著者
亀沢 誠 小原 和子 橘 芳純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.1, pp.138-140, 1985
被引用文献数
2

It has previously been reported that 7, 7'-dihydroxy-4, 4'-dimethyl-3, 4-dihydro-4, 6'-bicoumarin C 4 J was obtained from the reaction of resorcinol [1] J with methyl acetoacetate [2]. The reaction of [5], diacetate of [4] with aluminum chloride has no w been studied.<BR>The products were found to be 2, 4-diacetylresorcinol [6], 4, 6-diacetylresorcinol [7], 2, 4, 6-triacetylresorcinol [8] and 4, 6-dimethyl-2 H, 8 H-benzo [1, 2-b : 5, 4-b'] dipyran-2, 8-dione mainly on the spectroscopic evidence. Expected Fries reaction products of [5] [9] were not obtained.<BR>The plausible mechanism for the formation of [6]&sim;[9] is discussed briefly (Scheme 3).
著者
松原 凱男 山田 茂治 吉原 正邦 前嶋 俊壽
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1312-1316, 1987
被引用文献数
4

4-phenylr4H-1,3,4-thiadiazin-5(6H)-one[1]および5,6-dihydro-4-pheny1-4H-1,3,4-thiadiazin-5-o1[2]の<SUP>1</SUP>H-NMR,<SUP>13</SUP>C-NMR,IRおよびUVスペクトルの結果,ならびに拡張.Huckelも分子軌道計算を行ない,結合次数,電荷分布およびHOMO結合軌道の様子を求めた結果かちそれぞれの共鳴安定構造について検討した。[1]の構造は,硫黄原子から3-位窒素原子へ,また4-位窒素からカルポニル酸素へそれぞれ電荷が偏りその結果,3pπ-2pπ-2pπ 系と2pπ-2pπ-2Pπ 系と2種類の連続し喪共鳴安定構造の存在が示きれた。一方,[2]の構造は,硫黄原子から4-位窒素原子へ電荷が偏りその結果,ブタジエン型3pπ-2pπ-2pπ-2pπ 系の大きな共鳴安定構造の存在が示された。そこでこの共鳴構造の異なりが反応性にどのように影響を与えるかについて検討した。[1]は通常り求核剤,求電子剤およびラジカル試荊とはまったく反応性を示さなかった。しかし[2]は弱酸およびヨウ化メチルなどの求電子剤と容易に反応を起こし,分離困難な多くの生成物を与えた。また[2]はアルコール,アミンおよびチオールなどの求核剤とは触媒なしで容易に反応を起こし,それぞれ対応する置換化合物を与えた。このオキソおよびヒドロキシル置換基の違いだけで反応性がまったく異なった結果は共鳴講造の寄与の違いで説明され,また,[2]と求核剤との反応は,ヒドロキシル酸素と5-位炭素間の切断で生じる5,6-ジヒドロニ4H-1,3,4-チアジアジニウムカ与オン中間体を経由する機構を強く支持した。
著者
藤永 太一郎 桑本 融 尾崎 豊子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1852-1855, 1976
被引用文献数
2

N,N'-ビス(o-ヒドロキシフェニル)エチレンジィミン(HPEI=H<sub>2</sub>hpei)がウランと反応して生成する錯体を種々の条件下において検討した。水溶液中で生成するhpei-U錯体は波長565nmに最大吸収をもち,連続変化法で求めた組成比はhpei:U=1:1であった。しかし,第四級アモニウム塩であるゼブィラミンの多量存在下ではレッドシフトし,最大吸収は645nlnに移るるゼフィラミン添加によってとくに吸光度が増大するわけではないが,錯体の組成比は変化し,hpei:U=2:1となる。1:1の組成比を有する錯体は,通常の有機溶媒には抽出されないが,2:1錯体は1,1,22-テトラクロロエタン(TCE),1,2-ジク誓ロエタンなど有機溶媒に抽出される。モル吸光係数はTCE中で1.41x10<sup>4</sup>,水中で1.44x10<sup>4</sup>であった。抽出法によるウランの分光光度定量では0~50μg,水溶液中の定量では0~120μgの間のウランについてBeerの法則が成立する。
著者
尾中 証
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.2, pp.255-259, 1974
被引用文献数
3

