著者
河井 信行 畠山 哲宗 三宅 啓介 田宮 隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1084-1092, 2021-09-10

Point・頭部外傷患者の急性期診療にあたり,高次脳機能障害に関して下記の点に留意する.・意識は「意識清明度(覚醒状態)」と「意識内容」の2つの要素で構成されており,覚醒状態のみで「意識清明」と判断しない.・早期にCTのみならずMRI(急性期には拡散強調像やFLAIR像,亜急性〜慢性期にはT2*像や磁化率強調像)を行い,微細な損傷を含め器質性病変の検出に努める.・急性症候性発作とてんかんを混同して「脳外傷後てんかん」と安易に診断しない.・軽症を含め,すべての頭部外傷患者に高次脳機能障害が発症する可能性について,患者・家族に説明する.
著者
刈部 博
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1066-1069, 2021-09-10

Point・頭部外傷診療では急性期局面の診療を行いつつ,長期的視野に立ってさまざまな連携を意識することが重要である.・慢性期以降の高次脳機能障害診断のためには急性期MRIが有用である.・外傷後早期から患者や家族に周知・教育することにより,外来フォローアップのドロップアウトを予防することが重要である.
著者
小畑 仁司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1041-1055, 2021-09-10

Point・外傷性頭頚部血管損傷は稀であるが,重篤な症状を呈することが多く,良好な転帰を得るためには迅速な診断・治療が必要である.・スクリーニングにはCTAが有用であるが,脳血管内治療に移行できるDSAが診断のgold standardである.・外傷性頭頚部血管損傷の治療では,基本的な脳血管外科手術と脳血管内治療に習熟し,多様な病変に柔軟に対応する必要がある.
著者
刈部 博
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1001-1009, 2021-09-10

Point・高齢者頭部外傷は転帰不良であり,高齢者特有の身体能力の低下や解剖学的特徴,生理学的特徴に外傷リスクや悪化リスクがあると考えられている.・Talk and deteriorateは高齢者頭部外傷における転帰不良の要因である可能性がある.・外傷後の凝固線溶系障害や抗血栓薬内服はtalk and deteriorateを惹起する可能性がある.
著者
八ツ繁 寛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.977-985, 2021-09-10

Point・急性期外傷性頭蓋内血腫である急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,脳挫傷,脳内血腫が手術適応の場合は,可及的速やかに行わなければならないことが多い.・病態に合わせて,開頭術,穿頭術,減圧開頭術などの術式を選択していく.
著者
大谷 直樹 吉野 篤緒
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.964-975, 2021-09-10

Point・減圧開頭術(DC)による転帰は内科的治療と比べて致死率は減少するが,機能予後は不変である.・重症頭部外傷で脳ヘルニア徴候や開頭術の適応がある症例,特に若年症例ではDCを施行してもよい.・DCを施行する場合には,大開頭による前頭側頭頭頂開頭(12×15 cm以上,あるいは直径15 cm以上)が勧められる.
著者
中川 敦寛 工藤 大介 園部 真也 麦倉 俊司 久志本 成樹 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-963, 2021-09-10

Point・現在の神経集中治療では二次侵襲を最小限にとどめ,生体の自己回復能力を最大限に引き出す環境を作ることに主眼が置かれている.・神経学的所見やモニタリングから得られる情報を統合し,頭蓋内圧亢進を的確に評価して治療のタイミングを逃さない.・今後,インフォマティクスなどがモニタリングや管理の質の向上を支援することが予想されるが,生理学,病態生理を深く理解することが本質であることには変わらない.
著者
中江 竜太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.946-953, 2021-09-10

Point・頭部外傷患者の20〜35%は凝固線溶系障害を伴い,転帰と相関する.・特に線溶系が亢進して出血傾向となることが特徴であり,線溶系マーカーのD-dimerは予後予測因子となる.・凝固線溶系マーカーのモニタリングを行いながら刻々と変化する病態を把握し,治療を進めていくことが望ましい.

