著者
前尾 直子 中塚 和夫 酒井 義生 山之内 夘一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.131-133, 1991-02-15

水晶体嚢のtrue exfoliationの1例を経験したので報告した。症例は78歳男性で両眼の前房中に薄い透明なセロファン様の膜を認めた。この膜は水晶体前嚢と連続性があり眼球運動に際して可動性を有していた。Pseudo-exfoliativematerialとは明らかに異なる様相を呈しており,隅角所見は両眼とも正常で緑内障の合併もなかった。職歴から強い熱への暴露が原因と考えられた。
著者
庄司 信行 新家 真 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.647-651, 1990-05-15

炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)を1年以上投与されている緑内障患者32例に著明な代謝性アシドーシスとそれに対する呼吸性代償,骨塩の融解および尿での骨塩の漏出とカルシウム溶解性の低下が認められた。 このうち22例にクエン酸製剤ウラリット-U®を投与したところ,眼圧の変化はなく,骨塩漏出の低下と代謝性アシドーシスが改善した。 以上の結果からCAI長期使用例,とくに骨系統の疾患や慢性肺疾患の合併頻度の高い老人では,定期的な血中重炭酸とカルシウムイオンのチェックが必要である。ウラリット-U®はCAIの併用薬として有望である。
著者
臼井 嘉彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1551-1554, 2019-12-15

Q 白内障手術後3か月目に囊胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema:CME)が生じました(図1)。このような場合は,どのように対処したらよいでしょうか?
著者
猪俣 孟
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.570-571, 1995-04-15

角膜後面沈着keratic precipitates (K.P.)は,虹彩炎や毛様体炎の炎症細胞,または組織の残滓や病原物質などを貪食したマクロファージが前房内に遊出し,それらが角膜後面に付着した状態をいう。前房内の温度は虹彩付近で高く,体表に近い角膜付近で比較的低い。そのために前房水は虹彩付近で上流し,角膜付近で下流する流れがある。これを温流thermal currentという。温流の関係で,前房内に遊出した細胞や物質は角膜後面下方に沈着する傾向がある。前房内の炎症細胞が角膜内皮細胞に付着する際には,眼内免疫反応が最も強い時期に細胞間接着因子intercellular adhe—sion molecule−1(ICAM−1)が角膜内皮細胞に強く発現し,炎症細胞が角膜後面に付着しやすい状態にある。 臨床的に,角膜後面沈着は豚脂様角膜後面沈着Inutton fat K.P.微塵状角膜後面沈着fine K.P.,色素性角膜後面沈着pigmented K.P.の3種が識別される。
著者
須田 生英子 福地 健郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.245-248, 2002-09-10

はじめに 真性小眼球症は,両眼の眼軸長が14mmから20.5mmと短く,他の身体的または眼科的な異常を伴わない疾患と定義されている1)。遠視の強い症例が多く,脈絡膜の異常な発達と強膜の肥厚,強膜におけるコラーゲンの異常やコンドロイチン硫酸の減少が報告されており2),蛋白透過性の低下に伴いuveal effusionや非裂孔原性網膜剥離を生じやすい3)。また,眼球内容積が正常眼の2/3程度に減少しているにもかかわらず,水晶体の容積はほぼ正常であるため,正常眼では3〜4%である水晶体の占める割合が10〜32%までになり4),この解剖学的な異常が40〜60代の比較的若い年齢で閉塞隅角緑内障を引き起こす原因と考えられている。真性小眼球症眼は,相対的に大きい水晶体のために相対的瞳孔ブロックをきたしやすく,これは40代以降の加齢に伴う水晶体の肥厚とともに助長される。また,症例によってはUBMでplateau iris configurationや水晶体と毛様突起の接触,圧排などの悪性緑内障の際に認められる所見が観察されることがあり,相対的瞳孔ブロックにこれらの要因が加わることによって隅角閉塞が生じると考えられる。 緑内障の発症にあたっては,慢性の経過をとる症例もあるが,急性閉塞隅角緑内障発作を起こす場合も多く,うち約2/3の症例では両眼性に発症する5)。真性小眼球症の緑内障を治療するためには,まず細隙灯顕微鏡検査,隅角鏡検査,Aモードエコー,Bモードエコー,MRI, UBMなどで可能な限り病状を正確に把握し,その眼圧上昇機序を十分に検討したうえで,病期に応じた治療法を考えていく必要がある。
著者
大橋 利和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1443-1446, 1966-11-15

