著者
権 順度 田中 基明 去来 川覚三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.7, pp.1314-1319, 1973-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2

2-位にカルボニル基を有するセリジン類,すなわち2-ホルミルピリジン,2-アセチルピリジンおよび2-ベンゾィルピリジンを2-ヒドラジノベンゾチァゾールといろいろの条件下で反応させ,相当するヒドラゾン類を得た。このときに得られるZ-およびE-異性体をカラムクロマトグラフィーにより分離し,それらの分光学的性質を検討した。さらに,Z-およびE-異性体間の異性化反応について調べた。Z-異性体は分子内で六員環水素結合を形成するためNMRスペクトルではNHプロトンおよびピリジン環の6-位のプトンがE-異性体にくらべて低磁場シフトし, IRスペクトルではz,o :N吸収がE-異性体にくらべて低波数側に現われた。さらに,UVスペクトルではZ-異性体の極大吸収がE-異性体にくらべて長波長側にシフトした。得られたヒドラゾン類のうち,2-アセチルピリジン=2-ベソゾチァゾリルヒドラゾン[5]をキシレン中で加熱還流して,Z-およびE-異性体の挙動を調べた。その結果,[5z]a[5 E]の平衡は[5 z][5 E]÷3/7(wt%)の割合で一定値になることが明らかとなった。また[5E]はいくつかの有機溶媒中(2x10-5 molll),温度25ccでタングステンランプを照射すると容易にZ-異性体に異性化した。その異性化の速さは溶媒によって異なり,その速さの順序はEtOH>CH3CN>cyclo-C6H,2であった。
著者
権 順度 田中 基明 去来川 覚三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.8, pp.1526-1531, 1974-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
2

2-ホルミルフラン,2-ホルミル-5-メチルフラン,2-アセチルフラン,2-ホルミルチオフェンおよび2-アセチルチオフェンと2-ペンゾチァゾリルヒドラジンとをエタノール還流下で反応させ相当するヒドラゾン類(1)(X=O,RF R2H),(2)(X=O, R,=H, R2=CHs),(3)(X=O, R,= CH, R2=H),(4)(X=S,R,=,Rz=H)および(5)(X=S,Rl = CHs,R2H)を得た。このとき得られるヒドラゾン類からE体およびZ体を分別再結晶およびカラムクロマトグラフヂーによって分離し,それらの立体配置をNMRスペクトノレから決定するとともにスペクトル特性を調べた。さらに,得られた動体およびZ年間の光異性化反応についても検討した。NMRスペクトルでは(1E)~(3E)のフラン環の3-位のプロトンおよび4-位のプロトンが(1Z) (k3Z)にくらべて高磁場シフトし,また(IE),(2E):および(4E)におけるNHプロトンは対応するZ体よりも低磁場シフトした。これに対し,(3E)および(5E)と(3Z)および(5Z)のNHプロトンの間には差は認められなかった。 E体およびZ体は光によって容易に異性化したのでそれらの異性化速度を二三の有機溶媒中25 Cで,光源としてタングステンランプを照射して求あた。その結果,フラン環を有するヒドラゾン類 (1Z) E の異性化においてはZ体からE体への異性化速度定数k,は溶媒依存性[k (EtOH) ki(CHsCN) gtk,(6 40-C6H,2)],がみられたのに対しチオフェン環を有するヒドラゾン類(4Z);=2(4E)の場合の馬は顕著な溶媒依存性はみちれなかったe-方,E体からZ体への異牲化速度定数-,は前に述べた溶媒依存性とは逆の結果が得られた。
著者
山崎 恒博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.10, pp.1667-1671, 1989-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

塩化鉄(III)-メタノール系を対象に,化学蓄熱材としての適性を判定するため,必要な基礎的性質について実験的に検討し,次のような結果を得た。1.メタノール中に案げる塩化鉄(III)1molあたりの溶解熱は実験範囲内で92kJ以上あった。この溶液の希釈濃縮プロセスは可逆的に行うことができ,その際発生する希萩熱を利用する昇温サイクルは低温廃熱の回収などに適用できることを示した。2.基礎的物性として,その溶解度,沸点,密度などを測定した。また,蒸気圧,比熱などを推定した。これらの物性値を用い,昇温サイクルにおける温度上昇幅の計算例を示した。
著者
高橋 信行 香月 収
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.4, pp.486-493, 1981-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
37
被引用文献数
3

