著者
安原 隆雄 佐々田 晋 伊達 勲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1233-1245, 2021-11-10

Point・腰椎変性疾患の診断には病歴聴取・神経診察・画像診断が重要であり,病歴聴取では“5W1H”が基本である.・神経診察は筋力,痛み・しびれ,腱反射を組み合わせて病変を推察するものであり,腰椎変性疾患では第5腰神経症状を覚えたい.・画像診断ではMRIだけでなく,X線動態撮影による不安定性評価や腰椎造影による立位での造影剤の流れを確認することも重要である.
著者
大隣 辰哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1224-1232, 2021-11-10

Point・頚椎後方除圧法である椎弓切除術や椎弓形成術において,後方固定を加えるという概念がなぜ存在するのかを知っておく必要がある.・頚椎椎弓形成術は,国内では独自の進化を遂げて後方除圧法の主流となったが,海外では必ずしもそうではなかったことを理解しておく必要がある.・頚椎後方除圧は固定も含めて術式そのものにこだわり過ぎず,患者の病態に合わせてよりよい術式を選択することが最も重要である.
著者
大竹 安史 福田 衛 石田 裕樹 中村 博彦 花北 順哉 高橋 敏行 兼松 龍 南 学 妹尾 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1198-1210, 2021-11-10

Point・Anterior cervical foraminotomyは最小限の骨削除を行うことで固定を回避しつつ,神経根をピンポイントに除圧する術式である.・可能な限り支持組織を温存することと,最大限の神経除圧を行うことは相反する概念であり,これらのバランスをとるのに習熟を要する.・狭い術野で正確に神経根に至るためには,解剖学的知識,術中の良好なorientationが肝要である.
著者
玉岡 晃
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.329, 2016-04-10

●神経内科の臨床に携わるすべての医師必読の書 2015年11月末に開催された第33回日本神経治療学会総会(会長:祖父江元・名古屋大学教授)において,「症例から学ぶ」というユニークなセッション(座長:鈴木正彦・東京慈恵会医科大学准教授)に参加した.「神経内科診療のピットフォール:誤診症例から学ぶ」という副題がついており,春日井市総合保健医療センターの平山幹生先生(以下,著者)が演者であった. 臨床医学のみならず基礎医学にも通じた該博な知識の持ち主でいらっしゃる著者が,どのような症例提示をされるか,興味津々であったが,予想に違わず,その内容は大変示唆に富む教育的なものであった.自ら経験された診断エラーや診断遅延の症例を紹介し,その要因を分析し,対策についても述べられた.講演の最後に紹介されたのが,この『見逃し症例から学ぶ神経症状の“診”極めかた』であり,講演で提示された症例も含めた,教訓に富む症例の集大成らしい,ということで,早速入手し,じっくりと味わうように通読した.
著者
遠藤 俊毅 伊藤 明 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1151-1159, 2021-11-10

Point・脊髄脊椎外科の魅力は,正しい診断と手術により患者の症状を劇的に改善できることにある.・画像を直すのではなく,患者を治す.そのために,神経診察により患者症状の責任病変を絞り込むことが大切である.・画像所見はあくまでも神経診察による診断を確認するために使用する.その際,同一椎間板レベルにおける神経根と脊髄髄節レベルの「ずれ」に注意する.・患者の訴えを聴き,姿勢や動きによる症状の変化に注目する.
著者
岩﨑 素之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1141-1150, 2021-11-10

Point・脊髄の解剖を理解し,神経回路を意識してみる.・臨床診断を行うための最低限の知識を得る.・実際の症例に当てはめて,合理的な病態説明ができるか確認する.
著者
高橋 敏行
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1114-1123, 2021-11-10

Point・脳神経外科医における脊髄脊椎・末梢神経外科領域の知識習得と症例経験は,神経医としての診察能力および外科技術の向上のために重要である.・脊髄脊椎・末梢神経外科の魅力は診断の奥深さと治療選択肢の多様性であり,患者の要望や達成目標を踏まえた手術戦略の立て方も醍醐味となる.・日本脊髄外科学会は脳神経外科医にとって脊髄脊椎・末梢神経外科教育が円滑となるよう努力しており,今後も社会的・国際的な役割は拡大すると考える.
著者
安原 隆雄 伊達 勲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1093-1104, 2021-09-10

