著者
亀岡 弘 三宅 昭雄 平尾子 之吉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1157-1160, 1972

ドクダミの精油成分とその特有の臭気成分を明らかにするため,奈良県に群生するものを採集し,葉茎を水蒸気蒸留して得た精油を中性部,フェノール性部,カルボン酸部の3部にわけて,GLC,IR,NMRなどの機器分析を用いて検索した。その結果,メチルn-ノニルケトンなどの既知5成分の他に今回新たにメチルラウリルスルフィドの他26成分の存在を明らかにした。このドクダミの特有の臭気成分として,メチルn-ノニルケトン,3-ケトデカナール,メチルラウリルスルフィド,脂肪族アル潔-ルの同族体からなると考えられる。
著者
本仲 純子 池田 早苗 田中 信行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.10, pp.1525-1531, 1980
被引用文献数
2

L-アスコルビン酸(ビタミンC),p-(メチルアミノ)フェノール硫酸盧(商品名メトール), ならびにヒドロキノソにヨウ素を反応させ,生じたヨウ化物イオンをヨウ化物イオン選択膜電極と飽和カロメル電極(SCE)を用いて銀電位差滴定することにより,間接的に,これら3種類の有機化合物を微量定量する方法を確立した。まず,基礎的な条件として,試料溶液の安定性,ヨウ素-メタノール溶液添加量の影響,pHめ影響,滴定時の試料溶液温度の影響,有機溶媒の影響,ならびに共存物の影響を検討しメた。また,適当な条件を用いて,定量下限を検討したところ,0.2~44mgのL-アスコルピン酸を1.6%以内の相対誤差と相対標準偏差で, 0.25-35mg のp-(メチルアミノ)フェノール硫酸塩を1.7%以内の誤差と相対標準偏差で, 0.1-23mgのヒドロキノンを0.9%以内の相対誤差と相対標準偏差で定量できることが明らかになった。<BR>最後に,市販薬剤である錠剤ならびに顆粒中のレアスコルビン酸と,4種類の市販ヒドロキノンの定量を行ない,本法と日本薬局方あるいはJISの方法による分析値の比較を行なった。
著者
坪井 正毅 南原 勇 松本 敏夫 村上 文康
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.3, pp.294-298, 1988

脂肪族第一級および第二級アルコール存在下,フェニルヒドラジンの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液中での酸化反応を行なったところ,ベンゼン[1],フェニルアジド[2],ヨードベンゼン[3],アニリン[4],ビフェニル[5],アゾベンゼン[6],アルコールに由来するフェニルヒドラゾン[8]および少量ではあるがフェノール,ジフェニルアミンの生成が認められた。<BR>これ以外に,メタノールならびにエタノールを用いた場合には1-フェニル-1,2,4-トリアゾール誘導体[9],(CH<SUB>3</SUB>)<SUB>2</SUB>CH(CH<SUB>2</SUB>)<SUB>n</SUB>OH(n=1~3)型のアルコールを用いた場合には薪規化合物である第三級炭素上でのフェニルアゾ置換アルコール[10]が得られた。<BR>[9]の生成経路を明らかにするため,エタノールのかわりにアセトアルデヒド=フェニルヒドラゾン[8b]を用いてアルコールの場合と同様の実験を行なったところ,3,5-ジメチル-1-フェニル-1,2,4-トリアゾール[9b]の生成が確認された。さらに[8b]をメタノール中で過酸化ベンゾイルと反応させたところ,アニリン[4]と[9b]が生成していることが認められた.したがって,[9]は用いたアルコールから生成したフェニルヒドラゾン[8]の環化二量化とそれにつづく水素原子およびアニリンの脱離により生成したものと推定した。<BR>アルコールのα-水素が特異的に引き抜かれることはよく知られているが,本反応条件下で[10]のようにα-位以外の水素引き抜きによるフェニルアゾ置換アルコールが確認されたのは非常に興味深い。
著者
浜田 祐次 佐野 健志 藤田 政行 藤井 孝則 西尾 佳高 柴田 賢一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.7, pp.879-883, 1993
被引用文献数
3