I.緒言 望遠鏡や顕微鏡等の光学器械を覗く時,正視眼者でも接眼鏡のDiopter (以下D.と略す)目盛が負側に傾くことが多いが,この現象がどの程度の割合で存在し,又,如何なる因子がどの程度に関与しているかを見る目的で,実験を行ない成績を得たので報告する。
著者
岩山 隆憲 曾我部 浩 橋川 和信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1316-1321, 2015-09-15

はじめに 切開式重瞼術の術後は左右差のないこと,瘢痕が目立たないこと,閉瞼時の不自然な陥凹を生じないこと,重瞼線が消失しないことが重要であると筆者らは考えています。 切開法による重瞼作成は重瞼作成予定線より尾側の瞼板前組織の除去により,瞼板と皮膚裏面を癒着させ重瞼を作成する腱板固定法1〜3)が最も簡便であり手術時間も短いとされていますが,術後,閉瞼時に重瞼線の頭側と尾側で癒着による不自然な陥凹を生じることがあります。 瞼板固定法で生じた不自然な陥凹は,時間の経過とともに軽快すると考えている術者もいますが,実際は陥凹の修正目的で来院される患者も多いです。 昨今,眼瞼下垂症手術時の重瞼作成法として挙筋腱膜前転を併用した術式4)が報告されており,自然な重瞼術として知られています。また,一重瞼の患者は潜在的な眼瞼下垂症であることも多く,挙筋腱膜の前転と重瞼術を同時に行うことにより,開瞼をより大きくする美容外科手術5,6)も報告されています。 挙筋腱膜を前転させ,その尾側端と重瞼線の皮膚ないし皮下眼輪筋とを縫着し重瞼を作成する方法であるため,挙筋腱膜と重瞼線への連結を重瞼の正常構造にきわめて近く再建することで重瞼を作成しており1),理にかなった方法です。しかし,これらの術式は挙筋腱膜の前転幅が重瞼溝の皮下まで十分到達する長さの線維性組織を得られることが前提であると筆者らは考えています。 この方法を,下垂が軽度である若年者の厚い瞼に適応させると,挙筋腱膜の前転幅は2〜3mmにもかかわらず,瞼板から皮膚までの厚みがあるため連結に必要な長さを得ることができないことがあります。無理に縫合すると重瞼線の陥凹が強くなり,不自然となります。 筆者らは患者の瞼の厚さに見合った挙筋腱膜から重瞼線への線維性組織の再構築を行うことが,結果として自然な重瞼を得られるのではないかと考えており,挙筋前転と重瞼術を同時に施行する若年患者に対して,前転させた挙筋腱膜の余剰部分をフラップとして挙上し,皮下線維性組織として重瞼線を作成しています。フラップの長さを変えることで皮下組織の厚い瞼に対しても,閉瞼時に陥凹のない自然な重瞼が得られると考えています。本稿では実際の手術についての考え方と手順を紹介します。
著者
鈴木 健史 和田 裕子 玉井 信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.926-929, 2003-06-15

PAX6とは? 昆虫・両生類・爬虫類・魚類・鳥類・そしてヒトを含む哺乳類に至るまで,地球上に存在する多くの生物が類似した機能を持つ脳・感覚器・内臓・肢体を有する。近年になって,それらの形成に関与する遺伝子の多くが種の間で高度に保存されていることが解明されている。 1992年,PAX6遺伝子変異が先天無虹彩症の発生に関与することがグレイサーら1)によって報告された。マウスの小眼球症の発生にもかかわるこの遺伝子はウニなどの下等生物からからヒトに至るまでさまざまな種の間でその塩基配列が保存されており2),その発見以来,発生学において最も注目される遺伝子の1つとしてさまざまな研究の対象となっている。
著者
藤代 貴志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1239-1245, 2019-10-15

半導体レーザー装置CYCLO G6®を用いたマイクロパルス毛様体光凝固術の治療成績は,眼圧下降は良好で,術後の合併症が少ないと報告されているが,これまでのところ報告は海外からのものだけで,わが国では有効性と安全性を示した報告がない。今回,CYCLO G6®を用いた毛様体光凝固術の治療の原理とその有効性と安全性について解説したい。
著者
鈴木 康之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.626, 2020-05-15