(CHs)sGe,-Mn(CO)5の赤外吸収スペクトル(2200~60 cm-1)を測定し,この分子とH3Ge-Mne(CO)5, H3Si-Mn(CO)5の基準振動の解析をUrey-Bredley型の力場を用いて行なった。このシリーズの化合物のWb金属原子とMnとの間のπ結合性は類似のハロゲン化合物よりも弱いことがK(MMn), K(Mn-C), K(C-O)の力の定数の組からわかった。これまで基準振動の解析の行なわれた類似化合物のこれら三つの力の定数をC13Sn-M無(CO)5のそれと比較した。各化合物のK(M-Mn)とClgSn-Mn(CO)9のそれとの差をK(Mn-C)の差に対してプロヅトすると,(1)金属原子間のπ-結合性の強さ,(2)金属-金属相互作用の強さが構成金属原子と無関係e= Nb金属原子に結合している配位子によって制御されてしまうことが明らかとなった。
著者
青島 淳 山口 辰男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.5, pp.641-649, 1986
被引用文献数
3

高濃度溶液中の還元12-モリブドリン酸(PMo<SUB>12</SUB>)の溶存化学種とそれらの反応を, <SUP>31</SUP>P-NMRとポーラログラフィーを用いて検討した。還元度が4以下のPMo<SUB>12</SUB>の<SUP>31</SUP>P-NMRの化学シフトは, 50%ジオキサン水中で, α-PMo<SUB>12</SUB>(0):-3.6ppm, β-PMo<SUB>12</SUB>(0):-3.3ppm, α-PMo<SUB>12</SUB>(II):-5.8ppm, β-PMo<SUB>12</SUB>(II):-6.6ppm, α-PMo<SUB>12</SUB>(IV):-4.6ppm, β-PMo<SUB>12</SUB>(IV):-12.9ppmと帰属した。非還元水溶液中でβ-PMo<SUB>12</SUB>(0)のα-PMo<SUB>12</SUB>(0)への異性化はきわめて速く, 50%ジオキサン水中でβ-PMo<SUB>12</SUB>(0)の存在を<SUP>31</SUP>P-NMRで確認した。α-PMo<SUB>12</SUB>(0)の=二電子還元生成物は, 50%ジオキサン水中ではα-PMo<SUB>12</SUB>(II), 水溶液中では,α-PMo<SUB>12</SUB>(0), β-PMo<SUB>12</SUB>(II),β-PMo<SUB>12</SUB>(IV)の混合物となった。<BR>水溶液中で, α-PMo<SUB>12</SUB>(II)はβ-PMo<SUB>12</SUB>(II)に異性化し, っついてβ-PMo<SUB>12</SUB>(IV)とβ-PMo<SUB>12</SUB>(0)に不均化し, 後者は, ただちにα-PMo<SUB>12</SUB>(0)に異性化したものと考えられる。四電子還元溶液中は,β-PMo<SUB>12</SUB>(IV)のみが安定に存在した。α-PMo<SUB>12</SUB>(IV)は, 半減期が2.2時間(水中), 280時間(50%ジオキサン水中)でβ-PMo<SUB>12</SUB>(IV)に異性化する。α-PMo<SUB>12</SUB>(0)からβ-PMo<SUB>12</SUB>(IV)への還元に, α-PMo<SUB>12</SUB>(IV)を経由するものと, α-PMo<SUB>12</SUB>(II)の異性化によって生成したβ-PMo<SUB>12</SUB>(II)の不均化による二つの経路がある。水溶液中, 弱還元剤の作用は後者によることを明らかにした。
著者
玉利 信幸 加藤 昭夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.5, pp.650-655, 1977-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
20
被引用文献数
4

