著者
高木 謙 山田 道男 大杉 政克 根来 健二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.260-262, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Oxy-Cope rearrangement of 4-vinyl-1, .6-heptadien-4-ol [1] at 330°C gave 1, 8-nonadien-4one [4] along with 2, 8-nonadien-4-one [5]. The ketone [4] was converted to the title compound [2] as a mixture of (E)- and (Z)-isomers, by the treatment with LDA and, trimethylsilyl chloride. Alternatively the nonatriene [2] was prepared selectively by the anionic oxy-Cope rearrangement of [1] followed by quenching with trimethylsilyl chloride. Intramolecular Diels-Alder reaction of [2] afforded only cis-3 a-trimethylsiloxy-2, 3, 3 a, 6, 7, 7 a-hexahydro-1 H-indene [3], irrespective of the stereochemistry of [2].
著者
篠田 喜一 佐藤 正喜 輿石 義雄 長根 尉 中尾 正明 西村 寧 小出 桂三 越川 昭三 山根 至二 日高 三郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.215-223, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
45

尿毒症の原因について,化学物質の面から探求する目的で,腎不全患者血漿中の特異成分の解明を試みた。すでに報告したように,薯者らは水系高速液体クロマトグラフィーにより,腎不全患者血漿中に特異的に検出されるピーク(ピーク2a)を見いだし,これが,尿毒症毒素を含む可能性のあることを示した。本報では2a画分について,紫外吸収成分をさらに分離し,その構成成分の同定に供した。その結果,表1に示した10成分を解明するとともに,これらの尿毒症毒素としての可能性について考察した。2-デオキシ-2,3-デヒドロ-N-アセチルノイラミン酸,N2-フェニルアセチルグルタミン,キノリン酸はヒトの代謝産物であり,その生物学的活性から,尿毒症毒素としての可能性が示唆された。そのほか,4-[[(カルボキシメチル)アミノ]カルポニル]フェニルβ-グルコピラノシドウロン酸は,そのオルト異性体が尿毒症毒素としての可能性が指摘されており,注目すべき物質と考えられた。
著者
巣出 隆之 狩谷 幹夫 諏訪 和男 市川 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.56-59, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

N-シリルアミンはN-シアノアミノ化合物に特異的に付加する。反応は比較的低温で円滑に進行することから,他の活性な官能基を有するN-シアノアミノ化合物を対応するグアニジン化合物に誘導するのに有用である。しかしながら,酸性の弱いN-シアノアミノ化合物や塩基性の弱いN-シリルアミンでは反応しにくい。本研究では,この反応におよぼす溶媒の影響およびアミン塩の効果を検討した結果,溶媒としては酸素や窒素原子を含まないものが好適であることを認めた。たとえばN-ブチル-N'-シアノ-S-メチルイソチオ尿素[2a]とN-(トリメチルシリル)ジエチルアミン[1a]との反応では,ジクロロメタン中で対応するグアニジン体[3a]が73%収得されたのに対し,同じ条件下でもジオキサンやアセトン,アセトニトリル中では42~49%にすぎなかった。またアミン塩,とくにピリジン硝酸塩がこの反応をいちじるしく促進することを見いだした。すなわち,ピリジン硝酸塩が存在しない場合,まったくあるいはほとんど反応しなかった[2a]とN-(トリメチルシリル)イソプロピルアミン[1b]あるいは[2b]とN-(トリメチルシリル)アニリン[1c],N,N-ジメチル-N'-シアノ-S-メチルイソチオ尿素[2c]と[1b],シアノイミノジチオ炭酸ジメチル[4]と[1a]との反応も等モルのピリジン硝酸塩の存在下に進行して,それぞれ対応するグアニジン体を生成した。
著者
巣山 隆之 奥野 敏 狩谷 幹夫 市川 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.51-55, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
2

