著者
笹川 満廣 木村 正
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.22-30, 1974

Dynatosoma属キノコバエとして,D. maculipes(MATSUMURA), D. major f. sapporoensis OKADAおよびD. reciprocum WALKERの3種が日本に産することは既に報告されている(松村, 1915;岡田, 1939;笹川, 1964)。筆者らは,それらを含む同属の, 日本産種について分類学的検討をおこなった結果,アシマダラフトキノコバエD. maculipes(MATSUMURA)は欧州産D. mgromaculatum LUNDSTROMのシノニムであることが判明し,それに近縁の2種を新種(D. spinimanum, longicorne)として記載した。さらに1未記録種D. cochleare STROBLに類似する新種D. camurumを記載した。本属のキノコバエは中胸背,触角および腿節の色彩ならびに雄外部生殖器,とくにはあく器の構造に種的特徴をみることができる。
著者
茅根 重夫
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-26, 1981-12-28 (Released:2018-03-30)

キクの菜を加害するフシダニの一種(キクモンサビダニ)が,愛知県および島根県の標本にもとづき,新種Paraphytoptus kikusとして記載された。本種は背甲板上の条線(特に亜正中条)の形,および雌の羽状爪の側枝の数(6対)から国外の近似の種と区別される。
著者
寺田 正之
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.31, pp.30-37, 1985-12-25

オウギガニ科Xanthidae,オウギガニ亜科Xanthinaeに属するゴカクイボオウギガニの抱卵個体を三河湾水深30mの砂底からトロール網によって採集した.実験室において孵化したゾエアI期にはシオミズツボワムシを与えて飼育したところ,ゾエアII期までを得た.この両期幼生の全形と付属肢の形態を詳細に記載・図示するとともに,本種幼生をオウギガニ亜科やケブカガニ亜科Pilumninaeの幼生と比較した.ゴカクイボオウギガニの形態的特徴は,3種類の甲棘存在,A_3型の触角II,4・2-1の小顎I内肢毛式,3:2・3の小顎II内肢毛式,2:4の小顎II底節下葉毛式,腹節II-Vに側棘存在, A_<2+1>型の尾節などである.これらの特徴のなかで,特に触角II型と小顎II底節下葉毛式は,本種と他のオウギガニ亜科とを区別しうる部位である.しかし,これらの特徴はケブカガニ亜科幼生によく一致している.したがって,両形質から判断すれば,本種幼生はオウギガニ亜科幼生よりもケブカガニ亜科幼生に類似する.
著者
岡田 豊日
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.66-72, 1990-12-25 (Released:2018-03-30)

タロイモショウジョウバエ属Colocasiomyiaに3種群,すなわちcristata種群,baechlii種群,arenga種群,を創設し,スラウェシ産の2新種C. sagittata,C. pararengaを記載した.また共寄主種の腹部色彩の微環境への適応現象を考察した.
著者
芳賀 和夫 岡島 秀治
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.40, pp.p49-54, 1989-12

本州中部の亜高山帯,高山帯にのみ分布するユリ科植物,キヌガサソウの葉裏に生息する穿孔亜目のアザミウマを新種としてCtenothrips nonnaeの名を付して記載した.観察できた標本はすべて翅がきわめて短い小翅型であった.なお,本属は日本で初めてのものである.
著者
井上 久夫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.16, pp.23-32, 1979-06-30

端脚目,ヒメハマトビムシOrchestia platensis KROYERの胸部第7節背面に見られる斑紋が,4種の基本的斑紋型に分類された。斑紋の安定性を調べるため,長期間にわたって飼育観察が行われた結果,第一斑紋型は一貫して安定性を保つこと,また他の3種の斑紋型は,ときに相互移行をすることが明らかにされた。さらに,種内構造の分析の一端として,4種の斑紋型について第2触角の基部末端節と鞭状部の長さが測定され,両者の相対関係が各斑紋型の間で比較された。その結果,雌雄共に第1斑紋型と他の3種の斑紋型の間には,第2触角の相対成長に関しても明らかに相違が見られた。しかし,後者すなわち他の3種の斑紋型の間でははっきりした違いを見い出すことができなかった。これらの結果は,曰本の海浜に生息するヒメハマトビムシ個休群は,少なくとも二つの異なる形態型からなっていることを示唆するものと思われる。
著者
Storozhenko Sergey 山崎 柄根
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.49, pp.37-46, 1993-07-25
被引用文献数
3