ZrCl4-H2-CH,系からの炭化ジルコニウム(ZrC)の結晶成長を900~1500℃で行ない,反応条件が結晶の成長速度および形態におよぼす影響を調べた。そして,つぎの結果を得た。黒鉛基板上ではコーティングしか得られなかった。ムライト管上では約1000℃からコーティングが生じ,1200。C以上でo.5~30μの径をもつウィスか-の成長が認められた。ウィスカー成長には[zrC嬉/こCH4]比が1近くがよい。ウィスカーの成長速度は四壌化ジルコニウムおよびメタン濃度に対して極大を示した。また,成長速度は水素濃度の減少とともに減少した。実測された軸方向の最大成長速度は~3,8×10-scm/secで,半径方向の成長速度は軸方向の約1/700であった。炭化ジルコニウムウィスカーは正方形の断面をもち,その成長方向は[100]方向で,側面は{110}面であった。
著者
田中 幹夫 永 井俊 三木 瑛一 水町 邦彦 石森 達二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1979, no.8, pp.1112-1114, 1979

Bis (2, 2'-bipyridine)- and bis (1, 10-phenanthroline)carbonatoruthenium (II) complexes were syn-thesized by refluxing the corresponding dichloro complex in water with traces of formic acid, and passing the solution through an anion exchange column of carbonate form in order to remove chloride ions and to form the desired complex. Both complexes were dark violet, and diamagnetic. Electronic spectra of the complexes in dichloromethane and absorption curves of their crystalline powders were measured. The complexes were found to be nonelectrolytes in dichloromethane. The IR data indicated that the carbonato group in the complexes is coordinated to a ruthenium as a bidentate ligand.
著者
三木 康朗 杉本 義一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.5, pp.697-703, 1983-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
39
被引用文献数
1

アントラセン油に含まれる縮合多環芳香族炭化水素,フェノール類および窒素化合物を,溶融シリカ毛管カラムを備えたガスクロマトグラフおよびGC-MSを用いて分析した。フェナントレン,ピレン,ジベンゾフラン,カルバゾール,ヒドゴキシビフェニル,ナフトールなどをアルキル化,フェニル化,あるいは水素化しておよそ500種類の化合物を含む種々の混合試料を合成した。一方,アントラセン油は精密蒸留により40留分に分励して各留分ごとにクロマトグラムを得その各ピークについてカラムの保持時間,分子量および質量スペクトルの分布を標準試料と比較して同定した。アソトラセン油からさらに極性成分および酸性成分を抽出し,前者から窒素化合物を,後者からフェノール類を分析した。分析にはHewlett-Packard社の5880Aガスクロマトグラフおよび5992A四極子型GC-MSを用いた。芳香族および窒素化合物の分析にはSP-2100カラムを用い,フェノール類の分析にはOV-1カラムを用いた。また窒素化合物の分析にはFID検出器とNP検出器を併用した。カラム温度の3段階の昇温プログラム(35℃,25min;5℃/min;100℃,5min;3℃/min;150℃,3min;2.5℃/min;260℃,50min)により全成分を同時に分析した。
著者
増田 嘉孝 塩見 康 三角 省三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.9, pp.1645-1648, 1974
被引用文献数
4

トリス(1,2-ジチオナト)クロム(III)錯体を合成し,錯体の組成を元素分析から,配位子の結合の性質を赤外吸収スペクトル,電子スペクトルの解析,ポーラログラフィーによって電荷移動反応を検討した。,元素分析値から得た錯体の組成はCr(S<sub>2</sub>C<sub>2C</sub>(C6H<sub>5</sub>)2)3である。この錯体の合成法は本文に記述する。赤外吸収スペクトルの結果はC=Sの伸縮振動がクロム(III)錯体では1165と1O<sup>2-</sup>0cm営1に示され,また摂動によるM-S伸縮振動が420,355cm<sup>-1</sup>に示された。磁化率の測定はクPム(0)錯体が反磁牲であることを示す。ポーラPtグラフィ,-には白金回転電極(直径1mm,回転数600rpm),アセトニトリルージクロロメタン混合溶媒(1:1),支持…壇(C<sub>2C</sub>H<sub>5</sub>)4NCIO,を用いた。得たポーラログラムは良好で,可逆性-電子還元で,その電極反応はである。電荷移動錯体と考えられ,電子スペクトルの結果もそれを示す。
著者
森上 和哲 田中 茂 橋本 芳一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.1, pp.98-104, 1993
被引用文献数
3