N-シリルアミンが穏和な条件下でN-セアノアミノ化合物に特異的に付加して,対応するグアニジン誘導体を生成することを見いだした。N-(トリメチルシリル)ジエチルアミン[3b]は(エトキシカルボニル)シアナミド(ECC)やN-シアノ尿素[8],シアナミド[10a]と発熱してすみやかに反応した。[3b]はまた,N-フェニル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4a],およびN-ブチル-N'シアノ-S-メチルイソチオ尿素[4b],,N-シアノグアニジン[6a]とも室温で反応した。N-(トリメチルシリル)イソプロピルアミン[3a]は[4a]と60℃ で定量的に反応したが,[4b]との反応では同じ条件下で,グアニジン体の収率はわずかに9%であった。N-(トリメチルシリル)アニリン[3c]は反応性が悪く,[4a]とは反応しなかった。また,[(メチルチオ)カルボニル]シアナミド(MCC)あるいはECCとの反応では対応するグアニジン体のMCCあるいはECCの塩が単離された。以上の結果,N-シアノアミノ化合物としては酸性の強いものほど,またN-シリルアミンとしては塩'基性の強いものほど反応しやすいことがわかった。なお,Nに水素原子をもたないN-シアノアミノ化合物はN-シリルアミンとまったく反応しなかった。
著者
北原 滝男 高野 二郎 白井 孝三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.122-124, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The reaction of acridine hydrochloride with aniline in the presence of lead(IV) oxide, peroxides of alkaline earth metals, metal chloride or mercury(II) sulfate as an oxidizing agent was examined. It was disclosed that metal chlorides (such as silver chloride and mercury(II)chloride) were effective to give 9-(4-aminophenyl)acridine in high yields.
著者
鈴木 洸次郎 平見 泰通 谷相 美智 毛利 智代 合田 智英 藤山 亮治 清岡 俊一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.2, pp.186-190, 1987-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

3-ホルミルショウノウは,グリシンエチルエステルと反応させると,エノール化するためSchiff塩基をつくらず,3-[N-(エトキシカルボニルメチル)アミノメチレン]ショウノウを生成した。これをリチウム=ジイソプロピルアミド(以下LDA略記する)存在下に,ヨウ化メチルおよび塩化ベンジルと反応させると,低い不斉収率でL-Ala(9.2%e.e.)およびL-Phe(4.3%e.e。)が得られた。N-メチルグリシンエズテルに代えると,不斉収率が高くなり,しかもD-アミノ酸が得られた。すなわちD-(NCH3)Ala(43.3%e.e.),D-(N-CH3)Phe(26.5%e.e.)。N-ベンジル化合物のアルキル化でもD-形が生成した。N-置換基がアルキル化にさいし強い影響をおよぼすことを考慮し,またホルミル基のエノール化を防ぐために,exo-3-ホルミル-3-メチルショウノウを合成した。これを用いてグリシンエステルとSchiff塩基をつくりアルキル化した。結果は予想どおり,収率,不斉収率ともに向上した。つぎにおもなものを示す。L-Ala(70.2%e.e.),D-Phe(84.7%e.e.),L-Leu(71.6%e.e.)。
著者
中沢 利勝 柴崎 正己 板橋 国夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.45-50, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3

2-ナフタレンチオール(2-NT)とアクリルアルデヒド(AAa)の付加反応により得られる3-(2-ナフチルチオ)プロピオンアルデヒド[1a]をプロトン酸の存在下で反応させると,ホルミル基による閉環によって2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン-1-オール[2a],3H-ナフト[2,1-b]チオピラン[3a],2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン[4a]などのナフトチオピラン類が生成した。この反応でプロトン酸の種類および反応条件を選択することによって[2a],[3a]および[4a]を,それぞれ主生成物として選択的に得ることができた。一方,チオール類,チオ酢酸,アセトニトリルあるいは2-ナフトールなどの求核剤の存在下で[1a]の反応を行なうと,求核剤のホルミル基への付加につづいて閉環反応が容易に進行し[2a]のヒドロキシル基が求核剤で置換された生成物が,それぞれ高奴率で得られた。また,[1a],3-(2-ナフチルチオ)ブチルナルデピド[1b],2-メチル-3-(2-ナフチルチオ)プロピオンアルデヒド[1c]の50%硫酸による閉環反応では[2a~c]が得られ,[1a~c]の2-NT存在下での閉環反応では1-(2-ナフチルチオ)-2,3-ジヒドロ-1H-ナフト[2,1-b]チオピラン類[6a~c]を得た。
著者
卯西 昭信 北浜 亨 下村 与治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.40-44, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
6