Ⅰ はじめに 脳神経外科手術では,手術部位感染(surgical site infection:SSI)がほとんど起こらない血管内治療を除くと,開頭術,穿頭術,脊椎脊髄手術,経鼻内視鏡手術,水頭症手術,小児脳神経外科手術,その他,さまざまな術式においてSSIを完全に制御することは困難である. 本稿では脳神経外科領域のSSIについて,まず,2018年と2019年に行われた本邦のアンケート調査結果および,脳神経外科領域に関して2020年に追補された『術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン』の内容を簡潔にまとめる.次いで,脳神経外科領域で扱う医療材料について,新しい素材も含め,SSIに関する報告を示す.最後に,脊椎脊髄領域のSSIと予防,ならびに頭蓋底切除を伴う手術におけるSSI予防について,われわれの考え方・取り組みを紹介する.
著者
林 健太郎 永田 泉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.529-539, 2013-06-10

Ⅰ.はじめに 頚動脈起始部の狭窄は脳血流の低下を来したり,プラークの破綻や血栓形成により脳塞栓症の原因となる.動脈硬化性病変は欧米に多く,頚動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)は欧米で広く行われてきた.食生活の欧米化や高齢化に伴い,本邦においても患者数は増加してきており,疾患の重要度は増してきている. 手術の有効性を評価するランダム化試験も欧米で行われてきた.North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial(NASCET)では70%以上の症候性高度狭窄例に対するCEAの有効性が示され60),European Carotid Surgery Trial(ECST)でも同様の結果が示された21).Asymptomatic Carotid Atherosclerosis Study(ACAS)やAsymptomatic Carotid Surgery Trial(ACST)では無症候性病変が検討され,高度狭窄例においてCEAの有効性が示された22,29).近年はcarotid artery stenting(CAS)の有効性を評価するための比較対象となる場合が多いが,CEAの成績は比較的一定している. 脳卒中治療ガイドライン2009では症候性頚動脈高度狭窄に対してはCEAを行うことが推奨され,症候性中等度狭窄および無症候性高度狭窄においても推奨されている78).症候性軽度狭窄あるいは無症候性中等度狭窄ないし軽度狭窄においては,プラークが不安定であったり,潰瘍が認められる場合にはCEAを考慮してもよいが,科学的根拠はないとされている. このようにCEAの有効性は認められており69),日本脳神経外科学会のデータでは2011年に3,776件施行されている.CEAは脳卒中発作を予防するための手術であるため,合併症を低く抑える必要があり,手術リスクは症候性病変では6%,無症候性病変では3%以下の場合に有効とされている.よって,手術および周術期管理に熟達した術者と施設において行われるべきである.本稿ではCEAの手術説明の一助となることを目的に,CEAの合併症に関する論文をレビューした.
著者
土肥 謙二 加藤 晶人 八木 正晴
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1056-1065, 2021-09-10

Point・診断については低髄液圧症に関する症状を理解し,直接的な髄液の漏出を証明するために診療指針に基づいて画像診断を行う.・治療についてはまず安静と十分な補液を行う.硬膜下血腫合併例では患者ごとの病態と緊急性を判断して治療の優先順位を決定する.・病名については臨床・研究ともに未だ混乱している.グローバルな研究を推進するためには正しい診断と病名の統一が必要である.
著者
末廣 栄一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1024-1030, 2021-09-10

Point・抗血栓薬服用例において外傷性頭蓋内出血を認めた場合,すみやかに抗血栓薬を中止し適切な中和療法を行う.・血腫拡大による二次性脳損傷は不可逆的な変化をもたらすため,症状が軽いうちに対応することが重要である.・頭部外傷の急性期を過ぎたら,抗血栓薬の再開を忘れずに行う必要がある.
著者
荒木 尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1011-1023, 2021-09-10

Point・身体的虐待による頭部外傷を総称してabusive head trauma(AHT)と呼ぶ.・乳幼児の急性硬膜下血腫を認める場合にはAHTを鑑別する必要がある.・AHTの病態にはけいれんが強く関与し,超急性期から抗けいれん薬投与が必要である.・AHTの診断は脳神経外科をはじめ,複数診療科・多職種によるチームにより行われることが望ましい.
著者
深谷 親
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.882-887, 2021-07-10