日本を含めて,旧北区東部に分布するヒメギス類についての再検討を試みた.本研究では従来Metriopteraの亜属のひとつとして扱われていたEobianaを独立属と認めた.この属にはE.japonica(イブキヒメギス)とE.engelhardtiの2種が属し,後者にはシベリアなどに分布するengelhardti(シベリアヒメギス:新称)と日本に分布するsubtropica(ヒメギス)の2亜種があり,これら属,種,亜種の再記載を行った.この結果,日本で用いられたMetrioptera hime FURUKAWA,1950は,Eobiana engelhardti subtropica BEY-BIENKO,1949となる.
著者
青木 淳一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.38, pp.26-30, 1988-12-25

四国の室戸岬の最御崎寺(ほつみさきでら)にはホソバカナワラビ-スダジイ群集の森がよい状態で保存されており,その林床に堆積した落葉落枝の中からササラダニ類の3新種,すなわちムロトツヤタマゴダニ(新称)Liacarus murotensis,シコクツブダニ(新称)Oppiella articristata,マルガオフリソデダニ(新称)Neoribates pallidus,が採集されたので命名記載した.
著者
杉田 博昭 関口 晃一 宍倉 文夫 山道 祥郎
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-6, 1982-05-25

The four extant horseshoe crabs are morphologically so similar to fossil specimens of the genus Mesolimulus that one has referred to them as "living fossils". The recent horseshoe crabs are assigned to two subfamilies, that is, Limulinae and Tachypleinae. The Limulinae includes only one American species, Limulus polyphemus and the Tachypleinae includes three Asian species, Tachypleus tridentatus, T. gigas and Carcinoscorpius rotundicauda. The hybridization experiments revealed that the fertilization could not be accomplished between Limulus and Asian species gametes, while three Asian horseshoe crabs were cross-fertilizable one another. Developmental capacity of hybridized eggs among the three Asian species was not equivalent, suggesting that one had rather not assign three Asian horseshoe crabs to such two diverse genera as Tachypleus and Carcinoscorpius in the current taxonomy. These results are in concord with the idea that American and Asian horseshoe crabs diverged from a common European ancestor (or separate ancestral species) and that the three extant Asian horseshoe crabs diverged from a common Asian ancestor.
著者
今島 実
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.2, pp.11-13, 1966-08-30

About 100 individuals of Pogonophora were collected from Sagami-nada, in 1115 to 1830m, by "Tansei Maru" of the Ocean Research Institute, University of Tokyo. At least five species are recognized, but they are not yet determined specifically.
著者
池田 靖 牧野 彰吾 愛川 敬武
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.13, pp.32-38, 1977-10-31

1979年9月,埼玉県川越市東部の農業用水地,伊佐沼において,淡水産肛動物(曲形動物)Uramatella gracilis LEIDYを採集した。これは日本最初の発見である。U. gracilisは排水路の流水中に多く生息し,コンクリート壁に付着する淡水海綿の表面やオオタニシの殻,マコモの葉鞘に好んで着生する。暗い陰の方を好む。U. gracilisはヨワカイメンSpongilla fragilis LEIDYおよびヤハズハネコケムシPlumatella emarginate ALLMANと共存することが多い。U. gracilisは高さ1.5〜2.0MMでJ.LEIDYの記述より小さく,R. V. SESIIAIYAの記載した
著者
沢田 勇 原田 正史 伊明 煕
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.45, pp.25-29, 1991-12-25

1991年2月23〜27日の間に韓国南部の4箇所の廃坑を調査した結果,Rhinolophus ferrumeqnum korai,Myotis macrodactylus,M.mystacinus,M.formosusおよびPipistrellus corensisの生息が確認された.これらのコウモリの中でR.ferrumequi num koraiにのみVampirolepis hidaensisが寄生していた.V.hidaensisは済州島のR.ferrumequinum quelpartis,日本のR.ferrumequinum nippon,Miniopterus schreibersii fuliginosus,およびM.s.blepotisにも寄生している.こうした条虫相からみると韓国のキクガシラコウモリは日本のキクガシラコウモリと地理的分布からみて関連性が濃いように考えられる.
著者
林 俊夫 吉田 哉
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.44, pp.38-44, 1991-06-25

山形県西田川郡温海町の摩耶山の山麓から採集したフクログモ属の1種が新種と認められたので,Clubiona mayaの名のもとに記載した.和名はマヤフクログモとしたい.また,山形県のフクログモ属のリストもあわせて報告した.