二座配位子(N-salicylidenealkylamine),あるいは四座配位子(N,N'-disalicylidenealkanediamine)を用いて,亜鉛イオンと配位子が1対2,および1対1のアゾメチン亜鉛錯体を新しく合成して,有機エレクトロルミネヅセンス(EL)繁子の発光材料としての詐価を行った。この中で,1対1錯体である(N,N'-disalicylidene-1,6-hexanediaminato)Z121C(II)を発光層に用いて,二層構造素子[ITO/ホール輸送層/発光層/MgIn]を作製したところ,最高輝度1460cd/m2を示し,錯体系発光材料としては初めて高輝度青色発光(ピーク波長462nm)を得ることができた。同時に,錯体を発光材料に用いるためにはa錯体が昇華性のある分子内錯塩を形成していなければならないことがわかった。
著者
阪口 恵藏 福谷 征史郎 神野 博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.12, pp.2037-2044, 1988-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

メタン-空気同軸拡散火炎の各部の温度および安定化学種の濃度を測定し, その結果を基にして, 25種の化学種の間に82組の素反応を仮定した詳細な化学反応モデルを用いて計算機シミュレーションを行ない, その燃焼反応機講を解析した。火炎基部では, 燃料と空気とが巻き込みによってすみやかに混合し予混合燃焼が生じている。この領域でメタンは CH4→CH3→CH30→HCHO→CHO→CO→CO2 と酸化される。これらの反応は速度が大きく,火炎の温度もすみやかに 1140K にまで上昇し, ここで生成した活性化学種と熱エネルギーとが火炎をノズル口に保持しているものと考えられる。輝炎領域では, 90%以上の燃料は CH4→CH3→C2H4→C2H3→C2H2 と熱分解し, 一旦アセチレンを経由してそののち酸化される。火炎基部において巻き込まれた酸素は, OH ラジカルとなってこの領域でメタンの脱水素反応に消費される。酸素の量を実測値から変化させて化学反応を計算すると, メタンの消費反応の速度が大きな影響を受けるので, 火炎の内部に巻き込まれた空気がメタンの熱分解反応を促進すると考えられる。
著者
田中 清文 松原 義治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1883-1887, 1976
被引用文献数
6

カリオフィレン[1]とクロロ酢酸類(モノ,ジおよびトリクロロ酢酸)の等モル混合物に水を加えるか,あるいは加えないで室温~100℃で2~32時間かきまぜて水和反応を起こさせた。その結果,4種のアルコール類(収率最高75%)が得られ,物理定数,IR,NMRおよびMSの測定結果からそれらは,β-カリオフィレンアルコール(カリオラン-1-オール)[1a],ジヒドロネオクロベン-4β-オール[1b],ジヒドロカリオフィレン-4-オール[1c]およびジヒド揖クロベン-9β-オール[1d]であることを確認した。通常[1a]が主生成物として得られ,特定の条件下その生成比は72%を示した。[1b],[1c]および[1d]は文献未載の新規セスキテルペンアルコールである。
著者
松尾 昭彦 灘谷 和美 中山 充 林 修一
出版者
日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.5, pp.665-670, 1981
被引用文献数
8

苔類に含まれる植物生長阻害活性テルペノイドの研究の一環として,今回マルバハネゴケから4種のセスキテルペノイドが単離され,それらの構造が(+)ニオパリホリエン[1] ,(+)-オバリホリエナロン[2],(+)-オバリホリエナール[3]および(+)-プラギオキリンA[4]と同定された。これらのセスキテルペノイド[1],[2],[3]および[4]はそれぞれ25,250,50および50ppmの濃度でイネ幼苗の生長をほとんど完全に阻止した。その生長阻害効果について詳細な検討を行なった。さらに,生長阻害活性と化学構造の相互関係を研究するために,オバリホリエン[1]から誘導した化合物[5]~[9]の活性試験を行なった。その結果,生長阻害活性はアセチルヘミアセタール部位に依存していることが指示された。α-メチレン-δ-ラクトン[9]は天然産阻害物質[1],[3]および[4]の活性とほとんど同じくらいの活性を有していた。しかしながら,ケトン[2]とγ-ラクトン[8]は低濃度において根の生長を促進した。
著者
山本 憲子 中塚 えりか 白井 恒雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.8, pp.1226-1230, 1983-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2

