著者
薄井 耕一 今福 繁久 小野 金一 吉川 貞雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.1, pp.34-41, 1983-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2

感圧複写紙用発色剤として広く用いられているクリスタルバィオレットラクトン(CVL)の溶液中における酸または水による発色および減色ないし消色の挙動をUV,VIS,IR吸収スペクトルおよび1HNMR,13C-NMRの測定により検討した。併わせて類似の構造をもつクリスタルパイオレット(CV),マラカイトグリーン(MG),マラカイトグリーンラクトン(MGL)についても比較検討した。その結果,CVLの発色はラクトンの開環に基づくこと,ラクトンの開いたカルボキシル形ともとのラクトン形との問には酸濃度(強度)によって支配される一種の平衡関係が成立し,ある酸強度のところで,カルボキシル形対ラクトン形の比率が最大値を示し,ここで発色濃度は最大になる。さらに酸濃度が大きくなるとラクトン環が開いたまま減色することが認められた。一方,水によるCVL発色体(カルボキシル形)の減色ないし消色は環が閉じラクトン形にもどるためであることが明らかになった。
著者
秋鹿 研一 小山 建次 山口 寿太郎 尾崎 萃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.3, pp.394-398, 1976
被引用文献数
2

200~300℃,全圧600mmHgの条件でもっとも活性の高いアンモニア合成触媒であるRu-AC(活性炭)-Kと,それについで活性の高いOs-AC-Kの製法と活性の関係を検討した。Kは一定量(約1mmol/9-cat)添加後はじめて活性が現われ,KがACにほぼ飽和吸着すると考えられる量,約 1mmol/g-cat,まで活性は直線的に増加する。RuCl<SUB>3</SUB>-ACの還元のさい,水素は当量の6倍も消費する。過剰の消費水素はACとの反応およびACへのスピルオーバーによると考えられるが,その量は活性に影響しない。還元にさいしHClが発生するが,一部の壇化物イオンは触媒上に残る。<BR>Ru-AC-Kの活性は,Ruの露出表面積に対応すると考えられるRu-ACへのCO化学吸着量にほぼ比例する。Ru塩はRu/ACが約 3wt%まではACによく吸着する。CO化学吸着量も 3wt%まではRu量にほぼ直線的に増加する。しかし3wt%を越えるとRu塩は吸着しにくくなり,Ruの分散性も低下する。Ru(2,3価)またはOs(3,4,6,8価)について酸化数の異なる塩を出発原料とした触媒の間でRuまたはOsの活性は変わらなかった。また活性炭を硝酸,アンモニア水,あるいはその両者により処理した場合も得られるRu触媒のCO化学吸着量に影響なかった。
著者
吉井 善弘 伊東 昭芳 平嶋 恒亮 真 鍋修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.1, pp.70-74, 1985-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

フェノールの硫酸によるスルホン化とヒドロキシフェニルスルホニル化を行ない反応温度と配向比の関係を調べた。その結果,スルホン化では高温になるほど動力学的支配による配向比および熱力学的支配匿よる配向比(o/p比)は減少した。一方,スルホニル化では高温になるほど,動力学的支配による配向比(2,4'/4,4比)は減少するが,熱力学的支配による配向比は増加することが判明した。スルン化,スルホニル化の等運温度ばそれぞれ -24,36℃ であった。これらの結果はスルホン化,スルホニル化はともに, o-位, p-位への反応の等速温度が異常に低く実際的な反応は等速温度より高い条件で行なわれていることおよび o-フェノールスルホン酸が p-異牲体より安定であり,ジヒドロキシジフェニルスルホンでは逆に 4,4'-異性体が 2,4-異性体より安定であることに基因することを明らかにした。
著者
吉野 彰 大塚 健司 中島 孝之 小山 章 中條 聡
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 : 化学と工業化学 = Journal of the Chemical Society of Japan : chemistry and industrial chemistry (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.8, pp.523-534, 2000-08-10
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

携帯電話,ノートパソコン,カムコーダー等の電源として広く用いられているリチウムイオン二次電池の開発経緯と技術動向について述べる。導電性高分子ポリアセチレンの研究がこのリチウムイオン二次電池の開発の原点であった。ポリアセチレンを二次電池の負極に用いようとの試みが炭素質材料負極へと展開し,ほぼ同時期に見いだされた正極材料であるリチウムイオン含有金属酸化物LiCoO<SUB>2</SUB>と組み合わされ,現在のリチウムイオン二次電池が完成した。商品化されて以降の電池特性の改良,特に容量の向上は著しく,現在では商品化当初の約2倍になっている。この容量向上は主として負極炭素質材料の改良により達成されてきた。この背景には&pi;電子化学という新しい学問領域の進歩があり,次々に新しい炭素質材料が開発されてきた。<BR>今後,これらの改良開発によりリチウムイオン二次電池の特性はさらに改善されていくものと思われる。
著者
野崎 文男 市野 正治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.8, pp.1397-1402, 1973-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