私が初めて本格的な英語論文を書いたのは1986年でした。当時,論文執筆に関するテキストはほとんど無く,他の論文の表現や構成を参考にしながら,四苦八苦して継ぎはぎの英作文をしていた記憶しかありません。本書で植村研一先生が強調しておられる“comfortable English”にはほど遠いものでした。当時,本書があったら私の苦労の何割かは軽減し,ワンランク上の雑誌に掲載できていたことでしょう。近年,論文執筆に関するテキストは随分多くなりましたが,本書は次の3点でとても魅力的です。 (1)医学研究者・医学英語教育者・雑誌編集者・同時通訳者としての長年の経験に基づいて,“どのような論文が一流誌に採択されるか?”を熟知した植村先生が,まるで直接語りかけてくださるように,歯切れ良くポイントを示しています。植村先生のお話を一度でも聞いたことのある方は,特に実感されるでしょう。植村先生の頭に蓄積されてきた智慧とノウハウを学びとってほしいと思います。 (2)全編を通じて“comfortable English”と“短縮率”がキーワードとなっています。日本人特有の婉曲・冗長な表現を戒め,言葉をいかにそぎ落とすかを多くの実例で示し,演習によって実践力が高まる工夫がされています。英語論文の読者・査読者の多くはnative speakerであり,comfortableな英語を心がけることが重要です。“うまい英語”とは決して美文ではなく,読者の頭に素直に入っていく“simple and clear statement”なのだと理解しました。“うまい英語”のコツがわずか50ページの中に凝縮されているとは驚きです。 (3)コンパクトな構成で,忙しい医師・研究者でも手軽に読むことができます。読みやすく(comfortable Japanese!),明快(simple and clear!)に書かれていますので,一度全編を通読することがお薦めです。これから英語論文にチャレンジしようとしている若手はもちろんのこと,論文の質をワンランク高めたい中堅,論文執筆を指導する立場のベテランにとっても格好の参考書です。一度でも英語論文を書いた方なら,読んでいてうなずかされることばかりです。査読者の視点を知ることで,どんな論文を書けば良いかを知ることができます。
著者
加藤 聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.136-141, 2007-10-30

白内障 1.病態,疫学 糖尿病下で高血糖状態が続くと,血液房水柵を通って房水中のグルコース濃度が上昇し,水晶体内にも自由に移行する。糖尿病状態では,本来の解糖系が働かずポリオール代謝系が使用され,グルコースの多くはソルビトールに変化し,水晶体内でソルビトールが増加する。水晶体膜は生体膜としてソルビトールの通過を阻止する一方,ソルビトールは水と親和性が高いので細胞外の水分を細胞内に引き込む。そのため,水晶体細胞が浮腫に陥り,細胞自体が膨化し,水晶体線維を中心とした構造は破壊され,白濁すると考えられている(浸透圧説)。浸透圧説が白内障の成因に関与することは疑いがないが,それだけでは説明がつかないところもあり,他の因子も白内障の成因に加味されていると考えられる。 糖尿病に合併する白内障には,真性糖尿病白内障と仮性糖尿病白内障がある。真性糖尿病白内障は,40歳以下の1型糖尿病患者にみられ,両眼性で急速な進行を呈する。一方,仮性糖尿病白内障は,老人性白内障との鑑別が難しいため頻度の報告についてはばらつきが大きく17.4~89.0%1~4)とされているが,明らかに糖尿病による白内障は25%程度,糖尿病患者に白内障が合併しているものが67%程度と報告されている4)。
著者
小島 亜有子 久保田 敏昭 森田 啓文 田原 昭彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1519-1522, 2008-09-15

要約 目的:ステロイドレスポンダーの臨床的特徴の報告。対象と方法:副腎皮質ステロイドの点眼または内服で眼圧が5mmHg以上上昇し,かつ25mmHg以上になった17症例をステロイドレスポンダーと定義した。7例は全身投与,10例では点眼が原因であった。男性9例,女性8例で,年齢は15~82歳(平均49歳)であった。診療録の記述からその特徴を検索した。結果:屈折は右眼-3.58±2.72D,左眼-3.50±2.58Dであった。ステロイド投与開始から最高眼圧に達するまでの期間は,全身投与群では9.8±13.5か月,点眼群では10.5±12.7か月であった。最高眼圧は全身投与群31.7±5.3mmHg,点眼群40.6±13.7mmHgであった。眼圧の上昇率は全身投与群143.0±103.1%,点眼群154.1±100.9%であった。すべての項目で投与方法による有意差はなかった。全身投与群では両眼の眼圧が上昇し,点眼群では点眼側の眼圧だけが上昇した。結論:ステロイド投与では,点眼だけでなく全身投与でも眼圧が上昇することがあり,かつ長期の経過観察が必要である。
著者
棚橋 雄平 河本 道次 川名 洋美 橘川 真弓 大岡 良子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.541-547, 1975-05-15

