著者
大石 正夫 宮永 嘉隆 大野 重昭 藤原 隆明 佐々木 一之 塩田 洋
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.313-322, 2005-07-20
参考文献数
5
被引用文献数
1

新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) 250mg点滴静脈内投与時の本薬の眼組織 (前房水) への移行性を検討した。また, 眼科領域感染症として角膜潰瘍, 眼窩感染および眼内炎の患者へDRPM250mgを1日2回または3回, あるいは500mgを1日2回点滴静脈内投与した時の本薬の有効性および安全性の検討を行った。<BR>1. 組織移行性試験<BR>白内障手術施行患者へのDRPM点滴静脈内投与開始70~115分後の前房水中DRPM濃度は0.16~0.87μg/mL, またほぼ同時期の血漿中の本薬の濃度は6.86~12.9μg/mLであった。<BR>2. 第III相一般臨床試験<BR>1) 有効性<BR>評価対象は15例 (角模潰瘍10例, 眼窩感染4例, 眼内炎1例)。1日投与量別の症例数は250mg×2回投与が9例, 250mg×3回投与および500mg×2回投与が, おのおの3例で, 臨床効果における有効率は100.0%(15/15例) であった。<BR>投与前後で菌の消長が検討可能であった症例は8例 (角膜潰瘍4例, 眼窩感染3例, 眼内炎1例) であった。これら8例の内訳はα-<I>Streptococcus</I>感染例が1例, C<I>orynebacterium</I> sp.感染例が3例, <I>Pseudomonas aerugimosa</I>感染例が2例, <I>Propionibacterium acnes</I>感染例が1例および<I>Staphylococcus aurens</I>と<I>Prevotella intermedia</I>の混合感染例が1例であり, これら8例全例において原因菌はすべて消失した。また, 投与後出現菌は認められなかった。<BR>2) 安全性<BR>評価対象は本薬を投与した全症例の15例で, 主要評価項目として副作用 (症状, 臨床検査値) の有無を検討した。<BR>有害症状が4例 (8件) に認められたが, 軽度または中等度で, 副作用 (症状) と判定された症例はなかった。<BR>臨床検査値異常変動が5例 (5件) に認められ, これらすべては治験薬との因果関係が否定されなかった。このため, 副作用 (臨床検査値) は, 5例 (5件: アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇3件, アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇, γ-グルタミルトランスペブチダーゼ上昇, 各1件) となり, 発現率は33.3%(5/15例) であった。程度はすべて軽度で, 転帰はすべて正常化であった。なお, これらの副作用 (臨床検査値) の多くは類薬での療法において認められている事象と同様の事象であった。

1 0 0 0 仮面症候群

著者
岩田 大樹 北市 伸義 石田 晋 大野 重昭
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1650-1655, 2010-10-15

はじめに 仮面症候群(masquerade syndrome)とは,原疾患の症状・所見が他の疾患に類似している場合に用いられる一般的な名称で,原疾患が仮面の下に隠されているという意味である。非炎症性疾患が続発性に炎症症状を引き起こし,あたかも原発性眼炎症性疾患であるかのような所見を示す場合や,非炎症性疾患の臨床像が炎症性疾患に類似している場合に用いられる。本稿では外眼部の仮面症候群には触れず,眼内の仮面症候群について記載する。 ぶどう膜炎様症状は軽度の虹彩毛様体炎から汎ぶどう膜炎までさまざまである。原疾患の頻度としては悪性腫瘍が多い。悪性腫瘍(癌)は死亡原因として最も多く,診断の遅れは重篤な結果となることがある。 今日,癌研究は大きな進歩を遂げているが,その最大の契機となったのはわが国の山際勝三郎・東京帝国大学教授と当時研究生であった市川厚一(のち北海道帝国大学教授)による人工タール癌の作製である。両氏は1914(大正3)年にウサギ(家兎)の耳にコールタールを塗布して皮膚癌を発生させることに成功した(図1)。これは世界初の人工癌であり(「山際・市川のタール癌モデル」),煙突の石炭灰掃除夫に皮膚癌や陰囊癌が多発する臨床的事実を裏付けるものでもあった。発癌契機として化学物質説を主張する両氏と,寄生虫説を主張するデンマークのFibiger教授との間の論争は,Fibigerが1926年にノーベル賞を受賞するという決着になった。しかし,現在ではFibigerのモデルは癌ではなかったことが明らかになっており,山際・市川のタール癌モデルが初の人工癌として世界中の教科書に必ず記載されている。 仮面症候群の原因疾患の頻度は成人では悪性リンパ腫と転移性腫瘍が多く,小児では網膜芽細胞腫と白血病が多い。眼症状が初発症状となることも多いが,悪性腫瘍は診断が遅れることで生命予後に重大な影響を及ぼす。鑑別診断は非常に重要である。
著者
北市 伸義 大野 重昭 南場 研一 吉田 和彦 大神 一浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではぶどう膜炎における疾患感受性遺伝子や再発など予後に影響を与える遺伝子を検索した。まず世界14ヵ国25施設のベーチェット病臨床像をまとめ、地域による症状や予後の違いを明らかにした。日本では同病の視力予後は依然として不良で、小児発症例が少ないことも明らかとなった。並行して各国からベーチェット病や原田病、尋常性白斑などの遺伝子サンプルを収集・検討し、ベーチェット病と原田病の間で再発に関与すると考えられる遺伝子に差異が見られた。
著者
水木 信久 河越 龍方 大野 重昭 目黒 明 竹内 正樹 REMMERS Elaine F.
出版者
横浜市立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ベーチェット病を対象としたゲノム解析により、HLAクラスI分子に提示前のペプチドのトリミングに関与するERAP1(endoplasmic reticulum aminopeptidase 1)が、ベーチェット病の発症リスクに対して、ベーチェット病の強力な遺伝要因であるHLA-B*51と遺伝子間相互作用を示すことを見出した。サルコイドーシスを対象としたゲノム解析では、日本人のサルコイドーシス患者と相関を示すHLA-DRB1アリルおよびHLA-DQB1アリルを明らかにしたとともに、HLA-DRB1およびHLA-DQB1の近傍に位置するBTNL2遺伝子と疾患の相関性も明らかにした。