1-ブテンの1,3-ブタジエンへの酸化脱水素反応を酸化ウラン系触媒により行ない,U-Sb-0触媒が選択性にすぐれていることを知った。そしてSb1U原子比5付近が最適触媒組成であること,触媒焼成温度としては800~900℃がよいこと,反応速度はブテン分圧に1次酸素分圧に0次として近似的に整理され,反応の見かけ活性化エネルギーは約13 kcal/mo1であることなどがわかった。またSimonsらもすでに指摘していることではあるが, Mo-Bi-O触媒などではブタジエソへの酸化脱水素反応とともにブテンの二重結合移行の異性化反応が下船的に起こるのに,U-Sb-O触媒ではこの異性化反応をまったくともなわないことを確認した。そしてこの特徴的な接触能はU-Sb-O触媒がいわゆる固体酸的な性質をもたないか,または非常に弱いことと関連があるものと考察した。
著者
中川 益生 山本 勲 藤原 宜通 光藤 裕之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.10, pp.1609-1614, 1980-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

n型半導体の表面にアクセプター性の準位があるとき表面の負電荷と同数の正電荷が内部に空間電荷層をつくる。半導体膜厚がこの層の厚さ(Debye長さ)より小さいとき,膜面内電導路は空間電荷ポテンシャル障壁によってピンチオフされる。表面準位の種類と密度の変動は,条件によりDebye長さを増して,ピソチオフを強める場合,あるいはその逆の場合を生ぜしめるユニポーラ・トラソジスター作用をひきおこす。この作用を化学吸着により行なわせ,吸着されるべき分子またはイオンを検出するセソサーを吸着効果トラソジスター(AET)とよぶ。湿雰囲気はAET動作に異常をひきおこす。水のドナー吸着によると考えられる電気抵抗の減少のほかに,湿度と印加電圧それぞれの増加にどもなう異常抵抗増が観灘された。一方,n型半導体膜をカソード,白金をアノードとして,精製水中で1Vの直流電圧を加えて電極反応を生ぜしめたとき,半導体の膜抵抗は,その電気化学処理の前にくらべて増大した。これらを説明するために,水の“電気化学吸着”によるアクセプター生成と,水を吸着した表面上におけるイオン電導路形成の仮説を導入した。
著者
中澤 克仁 片山 恵一 坂村 博康 安井 至
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.1, pp.45-53, 2001 (Released:2004-02-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

PVC(ポリ塩化ビニル)は燃焼によりHCl(塩化水素)を発生するため,焼却炉の腐食や火災時の人的な被害など,さまざまな問題を抱えている. 本研究では,PVC中に混入することでHCl捕捉効果が確認されているCaCO3およびLi2CO3の粒径調整や脂肪酸による凝集防止を行い,単独または複合配合したPVC試料を作製して,熱分解時に発生するHClの捕捉効果を調べた.また,鉄化合物は熱分解を促進することが知られており,粒径処理等を行ったFeO(OH)を混入したPVC試料についても燃焼実験を試みた. その結果,CaCO3またはLi2CO3単独よりも複合配合すること,特にCaCO3 : Li2CO3 = 3 : 1(モル比)の配合比付近でPVC燃焼におけるHCl発生を効果的に捕捉することが認められた.さらに鉄化合物(FeO(OH))を混入したPVC試料のHCl捕捉効果でも,FeO(OH)の混合配合によるHCl捕捉効果の向上を得た.
著者
荻田 堯 八田 博司 西本 清一 鍵谷 勤
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.5, pp.970-975, 1985-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