大気中のアンモニア定量法として,インドフェノール吸光光度法をとりあげ,分析感度および再現性の向上を目的として,最適諸条件を決めた。とくに,発色液の最適pHについて検討を行ない,リン酸緩衝液を用いてpH10.5~11.7に調節することにより,感度および精度ともすぐれたものとなり,大気中アンモニアの測定に適用が可能となった。また,発色温度を通常の室温から40~50℃に上げることにより,発色時間は90分間から30分間となり,分析操作も迅速化された。大気捕集法としてインピンジャー法について検討を加え,大気中濃度レベル(1.0~15.0ppb)においても,インピンジャー2本を用いれば再現性のよい90%以上の捕集効率が得られることが確認された。本法により,横浜市において20箇月間測定をつづけた。アンモニア濃度は夏期には10ppb以上となり,一方,冬期には1~2ppbとほぼ一定した低い値を示した。すなわち,季節によるアンモニア濃度の変動は気温の変化とほぼ同様の動きを示し,このことからもアンモニアはおもに土壌から発生していると思われる。
著者
藤郷 森 田中 甫 高嵜 裕圭 遠藤 敦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.11, pp.1949-1956, 1989
被引用文献数
1

従来,著者らは鹿沼軽石層から分離分級した非晶質講料が広い比表面積を有することに注目し,化学工業用材料としての活用をはかる目的で検討して来ている。今回,+15μmの粒子径を有する非晶質試料の粒表面および構造特性を明らかにする目的で,0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いるHashimoto-Jacksan法に準じた方法で化学処理し,化学処理した試料は電荷およびイオン径を異にする三種の吸着質を用いる液相吸着法によって,表面特性の変化を検討した。<BR>非晶質試料は団粒構造を形成しているが,化学処理することによって表面特性を異にする最低,二つの部分,すなわち陰イオン類の吸着能に富む粒子表面層と陽イオン類の吸着能に富む粒子内部層とから構成される。粒子表面層は細孔径め細かいアルミニウ4を基質とする物質から構成され,この物質は粒子全体を被羅した状態で団粒構造を支えた状態で存在する。一方,粒子内部層曝メテレンブルーのような大きなイオンをも吸着することから比較的太い細孔を有すること,さらに少量の造岩鋤類を含むことが明らかとなった。吸着質の電荷から判断して,水溶液中では,粒子表面層は正に,粒子内部層は負にそれぞれ帯電しているものと考えられる。<BR>さらに,特性を異にする吸着質を用いる液相吸着法は,非晶質試料などX線粉末回折法などの適用困難な試料の特性変化を解析する手段として有効であることが明らかとなった。
著者
佐々木 和夫 九内 淳堯 妹尾 菊雄 河野 之伴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.6, pp.966-973, 1980-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19

溶融炭酸塩を反応媒体に用い,二酸化炭素と炭素から一酸化炭素を生成する反応を700℃付近で行なわせることを試みた。それにさき立って数種の炭酸塩と炭素との反応を試みたところ,いずれの塩でも同温度での単純な固/気反応よりはるかに速い速度で一酸化炭素発生がみられた。反応はM2CO3+C=M2O+2COと考えられるが,この反応は熱力学的には自発反応ではない。しかし.炭酸塩そのものの熱分解が既往の熱化学値以上に進行するので,熱分解で生じた二酸化炭素が一酸化炭素に転化する経路をとるものと考えられる。 三元アルカリ金属炭酸塩の融体中に底部から二酸化炭素を供給し融体中に分散している炭素粒と反応させることにより気体二酸化炭素からの連続転化実験も行なった。容易に定常状態が得られるので,単純な速度解析が可能であり,擬一次速度定数を決めることができた。本報の結果は,実用反応としてまだ不十分であるが改善の可能性が大きい。
著者
大庭 有二 小門 宏 井上 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.7, pp.1209-1212, 1974