1991年7月-9月にかけて,日本から中東ペルシャ湾までのタンカー航路上において海洋大気中ギ酸および酢酸濃度を測定し,ギ酸および酢酸の海洋における濃度分布およびその挙動について検討を行った。海洋大気中のギ酸濃度は平均1.18ppbv,酢酸濃度は平均0.60ppbvであり,ギ酸濃度が常に酢酸濃度より高かった。ギ酸および酢酸ともに,日中濃度が高く,夜間濃度が低くなるという濃度変化を示した。海洋大気中のギ酸および酢酸の発生源としては,対流圏あるいは陸上からの輸送の影響が大きいことが推測された。ギ酸および酢酸の除去機構としては,OHによる気相分解よりも乾性沈着の方が寄与が大きかった。海表面におけるギ酸および酢酸のフラックスを他のガスと比較したところ,一酸化炭素とほぼ同じレベルとなり,炭素循環においてギ酸および酢酸は重要な役割を果たしている。またギ酸および酢酸は大気中から海表面に取り込まれ,海洋における重要な炭素供給源であると言える。
著者
橋本 静信 小池 和太郎 岡畑 恵雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.6, pp.1139-1143, 1973-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

アセトニトリルを溶媒にして80℃で,CuCl2の存在または不存在下で過酸化2-テノイルとヨードベンゼンとの反応を行なった。CuCl2の存在下ではヨードペソゼンの水素が置換されてヨードフェニル2-テノアート(o-:m-:p-=55:19:26)が得られ,一方,CuCl2が存在しないときはC-I結合の炭素に置換が起こりフェニル2-テノアートが生成した。CuCl2の存在下で起こる水素置換反応は,部分速度比の対数と置換基定数σ+との関係からみて,生成した2-テノイルオキシラジカルがベンゼン環に付加したシクロヘキサジエニル型ラジカルがCuCl2により酸化される機構で説明される。一方,CuCl2の不存在下ではシクロヘキサジエニル型ラジカルの分子内で2-テノイルオキシ基が転位することによりフェニル2-テノアートが生成する機構を提出した。この2-テノイルオキシ基の分子内転位については,さらにt-ブチル2-テノアートからイソブチル2-テノアートへのラジカル転位を行なって,その関連性からも検討した。
著者
佐藤 元泰 三井 利幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.4, pp.349-354, 1993-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

ニトラゼパムおよびジアゼパムをガスクβマトグラフ質量分析計(GC1MS)で測定後,得られた複数のフラグメントイオンのイオン強度を用いて,多変量解析法によりそれぞれの定量を行った。定量計算に使用するニトラゼパム,ジアゼパムおよび内部標準物質として用いたドトリア=ンタン(n-Cs2H66)の複数のフラグメントイオンは,数墨化理論第IV類を用いて抽出した。次に,抽出された複数のフラグメントイオンのイオン強度を基にして,クラスター分析,偏差値からのクラスター分析および主成分分析を行い,未知試料がどの既知試料に最も類似しているかを明らかにした。さらに,主成分分析から得られる主成分得点と固有殖を用いて,正確に未知試料の濃度を決定した。計算されたニトラゼパムおよびジアゼパムの濃度は,理論値とほぼ一致し,精度の高い定量が可能となった。
著者
西山 太一郎 柚木 邦博 本田 孝善 矢沢 久豊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.3, pp.201-206, 1998-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
4

医薬品製造工程は, 粉砕, 混合, 空気輸送など, 粉粒体を取り扱う操作が多く, 静電気に起因する粉粒体の付着, 凝集などの製造トラブルにしばしば遭遇する. このトラブルの原因究明のため, 粉粒体の輸送状態における帯電量と粉体特性の変化を測定評価する帯電特性評緬装置の開発を行った, この評価装置は, 粉粒体を空気輸送によって帯電させ, 経時的に帯電量を測定できるもので, いろいろな物理化学的特性を有する原薬や造粒物質について評価検討を行った.その結果, 空気輸送によって変化する帯電量と粉体特性値から粉粒体のパイプ輸送や回転型混合容器等で発生する帯電, 付着が予想できるようになり, 原薬製造における晶析操作条件の最適化, 粉粒体の取扱い操作ならびにプラソトの安全運転に必要なデータの提供が可能となった.
著者
清水 昌 森川 忠則 新田 一誠 坂本 恵司 和田 浩一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.1, pp.1-9, 2002 (Released:2004-03-03)
参考文献数
34
被引用文献数
1