空気存在下,室温でクロロホルム水溶液にバイコールフィルターを装着した低圧水銀灯の紫外線を照射してもクロロホルムは分解しなかった。この系にH2O2を添加すると,H2O2の光分解によって生成する。OHと反応してクロロホルムは分解し,CO2とHCIを生じた。アルゴン雰囲気においてH2O2水溶液にパイコール透過光を照射すると,H2O2の分解によって生成した,OHからO2を生成した。この系にクロロホルムを添加すると,クロロホルムの添加量とともにO2生成反応の量子収量は減少し,クロロホルム分解反応の量子収量が増大した。また,両反応量子収量の和が一定であったことから,クロロホルム一分子の分解には二分子の・OHが消費されていることが示唆された。プロモジクロロメタン水溶液にH2O2を添加してバイコール透過光を照射すると,H2O2無添加系にくらべて,CO生成量が減少してCO2生成量が増大した。各種トリハロメタン水溶液にH2O2を添加した場合のCOの生成量とCO,生成量の比はトリハロメタンとH2O2に吸収される254nmの光量比に比例した。このことから,・OHとの反応が起こる場合には,トリクロロメタンの塩素を臭素で置換したものもCO2に分解することがわかった。これに関連して,γ 線照射やFenton試薬を用いて含臭素トリハロメタンの反応を調べたところ,COはほとんど生成せず,おもにCO2が生成した。
著者
山本 浩之 岡田 隆 永井 朗 西田 綾子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.10, pp.1771-1773, 1988-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14

Some Trichoptera, so-called net spinning caddis, eject the contents of their silkglands to build a nest for protecting themselves in a rapid stream. The adhesive protein formed by caddis worm Stenopsyche griseipennis McLachlan has been studied to obtain some basic knowledges such as the preparation of fibroin solution, the amino acid analysis, and the bonding strengths on test pieces. The protein was found to have the tensile strengths of the highest 14 kg/cm2 on iron and 7 kg/cm2 on pig bone, and the highest compressive shear strength 12kg/cm2 on iron.A discuss ion is presented that includes results of the bonding strengths of Bombyx mori fibroin.
著者
吉田 稔 小沢 竹二郎 小坂 丈予
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.3, pp.575-583, 1972-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
58

薩摩硫黄島火山の高温噴気孔周辺に青色の火山昇華物が見られる。この鉱物は無定形で変質物上にごく薄く付着しているので常法による同定は困難である。著者らはおもにその化学的性質を検討することにより,本鉱物がモリブデンブルー(M。(V)とMo(斑)の混合水湘酸化物)であることを確認した。一方,低温噴気地帯にはモリブデナイトが見いだされ,X線回折法と化学分析により同定した。日本各地の火山の火山ガスと火山岩のMo含量を求めた。薩摩硫黄島の高温の噴気孔ガスは凝縮水1Z中0.3~7,hngMoを含む。低温のものや他の火山のガスにはMoは検出されなかった。火山岩のMo含量はo.5~3.4μ9/9であった。上記のデータと熱力学計算の結果から,これらの鉱物の生成機構をつぎのように推定した。水酸化物かオキシバ冒ゲン化物として高温の火山ガスにより運ばれたMoが出口での温度低下と酸素分圧の増加によりモリブデンブル_として沈積する。また,雨水に溶けて低温地域に運ばれたモリブデンブルーが硫化水素と反応してモリブデナイトを生じる。
著者
岩島 聰 倉町 三樹 青木 淳治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.6, pp.858-864, 1976-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1

高温タールピッチから抽出したカルバゾールには,結晶格子定数などが類似している微量の不純物が混入している。この不純物を除去するには,109の市販カルパゾールと209の無水マレィン酸および19のクロロァニルを1,2,4-トリクロロベンゼン30ml中で加熱処理後,イソペンチルアルコールと金属ナトリウムによる処理を行ない,さらに昇華,カラムクロマトグラフィー,帯域融解をくり返すことがもっとも効果的であることがわかった。不純物の検出には,蒸着薄膜のケイ光スペクトルおよびケイ光寿命の波長依存性を用いた。高純度カルバゾールのケイ光極大位置は,室温で345,358,370nm,液体窒素温度で345,351,370,392nm付近に観灘される。また,不純物が微量混入している蒸着薄膜試料では,高純度試料で観測された位置のほかに,330nm以下,および400nm以上にもケイ光極大が現われる。一方,ケイ光寿命は,'高純度蒸着薄膜試料では345~417nmで18.1~21.0n・sec(室温)を示し,波長依存性も小さい。また,低純度試料では7.3~22.0n・secを示し,その波長依存性も大きい。
著者
五十田 智丈 溝部 裕司 桑田 繁樹 干鯛 眞信
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.9, pp.493-500, 2001 (Released:2004-02-20)
参考文献数
68
被引用文献数
1