2-アリール-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジンにアリールアミンを110℃で反応させるとメラミン誘導体である2,4-ジアリール-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンが生成した。しかし,2-アリール-4-クロロ-6-(2-クロロエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンにアリールアミンを同様に反応させてもメラミン誘導体は生成せず,2,4-ジアミノ-6,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-α][1,3,5]トリアジン誘導体が得られた。生成したこの縮合複素環化合物の構造をIR,1H-NMR,13CNMRおよび元素分析により決定した。
著者
毛海 敬 宇野 理枝子 白崎 力 斎藤 隆平 森田 俊夫 北嶋 英彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.1, pp.35-39, 1987-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2

2,8-ジメトキシジベンゾフラン(DMD)および2,8-ジエチルジベンゾフラン(DED)のアシル化とニトロ化の異盤体分布を求めた。DMD,DEDのHMO計算に基づく求電子反応性順は3->1->4-であった。DMDのアセチル化,ベンゾイル化,ニトロ化およびDEDのベンゾイル化,ニトロ化は1-および3-置換体を与え,その比は反応条件により0.05~O.85の範囲で変化した。DEDのアセチル化は3-および4-置換体を与え,その位置反応性順はHMO計算による予測と異なった。この違いについて.攻撃種とDEDの置換甚および9-位水素の立体効果によって考察した。
著者
脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1690-1699, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
32

質量分析計は物質の構造解析を目的として発展してきた。ガスクロマトグラフと組み合わせたGC/MSは混合物にも適用できるので生体試料中の微量成分の分析にも向いている。さらに特定質量数のイオンだけを選択的にモニターするマスフラグメントグラフィーという手法を用いると定量分析も可能になる。モルモットのハーダー腺の脂質は50種類にもおよぶ脂肪酸を含んでいて,しかも分枝構造があるので分析にはGC/MSが威力を発揮する。その結果,この腺の分泌脂質である1-O-アルキル-2,3-O-ジアシルグリセロールの構造を明らかにすることができ,かつ分枝脂肪酸が多量に存在することがわかった。マスフラグメントグラフィーを応用し新しい脂肪酸合成酵素活性の測定法を開発してこの腺の酵素を分析したところ,ほかの臓器の酵素と違って分枝脂肪酸を容易に生成できること,生成脂肪酸種は基質レベルで調節されていることなどが明らかになった。これらの分析法は血清中のコレスタノールや胆汁酸の定量にも応用でき,CTXという先天性脂質代謝異常症の診断にも役だっている。本稿は脂肪酸の構造解析とその代謝を例にGC/MSの医学への応用にも言及しようとするものである。
著者
大橋 陽子 永井 克孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1683-1689, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
31

細胞膜に存在する糖脂質は生物の発生・分化・情報伝達・神経や免疫機能・病態変化において主体的な役割を担う重要な膜分子である。また,糖鎖,脂肪酸,長鎖塩基という物性の異なる三部分が分子の中に局在化して共存する構造は,機能との関連において興味深い。つねに微量混合物として存在するそれら糖脂質分子種の分析にはFABMSISIMSなどの二次イオン質量分析法が有用であるが,これまでは通常試料を分解,誘導体化して糖鎖の一次構造と,セラミド全体としての質量数を得ていた。今回著者らは中性マトリックスを用いた(+)FABMSISIMSスペクトル上,長鎖塩基は+CH2C(NH2)=CHR型イオン(Z+フラグメントイオンと仮称する)としてその質量数を独立に呈示していることを見いだした。確認にはBIE一定およびB2/E一定リンク走査法を用いた。この方法は糖鎖,脂肪酸部分とは無関係にスフィンゴ糖脂質やスフィンゴホスホノ脂質の長鎖塩基の質量数のみを示すので,生体由来の混合物試料でもセラミド内部の長鎖塩基と脂肪酸の質量数を特定することができる。
著者
松尾 武清
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1671-1682, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33

