著者
林谷 秀樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医情報科学雑誌 (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.34, pp.9-13, 1995-06-25 (Released:2010-05-31)
参考文献数
5
著者
黒木 俊郎 宇根 有美
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-65, 2007-07-20

両生類,特に無尾類(カエル)の個体数の減少や種の絶滅が世界各地で報告され,ある調査によれば全世界の5,743種の両生類のうち少なくとも2,469種(43%)の個体数が減少し,1,856種(32%)が絶滅の危機に瀕している。劇的な減少が顕著となった1980年以降,9種が絶滅し,113種が絶滅した恐れがあるとされている。この両生類の悲劇の主たる原因のひとつにはツボカビ症(chytridiomycosis)と呼ばれる両生類の新興感染症が挙げられ,<I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>が原因微生物である。この真菌は1998年にオーストラリア,カナダ,米国および英国の研究チームによって初めて発見され,パナマやオーストラリアの手付かずの自然環境における大規模な両生類の個体数の減少に関与していることが明らかになり,それ以来世界各地で調査されている。<BR><I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>は1999年に1属1種の新属,新種として記載された,ツボカビ門,ツボカビ目に属する真菌である。属名"<I>Batrachochytrium</I>"の"Batracho"はギリシャ語でカエルを意味し,ツボカビを意味する"chytrium"の"chytr"はギリシャ語の"chytridion"または"chutridion" : 陶器製の小型のツボに由来する。したがって,属名をそのまま訳せば,カエルツボカビ属になる。種名の"<I>dendrobatidis</I>"はヤドクガエル属(<I>Dendrobates</I>)の1種(blue poison dart frog)から分離したツボカビ株を用いて種の記載を行ったことによる。しかし,<I>B. dendrobatidis</I>の宿主はヤドクガエルに限られているわけではなく,宿主域は非常に広い。<BR><I>B. dendrobatidis</I>は,ツボカビ類では脊椎動物に寄生する唯一の種である。生きたあるいは死んだ両生類の皮膚の角質層や顆粒層に寄生し,そこに含まれているケラチンを利用して発育する。しかし,ケラチンを含まないトリプトン(タンパク質を加水分解したもの)寒天培地でも培養することができる。<I>B. dendrobatidis</I>の生活環は非常に単純で,遊走子(zoospore)と遊走子嚢(zoosporangium)の2形態からなっている。<I>B. dendrobatidis</I>の遊走子嚢は表面が平滑で,球形から長球形であり,乳頭状の放出管(discharge tube)がある。遊走子嚢は角質層の表面から放出管を突出させ,突起の蓋が取れると遊走子を放出する。遊走子は後方に伸びる鞭毛があり,水中を遊走する。遊走子嚢から泳ぎ出た遊走子が宿主に到達することで伝播する。感染は100個程度の遊走子により成立し,時に致死的となる。両生類の皮膚の表面に達すると,角質層を貫通し,徐々に径が大きくなり,遊走子嚢を形成する。<BR><I>B. dendrobatidis</I>の遊走子は鞭毛で遊泳して宿主に到達することから,発育や感染には水が必須である。遊走子は滅菌水道水では3週間,滅菌精製水では4週間,滅菌湖水ではさらに長く,7週間生存するとされている。遊走子は乾燥により死滅してしまう。発育の至適温度は17~25℃で,23℃が最も適しているとされている。高温には弱く,28°Cで発育が止まり,30℃以上になると死滅する。<BR>ツボカビ症に対する感受性は両生類の種により異なり,アフリカツメガエル(<I>Xenopus laevis</I>)やウシガエル(<I>Rana catesbeiana</I>)は感染しても発症しないことが知られている。しかし,多くのカエル種は発症して,致死率も90%を超える場合がある。<BR>(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
新城 明久 内村 正幸
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医情報科学雑誌 (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.29, pp.13-15, 1992-12-25 (Released:2010-05-31)
参考文献数
12

牛の人工授精に用いられている凍結精液を溶解し, 8倍に薄め, 20℃で1, 600ガウスの静磁場を8時間にわたり経時的に照射した。精子の生存率は対照区に比較し, 7時間後はやや高くなり, 8時間後は有意に高くなった。このことから磁場が精子に延命効果を及ぼすことが示唆された。
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医情報科学雑誌 (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.16, pp.53-53, 1986-06-25 (Released:2010-05-31)
被引用文献数
2
著者
高橋 正弘 村上 賢二 金子 精一
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医情報科学雑誌 (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.27, pp.27-33, 1991
被引用文献数
2