モリブデンおよびタングステンのスルフィド架橋二核錯体[M2S2(μ2–S)2(S2CNEt2)2] (M = Mo,W)と各種貴金属錯体とを反応させることにより,[M′(μ2–S)2M2(μ2–S)2] (M = Mo : M′ = Pt; M = W : M′ = Pd, Pt),[M′(μ3–S)(μ2–S)3M2] (M = Mo, W : M′ = Rh, Ir),および[M′2M2(μ3–S)4] (M = Mo : M′ = Pd; M = Mo, W : M′ = Rh, Ir)骨格を有する一連の三核およびキュバン型四核混合金属クラスターを,それぞれ選択的に合成できることを見いだした.これらの反応においてどの骨格構造が生成するかは,用いる金属の組み合わせ,または導入する金属錯体上の配位子の種類に大きく依存することが判明した.一連の新規なクラスターの構造については,[Pt(PPh3)(μ2–S)2{W(S2CNEt2)}2(μ2–S)2],[{Pd(PPh3)}2{Mo(S2CNEt2)}2(μ3–S)4], [Ir(PPh3)2(μ3–S)(μ2–S)3{W(S2CNEt2)}2(μ2–Cl)],[{Rh(cod)}2{MoCl(S2CNEt2)}2(μ3–S)4] (cod = 1,5-cyclooctadiene),および[(RuCp*)2{MoCl(S2CNEt2)}2(μ3–S)4](Cp* = η5–C5Me5)の単結晶X線解析を行って確認した.
著者
西村 裕章 杉崎 俊夫 守谷 治 影山 俊文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.7, pp.505-510, 2000 (Released:2001-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Several silica gels containing rare earth ions such as neodymium, samarium, or yttrium, which differed in composition, were obtained readily from sodium metasilicate and chlorides of rare earth. The reaction was carried out at room temperature in an aqueous solution, pH value of which was adjusted to be below 1 at first step to generate monomeric silicic acid, and then the solution was neutralized to be pH=7. The spectral data of IR and UV of resulting gels suggested that rare earths dispersed well in silica phase. The TG-DTA analyses of gels showed characteristic exothermic peaks, which related with the formation of crystals of rare earth silicates. The types of crystals, obtained after calcination of gels at the temperature of exothermic peaks, were influenced apparently by the composition of rare earth and silicon.
著者
井上 誠一 小杉 千香子 陸 占国 佐藤 菊正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.1, pp.45-52, 1992-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3

[2,3]シグマトロピ-転位反応によりオリベトールモノアセタートのヒドロキシル基のオルト位にメチル-3-ブテニル=イソプロピル=スルフィドを導入した結果,ほぼ1:1の比率で2種類の生成物すなわちかアルキル体と6-アルキル体が得られた。この2種類のアルキルオリベトール誘導体を原料とし,カンナビノールの全合成を試みた。まずそれぞれをアシル化し,酸化して得られたスルポキシドのキシレン溶液を加熱還流すると,スルポキシドのβ-脱離の後,分子内Diels-Alder付加環化反応が起こり,ラクトン環を含む三環性化合物であるΔ9-テトラヒドロジベンゾ[b,d]ピラン-6-オンをシス体優勢に得た。この三環性ラクトンは,メチル化,脱水を経てカンナビノールの前駆体`証4翫テトラヒドロカンナビジオール(CBDと略記する)とabn-cis-Δ9-CBDに収率よく導かれた。このcis-Δ9-CBDにBF3触媒を作用させると,定量的にcis-Δ9-テトラヒドロカンナビノールが得られた。もう一方のabn-cis-Δ9CBDをかトルエンスルホン酸共存下ベンゼン中で加熱還流させると,71%(GC)収率(単離収率37%)でtrans-Δ8-テトラヒドロカンナビノールが得られた。
著者
小林 悦郎 植松 喜稔 須貝 稔 樋口 美起雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.8, pp.1319-1325, 1981-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6