質量スペクトロメトリーによる生体高分子,とくにタンパク質の一次構造解析法について検討した。最近のイオン源と質量分析装置本体の高性能化によりペプチドの分子イオンを検出し,その正確な分子量を決める技法が確立された結果,タンパク質の構造解析を行なうことが可能となった。未知試料のアミノ酸配列を決定するにはEdman分解法と組み合わせるのが有効である。さらに大きなタゾパク質を解析するには酵素消化後HPLCで数グループに分離iし,質量分析によりその中に含まれる成分ペプチドの分子量を決める。つぎにシークエネーターでそのペプチド混合物から得られる複数個のPTHアミノ酸を同定する。得られた結果をコンピゴーターで解析し一次構造を決める方式が最適である。一方,構造変異タンパク質中の置換アミノ酸の決定には質量分析による方法が大変有効である。ヒトグロビンの場合を例にとっていくつかの技法を具体的に説明する。合成DNA,RNAの分析にも質量分析は役に立つのでこれについても簡単にふれる,
著者
木下 武 中村 健道 名垣 秀実
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1665-1670, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

質量分析法を極性化合物や熱的に不安定な化合物の解析へ応用可能にしたFABイオン化法と,GC/MSやLCIMSのGCやLCに相当する分離手段をもMSで行なうMS/MS法との組み合わせによるFABMs/MS法の構造解析ぺの応用の基礎検討を行なった。その結果,FABMS/MS法を用いることによって分子量決定がきわめて容易に行なえること,部分構造の決定が構造異性体の判別も含めて比較的容易に行なえること,さらにフラグメントイオン相互間のかかわり合いを容易にかつ明確にすることができることヵミわかった。したがって,FABMS/MS法から得られる情報を組み立ててゆくことによって,有機化合物の構造決定がなされ得ることを明らかにすることができた。
著者
花屋 馨 男沢 和郎 村松 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1643-1649, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

cis-2-置換5,8-ジメチル-4-クロマノール誘導体の立体配座を検討する目的で,それらの赤外部におけるOH伸縮振動スペクトル(YOH)を四塩化炭素の希薄溶液で測定した。2-位の置換基として,メチル基〔6〕およびフェニル基〔7〕~ 〔10〕を有する場合には,3623~3625と3596~3599cm-1に2本の吸収を示し,エトキシカルボニル基〔11〕を有する場合には,3608と3595cm-1に2本の吸収を示した。〔7〕~〔10〕では,フェニル基に電子供与基を導入してもYOHにあまり変化が認められなかった。これらの結果から,〔6〕~〔10〕では2-位の置換基がエクアトリアル,4-位のヒドロキシル基が擬エクアトリアルであるジエクアトリアル配座が優位立体配座であり,一方,〔11〕はジアキシアル配座が優位立体配座であろうと考察した。これらの結果は1H-NMRスペクトルに基づく検討結果からも支持されることがわかった。
著者
都築 誠二 田辺 和俊 名川 吉信 中西 洋志 大沢 映二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1607-1612, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
6

分子力場計算プログラムMM2'をビフェニルとナフタレンに適用し,構造と内部回転障壁エネルギーの実験値を再現するようにパラメーターの調節を行なった。結合次数が0.5から大きく異なっていると考えられるビフェニルの中央のC-C 結合およびナフタレンのC-C結合のパラメーターを変更した。ビフェニルでは結合距離定数ro,伸縮の力の定数ks,ねじれポテンシャルV2の変更を行ない,ナフタレンでは結合距離定数だけを変更した。その結果,構造と内部回転障壁エネルギーの実験値をよく再現できた。あまり大きなひずみをもたない誘導体は今回使ったパラメーターを使いMM2'による計算が可能であり,この方法は一連のよく似たタイプの分子の計算について一般的に利用可能と考えられる。
著者
菊池 修 石井 美佐子 守橋 健二 中山 光宣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1587-1593, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
33
被引用文献数
1