緒言 気象の人体に与える影響については,紀元前より気付かれており古くはヒポクラテスも季節や天候が健康や疾病に影響をおよぼすことをのべている。その後も多くの気象学的考察がなされたが,真に科学的な気象と人間の関係の追究は19世紀の終り頃から始まり,とくに前線と特定疾患との関係を大規模に調査し近代気象医学研究の先駆をなしたのは,1929年De-Rudder B.1〜2)であつた。彼は多くの気象病が不連続線の通過に関連して誘発されることを示して注目され,リュウマチ,疼痛,心臓循環器障害,急性緑内障等を分類している。また最近の研究では,気管支喘息,蕁麻疹,腸重積症,ベーシエット病等が,その発症増悪と前線通過との関連において気象病としての性格をもつことが立証されている。一方,多発性硬化症(以下MSとす)については,本邦では3)1951年桑島により急性球後視神経炎とMSとの関連が追究され,また内科的には1954年冲中4)〜5)により本症の存在が確認されたが,いまだその原因の不明な点において,今後の研究の余地を残している。 先にわれわれ6)は,MSの眼症状を中心とした統計的観察を行ない,その臨床像の一端をあきらかにしたが,今回MSの再発因子の追究の一つとして特に気象病にもつとも関係があるとみなされている前線の通過との関連を検討し,MSが気象病的要素を持つと思われる若干の知見をえたので報告する。

1 0 0 0 仮面症候群

著者
岩田 大樹 北市 伸義 石田 晋 大野 重昭
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1650-1655, 2010-10-15

はじめに 仮面症候群(masquerade syndrome)とは,原疾患の症状・所見が他の疾患に類似している場合に用いられる一般的な名称で,原疾患が仮面の下に隠されているという意味である。非炎症性疾患が続発性に炎症症状を引き起こし,あたかも原発性眼炎症性疾患であるかのような所見を示す場合や,非炎症性疾患の臨床像が炎症性疾患に類似している場合に用いられる。本稿では外眼部の仮面症候群には触れず,眼内の仮面症候群について記載する。 ぶどう膜炎様症状は軽度の虹彩毛様体炎から汎ぶどう膜炎までさまざまである。原疾患の頻度としては悪性腫瘍が多い。悪性腫瘍(癌)は死亡原因として最も多く,診断の遅れは重篤な結果となることがある。 今日,癌研究は大きな進歩を遂げているが,その最大の契機となったのはわが国の山際勝三郎・東京帝国大学教授と当時研究生であった市川厚一(のち北海道帝国大学教授)による人工タール癌の作製である。両氏は1914(大正3)年にウサギ(家兎)の耳にコールタールを塗布して皮膚癌を発生させることに成功した(図1)。これは世界初の人工癌であり(「山際・市川のタール癌モデル」),煙突の石炭灰掃除夫に皮膚癌や陰囊癌が多発する臨床的事実を裏付けるものでもあった。発癌契機として化学物質説を主張する両氏と,寄生虫説を主張するデンマークのFibiger教授との間の論争は,Fibigerが1926年にノーベル賞を受賞するという決着になった。しかし,現在ではFibigerのモデルは癌ではなかったことが明らかになっており,山際・市川のタール癌モデルが初の人工癌として世界中の教科書に必ず記載されている。 仮面症候群の原因疾患の頻度は成人では悪性リンパ腫と転移性腫瘍が多く,小児では網膜芽細胞腫と白血病が多い。眼症状が初発症状となることも多いが,悪性腫瘍は診断が遅れることで生命予後に重大な影響を及ぼす。鑑別診断は非常に重要である。

1 0 0 0 麻酔と眼科

著者
山本 亨 北野 周作 山下 竜雄
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-15, 1968-01-15