酸化チタン(IV)-水和物(メタチタン酸)と活性炭から複合体を調製し,このもののリン酸イオン,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質などの吸着特性を研究した。メタチタン酸の原料には酸化チタン(N)製造における中間体としてのTiOSO4の硫酸溶液(TiO2250g,H2SO41044g/l)を用いた。吸着剤としての複合体はつぎのようにして調製した。適量のTiOSO4の硫酸溶液と粒状活性炭とをまぜあわせ,混合物を180℃ に加熱して過剰の硫酸を除き,活性炭に添着した酸化硫酸チタン(IV)を水洗してメタチタン酸に加水分解したのち,生成物を乾燥した。適当な調製条件(5mlTiOSO,溶液/10g活性炭)で得た複合体は市販メタチタン酸と同程度のリン酸イオンを吸着(Freundlich式;q=kc1/nのk値は17~19mg-PO43-/g-吸着剤)し,複合体中に含まれたメタチタン酸の質量あたりに換算したリン酸イオンの吸着量は市販メタチタン酸のそれの約10倍の値を示した。複合体はまた縮合リン酸イオンを吸着した。吸着等温線の傾きFreundlich式の1/nは,オルトリン酸イオンではO.116,三リン酸イオンでは0.261であった。複合体は担体としての活性炭の特性を活かし,メチレンブルー,ヨウ素,有機物質(フェノール)などを吸着した。それらのものに対する吸着能は複合体の調製条件におけるTiOSO,溶液(ml)と活性炭(g)との比の増大によって減少した。カラム試験では複合体中に吸着されたリン酸イオンは,2N水酸化ナトリウム溶液と水で溶離され,のち吸着剤は酸で再生した。
著者
奥脇 昭嗣 伊藤 宏 岡部 泰二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.10, pp.1462-1468, 1977
被引用文献数
5

アンモニアーアンモニウム塩-炭水化物混合溶液によりマンガンノジュールを処理し,銅,ニヅケル,コバルト,マンガンおよび鉄の浸出率を求め,最適浸出条件および浸出機構を検討した。 チタンライニング製内容積11のオートク1レーブに炭水化物としてブドウ糖,デンプンあるいはホルムアルデヒド0~591,ユール(平均粒径o.05~o.44,4種)10~1009/1およびアンモニア濃度0~7。5N,アンモニウム塩濃度0~1009μのアンモニアーアンモニウム塩混合溶液500 mJを入れ,温度60~160。C,時間0~6 hr,かきまぜ速度500 rpmの条件下で浸出した。ブドウ糖の場合,微細なノジュールから1時間以内に銅,ニッケルおよびコパルトを80%以上の高収率で浸出するための条件は温慶80。C,ブドウ糖/ノジュール重量比0.16,アンモニア濃度1,5N,アンモニウム塩濃度409μであった。マンガンと鉄の浸出率を抑制するためには,銅,ニッケルおよびコパルトの浸出率は少し低下するが,アンモニウム儘としては炭酸塩が非常に良好であったげデンプンおよびホルムアルデヒドの場合,ブドウ糖の場合よりはるかに高温で浸出する必要カミあり,最適温度は160。Cであった。 銅,二撃ケル,コバルトおよびマンガンの浸出挙動はつねに-体であるから,浸出機構としては,アンモニアーアンモニウム塩混合溶液においてノジュール中の酸化マンガン(y)が還元され,てマンガン(III)アンミンが生成し,それにともなって銅ニッケル,コバルトがアンミン化浸出されるものと考えられる。
著者
川井 正弘 松本 孝芳 升田 利史郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.2, pp.108-114, 1994
被引用文献数
1

アルギソ酸はβ-1,4結合したbマンヌロン酸(以下Mと略す)とα-1,4結合したL-グルロン酸(以下Gと略す)から構成される酸性高分子多糖である.著者らはアルギン酸-酢酸水溶液系でゲルが形成されること,また,そのゲル化濃度はアルギン酸分子中のマンヌロン酸/グルロン酸比に影響されG成分に富んだアルギン酸がより低濃度でゲル化すること,さらに,その原因はG成分に富んだアルギソ酸の方が分子鎖が剛直であるためであることを明らかにした.他方,アルギン酸水溶液に適当な二価金属イオソを添加すると溶液がゲル化することはよく知られている.著者らは,アルギン酸水溶液をゲル化するに要する添加塩量がSrCl<SUB>2</SUB><CaCl<SUB>2</SUB><MgCl<SUB>2</SUB>の順で増加し,G成分に富んだアルギン酸の方が少ない添加塩量でゲル化することを見つけた.また,それらの原因はアルギン酸に対する二価金属イオソの親和性がSr<SUP>2+</SUP>>Ca<SUP>2+</SUP>>Mg<SUP>2+</SUP>の順で減少するためと,G成分に富んだアルギン酸の方が二価金属イオンに対する親和性が高いためであることを示した.本報文では,上記の結果を総括し,さらに,アルギソ酸水溶液をCaCl<SUB>2</SUB>,SrCl<SUB>2</SUB>でゲル化した時のゲル化点の構造を小角X線散乱測定を通して明らかにする.
著者
桑村 常彦 高橋 秀男 三柴 三郎 小野 正寛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.12, pp.2370-2377, 1973
被引用文献数
1