さきにも報告のした陽極の還元力を酸化亜鉛の光電導により制御して,電解反応により画像形成を行なわす電概論電子写真法り塩化ニッケル,塩化アンモニウム,チオ硫酸ナトリウムからなる現像液は,中性付近でもっとも高いニッケル析出濃度を示し,酸性側ほどニッケル析出効率が下がった。約pH 6以下では現像液が疲労しやすく,この原因は,申性以上で生成するニッケルアンミン錯体が電解反応に関与するためと推定した。ニッケル析出反応の促進剤であるチオ硫酸ナトリウムは,10-s mol/1までニッケル析出反応を増加させる作用に寄与したが,それ以上の濃度では,アルミニウム基板とニッケルイオンの直接反応を増加させる原因となった。これらの現像液中で測定した酸化亜鉛と接触したアルミニウム基板の電位は主としてアルミニウムとアルミニウムイオンの平衡と,アルミニウムイオンと塩化物イオンの平衡関係によりなり立ち,塩化物イオン濃度の関数であると推定した。この電位の安定性は,アルミニウムと遊離ニッケルイオン(アクア錯体イオン)との直接反応による電荷消費が原因と考えられ,遊離のニッケルイオンの減少により電位は安定化した。
著者
太田 道也 大谷 杉郎 飯塚 晋司 沢田 剛 小島 昭
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.6, pp.975-980, 1988

さきに報告した, ピレン, フェチントレン混合物を原料とし, ベンゼンジメタノールのジメチル置換体 (DM) を橋かけ剤とする COPNA 樹脂を用いて, 最高 2500℃ まで加熱し, 炭素化処理した。そのさいの樹脂の構造変化を調べ, DM 系樹脂の炭素化機構を PXG 系の場合と比較検討した。合成した DM 系樹脂は 120℃ で20時間硬化したのち, 200℃ で1時間後硬化し, これを炭素化の出発原料とした。加熱処理は, 窒素気流中で 1400℃ までは 5℃/minの昇温速度で, 1400 から 2500℃ までは 20℃/min で行なった。<BR>DM 系は PXG 系と異なり, 450℃ で完全に液化した。そして, この液相状態がみられる温度域では, 樹脂中に光学的に異方性を示す液晶部分, いわゆるメソフェーズが観察された。2500℃ までの各温度で加熱処理した樹脂炭の文線回折測定の結果, DM 系は典型的な易黒鉛化性挙動 (2500℃ 処理において, d<SUB>(002)</SUB>=0.336nm, Lc=33nm) を示すことがわかった。
著者
八木 修 清水 駿平
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, pp.74-78, 1995-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

塩化物イオソを含まない,高純度な水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を合成した.オートクレープを用いトリメチルアミンと炭酸ジメチルをメタノール中で反応させ,炭酸テトラメチルアンモニウムメチルを得た.この場合,トリメチルアミンと炭酸ジメチルとのモル比を2としたが,炭酸塩は得られず,1対1付加物である炭酸メチル塩が得られた.この炭酸メチル塩を加水分解し,炭酸水素塩を得た.更にこの炭酸水素塩を,陽イオン交換膜を配した電解層を用いて電気分解し,目的の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を効率良く得た.炭酸水素塩を電気分解した場合,他の塩類,例えばギ酸硫酸,塩化物を電気分解した場合と比べて,電流効率の低下という現象は見られず,効率良く電解生成物が得られた.このような電流効率が良い理由として,炭酸水素塩の場合,他の塩類と異なり,陽極液中に酸性物質が蓄積されないためである,と推察した.このようにして得られた水溶液中の金属イオン濃度は,すべて10ppb以下であった.また,炭酸塩の濃度は10ppm以下であった.
著者
原田 明 蒲池 幹治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.7, pp.587-595, 1994
被引用文献数
1