北野きようは「臨床眼科」に連載している境界領域対談というので,麻酔科の山本教授においで願つて,麻酔科と眼科との関連した問題について,いろいろお話をうかがいたいと思います。 麻酔というと,15年ぐらいまえ医局にはいつたころはいわゆる「げんこつ麻酔」というのがあつて,泣く子を「げんこつ」でだまらせて手術をしたなどということがありましたが,最近は麻酔科が独立し,完全な麻酔をやつていただけるようになりました。それで麻酔科の方に始めからおねがいしつぱなしで,むしろ麻酔という学問が私どもの手から遠くへいつてしまつた,というような感じがしないでもありません。そこで,本日はこの10年のあいだにいちじるしい発達を遂げた麻酔学の動向やら,そして私どもの眼科の領域に関係深い二,三の事柄などを,山本先生にお話していただきたいと思います。
著者
武村 千紘 鈴木 重成 和泉田 真作 桐木 雅史 金子 禮子 妹尾 正
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1369-1372, 2015-09-15

要約 背景:東洋眼虫Thelazia callipaedaは,ヒトと野生の哺乳類を宿主とする人畜共通の寄生虫であり,涙囊または結膜囊に寄生する。中間宿主はショウジョウバエ科のメマトイで,涙液や眼脂を舐めるときに幼虫を摂取する。東洋眼虫による眼感染は,日本では九州や西日本などの温暖な地域に多かったが,近年では北上する傾向がある。目的:栃木県内で発症した東洋眼虫による結膜感染例の報告。症例:栃木県に住む63歳男性が1か月前からの左眼の霧視と異物感で紹介受診した。自覚症状が生じる2週間前に,公園でハエに顔面周囲を執拗にまとわりつかれた。前医で虫体が左眼結膜に1隻発見され,除去された。患者の趣味は昆虫の写真撮影であった。所見:摘出された虫体は,その形態的特徴から東洋眼虫の雄と判定された。虫体の摘出後,自覚症状は消失した。結論:栃木県で東洋眼虫が発見されたことは,従来の報告にはない。温暖化のためにメマトイの活動期間が長くなったことがその理由であると推定される。
著者
向野 利彦 猪俣 孟
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.1454-1455, 1993-08-15

網膜格子変性lattice degeneration of the ret—inaは,検眼鏡的に赤道部から鋸状縁の間にみられ,境界が比較的明瞭な網膜の変性巣である。この病名は,変性巣を横切る血管が白線化して格子細工模様を呈することによる。裂孔原性網膜剥離の約30%は網膜格子状変性が原因で起こるので,慎重な経過観察が必要な病変である。正常眼の約10%にみられ,家族内発生も知られている。 網膜格子状変性は網膜硝子体変性症のひとつである。変性巣は鋸状縁に平行に走り,その幅は0.5〜1.5乳頭径で,長さは短いもので約2乳頭径,長いものではときに1象限をこえる。変性巣の辺縁は多少隆起し,内部では網膜は菲薄化し陥凹している。変性巣上の硝子体は液化し,空洞(硝子体ポケット)を形成している。膜様の硝子体が変性巣の辺縁に付着し,後部硝子体剥離に伴い変性巣の後極縁に沿って裂孔を生じやすい。変性巣内は不透明灰白色で,種々の程度の色素遊出がみられることもある(図1)。典型的な例では白線化した血管がみられる。血管の硬化がなく色素の少ないものは早期のものと考えられる。進行すると変性巣内にしばしば円孔が発生する(図2)。
著者
細貝 真弓 秋山 英雄 岸 章治
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.527-532, 2008-04-15

要約 目的:光干渉断層計(OCT)で経過を追ったPurtscher網膜症の1例の報告。症例:70歳男性が自動車を運転中に電柱に衝突し,多発性肋骨骨折を生じ,その翌日に受診した。矯正視力は右0.2,左0.02で,両眼の乳頭周囲に綿花様白斑があり,左眼は乳頭黄斑間に網膜の白濁があった。OCTで両眼に漿液性網膜剝離と左眼網膜内層に高反射があった。漿液性網膜剝離は1か月後に消失した。受傷から3か月後に矯正視力は右1.0,左0.7になったが,白濁部では網膜内層が菲薄化し,視細胞の内節と外節の接合部が消失し中心暗点が生じた。結論:Purtscher網膜症の急性期では網膜の白濁と綿花様白斑が混在し,漿液性網膜剝離があった。陳旧期では網膜内層が菲薄化し,視細胞の内節と外節の接合部が消失し,中心暗点の原因になった。
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.718, 2017-05-15

「水族館にいる魚には白内障が多い」ことを,ずっと以前この欄に書いた。仙台で学会があったときの経験からである。 たまたまこの話を思い出して,急に気になった。「なぜ?」という疑問からである。