水処理の観点に立ってオゾンの水溶液中での特性を把握するため,溶解度,自己分解反応および物質移動におよ峰す温度およびpHの影響を温度286.5~298.OK,PH3.1~9.0の問で検討した。送入オゾン濃度と平衡オゾン濃度の問には比例関係が成立し,その比例定数(見かけの分配係数)は温度およびpHが高くなるにつれて減少した。自己分解反応を1.0次から2.0次の間で検討したところ,1.0次反応と仮定した場合にもっとも良好に実験データを説明することができ,その分解速度定数は温度およびpHが高くなるにつれで増大し,中性からアル力リ性にかけてその傾向はとくに顕著であった。総括物質移動係数は温度およびpHのほかに送気量によっても影響を受け,気泡相互の干渉により送気量が増加するほど減少し,拡散係数の増加により温度が高くなるほど増加し,またpHが低くなるにつれ増加した。真の分配係数およびHenry定数はオゾンの自己分解を考慮に入れ見かけの分配係数から計算することができ,これらの値は従来示されてきた値と良好な一致を示すことがわかった。
著者
木原 博 岡本 郁男 大森 明 中野 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.4, pp.713-718, 1973-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

はんだ付けにおける金属ステアレートなどの金属塩のフラックス作用を,金属の種類を変えて,金属塩とSn-Pb共晶はんだ間の反応がはんだの銅板上におけるぬれに対していかに作用しているかを研究した。その結果,金属塩のフラック作用機構はつぎのとおりであることが明らかにされた。まず,金属塩はSn-Pb溶融共晶はんだ中のスズと反応し,金属およびスズ塩を与える。その生成した金属ははんだ中へ溶解し,その結果はんだが母板上をぬれていくものと思われる。そして金属塩と溶融Sn-Pb共晶はんだとの反応は,金属の酸化還元電位および金属ステアレートの生成標準自由エネルギーに支配されるのではないかと思われる。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.10, pp.1184-1187, 1993-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

アルギン酸は,β-1,4結合したD-マンヌロン酸とα-1,4結合したL-グルロン酸から構成される酸性高分子多糖である。アルギン酸ナトリウム水溶液は,適当な二価金属イオンを添加するとゲル化することが知られている。しかしながら,ゲル化に及ぼす添加イオン種の影響は明らかでない。本研究では,その影響をレオロジー測定を通して研究した。レオロジー測定は10wt%アルギン酸ナトリウム水溶液に種々の濃度で塩化カルシウム,塩化ストロンチウムを添加した系について,円錐-円板型レオメーターを用いて測定温度25℃で行った。ゲル化するに要する添加塩量は,塩化ストロンチウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウムの順で増加した。これは,アルギン酸に対する二価金属イオンの親和性が,Sr2+>Ca2+>Mg2+ の順で低下するためと考えられる
著者
松井 博 橋詰 源蔵 足立 吟也 塩川 二朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.959-963, 1988-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

CaS:Ce 蛍光体に水蒸気を作用させたときの CaS:Ce の加水分解過程を調べた。CaS:Ce を 25℃, 40% RH の雰囲気中に置くと, CaS 結晶の表面は初期の段階ですでに SO4と SO3 が生成している。そこへ, まず水蒸気が CaS の構造中に OH の形で取り込まれ, つぎに分子状の水として入ってゆく。さらに CaS と水蒸気と接触しつづけると, あらたに Ca(OH)2 が生成し, これが空気中の二酸化炭素と反応して CaCO3 が生成する。加水分解の初期から CaS:Ce の表面にはすでに CaSO4, CaSO3 の存在が認められ, また試料に水が吸着しやすく その結果 Ca(OH)2 が生成した。生成した Ca(OH)2 は炭酸化が徐々に進行し CaCO3 も一部生成した。さらに, 25℃ の飽和水蒸気雰囲気にしたデシケーター中に放置すると, 一部, II・CaSO4 が生成するものの最終的には CaSO3・1/2H2O に変化した。これは試料を飽和水蒸気雰囲気にデシケーター中に放置した結果, 酸素が不足したため II・CaSO4 が生成しにくくなったものと思われる。
著者
神谷 信行 星野 謙一 太田 健一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.140-146, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2