2 0 0 0 画像診断

著者
前田 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.934-945, 2021-09-10

Point・急性期頭部外傷における初期診療で第一選択とする画像診断法は単純頭部CTである.・初回CTでは,緊急開頭術が必要な頭蓋内出血の有無を評価する.・二次性損傷を評価するためrepeat CTを行う.・軽傷頭部外傷では,放射線被曝を考慮して神経学的随伴症状などを確認してCTの適応を決める.
著者
横堀 將司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.922-933, 2021-09-10

Point・外傷診療は時間との勝負である.迅速な初期蘇生はもちろんのこと,正確な重症度,緊急度の評価は必須である.・根治的治療がシームレスに継続されるための情報伝達項目を明確にしておく.チーム医療(戦略,戦術,チームワーク)の確立は必須である.・搬送を急ぐあまり,気道,呼吸,循環の安定化を怠ってはならない.付加的な二次的脳損傷は患者転帰をむしろ悪化させる.
著者
小関 宏和 村山 雄一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.888-897, 2021-07-10

Ⅰ はじめに 脳動脈瘤は,発生から増大,破裂に至るまでの経過を予測することが極めて困難な疾患であることから,その病態機序の解明には臨床像を模倣した疾患モデルが不可欠である.臨床での動脈瘤壁の病理学的・遺伝学的所見,および血管画像を用いた流体解析などから,脳動脈瘤が血流ストレス依存的な疾患であり,血管壁に炎症を伴う病変であることが示唆されてきたが1-4),それらの因果関係や,炎症に至るまでの機序については未だ不明な点も多い.この課題を解決すべく,70年ほどの間に実験的な脳動脈瘤モデルの開発が進み,それと相まって疾患に対する理解が深まり,そこから生まれてくる新たな課題に対してそれらのモデルが進化を遂げてきた,あるいは新たなモデルが生み出されてきた. 本稿では,実験的脳動脈瘤モデルの歴史を紐解きながら,それらのバリエーションや特徴について概説する.詳細な病態機序の解説については他稿に譲るが,これらの実験的脳動脈瘤モデルによって得られた最新の知見について紹介する.
著者
内山 卓也 髙橋 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.858-872, 2021-07-10

Point・痙縮の病態を理解し,症状を見逃さず適切な時期に治療に結びつけることが重要である.・選択的末梢神経縮小術(SPN)の適応には,痙縮罹患筋肉と神経支配を理解することが重要である.・バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は調節性に優れた治療法であり,さまざまな疾患や病態に適応ができることを理解する.
著者
堀澤 士朗 平 孝臣
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.838-845, 2021-07-10

Point・高周波熱凝固手術は,振戦・ジストニアなどの不随意運動に対して長期的に改善をもたらすことができる.・高周波熱凝固手術における後遺症を呈する脳出血は極めて稀であり,安全性は高い手術である.・振戦に対する両側脳凝固手術以外の安全性は確立されておらず,構音障害や声量低下などの症状が重篤に生じる可能性がある.・両側脳凝固手術による手術リスクが懸念される場合は脳深部刺激療法(DBS)の適応を検討する必要がある.
著者
宇野 昌明
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.933-934, 2011-10-10

最近の医学生が(医学生には限らないらしい)教科書を買わないことは,皆さんもよく知っていると思う.医学生に講義や実習でどんな教科書をもっているかを尋ねると,『year note』,『ステップ』,『チャート』などを見せてくれるが,私が指定した教科書をもっている学生に遭遇することは少ない.当大学の1学年は100~110人前後であるが,基本である内科の教科書(朝倉書店の『内科学』がほとんど)をもっている学生は60人前後であり,大学の書店で売れる脳神経外科の教科書数は大体40冊/年であるという.先日,各学年の学生代表との懇談会があり,なぜ教科書を買わないのか,との話題になった.学生の言い分は①教科書は値段が高い,②先輩から,教科書は買わなくても試験は通ると言われた,③試験勉強は授業プリントと過去の試験問題を復習するだけでよい,④教科書の改訂版がすぐに出て情報が古くなる,などであった.このような言い訳を学生がしている状況で,いつも私が授業後に学生から指摘されるのは,①授業プリントの字が小さくて読みづらいところがある,②写真が見にくい,などである.私もそのようなことがないように授業プリントを改訂してきたが,よく考えると,プリントの内容は教科書の内容のpick upであり,代表的な写真は教科書にきれいなものが掲載されている.要するに学生が自分で教科書を復習すれば問題ないことである. しかし,教える側にも問題があることが指摘されている.例えば,①Power Pointのスライドのみの授業スタイルでよいのか?,②長年にわたり同じ内容の授業をしていないか?,③学生が授業中にどう反応しているのかを確認しているか?,そしてこれが一番の問題点かもしれないが,④そもそもなぜ指定された教科書が必要なのか?,どのような使い方をすべきかを学生に説明しているか?,臨床や研究が忙しくて,つい教育にかける時間をサボっていないか,自分も大いに反省する必要がある.
著者
圓尾 知之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.750-759, 2021-07-10

