著者
ヤスパゼン マルテ[制作] 石川 桂子[訳]
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.445-469, 2013-03

ラジオドキュメンタリー(Radio Feature)は,第二次世界大戦後のドイツで音響芸術の新 たな形態として確立された。ラジオドキュメンタリーはラジオドラマとは異なり,事実,即ち ノンフィクションを扱う。その形態は実に多種多様なものが許され,音楽,言葉,サウンド が果たす役割は番組によってさまざまである。BBC でかつてドキュメンタリー部長を務めた ジョン・シオカリスは,「ドキュメンタリーは,ラジオが持つあらゆる可能性を駆使し,聴く 人の想像力をかきたて,世界への,そして人間存在への理解を深めさせてくれる」と述べている。 本稿は,ドイツの放送局であるドイツ文化ラジオ(Deutschlandradio Kultur)とバイエル ン放送局(Bayerischer Rundfunk)のために制作したラジオドキュメンタリー「想定外」の原 稿であり,2011 年3 月11 日に日本の東北地方を襲った大災害について長い時間をかけて調査 をした結果である。執筆者は,ルポルタージュの伝統的な手法に加えて,音響芸術学的で詩的 な要素も取り入れ,存在に関する実存的な問いに取り組んだ。それは,ここで扱う問いが今回 の大災害を経験した後では,もはや東北地方の人たちだけが改めて問いかけるようなものでは なくなってしまっているためである。 「想定外」は,2012 年のPrix Italia においてイタリア大統領特別賞を授与された。Prix Italia は,ラジオ・テレビ・インターネットに関する最も歴史のあり,最も重要な国際コンテ ストとして知られている。世界45 か国の公共放送あるいは民間放送がPrix Italia の正規会員 である。
著者
長谷川 晶子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.365-381, 2014-03

本論の目的は,フランスの美術批評家アンドレ・ブルトンが,1938 年にメキシコに滞在した折に出会ったメキシコの有名な写真家マヌエル・アルバレス・ブラーボから受けた影響を明らかにすることにある。ブルトンのテクスト「マヌエル・アルバレス・ブラーボ」(1938 年)と「メキシコの思い出」(1939 年)を手掛かりとして,そこで言及されているアルバレス・ブラーボの写真を詳細に分析しながら,ブルトンがメキシコという土地の特異性をどのように捉えようとしたかを解明する。ブルトンは,西洋中心主義の立場で非西洋の文化を解釈する安易なエグゾティスムに対して批判的だった。ブルトンはアルバレス・ブラーボの写真を,ステレオタイプ化されたメキシコではなく,「土地の魂」をつかんでいるものだと評価している。フランス人である自分もまたエグゾティスムの眼差しから逃れ難いことを承知していたブルトンは,メキシコ滞在の経験を記す上で,解釈を一旦括弧に入れて事物の描写に固執する。あたかもアルバレス・ブラーボの写真の中に光と影の対立から生と死の循環の原理を見出したように,個別の事物の具体的描写を通して,メキシコの土地に潜む普遍的性質を垣間見ようとするのだ。見えるものを通して見えないものを表現するアルバレス・ブラーボの寓意的な写真と重なりあうようなこのブルトンの姿勢は,芸術批評が写真をモデルとして執筆されたことを強く示唆している。
著者
長谷川 晶子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.365-381, 2014-03

本論の目的は,フランスの美術批評家アンドレ・ブルトンが,1938 年にメキシコに滞在した折に出会ったメキシコの有名な写真家マヌエル・アルバレス・ブラーボから受けた影響を明らかにすることにある。ブルトンのテクスト「マヌエル・アルバレス・ブラーボ」(1938 年)と「メキシコの思い出」(1939 年)を手掛かりとして,そこで言及されているアルバレス・ブラーボの写真を詳細に分析しながら,ブルトンがメキシコという土地の特異性をどのように捉えようとしたかを解明する。ブルトンは,西洋中心主義の立場で非西洋の文化を解釈する安易なエグゾティスムに対して批判的だった。ブルトンはアルバレス・ブラーボの写真を,ステレオタイプ化されたメキシコではなく,「土地の魂」をつかんでいるものだと評価している。フランス人である自分もまたエグゾティスムの眼差しから逃れ難いことを承知していたブルトンは,メキシコ滞在の経験を記す上で,解釈を一旦括弧に入れて事物の描写に固執する。あたかもアルバレス・ブラーボの写真の中に光と影の対立から生と死の循環の原理を見出したように,個別の事物の具体的描写を通して,メキシコの土地に潜む普遍的性質を垣間見ようとするのだ。見えるものを通して見えないものを表現するアルバレス・ブラーボの寓意的な写真と重なりあうようなこのブルトンの姿勢は,芸術批評が写真をモデルとして執筆されたことを強く示唆している。
著者
井尻 香代子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.315-331, 2012-03

本稿では,国際ハイクにおいて日本の俳句の主要な要素の一つである季語が,どのように受 容されて来たのかを取り上げ,アルゼンチンのスペイン語ハイクの作品分類をベースに考察し た。まず,日本の俳諧の連歌において季語がどのように理解され,発句に用いられたのかにつ いて,芭蕉のことばに着目して検証した。次に,近代俳句における季語観の変化を,無季容認 派と有季定型のホトトギス派の両者について概観した。その上で,アルゼンチン・ハイクの季 語および通年の語の分類を行い,作品における機能を分析した。その結果,アルゼンチン・ハ イクにおける季語および通年のトピックの用法は,近代俳句における季語ではなく,事象の変 化に着目する俳諧の季語のそれに近いことが明らかになった。現在の国際ハイクの詩学は,西 欧詩がロマン主義と前衛派によって詩的言語の変革を経験した際に受容した,日本の俳諧の連 歌の季語観に連なっているのである。
著者
Dorji Louisa
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.32, pp.122-132, 2004-03

The Kingdom of Bhutan, situated in the Eastern Himalayas and sandwiched between India and China, is relatively isolated and little-known internationally. It is visited by no more than 7,000 foreign tourists per year. A landlocked country with a mountainous terrain and a basic infrastructure, it has, nevertheless, undergone considerable development since the 1960s. The most significant developments in terms of infrastructure have been the building of two main roads to connect the main towns on an east-west axis and a north-south axis, the ongoing extension of the electricity supply to towns across the country and the provision of telephone connections nationwide. In terms of social and cultural developments, a modern, English-medium education system was introduced in the late 1950s and employment was provided for the graduates from this system in the growing bureaucracy. In recent years, efforts have been made to develop a private sector in order to create new employment opportunities for the growing number of educated youths. Modernization has brought little physical change to everyday life in the countryside. Subsistence farming is still the norm, modern machinery is almost completely absent and a cash economy is still in a rudimentary stage of development outside the towns. In the towns and the countryside alike,people are still guided by the moral wisdom and psychological support of the Buddhist monks, who hold a revered position in society. Traditional life is, therefore, still very much in evidence. However, nowhere is left completely untouched by the developments that have been taking place inside and outside the country. This article is based upon my own observations and interviews with people during the many times I have spent in Bhutan since 1993. It gives a very general overview of how tradi-tional and modern aspects of life are blended in contemporary Bhutanese society. It considers aspects of life and traditions that have scarcely changed in centuries as well as examining areas where modern developments clash with traditional ways of life and create issues that will need to be addressed into the future. The article also discusses the kind of policies a modern, developing nation implements in order to strengthen a sense of national identity based on traditional culture and values.

1 0 0 0 OA 日本語史試論

著者
植村 進
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.91-132, 2007-03