文数という2つの指標を用い,比較を行った。本稿では,比較評価を行うにあたっての要点,手法・指標,その結果について紹介する。
著者
長塚 隆
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, 2001
被引用文献数
1

インターネットの普及により,データベースの種類および提供・利用範囲が急速に拡大している。特に,従来の著作権法で保護されてきた「創作性」のあるデータベースのほかに,個人別電話帳,不動産情報,ゲノム情報,さらに競馬情報あるいはオークション情報など,データを蓄積したファクト(事実)データベースが社会のあらゆる場で,ますます利用されるようになっている。「創作性」のあるなしにかかわらず,一定の投資がなされているデータベースを保護する「新たな権利(sui generis right)」を規定したECデータベース指令の特徴とその後の各国での国内法の整備状況,最近の訴訟例を紹介した。データベースの法的保護について,米国,ヨーロッパ,日本での歴史的な変遷を俯瞰し,今後のあり方を提起した。
著者
前田 知子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.541-546, 2004 (Released:2004-11-01)
参考文献数
8

Science.govは,米国連邦政府の研究機関等が作成した科学技術分野の約30のデータベースや1,700以上の関連Webサイトへのポータルである。検索語の指定もしくはカテゴリーを選択する方式により,科学文献,技術レポート,特許情報,基礎データ,研究機関でのテーマ紹介などの情報へのリンク一覧が表示される。12省庁の17の研究機関や専門図書館の連携と分担により運営されており,研究者や学生から一般市民まで政府関係機関の科学技術情報にアクセスしやすくするべきである,という考え方に基づいて開設された。
著者
保坂 昇寿 小林 千寿
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.39, no.9, pp.676-687, 1996

連載講座の6回目として,「電子メールの活用」について述べる。よく使われているパソコン用電子メールソフトの設定の仕方や使い方などの基本的なところから,メーリングリストや電子メール新聞などインターネットで行われているメールを使ったサービスまで,多数のURLとともに紹介する。特にセキュリティやプライバシーに関することは,暗号化や匿名メール転送サービス,チェーンメールや電子メールを使った宛名広告まで,実際の事件の話を交えながら解説する。
著者
平野 哲
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.268-275, 2005 (Released:2005-08-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

地球シミュレータが稼動して4年目に入っている。国際的な地球環境変動の研究に寄与するのが地球シミュレータ計画の目的のひとつであったが,2004年8月末までに国内の3グループ(1グループは米国との共同研究)がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)に,地球シミュレータを駆使した100年以上の期間にわたるシミュレーション結果を提出した。産業界との連携も行われ,自動車産業や航空機産業との共同研究も始まった。地球シミュレータのこの3年間の利用状況を報告する。スーパーコンピュータの世界ランキングは,LINPACKベンチマークを参考にしているが,実アプリケーションでの性能を必ずしも反映していないとの議論が米国にある。地球シミュレータセンターと米国の研究グループが共同で実アプリケーションによる性能比較をしているので併せて報告する。
著者
工藤 絵理子 片岡 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.480-498, 2008
被引用文献数
2 4

「Web 2.0」の概念が主流になりつつある現在,図書館の世界でも,ビジュアル化,情報の表紙イメージや内容情報によって情報を強化した「次世代OPAC」が注目を集めている。スペルチェック/サジェスト機能,絞り込み検索,適合度によるソート,利用者参加型機能,統合検索機能などを備えたシステムが注目され,世界各国で開発・運用され始めている。本稿では,まず現在一般的な大学図書館で導入されているOPACの現状を述べ,次に海外での導入事例をもとに,次世代OPACの特徴を具体的に説明する。さらに,現在開発されている主な次世代OPACシステムについてレビューを行う。最後に,これらのシステムを日本の大学図書館で導入する際の課題と,課題解決に向けたいくつかの方法を提示する。<br>
著者
林 和弘 太田 暉人 小川 桂一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.87-94, 2005
被引用文献数
5 7

日本化学会では1989年より2つの英文誌の電子化に取り組み,2002年よりJ-STAGEを利用した電子ジャーナルサービスを開始した。3年の無料公開を経て年100万件を超えるアクセスを得るに至ったので,2005年より電子ジャーナルの有料課金を開始した。その最新状況について,電子ジャーナルアクセス数,電子投稿・査読の導入による審査期間短縮効果,ならびに有料課金を導入する際の業務負担について紹介する。一方,日本の英文学術雑誌の抱える問題をこれまでの活動から考察し,学会のあり方と他組織との関連性について述べる。
著者
山崎 久道
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.189-197, 2009 (Released:2009-07-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

これからの図書館員,情報専門家に求められるものを明らかにするために,まず解析可視化サービスAnVi seersによって状況把握を行った。その結果,図書館情報専門家にとっての関連テーマは,図書館情報サービス,経営管理と人材育成,情報技術に大別できた。さらに,CILIPとSLAの研修プログラムの内容を分析した。CILIPは,上記3点を満遍なく網羅し,SLAでは,企業などの組織体の情報コンテンツ活用のまとめ役こそ,図書館情報専門家の将来のポジションであると想定しているように思われた。結論として,今後の図書館情報専門家は,組織体の経営活動への支援,学際的調査研究への情報面での貢献,に活路を見出せることを述べた。
著者
崔 虎南:著 高木 和子:訳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.779-779, 2002 (Released:2002-02-01)
参考文献数
12

韓国の図書館は韓国電子サイトライセンスイニシアチブ(Korean Electronic Site License Initiative, KESLI)と名付けられた強力なコンソーシアムを構成することによって,冊子体ジャーナルの収集活動とは異なる,電子ジャーナル購入の団体交渉の力を持つに至った。KESLIは,急速に発展した電子ジャーナルのサイトライセンスを,コンソーシアムベースで出版社や情報プロバイダから購入することにより,外国の学術情報の流入を拡大しようという試みとして韓国で開発された画期的なプログラムである。2001年10月末現在,合計246のメンバーが,購入したい出版社の数と同じ数のサブ・コンソーシアムを自主的に形成し,その結果学術情報の使用レベルはKESLI以前と比較すると平均で6倍も高まった。KESLIは国家デジタル科学図書館(National Digital Science Library, NDSL)プロジェクトの下で遂行されており,このプロジェクトの目的は外国の学術情報へのワン・クリック総合ゲートウェイ・サービスを提供する国家的なデジタル図書館を作ることである。2001年5月16日に開始されたNDSLサービスにより,KESLI参加機関の利用者は,様々な出版社やベンダーから提供されるライセンス処理済みの電子ジャーナルを,自らのデスクトップから単一のインタフェースでダウンロードできる。
著者
作田 和幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.575-588, 1991

JICST北海道支所開設10周年記念講演の収録である。新聞という情報を生み伝えるメディアに携わってきた者の目から,"情報"の持つ様々な側面を検証し,高度情報社会のあるべき姿,さらにはポスト高度情報社会への展望を述べた。まず'80年代,'90年代の情報社会の特徴を分析し,その延長線上に起こった「ベルリンの壁崩壊」「湾岸戦争」を素材に「情報の虚と実」を例証している。またグラスノスチで変貌するソ連社会に関し,体験も踏まえ,情報の社会に与える影響を述べ,そこから高度情報社会の脆弱さを指摘するとともに,高度情報社会のあるべき姿,さらにはポスト高度情報化社会の理念として高度環境社会について言及した。