ペンタエリトリットの女直n-アルキルエーテル,(ROCH2) .C(CH20H)4-x (x=1~3, R=C3~C rs)への酸化エチレン(EO)重付加により,ポリオキシエチレン(POE)似非イオン性界面活性剤を合成し,疎水部におけるアルキル総炭素数(N)の等しい既知非イオン活性剤との比較のもとに,その曇り点(Cp),表面張力(rCMC), CMCにおよぼす熟瓜構造およびポリエーテル型連結部の影響について検討した。<BR>(1)一般に疎水部のアルキル鎖数(A)の増加はCp,7 CMCを低下, CMCを増大させるが, Aが2と3でのrcMc, CMCの差異は少ない。 Aが3の場合,rcMcはRがC3からC6の範囲で変化しない。Aが2以上,とくec 3の場合, CMCの対数とNの関係は直線ゆらはずれ,上方 型曲線となる。<BR>(2)同一系列,同一HLBd(DaviesのHLB値)では高級同族体ほど高いCpを示す。(3)連結部のエーテル型酸素は見かけ上親水牲に寄与しない。(4)POE鎖数(P)の多い系列はHLB,から予想されるよりかなり低いCpを示す。 P 2では,一般にEO付加数の増加とともにlogCMCが直線的に減少し,その傾きはPおよびRの大きいほどいちじるしい。<BR>以上の結果について,主としてPOE鎖の配置状態,水和性の観点から論議した。
著者
森本 侃 岩田 徹 江崎 昭彦 坂田 眞砂代 平山 忠一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.8, pp.726-730, 1994-08-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

ポリエチレンイミンを配位子とし,セルロースをマトリックスとする繊維状吸着剤(Ce11-PEI)を調製し,この吸着剤を用いて,種々のタンパク質水溶液からのエンドトキシン選択吸着除去を試みた。CeH-PEIのアニオン交換容量は,調製時のビスコースに対するポリエチレンイミンの添加量を調節することにより容易に制御できた。同吸着剤のエンドトキシン吸着能は,吸着剤のアニオン交換容量の増大とともに増大し,吸着時のイオン強度の上昇とともに低下した。しかしながら,同吸着剤(アニオン交換容量1.1-3.4meq/g)は幅広いイオン強度域(μ=0.05-0,4)で,高いエンドトキシン吸着能を保持した。さらに,同吸着剤(アニオン交換容量1.1meq/g)を用いて,エンドトキシンを添加したウシ血清アルブミン(BSA)水溶液中からのエンドトキシンの選択吸着除去を試みたところ,イオン強度μ=0.05-0.2,中性付近のpH域下で,BSAをほとんど吸着することなく,エンドトキシンのみの選択的吸着除去ができた。
著者
御園生 尭久 吉見 武義 福田 利弘 小林 淳一 長尾 幸徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.11, pp.1526-1531, 1978
被引用文献数
2

1,8-ナフタレンジカルボキシミド[1a]およびN-メチル換-1,8-ナフタレンジカルボキシミド(X=H,OCH<sub>3</sub>,0H,NH<sub>2</sub>,SO<sub>3</sub>Na)[Ib~f]をパラジウム触媒を用いて水素化することにより,[1f]の場合を除き,それぞれ相当するテトラヒドロ誘導体である1,2,3,4-テトラヒドロー1,8-ナフタレンジカルボキシミド[2a](収率77%),およびN-メチルー5-置換-1,2,3,4-テトラヒドロー1,8-ナフタレンジカルボキシミド(X=H,OCH<sub>3</sub>,0H,NH<sub>2</sub>)[2b~e](収率b:82%,c:62%,d:68%,e:78%)を得ることができた。<BR>さらに[1a]を同じ触媒でより強い条件で水素化するとデカリンー1,8-ジカルボキシミド[3]が得られることを確認した。また[2a]および[2b]を塩化アセチルで処理すると,それらのアシル誘導体である3-アセトキシー5,6-ジヒドロー4荏ベンゾ[de]インキノリンー1-オン[4a],および3-アセトキシー2-メチルー5,6-ジヒドロ-4-ベンゾ[de]インキノリンー1-オン[4b]を生じた。