D-パントラクトン(D-PL)は,B群ビタミンのD-パントテン酸やD-パンテノール,D-パンテテイン,コエンザイムAの合成に重要なキラルビルディングブロックである.D-PLの製造は,これまで,化学的合成法により得たラセミ体混合物をキラルアミンによるジアステレオマー塩生成を含む複雑な光学分割法により行われてきた.D-パントテン酸製造におけるこの光学分割プロセスを回避あるいは改良するため,立体選択的な酵素反応の導入を検討した.すなわち,この目的に利用できる幾つかの反応を微生物に探索し,ラクトン環の2位OH基の立体を認識して分子内エステル結合を不斉加水分解し,DL-PLをD-パント酸とL-PLに分割できる反応がFusarium属および類縁糸状菌に広く分布することを発見した.本反応に関与する新規酵素“ラクトナーゼ”の諸性質を解明するとともに,本酵素を高活性で含むFusarium oxysporumの菌体をアルギン酸カルシウムで包括固定化することによって酵素の安定化と再利用を図り,180回以上の繰り返し使用を可能にした.これにより,常温,中性付近の温和な条件下に,副生物をほとんど伴わず,30–35%のDL-PLをほぼ定量的に分割できる実用的方法が確立された.本酵素的光学分割法は,1999年より3000 t/y規模(D-パントテン酸カルシウム換算)で工業化され,従来法に比し,経済性のみならず環境調和型の点でも優れた生産法であることが明らかとなっている.
著者
島内 功光
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.8, pp.1363-1370, 1982-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

フェノールとアセトンとから濃塩酸または塩化水素存在下でビスフェノールAを合成する方法について種々の検討を行なった。触媒として濃塩酸助触媒として3-メルカプトプロピオン酸を用いてビスフェノールA合成条件を検討し,フェノール/アセトンモル比4,反応温度70℃,反応時間5時間で最高収率を得た。触媒として塩化水素を用いてベンゼンなどの不活性有機溶媒を添加し,これら溶媒が製品の収率におよぼす影響について考察した。その結果,ビスフェノールA溶解度の小さいヘキサン,o-ジクロPtベンゼンを少量添加し低温でそれぞれ82.0%と88.0%の好収率で製品を得た。o-クレゾールとアセトンとから塩化水素存在下で有機溶媒を添加してビスフェノールCを合成し,溶媒の製品
著者
山本 英治 井ノ上 恵照 篠崎 勝彦 矢沢 久豊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.9, pp.654-657, 1997-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

医薬品抗生物質の重要中間体,セファロスポリンCエステルを醗酵法で得られたセファロスポリンCから酢酸エチルを溶媒にして,エステル化を行い,直接,抽出分離を行う反応抽出プロセスの最適化検討を行った.反応抽出溶媒酢酸エチル相の容積分率が大きい(0.33以上)領域では攪拌の影響を受けないが,容積分率が0.17以下になると攪拌の影響が現れ,物質移動が律速となる化学反応であることがわかった.また,スケールアップ条件の最適化に必要な攪拌の反応速度への影響を評価した結果,攪拌浮遊動力比で示されるスケールアップ因子(Z)と容積分率0.17で得られる総括物質移動係数との間に良好な相関性を認め,Zが反応抽出の最適条件のスケールアップ因子として有効であることがわかった.
著者
君塚 信夫 前田 憲 半田 豊和 國武 豊喜
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.5, pp.301-308, 1997

無機原子・分子を集積組織化して,無機ナノ構造を造り上げてゆく無機マニビュレーション技術の開発は,無機精密合成の重要な課題である.近年,従来の物理的無機微細化技術にはない特徴を有する手法として,有機分子集合体を利用する無機ナノ合成が注目されている.本論文では,高い構造秩序性を有する二分子膜キャストフィルムの層間を鋳型とする,低次元金属ハロゲン化物クラスターやシアノ架橋高分子錯体の合成,構造制御について検討した.その結果,イオン交換法,共分散法ならびに逐次合成法により,二次元キャストフィルム層間において無機クラスター・高分子錯体が形成されること,またその次元構造ならびに配向組織化状態が,二分子膜の秩序構造や膜表面における静電的相互作用に依存することを明らかにした.
著者
中川 良三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.4, pp.703-708, 1985-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
8

