著者
中山 哲男 中村 悦郎 小口 勝也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.2, pp.250-257, 1977-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

2種あるいは3種の遷移金属塩と臭素化合物とからなる多元系触媒を用いて,酢酸中で酸素加圧下1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を酸化し,活性な触媒種を検索するとともに酸化度およびピロメリト酸生成率におよぼす酸素圧,触媒濃度およびTMB濃度などの影響を調べた。さらに,それぞれの酸化段階における生成酸組成を詳細に分析し,TMBからピロメリト酸にいたる生成酸組成の分布および酸化反応経路を明らかにした。ピロメリト酸生成活性の高い触媒として,Co-Mn-Br,CoCe-BrおよびCo-Mn-Ce-Br系触媒を見いだした。臭化物存在下におけるCo-MnおよびCo-Ceの相乗効果は,Coに対して0.01molのMnあるいはCe,Mnに対して0.1molのCoの微量添加によっても出現することを明らかにした。Co-Ma-BrあるいはCo-Mn-Ce-Br系触媒を用いた酸素圧20kg/cm2におけるTMBの初期酸化反応速度はTMB濃度に0次であった。しかし,酸化度およびピロメリト酸生成率はTMB濃度が低いほど増大した。酸化度に対する各種生成酸の分布図はピロメリト酸の選択率が非常に高いことを示した。
著者
松田 彰 上田 亨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.5, pp.845-850, 1981-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

5'-デオキシ-5'-(フェニルチオ)グアノシン=2',3'-環状リン酸エステルを合成し,光照射を行なうと収率よく8,5'-環化反応が起こり,5'-デオキシ-8,5'-シクログアノシン-2'.3'-環状リン酸エステルが得られた。これは,塩基部がand形に固定されたグアニル酸のモデルである。この化合物はリボヌクレアーゼT1(RNaseT1)で加水分解され3'-リン酸エステルを与えるが,RNaseT1と3'-リン酸エステルの相互作用の分光学的解析を行なった結架,and形グアニル酸が,RNaseT1とよく相互作用することが明らかとなり,従来の定説を修正する結果となった。5'-デオキシ-8,5ノーシクロアデノシン=2,3'-環状リン酸エステルも同様に合成することができた。
著者
宮嶋 孝一郎 稲荷 恭三 中垣 正幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.2031-2034, 1974-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

タンパク変性と関連してグアニジニウムイオンの水構造に与える影響を調ぺるために,比較的低濃度ま領域で,対イオンと測定温度をいろいろかえてグアニジニウム塩水溶灌の粘度を測定し,得られた結果をJones-Doleの式にしたがって解析した。その結果,グアニジニウムイオンのB係数は測定温度領域(10,25,35℃)ではすべて正の値を示し,かつ温度の上昇とともに増大する(粘性流の活性化エネルギーへの寄与,4礎u,は-120bal/mol)という相反する結果を得た。しかしイオンの体積に基づくいわゆる"障害効果"をEinsteinの粘度式から見つもり,この効果を差し引くことにより,β係数はセシウムィオンと同程度の負の値となり,B係数の温度依存性から得られる結論と-致した。これらの結果からグアニジニウムイオンは水構造破壊イオンであると結論した。
著者
大井 隆夫 掛川 一樹 小坂 知子 本多 照幸 垣花 秀武
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.5, pp.543-548, 1993-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

草津白根山の火口湖である湯釜について,二つの湖水試料,二つの湖底泥試料および一つの固体火山噴出物中のランタノイド元素を中性子放射化分析法により定量した。その結果,水試料では11~14元素がppbのオーダーで,固体試料では8~10元素がppmレベルでそれぞれ定量された。すべての試料において,定量された元素でみる限り元素の存在量に関するOddo-Harkins則が成り立っていた。各試料中のランタノイド元素濃度をLeedeyChandrzte中の対応する濃度で規格化して得られるランタノイド元素パターンを求めたところ,固体試料では軽ランタノイドで左上がり,重ランタノイドでほぼ水平の傾きをもった,岩石でよく見られる,互いによく似たパターンが得られた。水試料のパターンは,全体にわずかに左上がりのものであった。固相と液相との間でのランタノイド元素の分配係数をイオン半径に対してプロットしたところ,中程度のイオン半径(90~95pm)のところでピークをもつ特徴的な曲線が得られた。これより,閉鎖系の酸性環境下においては,三価イオンの場合このあたりのイオン半径を持つ元素が最も液相側に分配しやすいことが示唆された。
著者
重松 俊男 工藤 洌
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.1, pp.103-109, 1981-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

従来,不足当量法は,その歴史的な経緯から不足当量同位体希釈法と不足当量放射化分析法にわけられていたが,不足当量分離の観点から新たに分類した。それにそって,放射化した試料について直接法,担体量変化法および比較法によりリンの定量を行なった。リンの不足当量法は,,モリブドリン酸のイソブチルメチルケトン(MIBK)抽出を用いた。担体量変化法については,従来の照射試料を二分する方法に加えて比較試料を用いる方法を検討した。NBS標準試料のオーチャードリーブス中のリン濃度を,直接法,担体量変化法の従来法および比較試料を用いる方法で定量したところ,それぞれ0.23±0.01%,0.22±0.02%および0.21±0.01%の値を得た。これらはNBSの保証値0.21±0.01%と一致しており,精度を含め定量法の正確さが確認された。その後,比較法でケイ素半導体中のリンを定量したところ,見かけの値として10.5,5.7ppbを得た。さらに,ケイ素の二次核反応で生成する32Pの量を補正したところ,ケイ素中のリン濃疫として7.9および3.1ppbを得た。