著者
岩室 宏一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.737-745, 2021-07-10

Point・淡蒼球内節(GPi)は高頻度で持続発火する神経活動を特徴とし,後腹側領域では感覚運動関連応答が記録できる.・視床下核(STN)には不規則な発火を特徴とする神経細胞が密に存在し,背外側領域では感覚運動関連応答が記録できる.・視床中間腹側核(Vim核)の外側領域では振戦に同期する神経活動を高率に認め,感覚運動関連応答を有する.・GPi,STN,Vim核の感覚運動領域にはそれぞれ身体部位局在がある.
著者
五味 玲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.505-506, 2014-06-10

手術は弓を引くことに似る. 弓道の基本動作が「八節」である.「足踏み」「胴造り」「弓構え(ゆがまえ)」「打起し」「引分け」「会(かい)」「離れ」「残心」である. これを破裂脳動脈瘤の頚部クリッピング術にたとえてみたい.
著者
孫 連坤 吉井 與志彦 宮城 航一 石田 昭彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.119-125, 1999-02-10

I.はじめに これまでの悪性腫瘍治療の研究で,腫瘍細胞を色々な操作によって正常細胞に分化誘導する試みは,白血病では既に臨床応用まで行っている12).しかし,その他の癌5)では実験的な研究のみであった.グリオーマ治療研究に於いても,神経成長因子10),プロスタグランジンD7),レチノイン酸8)等の分化誘導物質を使った実験報告がなされているが,臨床応用には至っていない. ビタミン剤を用いた分化誘導の研究は,重篤な副作用が少ない点で多く試みられている.例えば,活性型ビタミンD3(以下ビタミンD3と略)が骨髄性白血病細胞を単球/マクロファージ系細胞に分化誘導して治療効果を得たという報告1)や,乳癌9),ヒト骨肉腫細胞26)及び脳腫瘍細胞4,18)等にも,ビタミンD3の分化誘導及び腫瘍増殖抑制効果を検討した実験報告が見られる.他にビタミンB12も肺癌細胞に対して分化誘導効果を持っている21).このように,ビタミン剤の分化誘導効果や腫瘍増殖抑制効果は今後,種々のビタミン剤で検討されていくものと思われる.
著者
立石 潤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.897-905, 1983-09-10

I.はじめに スローウイルス感染症または遅発性ウイルス感染症28)は,周知のようにアイスランドの獣医学者Sigurdsson44)により1954年に提唱された概念であるが,それ以前に北欧ではヒツジの慢性病が知られており,その1つのスクレピーscrapieについては実験的伝播も行われていた9).Sigurdssonの提唱した概念は,①数ヵ月から数年にわたる長期の無症状潜伏期間ののち,②徐々に発病し,③遷延性,進行性で,④予後が悪く,⑤感染が1種類の動物の,単一の臓器または組織に限定して起こることである.このうち⑤は彼自身予想していたように,その後の動物実験の結果からは削除するほうがよいと思われるが,自然感染においてはほぼ妥当する.このうち既知のウイルスによる神経系の遅発性感染として麻疹ウイルスによる亜急性硬化性全脳炎SSPE,パポーバウイルスによる進行性多発性白質脳症PML,アデノウイルス32型や風疹ウイルスによる亜急性脳炎が知られている.これらは個々のウイルスと宿主側の要因,特に免疫機構との組み合わせにより持続性感染persistent infectionの形をとることが多い. さらに全く原因不明の発病因子が徐々に増殖して発病する亜急性海綿状脳症の1群がある.その代表はクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob病,CJDと略)であるが,動物への実験的感染とともに,人では臓器移植,手術,外傷などとの関連性が問題となっているので,以下この群を中心に述べる.
著者
笠井 直人 溝井 和夫 小沼 武英
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.415-420, 1982-04-10

I.はじめに わが国における平時の頭部銃創の報告は欧米に比し非常に少なく,あっても自殺による銃創が多いためか,その予後は極めて悪い.今回われわれは,近距離からピストルの射撃を受け,脳内血腫を来たし昏睡に陥った幼児を手術により幸いにも救命しえたので,治療上の問題とともに若干の考察を加え報告する.
著者
河野 兼久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1221-1222, 2019-12-10

平成から令和に改元される記念すべき年となった2019年の3月末をもって,愛媛県立中央病院を定年退職し,41年にわたる脳神経外科手術医の人生に区切りを迎えました.振り返ってみると,多くの先達が言われてきたように,思いのほか巧く行えた症例よりも難渋したことのほうがより濃く鮮明に思い出せます. 私が脳神経外科専門医を取得した1985年頃には,日経メディカルに「苦いカルテ」という連載があり,名だたる先輩・名医の先生方が,若いときの教訓的な実臨床での苦い経験を赤裸々に記載されており,私はもとより多くの若い医師たちに「他山の石」として愛読されていました.スポーツ選手が負けてから大きく成長すると言われるように,臨床現場でも失敗から学ぶことの大事さは,良医たるに必然の文化とも言えるもので,事の重大さから仔細は表沙汰にできない内容もあり,個人が秘めて自戒し,患者診療に反映させることで免責を得たように自己処理しているのが実情かと推察します.
著者
岡田 真幸 鵜山 淳 岡村 有祐 三宅 茂 寺薗 貴浩 山本 一宏 髙石 吉將 近藤 威
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.799-804, 2019-07-10