人為的水銀汚染の実態を解明するためには,まず,自然環境から供給される水銀量を明らかにしなければならない。火山ガスは環境大気中に水銀を供給する発生源の一つである。火山ガスの水銀に関連する基礎資料を得るために,北海道地方の地熱地帯 10 箇所(知床半島羅臼,屈斜路湖畔和琴オワツコツ地獄,川湯アトサヌプリ硫黄山,阿寒湖畔ボッケ,大雪山系高原温泉,旭岳地獄谷,十勝岳安政および新々噴火口,登別温泉地獄谷,昭和新山,恵山)の噴気孔ガス中の水銀含量を調べた。 34 試料の噴気孔ガス中の水銀量は乾きガスあたりで 3.2~1828μg/m3,相乗平均値 54μg/m3 であった。これらの値は,本州および九州地方の噴気孔ガス中の水銀含量の約 6 倍であった。同時に採集した凝縮水中の水銀含量は 0.01~32μg/l の範囲であり,火山性温泉水の水銀含量と同程度か,やや高値であったが,平均して気体として揮散した水銀量の 5 % 以下であった。温泉ガス中の水銀含量は 1.2μg/m3 以下であり,噴気孔ガスにくらべて 1/100 以下の低値であつた。火山活動によつて大気中に放出される水銀量を噴気孔ガス中の水銀含量から試算した結果,北海道地方では大気に関連する水銀の約 4 % が火山ガスの寄与によると推定された。この値は本州および九州地方の噴気孔ガス中の水銀量から試算した値の約 6 倍であった。
著者
千葉 耕司 遠藤 政博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.6, pp.1152-1155, 1973

活性アルミナ触媒の存在下,フェノールとメタノールとからヘキサメチルベンゼンを生ずる反応においてペソタメチルベンゼン,テトラメチルベンゼン類,トリメチルベンゼン類,ポリメチルフェノール類およびポリメチルフェノールのメチルエーテル類が副生した。これらの副反応生成物は原料中のメタノールの割合を減ずるか,もしぐは反応温度を下げるかすると増量した。また,ペソタメチルベンゼンもしくはテトラメチルベンゼンは本反応条件下ではテトラ-もしくはトリ-メチルベンゼンへ転化することなしにヘキサメチルベンゼンへ容易に転化した。フェノールがヘキサメチルベンゼンへ転化する主たる反応径路はつぎのとおりであるものと推察された。<BR>フェノール→2,6-キシレノール→2,4,6-,2,3,6-トリメチルフェノール→2,3,4,6-テトラメチルフェノール→ペンタメチルフェノール→ペソタメチルベンゼン→ヘキサメチルベンゼン
著者
岡崎 進 小又 基彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.9, pp.1615-1621, 1972-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11
被引用文献数
3

金属フッ化物の脱ハロゲン化水素反応に対する触媒活性を比較検討する目的で,CH3CF3の気相連続接触脱フッ化水素反応を行なった。初めに対比として無触媒反応を行なったところ,反応は750℃以上の高温で初めて進行し,一次反応となり,その速度定数はk=1.63 × 1010 exp (-53800/RT)となった。試みた十数種の金属フッ化物中,アルミニウム,鉄,マグネシウムのフッ化物が活性を示し,これらを用いると530℃程度の低温でも十分に反応が進行するようになる。これら活性金属フッ化物はいずれも固体酸性を呈し,不活性金属フッ化物が固体酸性を示さなかったことと対照的である。なお,触媒寿命を考慮する場合,塩基性フッ化アルミニウムはさらに有効な触媒であり,これによる接触反応を解析した結果,その反応は表面反応律速で,活性化エネルギーは28.3kcal/molになった。また吸着熱は12.9kcal/molと算出された。