ヘキサクロロ白金(IV)酸(塩化白金酸)の熱分解過程をTG,DTAを用いて調べ,熱分解法で作製した白金被覆チタン電極の電極性能との関連を検討した。H2PtCl6・6H20,PtCl4・5H20の結晶および水溶液はほぼ同じ温度でPtCl2,Ptへと熱分解し,それぞれの生成する温度は330,530℃ であった。これに対してブチルアルコール(n-BuOH)を溶媒として熱分解を行なうと約400℃ でPtまで還元される。H2PtCl6のn-BuOH溶液をチタン基体に塗布,熱分解する方法により,低温(300℃)でも粗度係数の大きな電極をつくることができるが,高温で焼成するほど粗度係数は小さくなった。白金とチタン基体との接合部の焼結,露出したチタン表面の封孔処理の程度は焼成温度が高いほどよく,高温処理の方が耐久性はよい。n-BuOHのほかにも種々の有機化合物を使い熱分解を調べた結果,Pt(II)に有機物が配位した状態(錯体)を経て酸化還元が進みやすくなり低温でPtoまで分解されるものと思われる。
著者
森 川豊 中 洋- 尾 崎葦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1023-1028, 1972-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

-重促進鉄(Fe-Al203)上における窒素ガスの同位体交換反応の速度を280~330℃で求めた。この速度は,吸着窒素の脱離速度と-致したので,-重促進鉄上に吸着した窒素は大部分解離型であると推定された。-重促進鉄上での同位体交換反応は純鉄上,二重促進鉄上でのそれにくらべてきわめて速い。また同位体交換反応に対する共存水素の効果は,二重促進鉄の場合には促進効果であったのに対し-重促進鉄では阻害効果を示した。純鉄にK20を添加したFe-K20上でこの共存水素の効果を調べたところ,明らかな促進効果を示した。これらの事実から,アンモニア合成触媒におけるAl203は,窒素の解離に対する活性をきわめて増大する効果を有するが,その活性は水素が共存すると減少する。また,促進剤K20は,水素が共存する系でN2=2NHなる過程を促進することにより,窒素の解離吸着をいちじるしく速くすると推定した。
著者
高橋 一正 畔 和夫 奈良部 幸夫 今井 昭生 小西 優介 天田 巌 宇田川 毅 草葉 義夫 村松 岳彦 天野 壮泰 谷岡 慎一 市野 富雄 中野 清志 村上 一方
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.9, pp.1571-1575, 1989

波長可変レーザー装置を用いてcis-ビタミンK2(cis-VK<SUB>2</SUB>)→trans-ビタミンK<SUB>2</SUB>(trans-VK<SUB>2</SUB>)の光異性化反応を試みた。cis-VK<SUB>2</SUB>またはtrans-VK<SUB>2</SUB>の溶液に紫外から可視領域のレーザー光を照射し,それぞれの異性化量を測定した。その結果,cis-5-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化に有効な波長は280~460nmであり,とくに435と355nmが高い異性化率を示した。trans-VK<SUB>2</SUB>→cis-VK<SUB>2</SUB>の異性化反亦も同時に進行するがその速度は遅く,光平衡組成はtrans-VK<SUB>2</SUB>/cis-VK<SUB>2</SUB>7/3となった。また異性化反応は溶媒の影響を受け極性溶媒よりも無極性溶媒が有効であった。cis-VK<SUB>2</SUB>→trans-VK<SUB>2</SUB>の異性化はテトラプレニル側鎖中のナフトキノン骨格にもっとも近い二重結合で起こり,他の二重結合部では起こらず選択的反応である。窒素雰囲気下でのおもな副生成物はメナクロメノロ一ルであった。これらの結果から異性化反応過程を推定した。
著者
飛弾野 哲宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.11, pp.2156-2162, 1974-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

D-グルコースにはα型とβ型の光学異性体が存在するbD-グルコースは結晶中ではα型として安定である。それを水に溶解すると溶けたα-D-グルコースの-部が変旋光をしてβ-D-グルコースへ転化してゆく。グルコースのこのような性質は,結晶グルコースの溶解速度に関して興味ある現象を示す。本研,究では,その溶解機構を速度論的に考察し,変旋光速度定数との関係,および速度を表わすに必要なパラメーターを明らかにした。そしてα-D-ンルコース飽湘後のD-グルコースの溶解遠度理論式を導いた。この式からいままで測定されていなかったα-D-グルコースの溶解度が明確にされた。理論式の正当性は結晶グルコースの溶解実験によって確かめた。またα-D-グルコースの溶解度も溶解実験によって求めた。考察の結果得られた理論式をつぎに示す。Tゼ時間fにおける全D-グルコース濃度,κ:直線化した相互溶解度曲線の勾配,β。;平衡点におけるβ。D7グルコースの溶解度,ゐ:年方向の変旋光速廉定数,海:潭方薗の変旋光速度定凱う:直線でヒした相互溶解度曲線の切片。
著者
原田 久志 太田 誠 林 泰宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.8, pp.1229-1231, 1988-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