Point・パーキンソン病は振戦,筋強剛,無動・寡動,姿勢反射障害などの運動症状と,多様な非運動症状を呈する疾患である.・2015年にMDS(International Parkinson and Movement Disorder Society)から新たな診断基準が提唱され,支持的基準の項目にMIBG心筋シンチグラフィと嗅覚検査が挙げられている.・薬物治療は症状出現早期から開始することが推奨され,患者背景を考慮した薬剤選択が必要とされている.・外科的治療のタイミングはwearing offやジスキネジアなどの運動合併症が出現し,かつon時のADLが保たれている時期が効果的である.
著者
下永 皓司 光原 崇文 細貝 昌弘 川住 知弘
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.501-508, 2018-06-10

Ⅰ.はじめに もやもや病に対する血行再建術後の過灌流症候群は,成人例の報告で38%に及ぶという報告もあるが12),多くは一過性の症状と考えられている.今回われわれは,多発脳梗塞にて発症した,バセドウ病に合併した類もやもや病の直接血行再建術後に,局所過灌流による血管性浮腫が経時的に増大し,集学的治療を行ったにもかかわらず,脳出血を来し転帰不良となった症例を報告する.
著者
船橋 利理 駒井 則彦 小倉 光博 桑田 俊和 中井 三量 辻 直樹
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.917-923, 1989-10-10

I.はじめに 1982年,われわれは遷延性意識障害患者に対して意識の回復を目的に頸髄硬膜外刺激を試み著効を得たことを報告した7).その後,諸施設で追試が行われ,有効例がつぎつぎと報告5,12)されるようになってきた.しかし,いかなる部位の障害による遷延性意識障害が本法の適応になるかに関しては未だ議論のあるところである. 今回,大脳,脳幹など種々の障害による遷延性意識障害患者に対して慢性的に脊髄硬膜外刺激(Spinal CordStimulation以下SCSと略記する)を加え,治療効果を検討したので報告するとともに,本法の適応に関してもわれわれの考えを述べる.
著者
川崎 敏生 荒川 芳輝 杉野 寿哉 光原 崇文 舟木 健史 菊池 隆幸 小柳 正臣 吉田 和道 国枝 武治 高橋 淳C 高木 康志 宮本 享
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1005-1010, 2015-11-10

Ⅰ.はじめに もやもや病は,両側内頚動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ,代償的に脳底部に異常血管網が形成される原因不明の疾患である11).一方,川崎病は乳児および幼児において原因不明の系統的血管炎を主体とする疾患であり6),活動期に稀ながら脳梗塞を合併する4,7,12,15,17).川崎病活動期のもやもや病合併の報告はないが,川崎病罹患歴のあるもやもや病の報告がある1,3,8,9,13,14).今回,川崎病の既往があるもやもや病3例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
著者
杣川 知香 福田 雄高 吉村 正太 佐藤 慧 日宇 健 小野 智憲 牛島 隆二郎 戸田 啓介 堤 圭介
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.629-635, 2017-07-10

Ⅰ.はじめに 内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(internal carotid-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC AN)に合併する同側動眼神経麻痺(oculomotor nerve palsy:ONP)は,切迫破裂の警告症状やくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に伴う局所神経症状として広く認知されているが,対側に生じることは極めて稀である19).今回われわれは,SAH発症約1日後に対側ONPを発症したIC-PC ANの稀な1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.
著者
尾原 裕康 原 毅 阿部 瑛二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1246-1256, 2021-11-10

Point・保存的治療抵抗性の腰部脊柱管狭窄症に対して,後方除圧術は非常に効果がある術式であるが後方支持組織に対しては侵襲的である.・後方支持組織温存のためさまざまな術式が報告されているが,通常の病態ではどの方法も良好な結果が期待できる.・変性が高度な症例では脊柱安定性に最も貢献している要素が何かを考察し,その要素を損傷しない術式を選択することで十分な除圧を行いつつ,将来のすべり症の悪化防止が期待できる.