近年,低分子化合物の分子認識について多くの研究がなされているが,生体系においては高分子による高分子の認識が生命を維持していく上で重要な役割を果たしている。著者らはホスト-ゲスト系による高分子の認識と高分子の認識に伴う超分子構造の構築について検討した。従来,シクロデキストリンの包接に関する研究は低分子化合物の研究に限られていたが,著者らはシクロデキストリンが種々のポリマーを取り込み包接化合物を形成することを見いだした。本報告ではシクロデキストリンと種々の非イオン性の水溶性ポリマーや疎水性のポリマーとの錯体形成について検討した結果を報告したい。特にシクロデキストリンはポリマーの構造や分子量を厳密に認識し,超分子構造を形成する。これらの超分子の構築方法や構造,性質や機能について検討した。またこれらの超分子構造を利用した鋳型反応による新規な化合物,ポリロタクサンの合成方法についてものべる。
著者
白岩 正 谷口 省三 井川 明彦 樫間 裕司 黒川 秀基
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.11, pp.1617-1622, 1983

(±)-α-メチルベンジルアミンの有機酸塩のラセミ体構造を調べ,優先晶出法による光学分割の可能性について検討した。塩形成に用いた有機酸は,ベンゼンスルホン酸(BS),p-メチルベソゼンスルホン酸(MBS),p-エチルベンゼンスルホン酸(EBS),スルファニル酸(SU),p-t-ブチル安息香酸(TBB),フェノキシ酢酸(PA),イソ吉草酸(IVA),ビバル酸(PI),メタクリル酸(MC)および2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(HMP)である。これらの有機酸塩のラセミ体と光学活性体の融点,溶解度および赤外吸収スペクトルの比較によってラセミ体構造を調べた。しかし,これらの方法では(±)-TBB塩のみがラセミ混合物であることが推定できただけで,その他の塩のラセミ体構造を推定することは困難であった。そこで,ラセミ体と光学活性体の融解エンタルピー(ΔHf)を比較し,さらにラセミ化合物の生成自由エネルギー(ΔGφ)を求めた。BS,MBS,EBS,SU,PA,MCおよびHMP塩においてはΔHf(±)>ΔHf(-)になったが,IVAならびにPI塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になった。しかし,これらの塩のΔGφ はすべて負の値を示したことから,その(±)-塩はいずれもラセミ化合物を形成していることがわかった。とくに,PI塩のΔGφ の絶対値はその他の塩のそれらにくらべてきわめて小さいので,(±)-PI塩は安定性の乏しいラセミ化合物であると推定されるTBB塩ではΔHf(±)<ΔHf(-)になり,ΔGφ の値も正の値を示したので,そのラセミ体はラセミ混合物であることが確認された。なお,以上の(±)一塩のラセミ体構造は,融点の二成分系状態図からも確認した。以上の結果から,(±)-TBB塩がラセミ混合物であることがわかったので,テトラヒドロフラン中,20℃で優先晶出法によって光学分割した。その結果,90%以上の光学純度の(-)-TBB塩を分割することができた。
著者
森永 直樹 内ヶ島 美岐子 Mohammad Abdur RAHIM 大西 一聡 高橋 和文 小杉 善雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.467-469, 2002 (Released:2004-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

The carboxylation of m-aminophenol with potassium hydrogencarbonate in aqueous solutions has been studied kinetically. The formation of 4-hydroxyanthranilic acid (4HAA) has been found for the first time in the carboxylation of m-aminophenol which gives only p-aminosalicylic acid (pAS) in the usual Kolbe-Schmitt reaction. Since 4HAA was easily decarboxylated, the product was removed from the reaction mixture after the carboxylation for 1 h at 60 °C. This method was repeated three times and 4HAA was obtained as a major product in 30.2% yield.
著者
奈良 賢一 渭東 祥高 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.12, pp.2449-2451, 1974
被引用文献数
1