ESRパラメーターの実験値とINDO-UHF法によって計算した理論値を比較することにより,遊離基の構造を決めることを試みた。遊離基の9値,等方性および異方性超微細結合定数の実験値と理論値の差を最小にして,得られた分子構造をESRパラメーター最適化構造とした。12種の遊離基について計算した分子構造,ESRパラメーターを実験値およびエネルギー最適化構造と比較することにより,この方法の有効性と問題点について考察した。
著者
岩下 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1601-1603, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
1

The specific line-broadening effects caused by the addition of a small amount of acid were noted for some 'H-NMR of stemotinine [1] and isostemotinine [2]. The molecular structure of [1] has recently been established by X-ray analysis, we could correlate the line-broadening effect with the stereochemistry of the spiro-lactone moieties of [1] and [2]. Since line-broadening was found to be induced by partial salt formation of the tertiary amino group, it may be widely observed with other alkaloids and may afford a versatile supplementary tool for the stereochemical study of alkaloids.
著者
春山 英幸 高田 知芋 近藤 三千男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1604-1606, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

The three-dimensional structure of rifamycin SV in solution was constructed by the combination of distance geometry and NMR spectroscopy. The dihedral angles derived from the analysis of the vicinal coupling constants and NOEs were used to restrict the possible conformations of the ansa chain moiety. The restricted spatial arrangements of the ansa chain and the naphthohydroquinone ring were demonstrated by the NOEs observed at H3 on irradiating 20-CH3, 24-CH3 and 26-CH3 group. Based on the above observation a set of the upper and the lower bounds of the interatomic distances was assigned and converted to the corresponding three-dimensional coordinates. Fig.3 shows the three-dimensional drawing of the resulting geometry, which is consistent with the observed NMR data as shown in Tables 1 and 2.
著者
大岳 望
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1579-1586, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8

ノトネソマイシンAは,Streptomyces aminophilus subsp.notonegenes647-AV1の生産物であり,イネ紋枯病に対する有効物質検索の過程で発見された抗かび性抗生物質である。ノトネソマイシンAは,C68H109NO30SNa2の分子式を有し,mp194~195℃,〓310nm(ε9700),〓3400,1720,1700,1600と1080cm-1の諸性状を示す。1H-NMRおよび13C-NMRのデータから,マクロライドであること,配糖体で芳香環置換基が含まれていることが判明した。分解反応により,2,6-ジデオキシ-4-O-メチル-α-D-アラビノニキソピラノースとL-rhodinoseが構成成分であることが判明した。主として,1H-NMRと13C-NMRによるスピンデカップリング実験,NOE実験,差スペクトル測定およびCOSYなどのスペクトルデータと13C-13C二重ラベル実験により,ノトネソマイシンAの構造がユニークな32員環マクロライドで硫酸エステルが置換している化合物であることを決定した。
著者
馬越 啓介 木下 勇 松本 圭司 大井 俊一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.11, pp.1517-1520, 1986-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The violet bis(2-aminoethyl 2-pyridyl sulfide)cppper(II) perchlorate [1] and blue bis(2-aminoethyl 2-pyridyl sulfoxide)copper(II) perchl3fate [2] were synthesized and have been characterized by means of X-ray crystallography. The Cu(II) atom in 'the cation o[1] is located at the center of symmetry and has a square-planar coordination by 4 N atoms. The S atom in Cu-NH2CH2CH2S-C-N ring lies in the position near to the axial site. The Cu…S distance is 2.832(1) Å and the Cu→S vector intersects the coordination plane at 59.8°. The Cu atom in the centrosymmetric cation of [2] has an elongated octahedral coordination by 4 N (equatorial) and 2 O atoms (axial). The Cu-O distance is 2.301(7) Å.