神奈川県食品衛生課編「食中毒発生一覧表」に記載されている食中毒事件の発生日, 発生件数および患者数ならびに判別分析で求められた食中毒発生予測式から算出される予測値を供試し, 食中毒発生日の特異性を検討した。検討した期間は1979年から1988年の10年間で, 各年6月から10月の5ケ月間である。<BR>1) 食中毒発生の特異日は, 発生件数の平均値および変動係数によれば9月4日, 9月8日, 9月7日, 9月13日および8月26日であった。<BR>2) また, 患者数では9月4日, 9月13日, 8月5日, 8月25日および7月29日であった。<BR>3) 以上の結果から, 食中毒発生件数・患者数の特異日は9月上旬に集積性が認められた。<BR>4) 発生件数・患者数の曜日別発生頻度は, 統計的検定の結果, 日曜日, 金曜日, 火曜日に高く, 水曜日に有意に低いことがわかった。<BR>5) 予測値においては, 曜日間に有意差は認められなかった。<BR>6) 食中毒発生ありと予測された期間は, 予測値の日別平均値によれば, 7月14日から7月17日, 7月23日から9月17日の期間であって, そのうち, 特に予測値の高い期間は8月20日から23日の4日間であった。<BR>このように, 環境要因に基づく予測と実際の発生頻度にずれが生じているのは, 食習慣等の社会的要因や調理従事者等の人為的影響が食中毒発生に深く関与しているものと考えられる。そこで, 環境要因の他に発生件数・患者数の日別・曜日別平均値さらには日別平均予測値をダミー変数とし採用すれば, 食中毒発生予測式の精度の向上が可能と考えられる。また, 行政施策の用途によっては, 月ごとに食中毒発生予測式を構築する必要性も考えられる。
著者
浅川 満彦 大沼 学 吉野 智生 相澤 空見子 佐々木 均 前田 秋彦 斉藤 美加 加藤 智子 盛田 徹 村田 浩一 桑名 貴
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-26, 2008-07-20

極東ロシア地域からのウエストナイル熱ウイルスが日本に伝播することが懸念されており,その場合には,野鳥の大量死が発生することが想定されている。酪農学園大学野生動物医学センター(以下,WAMC)では,学外専門家との共同で野生鳥類の普通種を対象にウエストナイルウイルスの簡易診断キットVecTest(米国Medical Analysis Systems, Inc. 社 : 同ウイルスのモノクロ抗体応用)(以下,キット)応用の可能性とこの感染症に関連した調査を行っている。WAMC(担当 : 吉野・浅川)において口腔内スワブを採取し,このスワブをキット用サンプルとした。一部は脳,心臓,腎臓から抽出したRNAをリアルタイムPCR法(担当 : 大沼)および10%脳乳剤Vero細胞接種法によるウイルス分離法(担当 : 前田)による確定診断を実施した。これまでの実績としては658個体(20目123種)(傷病入院個体含む)(吉野ら,2008)が検査され,疑陽性を呈したスズメ(<I>Passer montanus</I>)一個体を除く,すべてが陰性結果を呈した。疑陽性を呈した個体については,同時期・同地域に由来する5個体のスズメと共に,前記確定診断により陰性を確定した。さらに,関連調査として北海道の野鳥(カモ類)および哺乳類(アライグマなど)血清中の抗フラビウイルス中和抗体価測定(担当 : 斉藤),キットを用いた酪農大構内のアカイエカを対象にした予備調査(担当 : 佐々木)および救護鳥類でのキットによる診断(担当 : 加藤,盛田)などを実施している。混合感染で症状を増悪化させる可能性がある原虫類については,血清分離後の血餅およびスライド塗沫標本による<I>Plasmodium</I>属などの分析(担当 : 村田)も予定され,サンプルの有効活用も計る。<BR>今回行ったモニタリング調査の結果も含め,信頼性が高いとされるキットを用いた検査であっても,疑陽性・陽性反応が出た時点における確定診断検査の体制をあらかじめ組み立てておくべきであろう。また,病原体の伝播と混合感染という病原体の生態現象を鑑みた場合,媒介昆虫や寄生虫を含む他の病原体なども対象とした調査としなければ,自然生態系に生息する野鳥の絶滅リスクの増大を予見することは困難である。よってWAMCではより広範囲な動物・病原体を対象とした調査研究を実施しているのでその概要についても触れたい。本研究は環境省地球環境研究総合推進費(F-062 : 渡り鳥によるウエストナイル熱および血液原虫の感染ルート解明とリスク評価に関する研究)および文部科学省科学研究費(18510205)の支援を受けて行われた。
著者
李 謙一 中 臺文 岩田 剛敏 加藤 卓也 羽山 伸一 廣田 好和 林谷 秀樹
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, 2007-07-20

アライグマ(<I>Procyon lotor</I>)は北米を原産とするアライグマ科の中型哺乳類である。我が国では1960年代から持ち込まれた個体が野生化し,現在では全国各地で野生化が確認されている外来生物である。近年,野生化したアライグマは農作物の被害をもたらし,その分布の拡大に伴って社会問題化している。しかし,これら野生化したアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況に関してはこれまでほとんど検討されていない。本研究では,我が国で野生化しているアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況を検討するとともに,得られた結果からアライグマが生態系の中で占める位置や役割についても考察した。
著者
浜崎 利之 山本 茂貴
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-22, 2008-07-20

牛海綿状脳症(以下BSE)は牛の脳組織にスポンジ状の変化を起こす疾病で,人の変異型クロイツフェルトヤコブ病の原因と考えられている人獣共通感染症である。日本国内では,2001年9月に最初の一頭を確認してから,2007年12月までに計33頭の陽性検体を検出している。本研究は,2001年10月から実施されている全頭検査の検査データおよび農場でのサーベイランスデータをもとに,日本国内でのBSE感染牛頭数の推定を行った。