1-Amino-7-naphthol and 3, 5-xylidine were prepared by amination of potassium 2-naphthol8-sulfonate and m-xylene-5-sulfonate, respectively.<BR>Potassium 2-naphthol-8-sulfonate was allowed to react with sodium amide in liquid ammonia at 160&deg;C for 16 hours to give 1-amino-7-naphthol in a 84.5% yield, whereas sodium 2-naphthol6-sulfonate did not undergo the amination under these conditions.3, 5-Xylidine was obtained by the amination of potassium m-xylene-5-sulfonate at 155&deg;C for 9 hours in a 82.7% yield.
著者
平島 恒亮 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.7, pp.1223-1227, 1975-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

排水,廃棄物問題と関連して芳香族ニトロ化合物の還元法を研究した結果,ヒドラジンを還元剤とし触媒に遷移金属(とくに鉄)塩と活性炭との組み合わせを用いると高純度のアミノ化合物が高収率で得られることを見いだした。本還元法によるとヒドラジン水和物還元に通常用いられるPd-C,Pt℃,Raneyニッケルなどの触媒の使用にともなう種々の欠点が除去でき,その上後処理も簡単で廃棄物をほとんど排出するおそれがない。得られるアミノ化合物の純度は非常に高く,ほとんど再結晶を必要とせず,収率も多くの場合80~99%であった。この還元反1芯は次式で示せる。反応中間体としてヒドロキシルアミン(RNHOH)を検出した。
著者
永瀬 茂 小林 郁 工藤 貴子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.3, pp.177-184, 1994-03-10
参考文献数
40

ゲルマニウムを骨格にもつ芳香族化合物,多面体化合物,ラジカルカチオンの特性をab initio分子軌道計算を用いて理論的に研究した.具体的には,(1)ベンゼンと多環式芳香族化合物のナフタレン,アントラセン,ナフタセンおよびペンタセンの骨格炭素をすべてゲルマニウムで置換したときの構造と電子的特性,(2)ゲルマニウムを骨格にもつテトラヘドラン,[n]プリズマン(n=3-10),ドデカヘドランなどの多面体化合物の歪みエネルギー(3)シクロトリゲルマン,ビシクロ[1.1.0]テトラゲルマン,ペンタゲルマ[1.1.1]プロペランおよびヘテロ原子置換体のイオン化による興味深い構造変化を明らかにした.ゲルマニウム骨格の特性を系統的に明らかにするために,対応する炭素,ケイ素,スズおよび鉛化合物とそのラジカルカチオンの同様な計算結果とも比較した.これらより,ゲルマニウムに特有な興味深い物性と新規な構造をいくつか予測した.
著者
櫻井 英樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.5, pp.439-450, 1990
被引用文献数
1

ペルシリル置換π電子系化合物についての最近の著者らの研究を総合的に報告する。ここでのπ電子系化合物としてはアセチレソ,エチレン,アレン,ブタトリエン,トリメチレソメタン,メチレンシクプロペン,シクロブタジェン,フルベン,ベンゼンおよびベンゼンの原子価異性体である。これらのロ化合物の若干の遷移金属錯体についても述べた。シリル基は電子的および立体的に,π 電子系に強い摂動を与えるので,時として異常とも思えるような興味深い性質を示す事がある。例えばテトラキス(トリメチルシリル)エチレンやヘキサキス(トリメチルシリル)ベンゼンは可逆的なサーモクロミズムを示すし,後者は容易に相当するDewarベンゼンやプリズマンへの原子価異性を起こす。ピスシリル置換アセチレソの遷移金属錯体上での容易な1,2-シリル転位も特筆すべきもので,その結果,フルベンやトリメチレンメタン0或いはメチレンシクロプロペンの遷移金属錯体が得られた。特にメチレンシクロプロペン錯体はこれまでに得られていないものである。以上の新規化合物のX線結晶解析による構造解析は興味ある結果をもたらした。これらについて詳述する。