症例登録の目的と経緯 日本定位・機能神経外科学会における症例登録は2004年に開始された.当初の目的は,症例登録数を基に適切に手術が施行されている施設を認定し,そこでの手術経験を基に技術認定を行うというものであった.その目的はほぼ達成され,安定したシステムが構築された.例年30〜40施設が認定を受け,これまでに239人の技術認定医が誕生している. 症例登録の内容は,いくつかの変遷を経て,2014年に現在のフォーマットとなった.2014年以降の6年間を集計し,俯瞰した結果を2021年1月に開催された第60回日本定位・機能神経外科学会で報告したので,その概要をここで紹介したい.
著者
旭 雄士
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.873-881, 2021-07-10

Point・定位・機能神経外科手術には多数のピットフォールがある.・合併症の種類・予防・対処方法を知っておく必要がある.・他施設に手術見学に行き,手術手技を見直すことも重要である.
著者
前澤 聡 中坪 大輔 津川 隆彦 加藤 祥子 柴田 昌志 高井 想生 鳥居 潤 若林 俊彦 齋藤 竜太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.847-856, 2021-07-10

Point・集束超音波治療(FUS)は皮膚切開を必要としない最新の定位・機能神経外科治療であり,その凝固術は本態性振戦およびパーキンソン病に対して保険適用となっている.・集束超音波の特性と治療法の原理を十分理解し,安全性を考慮しながら,最適な標的部位に十分なsonicationを行うことで,良好な治療効果を得ることができる.・脳深部刺激療法(DBS)や他のモダリティの特性も理解し,十分なインフォームド・コンセントに基づいた患者選択を行うことが重要である.
著者
樋口 佳則 青柳 京子 岡原 陽二 和泉 允基
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.799-809, 2021-07-10

Point・淡蒼球刺激術は,パーキンソン病,ジストニアなどの運動過多を生じる不随意運動症の治療オプションである.・淡蒼球の内側には内包,腹側には視索が存在し,淡蒼球内節(GPi)の腹外側部2/3が感覚運動領域で視床へ投射する.・パーキンソン病症例では,視床下核(STN)刺激との違い(ジスキネジア抑制効果など)を理解し選択する.
著者
梅村 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-798, 2021-07-10

Point・視床下核刺激療法(STN-DBS)は,進行期パーキンソン病の運動合併症(wearing offやジスキネジア)に対して最も広く行われている標準的手術療法である.・手術は定位脳手術の方法で行う.MRIガイドでのターゲティングに微小電極記録を併用してSTNを同定し,そこにDBS電極を留置する.・DBS電極の留置は局所麻酔下で行われ,術中の試験刺激により効果や副作用を確認しながら行う.
著者
平林 秀裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.782-785, 2021-07-10

人間万事塞翁が馬 “Stereotactic Imaging Functional Neurosurgery” 2014年5月,Vårpromotion(Umeå University)でPh.D.を授与された.人生で最も感激した瞬間である.

1 0 0 0 ジストニア

著者
山田 和慶
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.770-781, 2021-07-10

Point・ジストニアの治療戦略において,定位・機能神経外科は不可欠の治療手段である.・ジストニアに対する定位・機能神経外科の主な治療ターゲットは,淡蒼球内節(GPi)と視床吻側腹側(Vo)核である.・脳深部刺激療法(DBS)が主流であるが近年,神経核凝固術が再評価されつつある.
著者
谷 直樹 押野 悟 細見 晃一 Khoo Hui Ming 貴島 晴彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.760-768, 2021-07-10

Point・本態性振戦に対する定位的外科治療法として,脳深部刺激療法,高周波視床凝固術,集束超音波視床破壊術,ガンマナイフ視床凝固術が利用できる.・破壊術,刺激術ともに視床中間腹側核(Vim核)が標的核であるが,刺激術ではposterior subthalamic area(PSA)も有力な標的核となる.・刺激術はRCTの結果より凝固術と比べ効果・安全性に優れると考えられるが,近年,凝固術の技術的な進歩がみられる.