A methanol fuel cell combined with a photocatalytic reaction apparatus is proposed. This new type cell works as a methanol fuel cell in the dark and as a hydrogen-oxygen fuel cell under illumination. Methanol is reformed into hydrogen by the photocatalytic reaction using Pt/TiO2, and evolved hydrogen is provided for the anode of the fuel cell. The performa nce of this cell under illumination is better than that of the methanol fuel cell.
著者
森川 尚 安達 千波矢 筒井 哲夫 斎藤 省吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.962-967, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
3 32

種々のフタロシアニン(Pc)とベリレン誘導体(PTC)を用いて,(ITO(インジウム-スズ酸化物)/PTC/Pc/Au)構造の素子を作製した。これらの素子はすぺて遮光状態において・.Au電極に正電圧を印加したとき順方向となる整流性を示し,光照尉によってAu側が陽極になる光起電力を示した。短絡光電流は光量に対してほぼ比例して増加し,解放端光起電力の大きさは光量の対数に対して比例して増加した。また,これらの素子は光電流の波長依存性に,組み合わせたPTCとPcの吸収特性の違いによると思われる差が生じた。この光電流スペクトルの結果から,PTCおよびPcの両方で光電変換が行われていると考えられる。また,組み合わせたPc・PTCの種類によって・光電変換効率の大きさに明確な差が現れた。
著者
田村 類 高橋 弘樹 生塩 孝則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.2, pp.71-82, 2001 (Released:2004-02-20)
参考文献数
31

有機ラセミ結晶の新しい自然光学分割現象を見いだし,これを優先富化現象と命名した.ラセミ結晶が優先富化現象を示すための必要条件を明らかにし,その機構を解明することを目的として,優先富化現象を示す化合物の誘導体や類縁体を合成し,これらの化合物の分子 · 結晶構造と優先富化現象の相関関係,これらのラセミ結晶の形態(ラセミ化合物,ラセミ混合物,ラセミ混晶の別)について系統的な研究を行った.その結果,X線結晶構造解析と融点相図の作成により,優先富化現象を示す化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の高いラセミ化合物型の鏡像体間の混晶,あるいは中程度の秩序を持つ鏡像体間の混晶であることが判明した.一方,優先富化現象を示さない化合物のラセミ結晶の形態は,きわめて秩序の低い鏡像体間の混晶であることが示された.また,溶液中での鏡像体の会合構造を保持したまま結晶化したと考えられる結晶構造を得ることができたので,この構造を基にして,優先富化現象と密接に関連する結晶多形転移の機構を提唱する.
著者
石川 徳久 杉谷 広元 李 明杰 松下 寛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.6, pp.399-404, 0001-01-01 (Released:2001-08-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

試料溶液のイオン強度調整を必要としない標準液添加法と沈殿反応を利用した陰イオン(または陽イオン)の間接電位差定量を提示する。濃度cxの測定陰イオンBを含む体積Vの試料溶液に,既知濃度crの沈殿剤陽イオンAを含む溶液(反応液)の一定量(Vr)を添加する。このとき,生成した沈殿物の組成をAmBnとすれば,cr≥mcxV/(nVr)の条件を満たす必要がある。この溶液に,Aイオン選択性電極-比較電極対を浸漬したのち,既知濃度cs1のAを含む溶液(標準液1)で滴定し,標準液1の添加体積(vs1)に対する起電力(E1)を測定する(標準液1の最終添加体積をvs10とする)。引き続いて,同一試料溶液をVおよび反応液をVr添加したのち,既知濃度cs2(>cs1)のAを含み,標準液1と同じイオン強度をもつ溶液(標準液2)で再び滴定し,標準液2の添加体積(vs2)に対する起電力(E2)を測定する。この二つの滴定曲線から,vs2=2vs1-vs10を満足するvs1, vs2に対応したE1,E2を読み取れば,Bの濃度cxに関して次式が成立する。y=(ncs1/ncrVr-mcxV)x+gここで,y=10ΔE/S,x=vs1{(cs2/cs1)-y},ΔE=E2-E1, SはAイオン選択性電極の応答勾配,gは定数である。y対xの直線プロットの勾配からcxが決定される。沈殿剤として銀イオンを,指示電極として銀イオン選択性電極を用いて,種々のイオン強度の試料溶液中の1×10-2-5×10-4mol dm-3の濃度範囲のヘキサシアノ鉄(II)酸イオンを,誤差約±1%以下,相対標準偏差1%以下で定量した。
著者
藤井 知 杉江 他曾宏 村長 潔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.5, pp.867-873, 1974-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