Ⅰ.はじめに 頚部の外傷が原因で動脈解離や動脈瘤形成などの血管損傷を来すことはよく知られている5,14,22,27).内頚動脈系・椎骨動脈系の損傷は脳虚血症状を引き起こすため,脳神経外科医が治療を担うことが多い.外頚動脈の動脈瘤形成の多くは仮性動脈瘤であり,脳への血行動態に影響を及ぼさず,有痛性(ときには無痛性)の腫瘤で発症し,出血破綻の程度によっては出血性ショックや気道閉塞に至る15,24,25).過去には,原因不明の頚部腫瘤としてドレナージや生検を試みて大出血を来したことが報告されている20,21).一方で,特発性とされるものの中に出血のない真性の動脈瘤も含まれているようで,長期間経過観察のみで何ら病状の進行がなかったとの報告2,11)も散見され,症状が進行性であるかどうかを見極める必要がある. 形成外科,耳鼻科,血管外科などで治療されることが多いが,アテローム性頚部頚動脈疾患を治療する機会の多い脳神経外科医にとっては日常よく経験している手術領域であり,直達術あるいは血管内治療のどちらの治療法にも熟達していることにより,症例ごとに適切な治療の選択が可能である.今回われわれは,脳神経外科医にとっては遭遇する機会の少ない,頚部外頚動脈仮性動脈瘤を直達術にて治療したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
奥野 孝 宮本 昌彦 板倉 徹 上野 雅己 清水 美奈 南出 晃人 駒井 則彦
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1137-1141, 1993-12-10

I.はじめに 分娩,娩出時の骨盤胎児不均衡,遷延分娩の際に用いられる吸引分娩は,1957年にMalmstrom14,15)により導入されて以来その有用性ならびに安全性が報告されてきた11,19,20).しかしながら頭血腫等の分娩時頭部外傷の合併症が少なからず報告されている1,2,8,12,20,23,24).今回われわれは,頭血腫に頭蓋骨骨折を伴わない硬膜外血腫を合併した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
著者
本庄 華織 大里 俊明 大森 惠 村木 岳史 石川 耕平 岡村 尚泰 中村 博彦
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.525-530, 2019-05-10

Ⅰ.はじめに もやもや病では,過換気や啼泣によるhypocapniaが虚血発作や脳梗塞発症の引き金になることがよく知られている.そのため,小児もやもや病の血行再建術の周術期管理において,啼泣を回避することが虚血性合併症を予防する上で非常に大切である.特に術直後は,麻酔覚醒時の術後興奮,疼痛,不安により啼泣しやすい状況にある.さらに脳循環動態が極めて不安定なために,啼泣によるhypocapniaにより広範な脳梗塞に至る危険性がある.啼泣を回避し,normocapniaを維持するため,麻酔科の協力を得て,superficial temporal artery(STA)-middle cerebral artery(MCA)anastomosis+encephalo-myo-synangiosis(EMS)終了後,抜管時より翌朝までデクスメデトミジン(dexmedetomidine:DEX)にて持続的に鎮静を行った. 海外では,DEXのもつ鎮静・鎮痛・臓器保護作用,そして呼吸抑制が少ないという特徴より,小児への投与の有効性が報告されている22,24).日本では2004年から市販されているが,小児例,脳神経外科領域での報告例は少ない. 小児もやもや病の術後啼泣回避のための鎮静薬として,DEXの有用性を検討したので報告する.
著者
川口 務 河野 輝昭 風川 清 本間 輝章 金子 好郎 小泉 徹 堂坂 朗弘
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.1033-1037, 1997-11-10

I.はじめに 頭蓋内解離性動脈瘤は,比較的稀な疾患と考えられてきたが,本邦を中心に報告は増加している.特徴の一つとして内頸動脈系では,非くも膜下出血例が多く,椎骨脳底動脈系ではくも膜下出血例が多い点があげられる9).今回,われわれはくも膜下出血と脳梗塞をほぼ同時に発症した解離性中大脳動脈瘤を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
著者
松本 勝美 赤木 功人 安部倉 信 大川 元久 田崎 修 押野 悟
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.831-835, 1999-09-10

I.はじめに 喫煙は血管の動脈硬化を促進し脳卒中のリスクを増加させる2,14,17,21).なかでも喫煙とくも膜下出血との関連性はmeta analysisでみると脳出血や脳梗塞に比べさらに強く,喫煙者のくも膜下出血の発症は非喫煙者の29倍となる14).Weir(1998)らのcooperative studyでは,喫煙者のくも膜下出血の発症率の上昇に加え,発症率と喫煙量が比例し,脳血管攣縮を合併する率が非喫煙者にくらべより高いという結果になった20).一方,くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤がどう形成され破裂するかについては,hemodynamic factorや,中膜欠損,高血圧の影響など複数の要因が提唱されている7,11,18)が,喫煙がどう影響するかのメカニズムについてはいまだに解明されていない.また喫煙が動脈瘤の形成に関与するのか,破裂に関与するのかも明確ではない.今回くも膜下出血例および未破裂脳動脈瘤症例について,脳ドック受診者で動脈瘤が否定された症例をコントロールとし喫煙率の違いについて調査した.本研究の結果について喫煙が動脈瘤の形成や破裂に及ぼす影響について文献的考察を加え検討した.