硫酸鉄(II)と硫酸クロム(III)混合水溶液に水酸化カリウム溶液を加えて生成した水酸化鉄(II)を空気酸化して析出する四酸化三鉄を乾燥後,真空(10-5Torr)およびH2-H20混合ガス(H20/H2=2)の雰囲気下,200~500℃で加熱処理を行ない,粒子径,表面積および細孔構造(分布,細孔径,全細孔容積)の変化について,X線回折,電子顕微鏡ガス吸着により検討した。その結果,つぎのことが認められた。まず,四酸化三鉄沈殿を生成するさいは,クロム(III)を増加すると四酸化三鉄粒子の成長を抑制し,表面積をいちじるしく増大させた。沈殿物の加熱処理によって,1)四酸化三鉄の粒成長は400℃以上の温度でわずかに起こった。2)加熱にともなって含水量,表面積,細孔構造に変化が起こった。表面積は300℃までの温度で加熱脱水により増加するが,それ以上に加熱するとシンタリソグにより減少した。3)粒子径,表面積,細孔構造の変化は加熱雰囲気にも影響された。
著者
岡本 佳男 毛利 晴彦 中村 雅昭 畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.435-440, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

光学活性なポリ(メタクリル酸トリフェニルメチル)(PTrMA)を3種の異なる方法で大孔径シリカゲルに化学結合させ,高速液体クロマトグラフィー用のキラルな充填剤を調製した。その結果,メタクリル酸トリフェニルメチルとメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルとのブロック共重合体を用いるともっとも多量のPTrMAをシリカゲルに化学結合できることが明らかになった。メタノールを溶離液に用いた場合の種々のラセミ体に対する光学分割能は,従来までのPTrMA担持型充填填剤と類似していた。また,この化学結合型充填剤ではPTrMAが溶解するテトラヒドロフランやクロロホルムといった溶離液も使用可能であった。クロロホルムを溶離液に用いて,(±)-PTrMAを(+)体と(-)体に部分的に光学分割することができた。また,ラジカル重合で得られたポリ(メタクリル酸ジフェニル-2-ピリジルメヂル)も光学分割でき,このポリマーがらせん構造を有していることがわかった。化学結合型充填剤はGPC用の充填剤としての性質も有していた。分子量数千から百万までの単分散ポリスチレンを分析すると,分子量の対数値と溶出時間との間によい直線関係が得られた。
著者
野路 雅英 鷲見 真貴 大森 敬之 水野 まゆみ 鈴木 憲治郎 田代 田鶴子 喜谷 喜徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.675-683, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
4

水に対する溶解度を増加させる目的で1,2-シクロヘキサンジアミン(dach)および2-(アミノメチル)シクロヘキシルアミン(amcha)を担体配位子とする一連の白金(IV)錯体を合成し,これらのマウス白血病L1210に対する制がん性試験を実施した。いずれの錯体も制がん活性であり,またdach自金(IV)錯体の方がamcha白金(IV)錯体よりも制がん効果が高く,かつ前者の錯体ではl-dachを担体配位子とする白金(IV)錯体が他の異性体白金(IV)錯体よりも高い制がん活性を示す傾向にあった。とくに,trans-PtCl2(oxalato)(l-dach),trans-PtCl2(malonato)(l-dach)およびtrans-PtCl2(oxaloto)(dl-trans-amcha)が高い制がん効果を示し,第二次制がん性試験を実施する資格を十分に備えているものと考えている。一般に,白金(IV)錯体は白金(II)錯体と比較して反応性が低いことから,白金(IV)錯体は生体内で白金(II)錯体に還元されてはじめてその制がん活性を発現するとも考えられているので,とくに光,およびアスコルビン酸による還元反応についてHPLCにより検討した。その結果,dach白金(IV)錯体は水溶液中で容易に白金(II)錯体に還元されることを見いだした。